トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
ユキノビジン(実馬)の初戦が盛岡のサラ系3才 新馬戦。
3月10日生まれで二人が東北に縁があることなので今回の小説を思いつきました。
東日本大震災でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りしつつ、被害に遭われた方々の歩む道が幸せであることを祈ります。
3月某日。
メジロマックイーンとメジロライアンを中心に野球の面白さを伝えようと中央トレセン学園で3回までのミニゲームが行われていた。
くじ引きでチーム分けが決められ、試合はメジロマックイーンとメジロライアン率いる赤組が勝利すると思われた。しかし
「……」
投手ユキノビジンは捕手ビワハヤヒデのサインとミットを確認し首を縦に振る。
投じた球は二番メジロマックイーンの内角低めのストライクゾーンギリギリに決まる。
「くっ!」
球威はないものの精密機械のような抜群のコントロールに、メジロマックイーンは窮屈なバッティングでそれをファールにする。
(球威や変化球はライアンに遠く及ばない。しかしコントロールは別! まさかトレセン学園にここまでの投手がいたとは!)
メジロマックイーンは一度打席を外す。
(まさかユキノビジンとビワハヤヒデという野球にあまり関係なさそうな二人のバッテリーがここまでするなんて!)
メジロマックイーンは驚きを隠せなかった。
この試合はメジロライアンとユキノビジンの投手戦となっていた。球威とプロ並みの変化球で打者を次々と打ち取るメジロライアン。
対して球威はなく変化もストレートとさほど変化がない変化球しかないが捕手の構えた所に一寸も狂いもなく投げるユキノビジン。
そのコントロールを相手のクセや弱点、何を狙っているかを冷静に見極め効果的な場所にミットを構えるビワハヤヒデによって、メジロマックイーンたちは凡打の山を築くことになった。
(大丈夫、大丈夫ですわ! コントロールはプロの野球選手でも通じるどころか一、二位を争うレベル! しかし球威はさほどなく変化のない変化球ではストレートを待っていたとしても十分に対応できる。
試合は3回裏2アウトでランナーなし。カウントは3ボール2ストライク。次の打者はこの試合両チームで唯一ヒットを放っているライアン。四番に砲丸ほどの鉄球を小さくするほどの力を持つジェンティルドンナさんがいることを考えればここは間違いなく勝負!
そして今までの私への配球を考える限り低めに視線を集めてからの、外角高めのストレート!)
打席に入ったメジロマックイーンにユキノビジンが投げる。狙ったコースはメジロマックイーンの予想とは多少外れた真ん中高めのストレートだった。
(くっ! 少しだけ予想とは違いますが、対応は可能。これを打つ!)
メジロマックイーンはバットを出す。しかし迫りくる球に違和感を覚えた。
(しまった!?)
今までユキノビジンが投じた球は意図的に外した見せ球を除き全てストライクゾーンに収まっていた。だからメジロマックイーンは思い込んでいた。
ストライクゾーンギリギリの真ん中高めのストレート!
と。
しかし投じられた球はそれよりも高い、顔ほどの高さのストレートだった。
(……やられましたわ!)
振りぬいたバットは
ミニゲームが終わった後。ユキノビジンとビワハヤヒデは昼食を共にしていた。
「ハヤヒデさん、今日はリードありがとうでした!」
「こちらこそ。ユキノ君の小さい針の穴に糸を通すようなコントロールのおかげで気持ちよくリードすることが出来た」
ペコリと頭を下げるユキノビジンに、ビワハヤヒデは眼鏡をクイッと上げる。
「しかしユキノ君が野球に心得があったとはな。私は投手と打者の駆け引き、何気ない一つのプレイにも戦術があったりなど参考になる所があるから気分転換も兼ねて野球を観戦したりしていたが。……あそこまで上手いとは意外だったな」
「あぁ……。それは親戚に東北に本拠地を持つ球団のファンがいまして。その影響であたしもかじる程度やってまして……」
その後野球の魅力や、ビワハヤヒデが野球のどういった要素がレースに通じるかわかりやすく解説したのをユキノビジンが目を輝かせながら聞いていた。
そして話題は野球から東北の話題に入る。
「今月は3月。また東北に春が来るんだな……」
「えぇ……」
ビワハヤヒデの意図を察してか、東北地方の方角を見るビワハヤヒデに
「桜の季節にはまだ早いが……綺麗に咲くといいな。一瞬でも悲しみを忘れさせてくれるような……」
3月11日に起きた出来事を思い出しながら呟くビワハヤヒデに、ユキノビジンは静かに頷いた。
全ての人が幸せに生きる。
そんなことはあり得ないのはわかっていますが、東日本大震災や能登半島地震などを思い返すとそんな世の中にならないものかと思う日々です。