トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
とある
ブォーンッ……ブオンブオンブオォーンッ!!
二台のバイクが海に向けてエンジンを吹かせていた。
事の発端はまだ誰の担当にもなっていないトレーナーが不良に絡まれていたウマ娘、ナカヤマフェスタをかばい彼女に代わって不良とチキンレースをすることなったことだ。
勝てばナカヤマフェスタに一切接触しない。しかし負ければトレーナーがどうなっても文句は言わない。
その条件を受け入れたトレーナーはヘルメットを
「アンタ」
「ん?」
ナカヤマフェスタに声をかけられ、トレーナーはシールドを上に上げる。
「下りるなら今のうちだぜ。何の面識もないウマ娘のためにヘタするば命を落とすようなバカなことをすることはないぜ」
「ありがとう」
そう答えるトレーナーだがその目には「ここで下りるつもりはない」と物語っていた。
「……バカなやつだよ、アンタは。どうなっても知らねぇぞ」
感心したような呆れたような顔で両手を上げるとナカヤマフェスタはトレーナーから離れた。
「じゃあルールをもう一度説明するぞ」
バイクにまたがるトレーナーに向けて、勝負をする不良のリーダーが説明する。
「勝負は一発勝負。お互いが一気にスピードを上げてどれくらい海から離れていないか……シンプルな話だ」
お前は早々にブレーキをかけるんだろうな、という侮蔑の笑みを浮かべるリーダーは受け流す。
「ふん、ノロノロ走るなんてダサい
面白くないと鼻を鳴らすと審判役の不良が「ゴー!」という言葉と共に持っていた旗を振り下ろした。
ブオォォォーーーーーーンッッッ!!!!
遠く見える島にまで聞こえるのではという爆音と共に海に向かって走り出す二台のバイク。
(ふっ、単なるお人よしのビビりじゃないみたいだな。だけど!)
(ま、まずい!)
離れた所から見ていたナカヤマフェスタの顔がくもる。リーダーが海に落ちるギリギリという絶妙な所でブレーキをかけたのに対し、トレーナーはブレーキをかけていなかったからだ。むしろトレーナーのバイクは更にスピードを上げる。誰の目から見ても海に落ちるのは確実だった。
「くっ!」
最悪の場面を想像し、ナカヤマフェスタが走り出す。
キイイイイイイィィィィィィッッッッッッ!!!!
煙とタイヤが焼ける臭いを放ちながら猛烈な勢いで減速するリーダーのバイクは海に落ちるギリギリの所で止まった。そして
ブオォォォーーーーーーンッッッ!!!!
一切ブレーキを踏むことなくトレーナーのバイクは海に向かって飛び立った。
「ば、バカ野郎!!」
ナカヤマフェスタは服が濡れるのも恐れず海に飛び込む。その時だった。
「え?」
立ち泳ぎをしたナカヤマフェスタは固まった。固定なしでは耐え切れずに吹き飛んでしまうほどのGに飛ばされることなく海へと飛び出したトレーナーのバイクは、タイヤが沈む前に前へと進むという今まで見たこともない走法で海の上を走っていたからだ。
トレーナーのバイクは近くの浜辺に上陸するとそのまま埠頭へ戻り、審判役の不良の隣に止まる。
「この場合、勝負はどうなる?」
「え?」
「『この場合、勝負はどうなる?』……そう聞いているんだ!!」
「ひぃっ!?」
不良は遠くにいるリーダーを見る。
「…………」
リーダーは首を横に振った。
勝利を確信したトレーナーはナカヤマフェスタを探して海の近くまでバイクを走らせ、海に飛び込んでいたナカヤマフェスタを見つける。
「……あれ、そんなところで何をしているんだ?」
トレーナーの力を借りて埠頭に戻ってきたナカヤマフェスタは、なぜ海に? と理解できず間抜けな顔をするトレーナーを見て、
「くくっ、くくく……ふはははははっっっ!!」
空に向かって爆笑した。
「え、え、えぇっ!?」
なぜ爆笑したのかわからず困惑するトレーナーにナカヤマフェスタは「ちょっと待て!」と目にたまった涙をふき取る。
「アンタ、究極のバカだよ! 私以上の、な!」
自分の想像を超えるトレーナーに『一緒にいれば自分の心を熱くさせる存在!』と確信したナカヤマフェスタはトレーナーに『自身の担当にならないか?』と提案。例え別の者と専属を結んでいたとしても無理やり自分への専属に変えるほどの勢いにトレーナーは折れた。
その後ナカヤマフェスタとナカヤマフェスタの専属トレーナーになったトレーナーは共に新たな伝説を次々と作っていくことになるのだが、それは別の話。