トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
「……う~む」
「どうしたんけぇ、トレーナーさん?」
ワンダーアキュートが難しい顔をする自身のトレーナー(以下アキュトレ)に声をかける。
「いや、体調管理に関してウマ娘に口すっぱく言うトレーナーとして恥ずかしい話なのだが……最近、身体が……ね」
そう言ってアキュトレは服をめくって脂肪のついたお腹を見せる。
「おやまぁ……」
トレーナーのお腹に少し驚きの声をあげる。
「スケジュール調整とかトレーニングに関する勉強とか色々忙しくて……どうしても食事や運動がおろそかになって……どうしたものかね、あはは……」
苦笑いを浮かべるアキュトレにワンダーアキュートが少し考えた後に何かを閃き手をポンッ! と叩く。
「そうだ! トレーナーさん、お父ちゃんの所に行かないかねぇ?」
「え、お父さんって。確か元ボクサーで現在はボクシングジムを経営しているアキュートの?」
「そうそう、そのお父さんじゃよ。お父さんはプロ育成の生徒さんも指導しているけど、身体を動かしたい人やダイエットしたい人に向けの指導もしとるんじゃよ。だからトレーナーさんもどうかな、と思ってねぇ」
「……う~ん」
アキュトレは腕を組んで考え込む。
「ボクシングか……でも一人で何とか出来るならとっくの昔にやっているし、身体を動かす仕事をしている
「うん、わかったよぉ!」
その後ワンダーアキュートは実家に連絡に父親は二つ返事で了承。次の休日に見てもらう約束を取り付けた。
約束の休日。
「……うわぁ、すごい……」
ワンダーアキュートと共にボクシングジムを訪れたアキュトレはその熱気に圧倒されていた。
ビュンビュンッ! ともの凄い速さで縄跳びをする者。サンドバッグにリズムよくパンチを繰り出したかと思うとバーンッ! とサンドバッグが大きく揺れるほど強烈なストレートを打つ者。ぶら下がったパンチングボールに素早く正確にパンチを繰り出す者。そして
バンッ! バーンッ!
「おい、
「……ハァ、ハァ、ハァ……は、はいっ!!」
リングでパンチングミットを持ちながらジム生に怒声をあげる中年男性にアキュトレは目を奪われた。
「……ん? よし、休憩!」
来客に気がついた男の声がジム全体に響き渡る。
「おぉ、帰ってきたかアキュート!」
先ほどの真剣な顔つきとは一変、嬉しそうな顔でワンダーアキュートと駆け寄る。
「ただいま、お父ちゃん」
父親にされるがまま、抱きかかえられるワンダーアキュート。
「お前が出ているレースは全部見ているぞ! お前は自慢の娘だよ……おっと。こちらが例の?」
「そう、話していた私のトレーナーさんだよ」
「そうかそうか」
ワンダーアキュートを下ろすと父親はアキュトレの前に手を出す。
「はじめまして、ワンダーアキュートの父です。娘がお世話になっております!」
「い、いえ……こちらこそ」
アキュトレは差し出す父親の手を握る。
「お父ちゃん。トレーナーさんは私をしっかり見てくれてね。私が(レースで)緊張していた時に私を叩いてくれてね。気持ちよく走らせてくれたんよぉ」
「ん?」
娘の言葉に父親のこめかみがピクリと動く。
「トレーナーさんは私のクセを見抜いて、私をしっかり見てくれて……(結果を残すレースをさせてくれて)私の知らない素晴らしい世界を教えてくれたすごい人なんよぉ」
「ほぉ。お前の知らない、
「イタタッ! ……お、お父さん!?」
「誰がお前のお義父さんだ?」
握る手に力を込められ、顔をしかめるアキュトレに父親がドスの効いた声でアキュトレを睨みつける。
「あ、それじゃあ私はお茶の準備をしてくるから。お父ちゃん、トレーナーさんをよろしくね?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
「トレーナーくん。早速始めようじゃないか!」
奥へと下がるワンダーアキュートに父親が止める。父親同様怒りに満ちたジム生がアキュトレに近づきパンチンググローブなどを無理やり装着させると無理やりリングへ上げさせる。
「あ、あの……!?」
わけがわからず身体を震わせるアキュトレに、ボクシンググローブをつけた父親がリングに上がる。
「いや。まずは君にはボクシングとはどういうものか教えようと思ってね。何事も実践あるのみだ! ちゃんと手加減するから安心してくれ。もっともたま~に、現役並のパンチを繰り出してしまうかもしれないが……まぁその時は勘弁してくれ」
その後。父親とのスパーリングでリングという狭い空間で一人で敵と立ち向かうスリルに目覚めたアキュトレがその後もワンダーアキュートのトレーニングと並行してジムに
『お前なら世界を狙える! 今すぐトレーナー辞めて
と転向を勧められたのは別の話である。