トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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スペシャルウィーク脳内グルメ首脳会議

「う~ん、どれにしましょうか」

 中央トレセン学園から徒歩圏にある皇恋(こうれん)グループ傘下のファミリーレストラン『ウマス』で、スペシャルウィークはどれを食べようか一人悩んでいた。

 

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 スペシャルウィークの脳内議会室。

「それでは今日は第106回脳内グルメ首脳会議を開催します」

 様々な国の衣装をまとったスペシャルウィークたちの前で、学生服の議長スペシャルウィークが開催を宣言した。

 

『ハイッ! ハイッ! ハイッ!』

 

 各国のスペシャルウィークが自分が勧めた料理を食べてもらおうと手を挙げる。

「う~ん、では中国スペシャルウィークさん!」

「はい!」

 当てられたチャイナ服のスペシャルウィークが席を立って発言する。

「私はラーメンをお勧めします。外は雪もちらつく寒さ。ここはラーメンで暖を取るのが最も有効かと」

「ふふふ、甘いですね。中国スペシャルウィークさん」

「何ですって? 伊国(イタリア)スペシャルウィークさん」

 中国スペシャルウィークが隣の精巧な刺繍(ししゅう)とカラフルな色遣いに繊細なジュエリーを身に着けたウマ娘を睨みつける。

「本体は昨日、正門前に来た屋台のラーメンを食べています。ラーメンには塩、醤油、味噌、豚骨……はたまた野菜ベースなど色々バリエーションがありますが。いくら飽きがきにくいとはいえ、昨日食べたばかりのラーメンをまた食べたいと思うでしょうか?」

「……ッ!」

 その言葉に中国スペシャルウィークは苦虫を嚙み潰したような顔で席に座る。

「議長! ここはパスタでいくべき……否! パスタしかあり得ません!」

「甘いですよ、伊国スペシャルウィークさん!」

「何ですって!?」

 伊国スペシャルウィークが、モンジューの服装をした仏国(フランス)スペシャルウィークをキッと睨みつける。それを受け流し仏国スペシャルウィークは口を開く。

「パスタは昨日の昼ごはんに食べた。よってパスタも新鮮味がなく本体を満足する料理とは言えない。なのでここはクロケットでしょう。口に入れた際のサクッとした食感、ペシャメルソースのトロリとしたクリーミーな舌触り。肉や魚、野菜の具材が織りなす風味豊かな複雑な味わい。出来立てのクロケットの温かさは本体の冷えるであろう身体を温めるのに持ってこいです!」

 仏国スペシャルウィークの食欲をそそる説明に「で、では……」と議長スペシャルウィークが決定の木槌を叩こうとする。

「ちょっと待ってください!」

 その木槌を、タイキシャトルに似たカウガール衣装の米国スペシャルウィークが止めた。

「議長! 昨日の晩御飯にはコロッケがありました。なのにクロケットは如何(いかが)なものでしょうか?」

「異議あり! クロケットとコロッケはまったくの別物。問題はありません!」

「確かにクロケットは野菜や肉、魚を細かく刻みペシャメルソースと合わせてから成形しパン粉の衣をつけてから揚げて作る料理。対するコロッケはゆでたジャガイモを潰したものを主体とした揚げ物。たしかに違う。しかしそれは微々たるもの! 先ほどの中国スペシャルウィークさんが提案したラーメンと大差はありません!」

 理路截然(りろせいぜん)とした米国スペシャルウィークの説明に、仏国スペシャルウィークが力なく崩れ落ちる。

 完全に戦意を失った仏国スペシャルウィークの姿に満足そうな笑みを浮かべると、米国スペシャルウィークは提案する。

「やはりここはハンバーガーでしょう! 早くて美味くて種類も豊富。さらにこの三日間ハンバーガーは食べていない。本体を満足させられるのはこれしかありません!」

 決まった! と胸を張る米国スペシャルウィーク。しかしその自信はもろくも打ち砕かれる。

「ふふふ、ははははははっ! 決定的なことを見逃していますよ、米国スペシャルウィークさん!」

「何ですって!?」

 伊国スペシャルウィークによって、いるのかいないのかわからない程に意気消沈していた中国スペシャルウィークが立ち上がる。

「確かにハンバーガーは本体は数日、口にしていない。貴女の言う通り新鮮な気持ちで食べることでしょう」

「だ、だったら!」

「だが貴女は重要なことを見逃している。それは外の気温! ハンバーガーで熱が十分に感じられるのはパンの間の具材。パンの部分はほんのり温かいが食べている間に冷めてしまう。寒い外を歩いて帰らないといけない本体に対してあまりにも考えが足りないと言わざるえません!」

「うっ!」

 中国スペシャルウィークの反論に、米国スペシャルウィークがたじろぐ。

 

「ではここは──」、「待ってください! それは──」、「いや、ここはヴルスト──」

 

 各国のスペシャルウィークが自分たちの主張を言い合い、遂には統制が取れない事態にまで発展する。

 

「議長!」、「議長ッ!」、「議長ッ!!」

 

 各国のスペシャルウィークが議長スペシャルウィークに詰め寄る。

(ど、どうすれば……ッ!)

 その時、メニューを見ていたスペシャルウィーク(本体)の目が留まる。それはお好み焼きだった。

「そうだ、お好み焼きにしましょう! お好み焼きならボリュームもあって温かく、それでいてここ最近食べていない。ソースの焼ける匂いも食欲を誘う。これなら文句はないでしょう!」

 その言葉に「その通りだ……」、「仕方がない……」、「この状況でお好み焼きが相手では……」と各国のスペシャルウィークが自分たちの席に戻る。

「ではお好み焼きに……ん?」

 議長スペシャルウィークの木槌を叩く腕が止まる。

 スペシャルウィーク(本体)が『広島風お好み焼き』と『関西風お好み焼き』を見たからだ。

 次の瞬間、

「食べるなら広島(うち)のお好み焼きじゃろうが!!」

 学生服に必勝と書かれた巨大しゃもじを背負った広島スペシャルウィークと

「ふざけたことぬかすな! お好み焼きと言ったら関西風(こっちの)お好み焼きだろうが!!」

 学生服に兜の後ろに後光が差し込んだかのような装飾物がついた兜を被った大阪スペシャルウィークが議会に乱入。互いの巨大なお好み焼きを焼く道具(ヘラとコテ)が激しくぶつかった。

 二人のスペシャルウィークによって、まとまりかけた議会は再び荒れ狂い、結果。脳内会議で疲れ果てたスペシャルウィークが注文したのは

 

「すみません。一番安いおかゆセットを、一つ……」

 

 

 ~後日談~

 翌日

 スペシャルウィークは気づいた。

「ハッ! 全部注文すればよかった!」




創作裏話
最初イタリアスペシャルウィーク、フランススペシャルウィークと書いていたのですが、長く見ずらいので漢字表記に書き換えました。
秀吉が所有していたと言われる馬藺後立兜の説明が難しかった。
あと広島県の人は広島風と言われると気分を害するらしいのでその辺りもどう書くべきなのか。
さらにお好み焼きを焼く道具も地域によって違うのも、ちなみに自分はヘラですね。

1月10日 後日談追加
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