トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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カレンチャン誕生日回。


カレンチャンの真の正体

 一台の自動車が夕日に染まる中央トレセン学園に向かって走っていた。

(しかし今日は大変な一日だったな……)

 カレンチャンのトレーナー(以下カレントレ)は隣に座るカレンチャンに万が一の事態も起こさないように注意深く周囲を確認しながら運転する。

「お兄ちゃん、今日もカレンのためにありがとね♪」

「いや、いいってことよ!」

 カレンチャンに疲れたことを悟られまいと、カレントレは力強く返事を返す。

 今日は休日ということもあり、トレーニングを課していない今日はカレントレは今まで行きたかった店に行く予定だった。しかしその途中でカレンチャンに捕まりうるうるとした瞳で「お兄ちゃんはカレンと一緒に休日過ごすのは……いや?」と言われてしまい、こうして買い物やインスタ映えするカフェ、そしてとある神社へカレンチャンと同行することになった。

「今日は本当にありがとね♪ お兄ちゃん、そして隆司(たかし)さん!」

「え?」

 カレントレは固まる。

「あ、あの……隆司さんって?」

 ブルッと震わせながらカレントレが尋ねる。そんなカレントレにカレンチャンは首を傾げながら答える。

「え、さっき立ち寄った神社から一緒にいるじゃない。ねぇ、隆司さん♪」

 後部座席を振り向いて話しかけるカレンチャン。しかしバックミラーでカレントレが何度も確認するも、そこには誰もいなかった。

「ね、ねぇ……カレン、いえ……カレンチャンさん。う、ううう後ろに誰かいらっしゃるのですでしょうか!?」

 歯をガタガタと鳴らし、自分でも言っている意味が分からなくなるほどカレントレは混乱していた。体中から汗が吹き出し、ハンドルを握る手はびっちゃりと濡れていて気持ち悪さを感じるが、恐怖で手が離れずぬぐうことが出来ない。

 そんなカレントレを見て、カレンチャンが笑った。

「ふふっ。冗談だよ、お兄ちゃん。後ろに誰もいないよ」

「え? ……あ、あはっ……お、驚かせないでくれよ……」

 心底安堵したカレントレは大きく息を吐く。その後談笑を楽しむとトレセン学園に到着。カレントレはカレンチャンを降ろす。

「それじゃあ気をつけて帰るんだぞ!」

 車の窓を開けて、カレントレはカレンチャンに話しかける。

「……」

「え……カレン?」

 車から降りて背を向けたまま無言で立つカレンチャンにカレントレが不安そうに尋ねる。

「……お兄ちゃん、実はね。カレン……隠していたことがあるんだ」

「……か、隠していたこと?」

「うん。カレンはね、実は宇宙人だったの。何万年も生きている高齢の。だから血を吸わないと……」

 カレンチャンは振り返る。そこには可愛らしいいつもの顔ではなく、皴やシミにまみれた醜い老婆の顔! 

 

「オ兄チャン、血ヲ……カレンニ血ヲ吸ワセテ!」

 

 車に近づこうとするカレンチャンにカレントレは

 

「ふぎゃあぶばえぼりがぎゅぎょほほまりべがほじきがほば!!!!」

 

 と意味不明な奇声をあげるとアクセルを全力で踏み込みその場を後にした。

「……あぁ~、ここまでびっくりするなんて……逆にカレンがびっくりだよ」

 あっという間に見えなくなったカレントレの車を見送りながら、カレンチャンは老婆の顔のお面を外した。

 

 翌日。中央トレセン学園。

「お兄ちゃ~ん!」

 廊下を歩くカレントレの後ろ姿をカレンチャンは声をかける。

「あ、カレンか。リフレッシュできて何よりだ!」

 カレンチャンの反応に笑みを浮かべるカレントレ。その反応にカレンチャンは首を傾げる。

「あれ? お兄ちゃんは昨日のこと覚えていないの? 私が実は血を吸って若さを得る宇宙人でお兄ちゃんに襲い掛かろうとしたこと」

「……? ……! あ、そうだったそうだった。あれは怖かったなぁ」

 目を()らし、棒読みで答えるカレントレにカレンチャンは疑惑に満ちた目でじーと見る。その時だった。

「よぉ、カレントレ!」

 アドマイヤベガのトレーナー(以下アヤベトレ)が二人に近寄り話しかける。

 カレントレが「バカ野郎!」と唇の前に人差し指を置いて黙るようにジェスチャーする。しかし高揚していているためか、アヤベトレは楽しそうに話し出す。

「いやぁ、昨日は地方に行くため朝早く出かけたがそれだけの価値はあったな。あのキャバ──」

 次の瞬間、カレントレがアヤベトレの右手を掴むとアヤベトレの身体が大きく反転。宙に舞ったかと思うと後頭部から地面に激突。そのまま気を失った。

「わ、悪い……俺、アヤベトレを保健室に連れて行かないといけないから!」

 そう言うとカレントレはアヤベトレを(かつ)ぐと逃げるようにその場を立ち去った。

「……」

 一人残されたカレンチャンは大量の汗を流し、青ざめながら呟いた。

 

 

 

「昨日の朝から? ……だったら昨日の朝から一緒にいたお兄ちゃんは誰なの」

 なお一週間、なぜかアドマイヤベガがアヤベトレをゴミを見るような目でアヤベトレを無視し続けた。

 

 

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