トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜   作:筆先文十郎

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エアグルーヴ誕生日回。



一日警察署長エアグルーヴ

 生徒会室。

 コンコン。

「エアグルーヴ。俺だ」

「トレーナーか、入っていいぞ」

 扉をノックする音に、今日の仕事が終わって戸締りをしていたエアグルーヴが入室を許可する。

「ちょっと事務に重要書類を提出していてな。その帰りにエアグルーヴがここにいるって聞いて来たんだが……迷惑だったか?」

「いや、仕事も終わって戸締りの確認も終わってちょうど部屋から出ようとしていた所だ。問題ない」

「そうか、じゃあ手短に伝えるぞ」

 安堵したエアグルーヴのトレーナー(以下エアトレ)は持っていた一枚の紙をエアグルーヴに手渡す。

「……」

 一言も話さず内容を読んだエアグルーヴが口を開く。

「なるほど。この私がとある警察署の一日署長を、ね」

「どうするエアグルーヴ? 断るというなら俺から断りの連絡をするけど?」

「……」

 エアグルーヴの脳裏に一人の人物が浮かぶ。自身が尊敬する同志でありライバルにしてレースでの実力、政治力、人格……それらが『皇帝』という二つ名にふさわしい、誰もが認めるウマ娘シンボリルドルフの姿を。

(会長はレースやライブだけでなく、自身がものまね芸バ人になることで多くの人に感動を与えようとした……)

 それに対して自分はもっと多くの人に応援してくれた人への恩返しや感動を与えているのか、という疑問に苦しんだ過去を思い出す。

(私も一歩外に出てみる必要があるのかもしれないな……)

「わかったトレーナー。この話を受けると先方に伝えておいてくれ」

「……わかった。じゃあエアグルーヴの都合が合う日を見つけて、その日に一日署長をやれるように伝えておくよ」

 

 数週間後。

「よしっ!」

 とある警察署の女子更衣室で、エアグルーヴは警察官の制服に袖を通していた。

 ホコリ一つシワ一つないビシッ! とした黒の制服に凛々しい笑みを浮かべたエアグルーヴは帽子を被って鏡で服装に変な箇所はないか入念にチェックすると外で待っていた女性警官とエアトレと合流。署長室へと向かう。

「本日はありがとうございます、エアグルーヴさん。署長の伊藤(いとう)です」

 にこやかに両手で握手を求められ、エアグルーヴは真剣な面持ちで「こちらこそありがとうございます」と両手で握手する。

「それではエアグルーヴさんにはこれから任命式に出席していただいた後──」

「……PR活動をするのでは?」

 途中で言いどもる署長にエアグルーヴは首を傾げる。

「……い、いえ。それはやってもらうのですが。その前に」

 署長は窓を開ける。そこには

 

「おい、まだかよ!?」、「こっちは待ちくたびれてるのよ!」、「さっさと逮捕しろ!!」

 

 と『一日署長エアグルーヴ万歳!』、『早く逮捕して!』などのプラカードを持つ男女が騒ぎを止めようとする警察陣ともみ合いになっていた。

「……えっと。何ですか、あれは?」

 自分に逮捕されたい集団を見たエアグルーヴは署長の顔を見て尋ねる。そんなエアグルーヴに署長は「はぁ~!」と帽子を被りなおしてから口を開いた。

「どうやらあいつらはエアグルーヴさんのファンらしくて……エアグルーヴさんに捕まえられるのなら……と自ら自首を」

 自分でも何を言っているのかわからないと首をすくめ両手を上げる署長。

「…………」

 そんな署長にエアグルーヴは無言で同意見だと頷くことしか出来なかった。

 

 

 

 こうしてエアグルーヴは一日で十数人の犯人を検挙するという大手柄を立て、ウマ娘史上初となる現役ウマ娘複数人逮捕記録に名を刻むことになった。

 なお本来先頭には『ウマ娘LoveLove会』の会員でエアグルーヴを最推しとする変幻自在の会員、形無(かたなし)(るい)がいたのだが、他の会員達に「この恥さらしが!」と強襲を受けそのまま回収されたのだが。この時のエアグルーヴには知る由もなかった。

 

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