トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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この小説は健康不安をあおるものではありません。

気になる方は『水 煮沸』と調べてみて下さい。


ゴールドシップと水とビワハヤヒデ

「よってらっしゃい、見てらっしゃい! ほんの少しでもいいからさ!」

 中央トレセン学園のエントランスホールでゴールドシップは周囲に呼びかけていた。

「へい、いらっしゃい! キンキンに冷えたお湯がオススメだよ〜! グツグツに沸騰(ふっとう)させたお湯をカンッカンに冷やしたヤツ──すなわちぬるい水ッ!! 常温、適温、低刺激! 体に優しい冷たくもあったかくもねぇ水っ! 今が買いだよ〜〜っ!」

「……ほう、大したものだな」

 突然の声にゴールドシップは振り返る。

 そこに立っていたのは白くウエーブした長い髪にメガネをかけたウマ娘。

 そのウマ娘をゴールドシップは知っていた。

(こいつはビワハヤヒデ。走るレースは常に1着か2着。三強と名高いBMWの1人で、直線で後続をつき放つその走りはまさに王者の貫禄。……それにしても何だ、このプレッシャーは?)

 白いオーラをまといながらじっと見据えるビワハヤヒデを、負けじとゴールドシップも見据える。

「ぬるい水……か」

「ッ!?」

 口を開くビワハヤヒデにゴールドシップは身構える。そんなゴールドシップを気にせずビワハヤヒデは続ける。

「私のデータによれば、十分以上煮沸(しゃふつ)したお湯は残留塩素や発がん性が疑われるトリハロメタンを揮散(きさん)させることが知られている。

 また煮沸した水は殺菌効果のある塩素がなくなるため殺菌効果が薄れ、雑菌が繁殖しやすくなるため保存には向かない。

 冷めるまでに常温放置しておくと、空気中の雑菌が入る恐れがあるから急速に冷やすことは理にかなっている。さすがはゴールドシップといったところか」

「……」

 特に考えなしに行った行為を、理論に基づいた適切な行為と誤解され戸惑うゴールドシップに、ビワハヤヒデは「隠す事はない」と眼鏡をクイッとあげる。

「身体能力のみならず、自らの体調を完璧に整える(すべ)を知っている。最強のウマ娘の一人と言われるだけはある。一ついただこう」

 そう言うとビワハヤヒデはゴールドシップにマニーを手渡し水を受け取る。

「姉貴」

 ビワハヤヒデの後ろに立っていたナリタブライアンが声をかける。

「突然失礼した。いずれレースで相対(あいたい)することがあれば、お手柔らかに」

 そう言い残すとナリタブライアンの方へ歩き出す。

「あのゴールドシップとも知り合いとは……。さすがは姉貴、顔が広いな」

「誰の頭がでかいって!?」

「…………」

 あのビワハヤヒデが買ったなら、と押し寄せるウマ娘をさばきながら、妹のナリタブライアンとともに怒りながら立ち去るビワハヤヒデをゴールドシップは呆然と見送った。

 

おまけ

後日。

「姉貴。小耳に挟んだんだが、そもそも発癌する量を飲んだら水中毒で死ぬほうが先だから安心して水道水を飲んでも問題ないという意見もあるぞ」

「そうなのか。ではそれが本当なのか様々なところから情報を得て判断しないとな」

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