トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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アドマイヤベガ誕生日回。


ふわふわソムリエ アドマイヤベガ

「たっ、ただいま! ……え?」

 元気よく自室の扉を開けたカレンチャンは固まった。

「お帰りなさい、カレンさん」

 そこには身体が鉛のように疲れていたら迷う事なく倒れてしまいたいと思うほどふわふわな羊毛らしき衣服に包まれたアドマイヤベガが、外はカリッと中はふわふわなフランスパンに温めたマシュマロをはさんで食べていた。

 普段のクールなアドマイヤベガからは想像も出来ない今にもとろけそうな顔にカレンチャンは戸惑(とまど)う。

「え……っと、どうしたんですか。アヤベさん?」

「……あぁ、これ?」

 とろけそうな顔から一変、可愛らしいふわふわの衣装にいつものクールな表情になったアドマイヤベガが事に(いた)った経緯を話し始めた。

 

 二日前

「ううっ、寒っ!」

 ナイスネイチャの隣を歩いていたナイスネイチャのトレーナー(以下ネイチャトレ)が商店街を通り過ぎる寒風に身体をブルッ! と震わせる。

「トレーナーさん、何でそんな軽装なの? 3月って言ってもまだ寒いよ?」

「……だって少し前から『おいおい、もう初夏かよ!?』っていう天気だったじゃん! そしたらもう厚着の必要はないと思うじゃないか! ……うぅっ!」

 少しでも(だん)を取ろうと手をこすり合わせるネイチャトレにナイスネイチャは小さくため息をついた。

「しょうがない。じゃあ、ネイチャさんのここにココに手を入れてみるといいよ」

 そう言ってナイスネイチャは両側のふわふわの髪を持ち上げる。

「自分で言うのも何だけど、ふわふわ(・・・・)して気持ちいいよ?」

「本当にそうね」

 

「「うわっ!?」」

 

 前触れもなく現れナイスネイチャの髪に手を入れるアドマイヤベガに、ナイスネイチャとネイチャトレは驚きの声をあげる。

「……ふ~む」

 そんな二人に気にした様子もなく、アドマイヤベガは真剣な面持ちでナイスネイチャの髪の中に手を入れて感触を確かめる。

「……」

「あ、あの……アヤベさん?」

 年代物の骨董品を鑑定するかのようにじっくりと丁寧に触るアドマイヤベガにたまらず声をかけるナイスネイチャ。

「……わかったわ」

 そう言うとアドマイヤベガは髪から手を離した。

「……ネイチャさん。貴女の言う通り貴女の髪はふわふわして気持ちよかったわ。髪もざらつきはなく滑らかで適度に空気を含んで。心地よいふわふわだったわ!」

「……あは、どうも」

 真剣な表情で誉めるアドマイヤベガに、ナイスネイチャはどう反応すればいいのか複雑そうな表情を浮かべる。

 

 パチパチパチッ

 

 突然の拍手に三人は振り返る。

「超ワンダフル!」

 そこには眼鏡をかけた太やかな男が立っていた。

「……誰かしら、貴方は?」

 問いかけるアドマイヤベガに、男は「これは失礼しました」と頭を下げる。

「私はとある大学で『ウマ娘LoveLove会』というファンクラブの会長をしている者です。ふわふわに対するアドマイヤベガさんの情熱と適切な評価に心を打たれてつい拍手をしてしまいました。気を悪くされましたら許してください」

「……用件はそれだけですか?」

 クールな表情を保ちつつ不快感をあらわにするアドマイヤベガに、男は手を前に出して制する。

「いえ、用件はございます。私はウマ娘を応援するファンクラブの代表であると同時に自らの信じる道を歩く手段を得る(すべ)を身につけるために勉学に励む学生でもあります。会員の中に様々な繊維を研究する繊維学を専攻する者がいまして……その者の研究のためにアドマイヤベガさんのその素晴らしき見識をお借りできないかと思って声をかけた次第で」

「……嫌だ、と言ったら?」

「もちろんお断りしていただいて結構です。いきなり見ず知らずの怪しい男に声をかけられたのですから」

 そう言って男はアドマイヤベガの手に何かを渡す。

「それでは失礼しました」

 男は頭を下げてその場から去って行った。

「……」

 アドマイヤベガは連絡先が書かれた紙といつまでも触っていたいふわふわなパンの感触を堪能しながら男の背を見送っていた。

 

「で、その人の大学に行ってその会員さんの研究に付き合って……そのお礼にその服とフランスパンをいただいて帰ってきた……と」

「羊やアルパカなど色々なふわふわな動物に触れて、色々な素材のふわふわな服やクッションに触れて……幸せだったわぁ~!」

 その時のことを思い出し頬を赤くさせながらとろけた顔で振り返るアドマイヤベガに、カレンチャンは

 

「そ、そうですか……」

 

 と若干(じゃっかん)ひいていた。

 

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