トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
昼のピークを越えた焼き肉屋に、ライスシャワーのトレーナー(以下ライストレ)は一人焼き肉を楽しんでいた。
「今日は休日。熱心なトレーナーなら休日返上で担当バとトレーニングをしたり目標とするレースに向けて作戦を立てたり他のウマ娘の情報を集めたりなどするだろう。だが!」
ライストレはトングで焼き網の上に肉を並べる。
「今日はライスシャワーは友達と遊びに行っているからトレーニングはない。書類作成などの仕事は全て終えている。そして俺は他のトレーナーと同じ担当バを勝たせたいトレーナーであると同時に一人の人間である。こういった時くらいはウマ娘のトレーナーという肩書を外して一人の男として充実した時間を過ごすのも悪いことではない」
焼けた肉をタレに付けご飯の上に乗せて余分なタレを落として口へと運ぶ。
(う、美味い!!)
その瞬間、ライストレを縛っていた常識という名の鎖が外れる。
ひたすら肉を焼き、無言でひらすら肉を
(ククク。こんな食事、レースで優れたパフォーマンスを出すために健康管理は必須なウマ娘はもちろん、普通の人でも栄養バランスを完全に無視した暴挙、最悪の食事! だが酒を飲み、米と肉をひたすらかきこむのが男の食事というものだ。そうだろう?)
ライストレはこの小説を読んでいるだろう読者の心に問いながら、ひたすら肉を焼いて頬ばり続ける。
「ククク、今の俺はライスシャワーのトレーナーではない。焼き網という名のレース場を支配する暴君! 店員さん。ビールとカルビ、レバーを追加でお願いしま──」
バッ!
何かに気づき、ライストレは瞬間的に机にうつぶせた。友達と別れただろうライスシャワーが焼き肉店の前を通ったからだ。
(危なかった……もしライスシャワーに見つかったらどうなるものかわかったものではなかった……)
「お兄さま。お肉、焦げちゃうよ?」
「あ、どうもすみませ──」
ライストレは固まる。自分が座る反対側の席に
「いいえ、どういたしまして」
キラキラというエフェクトがつきそうな笑顔のライスシャワーが座っていたからだ。
「お兄さま、奢って!」
笑顔で言うライスシャワー。しかしその瞳は『断れば殺す!』という刺客のような狂気を秘めていた。
「……ライスシャワー。俺は一人で焼き肉を楽しんでいるんだ。男にはそういう時間も必要なんだ……」
「お兄さま」
冷や汗を流しつつも諭すように言うライストレに、ライスシャワーは狂気が消えた笑みで反論する。
「食事って一人で食べるのもいいと思うけど、みんなで食べるともっと美味しくなると思うんだ……それとも、お兄さまはライスとごはん食べるの……嫌なの?」
不安そうな、それでいて悲し気に自分を見るライスシャワーにライストレは「ふぅ」と軽いため息をついた。
「確かにその通りだ。俺の負けだよ、好きなものを頼むといいよ」
「本当?」
「あぁ、ここの支払いは俺が持つ」
その瞬間、ライスシャワーに鬼が宿った。
「店員さん、注文お願いします! カルビさんにハラミさんにロースさん、タンさんにミノさんにユッケさん。それから…………」
その後もライスシャワーはあまりの量に固まるライストレをよそにどんどんと注文。次々に肉を焼いて小柄な体へと収めていく。
その後
「え……と、お会計10万5800円になります」
困惑する店員に、ライストレは尋ねた。
「……すみません。カード、使えますか?」
極限まで削ぎ落とした体に、鬼が宿る。
男ライストレの一人飯を阻んだ、漆黒のステイヤー。
ヒールか、ヒーローか、悪夢か、奇跡か。
そのウマ娘の名は……ライスシャワー!