トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
中央トレセン学園 家庭科室。
「フラッシュと」
「オグリの」
「「「うまうまキッチン!」」」
左から学生服の上からエプロンをつけたオグリキャップ、コレクト・ショコラティエの衣装に身を包んだエイシンフラッシュ、学生服の上からエプロンをつけたゼンノロブロイがカメラ目線で声を合わせる。
「アシスタントのゼンノロブロイです。フラッシュさん、今日は何を作るのでしょうか?」
「はい、今日はホールケーキを作ろうと思います」
「……」
キッチンの下からオグリキャップが生クリームがたっぷり乗った真っ白なケーキに苺が乗せられたデコレーションケーキの写真を取り出す。
「それではさっそく……」
「「「えいえいおー!」」」ぐ~
三人の掛け声の中でオグリキャップのお腹が小さく鳴った。
「まずはスポンジ生地を作ります。ボウルに卵を入れてホイッパーで溶きほぐします」
説明をしながら手早く作業を行うエイシンフラッシュの後ろで、ゼンノロブロイがオーブンを予熱する。
「オグリさん。卵と牛乳を常温に戻しておきたいので冷蔵庫から出してもらってもいいですか?」
「わかった」
エイシンフラッシュの指示に従い、オグリキャップは冷蔵庫へと向かう。
「えっと、卵と牛乳……ハッ!」
鼻を鳴らしたオグリキャップは何かを見つけた。
そうこうしているうちにケーキ作りは進み、焼き上がったスポンジ生地に生クリームを丁寧に塗り、苺を乗せて粉糖をかけていく。
「完成しました! ……あ」
エイシンフラッシュはあることに気づく。ホールケーキがわずかに歪んでいたのだ。
「これはちょっといただけませんね。ここをちょっとカットして……」
「柔らかくてふんわりとして……それでいて適度な甘さ……とても美味しいですぅ~」
感心の出来にクールな笑みを崩してにこやかに笑うエイシンフラッシュに、ゼンノロブロイがゴクリと喉を鳴らす。
「よ、よく見たらここの部分も……うわっ、美味しいです!」
あまりの美味しさにゼンノロブロイが目を輝かせる。
「ッ!?」
二人の様子によだれを垂らしたオグリキャップがフォークですくって食べる。その美味しさにオグリキャップも目を輝かせ、うんうんと頷く。
ケーキの美味しさに心奪われた三人はもはや留まることは出来なかった。
「よく見るとこの部分も!」、「そうなるとここも!」、「ここも食べた方がいいんじゃないか?」
そう言い訳をしながらカメラがあることを忘れてケーキを食べていく。そして、数分前まであった苺の乗った真っ白なホールケーキは皿にクリームがちょこっと乗った残骸へと変わり果てていた。
「ッ!? わ、私としたことが……」
項垂れるエイシンフラッシュに「ご安心を!」とゼンノロブロイが笑顔で冷蔵庫に向かう。
「こんなこともあろうかと事前に作ったものが、こちらです!」
自信満々にフタを開けるゼンノロブロイ。そこには……先ほど食べてしまったホールケーキ同様、皿にクリームがちょこっと乗った残骸があった。
「えぇっ!? ……な、ないっ!?」
想定外の出来事にゼンノロブロイが目を大きく見開いたまま固まってしまう。
「す、すまない……食べていいのかと思って……」
「うぅ……どうすれば。私の計画が……」
落ち込むエイシンフラッシュと「ど、どどど……どうしましょう!?」と慌てふためくゼンノロブロイ。
「すまない! こうなったのも私の責任だ。名誉挽回のチャンスをくれ!」
そう言うとオグリキャップはチャーシュー用の豚バラ、ごはん、卵、長ネギ、にんにくと食材を取り出していく。
「…………!」
中華鍋にチャーシューを作る際に出てきたラードを入れて火を点ける。その間に卵をとき、長ネギとチャーシューを手早く刻んでいく。
「「…………」」
先ほど言った名誉挽回を実現しようと黙々と調理に没頭するオグリキャップを見守る二人。
ラードが消えるのではと思うほど中華鍋を熱したオグリキャップは溶き卵を投入し半熟状になった卵の中にご飯を投入。おたまで固まりになったごはんをパラパラになるようにほぐすように炒めていく。その後刻んだ長ネギとチャーシューを投入。それらが一体化するように炒めると中華鍋を振って円を描くように鍋の中身を宙に浮かせてはかき混ぜ、再び鍋を振るを繰り返す。
「大皿を!」
「は、はい!」
ゼンノロブロイから大皿を受け取ると、オグリキャップは中華鍋の蓋をするように大皿を乗せるとひっくり返す。
そこにはしっとりと焼き上げたショコラ生地に、なめらかなビターチョコガナッシュとヘーゼルナッツキャラメリゼが挟まったガトーショコラのホールケーキが存在感を示していた。
「「なんでぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!!??」」
エイシンフラッシュとゼンノロブロイの絶叫が家庭科室に木霊し、『フラッシュとオグリのうまうまキッチン』の放送は終了した。