トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
時はゴールドシップが中央トレセン学園に入学する前にさかのぼる。
「おい、どうした
「あ、いえ。何でもありません……」
何でもありません。そういう部下だがその顔色はさえないのは誰が見ても明らかだった。
「碇屋。部下のパフォーマンスを最大限に発揮できるように配慮するのも上司の務めだ。その心の中に溜めているものを吐き出してみろ……」
「利根澤先生……」
利根澤の言葉にうるっとした黒服は「実は……」と心の内を吐露する。
「最近……変な夢を見まして……」
「変な夢?」
「ええ、会ったことのない女でして……会い方は色々あるんですけど。ある時はセグウェイに乗っていたり、ある時は錨を振り回したり……でも本当に見たことがなくて……」
「う~む……」
利根澤は顎に手を置いて考える。
「夢占いによると見知らぬ人間と話す夢は何らかの悩みを抱えているからと言われている。もしひどいようなら病院に行って診断してみるといい」
そう言って利根澤は黒服と別れた。
ここだけ見ればどこにでもある日常の一つだった。だがそれだけでは終わらなかった。
数人の部下が夢に会ったこともない女が出てきたと利根澤に相談してきたからだ。その内容も
①内容物のわからないたい焼きを食べさせれた。
②目に箸やコロッケのかけらが直撃し悶絶していたにも関わらず、次のシーンではケロっとしていた。
③もの凄い重い靴で背中を踏まれて「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」を悲鳴を上げていた。
④焼きそば売りに強制的に手伝わされた。
⑤柵を飛び越えマイケル・ジャクソンの直立不動パフォーマンスをした。
⑥どこかの土手で丸太を打ち込む。
⑦ラー油入りのコーヒーを勧められた。
など普通の人間では考えられない奇行ばかりだった。
そして
「ん?」
利根澤が目を覚ますと、そこはどこかの学校だった。
「なぜワシはこんなところに……? 確か部下達の見た謎の女が出てきたという夢を言っていたことを思い出し『くだらん……』と一蹴した後に寝間着に着替え、酒を飲んで床に就いたはず?」
スーツ姿でなぜここにいるのかわからない利根澤はとりあえず歩く。しかし考え事をしていたためか、何か柔らかいものにぶつかる。
「す、すみません……よそ見を、え……?」
それが制服の上からでもわかるほどの大きな胸だと気づいた利根澤は謝罪をして正面を見て……絶句する。
そこには美しい銀髪に抜群のプロポーションという美人要素を上回る帽子と耳当て、サングラスと顔の下半分を覆うマスクをつけたウマ娘が立っていたからだ。
「スカーレット! ウオッカ! やっておしまい!」
その言葉と共に脇にいた二人のウマ娘が利根澤に近づく。
「や、やめろ! うわあああぁぁぁっっっ!?」
抵抗むなしく利根澤はズタ袋に入れられどこかに運ばれた。
翌日。
出社した利根澤が
「妙な夢を見た……」
と思わず愚痴をこぼした。それを耳にした部下の一人が
「もしかして、ですけどこんな女、じゃ……ないですよ、ね……?」
と利根澤にイラストを見せる。その瞬間、利根澤は椅子から転げ落ちた。
整った顔立ちに美しい銀髪、抜群のプロポーション。帽子と耳当てをつけた、利根澤の夢に出てきたウマ娘だったからだ。
その反応に部下達も「先生も同じ夢を……」、「もう最悪だ!」、「やめてくれ……!」とパニックに
「バカ者! たかが夢ごときに何をうろたえておる! 大の大人が!! 仕事に取り掛からんか!!」
利根澤の 責に部下達は我を取り戻し業務に取り掛かる。
「そうだ……たかが夢。夢なんかに何をうろたえておる……」
利根澤は自分に言い聞かせるように何度も小声で呟いた。
その日の夜。
「たかが夢……たかが夢……」
と呟きながら寝間着に着替えた利根澤はいつも以上に酒を飲んで床に就いた。
「ん?」
気づくとスーツ姿になった利根澤はどこかのレース場にいた。
「ん?」
何かの気配を感じて利根澤は振り返る。そこには「わ~いわ~い」と無邪気な笑顔で利根澤に向かって駆け寄る謎のウマ娘がいた。
ウマ娘は駆け寄るスピードのままそのまま高く飛び上がると、そろえた両足で
「ウゴオオオオオォォォォォォッッッ!!??」
利根澤を蹴り飛ばした。
はるか遠くへ吹き飛び何度も地面をバウンドした後仰向けに倒れる利根澤に謎のウマ娘は笑顔で「どうよ?」と尋ねた。
夢の中だからか、痛みがない体で利根澤は思った。
お前はいったい誰なんだ……!?