トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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一日外出ハンチョウ、オツキ!~君の名は~(オグリキャップ登場)

 小槻(おつき)馬太郎(うまたろう)

 金融業を中心にカジノやホテルなど多角的な経営を行っている日本有数の巨大企業、皇恋(こうれん)グループが秘密裏に行っている強制労働施設の農場で働く債務者である。

 他の債務者をまとめる班長になってからは班長特権を悪用し、ウマ娘のグッズなどで他の債務者から強制施設内でのみ使用されるマニカを巻き上げていたが、小槻はウマ娘には一切の興味を持っていなかった。

 

 あるウマ娘と出会うまでは。

 

 

 某公園

「ふわぁ~~~っ……!」

 一日外出券を使って外に出た小槻は寝ていたベンチから立つとその場で軽い運動をして自身を覚醒させる。

「さて、今日は前もって考えておいたプラン通りに……ん?」

 小槻は気づく。

「……」

 隣のベンチに銀髪の芦毛のウルフカットのロングヘア。頭頂部だけが黒く黄色い菱模様を横に連ねた特徴的な髪飾りをした、ぼ~としている学生服のウマ娘の存在に。

「なんだ、あのウマ娘(むすめ)は…………まぁ、いい……」

 小槻は謎のウマ娘から視線を戻す。

(ワシにとってはウマ娘(あいつら)は他の債務者(クズ)どもからマニカ()を稼ぐ道具に過ぎない。どこで何をしようが走ってライブを盛り上げてくれさえすればいい……)

「さて、行くか」

 小槻が立ち上がって歩き出すのと同時に、ウマ娘も小槻と反対方向へ歩き出した。

 

 十分後。

 小槻はとある喫茶店の前にいた。

「まずはここ。ここのシナモンをたっぷりかけたアップルパイにロイヤルミルクティーを一緒に……かぁ~、思い出しただけで(よだれ)が……、ワシとしたことが……」

 人差し指で涎をぬぐい取ると、小槻は扉を開けて、絶句した。

「……」

 カウンター席に公園にいたウマ娘がぼ~と座っていたからだ。

「……まぁ、いい」

 店員に案内されて、小槻はウマ娘と少し離れたカウンター席に座る。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「シナモンをたっぷりかけたアップルパイにロイヤルミルクティーを」

「かしこまりました」

 奥に下がる店員を見送ると、ふと隣のウマ娘を見る。

「お待たせしました」

(さて、あいつは何を注文し……えぇっ!?)

 小槻は驚愕する。なぜならば

「ご注文のシナモン多めのアップルパイ3つとロイヤルミルクティー3つです」

 注文数こそ違えど、小槻が頼もうとした料理だったからだ。

 美味しそうに食べるウマ娘。小槻が頼んだ料理が来たのと同時に会計を済ませて店を後にした。

「……な、なんだったんだ……あのウマ娘(むすめ)は? ……まあ、いい……」

 気分を入れ替え、頼んだ料理を食べ終わると小槻は次に食べるラーメン店へと足を向けて、再び驚愕する。

(ま、またいる!?)

 先ほどの喫茶店同様、謎のウマ娘がカウンター席でぼ~と座っていたからだ。

(……な、何なんだ。このウマ娘(むすめ)は……まぁ、いい)

「すみません。麵硬め、脂抜き、野菜ニンニクマシマシのラーメンを」

「はいお待ち! 麵硬め、脂抜き、野菜ニンニクマシマシのラーメン3つ!」

「ッ!?」

 振り返るとそこには小槻が頼んだ同じラーメンが三つウマ娘の前に置かれていた。

 小槻が食べ終え店を出ると同時に、ウマ娘も外に出た。

 その後もファーストフード店で同じハンバーガーセット(を一つと三つ)、串カツ屋で裏メニューの串カツ(を三つと九つ)、アイスクリーム屋で同じアイスクリーム(を一つと三つ)。頼む量こそ違えど同じメニューを食べるウマ娘に、知らぬうちに親近感を覚えていた。

 

 その日は銭湯に入り格安ビジネスホテルに入り、ホテルで用意された軽い朝ごはんを食べた小槻は、謎のウマ娘と会った公園に足を運んでいた。そして

「…………」

 昨日のリプレイを見ているかのように、謎のウマ娘がぼ~とベンチに座っていた。

「…………!」

 小槻の存在に気づいたウマ娘は、じ~と小槻を見た後に立ち上がりどこかへ向かって歩き出す。

「ついてきてほしい……と言っているのか……?」

 小槻は黙ってついていき、ある店で立ち止まるウマ娘の隣に立つ。そこは昔ながらひっそりとやっていそうな中華料理店だった。

(初めて来る店だが……)

 店に入るウマ娘を信じて、小槻も店に入る。

「いらっしゃいまし。注文は?」

 不愛想な頑固親父。その言葉がふさわしい白髪の店主が注文票を持ってテーブル席に座るウマ娘の前に現れる。

「オムレツライスを3つ頼む」

(えぇっ!? オムレツライス!?)

 聞きなれない言葉に固まる小槻に「あいよ」とウマ娘の注文を聞いた店主が小槻のテーブル席に来る。

「兄ちゃんは?」

「わ、ワシは……」

 ふとウマ娘の方を見る。

 

『大丈夫だ!』

 

 ウマ娘の目は力強く言っていた。

「ワシもオムレツライスを……1つ」

「わかりやした」

 そう言うと店主は厨房へと消えていった。

「……はぁ~…………」

 小槻は大きくため息をつく。

(良かったのか、ワシは? いくらワシと舌が合うからと言って名も知らんウマ娘に従って一日外出最後のメニューを決めるなんて……。そりゃあ今までだって嫌な感じで一日外出を終わったことはある。しかしそれは全て自分が決めてきたこと……自分で決めた上での後悔と他人に委ねた結果の後悔は……天と地の差!)

 そもそもついていくべきではなかったのでは? とテーブル席で頭を悩ます小槻は「……いや!」と頭を振ると店主が持ってきたおしぼりで顔を拭く。

(落ち着け、ワシよ! ワシとウマ娘(あいつ)はプロのシンクロスイミングのように舌が合っているんだ……! 信用してもいいじゃないか……! それに一日外出の鉄則は、取り乱さないこと! ……平常心、平常心だ……)

 そう自分に言い聞かせると小槻の顔に笑顔が戻る。

(中華でオムライス……普通なら考えられない組み合わせだ。……だったらどのようなものか見てみるのもまた一興というものだ……!)

 そうニコニコと笑う小槻の前に

「お待ちどうでした、オムレツライスです」

 オムレツライスが届く。

(うんうんオムライ……ええええええぇぇぇぇぇぇッッッ!!??)

 お盆に置かれた少量のケチャップが載ったオムライスとその脇に置かれたご飯と漬物を見て、小槻は心の中で絶叫し、崩れる。

(……オムライスじゃなくて……オムレツとライスでオムレツライス…………)

 小槻は茫然とし、後悔する。

(やはり、やはり。やはりやはりやはり! 見も知らずのウマ娘(むすめ)なんぞに任したワシがバカだった!)

 キッ! とウマ娘を睨みつける。しかしウマ娘はその怒りに満ちた視線を真正面から受け止める。

 

『私を信じてくれ!』

 

 そう目で訴えかけるウマ娘に小槻は心の中で「クソッ!」と悪態をつきながら箸を取る。

「え?」

 箸でオムライスを割る小槻の口から思わず声が漏れる。

(なんだ……!? このオムレツ? 中が半熟でフワッと……しかもよく見ると……)

 箸で持ち上げジッと見る。

(入っている……! チャーシューと輪切りのネギがたっぷりと……! 洋食屋には絶対に無い発想だ……! 味の方は……)

 意を決して口に運んだ小槻の中で、衝撃が走る。

(うまい……! しかもこのオムレツ……混ぜてある……! 最強調味料と言われる中華だし……味覇(ウェイバー)が……!)

 ふとウマ娘に目をやる。そこには『言っただろ?』とオムレツライスを頬張りながら満足そうに微笑むウマ娘がいた。

 数分後。

(いやぁ……一時はどうなるかと思ったが……美味かった……思いのほか……!)

「なかなかやるぁ、君……あれ?」

 隣のテーブル席に目をやるが、そこにウマ娘の姿はなかった。

「あ、あれ……!?」

 小槻は店内、そして店の外に視線を動かす。

「おい、──! どこで道草食っとるんや! さぁ、行くで!!」

 怒声に視線を向けると、そこにはガラスの向こうで腰まである長い芦毛の髪を鉢巻のように青と赤の長いリボンで結び、同じカラーリングでポンポンのついたカチューシャに真っ赤な耳覆いをした小柄のウマ娘に引っ張られるウマ娘の姿があった。

「ま、待ってくれ。タマ、あっ……」

 手を引っ張られるウマ娘と視線が合う。

「ま、待ってくれ……!」

 小槻はお代を机に置いてウマ娘を追うため店に出る。しかし

「……小槻。時間だ」

「……妙なことはするなよ」

 店の出入り口で立っていた二人の監視兼逃走防止用の皇恋の社員、黒服がその足を強制的に止めさせる。

「……は、はい……」

 曲がり角に消えたウマ娘を見ながら、小槻は渋々と店の前に置かれた車に乗り込んだ。

 

 

 

数時間後。強制労働施設の農場。

「…………う!」

「…………」

「…………ちょう!」

「…………」

「く~、班長ってば!!」

「あっ! ……な、なんだ?」

 小槻の側近を務める口ひげとオールバックの髪型の部下、沼田(ぬまた)の声に小槻は意識を覚醒させる。

「『なんだ?』じゃありませんよ。ちゃんと指示を出してくれないと……おかしいですよ、班長。いつもだったら一日外出から戻ってきてもいつも通り仕事をするのに、ぼぉ~としちゃって」

「……あ、あぁ……す、すまない……」

 バツが悪そうに小槻は少し顔を背ける。

「ところで今日はウマ娘の慰問ライブがありますね」

 沼田は周囲に聞こえないように小槻の耳元に近づく。

「で、債務者(カモ)から巻き上げたマニカ()で今日はどーん! とステーキ定食でも?」

「……あぁ」

(ワシと舌の合う彼女だったら、今日は肉ではなく魚という気分なんだろうな)

 うわの空で返す小槻の脳裏には数時間前まで食事をしたウマ娘が思い浮かんでいた。

「……彼女は……何を食べているかな?」

「……はぁ?」

 遠くに視線をやる上司の言葉に、沼田は困惑した顔をする。

 その後この日の作業を終わらせた小槻は『ウマ娘ちゃんのご厚意による慰問ライブ』に向けて用意していたグッズなどを仮設置き場に運んでいく。その時だった。

「……ッ!?」

 小槻の目に今回の慰問ライブに来るウマ娘を知らせるポスターが目に入る。

「沼田、石下(いしげ)、後は頼む!」

 目に入ったペンライトを握りしめると、小槻は部下達の「ちょ、班長!?」、「どうしたんです!?」という声に振り向くことなくライブステージのある休耕地に走り出す。

 すでに並んでいる長蛇の列に並び今か今かと身体を小刻みに震わせ、開場と同時に他の債務者と同様に突撃。熾烈なポジション争いに打ち勝ち、小槻は舞台で踊るウマ娘がよく見える前のポジションを確保する。

 ライブが始まりステージにウマ娘たちが現れて歌とダンスを披露する。その中で小槻は見つける。数時間前まで一緒の料理を食べた、特徴的なボタンの白いセーラー服に、赤・黄・青を配置した勝負服に身を包んだウマ娘を。

「あ」

 ステージで踊っていたウマ娘も観客席の小槻に気づく。

 視線が合った小槻はステージのウマ娘に呟いた。

 

「……き、君の名は」

 

その後。そのウマ娘のファンになったことをきっかけに、小槻はウマ娘にのめり込み、熱狂的なウマ娘ファンになったのは言うまでもない。

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