トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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マンハッタンカフェ誕生日回。


マンハッタンカフェとマンハッタン(カクテル)

 某日。

 空がうす暗くなり夜の店の明かりがポツポツと明るくなる頃。マンハッタンカフェは「案内したい場所があるんだ」と自身のトレーナー(以降カフェトレ)に連れられて、繁華街の端にあるバーの前に立っていた。

「…あの、トレーナーさん?」

 不安そうに尋ねるマンハッタンカフェに答えず、カフェトレは扉を開ける。カランカランとドアについた鈴が心地いい音色を鳴らす。

「お待ちしてましたよ、カフェトレさん」

 グラスを磨いていた初老のバーテンダーが手を止めて二人に頭を下げる。

「…」

 マンハッタンカフェは店内を見る。

 さほど広くない店内はカウンター席とテーブル席が二つだけ。カウンター席の端では40代くらいのサラリーマンが静かに酒を飲んでいた。サラリーマンは少しだけマンハッタンカフェを見た後、すぐに飲んでいるカクテルの色や匂いを楽しむ世界へ戻っていった。

「こちらへどうぞ」

 バーテンダーの案内で二人はバーテンダーの前のカウンター席に座る。

「グラさん、この間言っていた担当しているマンハッタンカフェだ」

「…マンハッタンカフェ、です」

小倉(おぐら)です。ようこそ」

 頭を下げるマンハッタンカフェに、バーテンダーも頭を下げる。

「で、カフェトレさん。この間言っていた通りに?」

「ええ。お願いします」

「かしこまりました」

 何も知らされていないマンハッタンカフェは、カフェトレとバーテンダーのやり取りを不安そうに見ていた。バーテンダーは冷蔵庫から色々取り出すとそれらをシェイカーに入れてシャカシャカと振っていく。その精錬された動きにマンハッタンカフェは無意識に感激の声を漏らす。

「お待たせしました。シンデレラです」

 バーテンダーは逆三角形のカクテルグラスに注がれた黄色いカクテルをマンハッタンカフェの前に置く。オレンジやレモン、パイナップルの香りがマンハッタンカフェの鼻孔をくすぐる。

「…あ、あの」

 薄明るい店の照明に照らされ、美しく輝くカクテルにうっとりしつつも、マンハッタンカフェはカフェトレとバーテンダーを交互に見る。

「あ、すまんすまん。言っていなかったな。この間のレース頑張っただろ。だからそのご褒美……ってわけじゃないけど少し変わったところに連れて行きたくてね。あ、それはノンアルコールカクテルだから気にせず飲んでくれたらいい」

「…わかりました」

 カフェトレの意図と出されたカクテルがノンアルコールだとわかったマンハッタンカフェは小さく微笑み、目の前のシンデレラに口をつける。

「…ゴクン。少し酸味がありますが、すっきりとして飲みやすい…とても美味しいです」

 マンハッタンカフェの感想にバーテンダーも、隣に座るカフェトレがホッと胸を撫でおろす。

「それじゃあ、グラさん。俺は……」

「カフェトレさん。飲み過ぎないようにしてくださいよ。お連れの方を安全に家に送るという仕事が残っているのですから」

 そうカフェトレに笑顔で釘を刺しながらバーテンダーは二人にカクテルを作っていく。バーテンダーが作るカクテルと静かで落ち着く店の雰囲気に、リラックスしたマンハッタンカフェは純粋にカクテルとバーテンダーから聞かされるカフェトレの失敗談などを楽しんでいた。

「じゃあ、グラさん。そろそろ」

「わかりました」

 入店して一時間が経過し門限を気にしなければならない時間になった頃。カフェトレの言葉にバーテンダーはカクテルを作る。

「どうぞ」

 マンハッタンカフェの前に琥珀色のカクテルが置かれる。

「これは?」

「グラさんに無理言って作ってもらったんだ」

 きょとんとするマンハッタンカフェに微笑みながら、カフェトレは続ける。

「それはマンハッタン。カクテルの女王とも呼ばれるカクテルだ。本来のマンハッタンはウイスキーベースだから未成年には飲めないが、グラさんに無理言ってアルコールをゼロにして作ってもらったんだ」

 バーテンダーは同じように特製のマンハッタンをカフェトレの前に置く。

 グラスを持つカフェトレと同じように、マンハッタンカフェもグラスを持ちあげる。

「カクテルの女王と呼ばれるマンハッタンのように、マンハッタンカフェがウマ娘の頂点に立つことを祈って……乾杯」

「…乾杯」

 二つのグラスが重なる音が二人三脚で歩む二人を祝福するように小さく鳴った。

 

 

おまけ

(うわ~!マンハッタンカフェだよ、俺の最推しの! やば、どうしよう……声、かけちゃおうかな……いや、駄目だ! プライベートの時間を過ごしているんだ。それを邪魔するのはあまりにも無粋。それにこうして酒を楽しみながら自分の世界を楽しむという姿を見せることで俺が背景の役割を果たし、彼女にバーの雰囲気を楽しませることができる! ……でもなぁ……!)

 ファンとして推しに話したい感情とファンだからこそ自制しないといけない葛藤に、先に入っていたお客は苦しんでいた。

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