トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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ウオッカ誕生日回。


ウオッカは心が読めるようになったようです

 ウオッカのトレーナー(以下ウオトレ)の部屋。

「むほほ……!」

 ウオトレは自室で18歳未満の人は読んではいけないマンガを見て鼻の下を伸ばしていた。

「いやぁ~、たまりませんな。特にこの話のヒロインの小橋(おばし)彩夏(あやか)という水泳部に所属する女子高生。どことなくウオッカに似て水着姿の教え子と……って、何かこう……背徳感があって──」

「おい、ウオトレ」

 

「うぎゃぶるぼべがばすどば!?」

 

 奇声を上げながらウオトレは読んでいた本をバンッ! と閉じて背後を見る。そこにはダイワスカーレットのトレーナー(以下ダスカトレ)が白い目でウオトレを見ていた。

「だ、ダスカトレ! ノックもなしに部屋に入って来るなよ!」

「いや。俺は何度もノックもしたし呼びかけもしたが? しかしお前の下品な声が漏れていたんでね。そっと入ってみたら……というわけだ」

「そ、そうだったのか……それはすまなかった!」

 本を後ろに隠そうとするウオトレにダスカトレは「もうバレているんだからそんなことしなくていい」と手を横に振る。

「で、今日は何をしに来たんだ?」

「あぁ。今日は仕事の愚痴とか担当バの事とか次のレースの事とか話そうと居酒屋で話さないか? と思ったんだが。(きょう)()がれたからナシにしておいてくれ」

 そう言ってダスカトレは出口に向かい「あ、そうだ」とウオトレの方へ振り返る。

「ウオトレ。いくらウオッカ(担当バ)が後ろに隠した本に似ているからっていって、一線を超えることはするなよ?」

「出ていけ!」

 恥ずかしさと怒りで投げられた本は、当たるよりも先に外に出たドアにガンッ! と当たった。

 

 

 

 中央トレセン学園 エントランスホール。

「よいしょ、よいしょ!」

 一人のウマ娘が水の入ったバケツを持って階段の手すりを掃除していた。

「さて。綺麗になった、と。それじゃあ今日はこのへんで……あ!」

 バケツを持っていた手が滑り、バケツはそのまま下へと落ちていった。

 

 

 

 中央トレセン学園 エントランスホール 階段下。

「あ、いけねぇ! 靴紐が解けてらぁ!」

 階段を登ろうとしたウオッカは、靴紐が解けていることに気づき直そうと屈む。その時だった。

 

「ッ!?」

 

 何かが後頭部に当たる感触とバシャッ! とかけられる大量の水に、何が起こったのか理解できないウオッカは地面にキスする直前まで身体を傾かせる。カランカランとバケツが地面に転がる音がウオッカの耳に残る。

「痛ぇ~、何が起きたんだ?」

 周囲を見渡すと一人のウマ娘が慌てた様子で階段を下りてきた。

「ご、ごめんなさい! お怪我はないですか!?」

(う、うわ……ウオッカさんだ! 私、なんてことしちゃったんだろう! 私、この人苦手なんだよな~。見た目が怖いし……)

「ん?」

 謝るウマ娘とと同時に聞こえてきた声にウオッカは首を傾げる。

 ウオッカは知らなかった。ウオッカの後頭部に当たったバケツの箇所と衝撃が偶然にも一時的に目の前の人物の心を読むことが出来るツボ、読心(どくしん)を刺激したことに。

「…………」

 その事に気づかず止まっているウオッカに、

「あ、あの……」

(や、やばっ。やっぱり怒ってるよね……私、なんてことしたんだろう! そりゃあバケツ当てられて水かけられたら誰だって怒るよね? うわぁ~どうしよう!!)

 不安によりパニックを引き起こすウマ娘。そんなウマ娘にウオッカは慌てて声をかけた。

「あ、あぁ。大丈夫だって。バケツと水かけられたくらい何ともねぇから。そんな怖がらなくて大丈夫だって!」

 目の前のウマ娘の不安を払拭させようとウオッカは笑顔でドンっ! と自身の胸を叩く。

「あ、ありがとうございます! ……あ、私。何か拭く物持ってきます!」

(良かった、ウオッカさんが見た目と違って優しい人で! あ、それはそうと早く拭く物持って来ないと!)

 そう言ってウマ娘はウオッカに頭を下げると転がったバケツを拾ってその場を去った。

「……あ、これ。彼女が来るまで俺、動けねぇってことじゃね? やばっ、どうしよう……」

 そんなことを考えていた時だった。

「ちょっと、ウオッカ! アンタなんて格好しているのよ!」

(このままじゃウオッカが風邪をひいてしまうわ! 早く拭かないと……あ、そうだ!)

 目の前(・・・)に現れたダイワスカーレットが鞄からタオルを取り出しウオッカに渡す。

「……あ、サンキュー」

 ウオッカは受け取ったタオルで水気を取っていく。

「ったく。こんな所でそんなずぶ濡れになって……何を考えているのよ、アンタは!」

(良かった、大丈夫そうね。でも着替えないと風邪をひいてしまうかも……)

「……心配してくれてありがとな、スカーレット」

 顔を真っ赤にして唾を飛ばすダイワスカーレットにウオッカはお礼を言う。その瞬間、ダイワスカーレットの顔が別の意味で赤くなる。

「は、はぁっ!? 何を言っているのよ! 誰がアンタの心配なんか!?」

(ちょ、ちょっと……お礼なんて言わないでよ! アンタにそんなこと言われたらこっちが恥ずかしくなるじゃない!!)

「本当にありがとな」

「ッ!? ……ば、バカ!!」

(ッ!? ……ば、バカ!!)

 ウオッカが改めてお礼を言うと、ダイワスカーレットはウオッカに背を向けて顔をゆでタコのように赤くさせながらその場を走り去った。

「さて。タオルで拭いたわけだけど、どうするかな……このままあの子を待つべきか──」

「お、どうしたんだウオッカ。そんな所で?」

 振り返るとそこにはウオトレが立っていた。

「えっと、さっき水かけられて。スカーレットにタオルを借りてそれで拭いて……で俺に水をかけちゃったウマ娘が拭ける物を探しにどっかに行ってそれを待っているところ」

「ふ~ん、そうか」

(しかし濡れたウオッカを見ていると……さっき見ていた本を思い出すな)

「え、えぇっ!?」

 目の前(・・・)に立ったウオトレの心の声に、ウオッカは慌てふためく。ウマ耳のない、水着姿のウオッカ(じぶん)が脳内に映し出されてきたからだ。

 どことなく自身のトレーナーに似た男性が甘い言葉を(ささや)きながら自分に似た女性の唇を奪った後の行動が映った瞬間

 

「ひぎゃああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!??」

 

 ショッキングな光景に耐え切れず、顔を真っ赤に染めたウオッカは大量の鼻血を吹き出しながら大の字に倒れて気を失った。

 

 

なお目が覚めた時には心の声は聞こえなくなっていた。

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