トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
大食いウマ娘。
こう聞けば多くの者がオグリキャップを筆頭にスペシャルウィーク、ライスシャワー、ヒシアケボノ……とウマ娘の名前をあげることが出来るだろう。しかしそんな彼女たちにも負けない大食いウマ娘も存在する。
そう、短期アルバイトでとある定食屋で働くウマ娘のように。
とある定食屋。
「ただいまなの~」
店の制服を着たアイネスフウジンが疲れた様子で出前から戻ってきた。
「悪いねアイネスちゃん、いくら春って言っても今日は真夏日に近いから疲れただろう?」
「うん、そうなの~」
疲労が濃く話すのも辛い状態でも笑顔で返事をするアイネスフウジンに主人は人気商品のアイスクリームを差し出す。
「わぁ! ありがとうなの!」
主人からアイスクリームとスプーンを受け取るとあっという間にペロリと平らげる。
「アイネスちゃん、とりあえずピークは過ぎたから奥の冷蔵庫に入っているのを好きに食べるといいよ、あと横に置いてある菓子パンも」
「ホントなの!?」
その言葉にアイネスフウジンは目を輝かせて尻尾を激しく動かす。
「あぁ」
「ありがとうなの!」
そう言うとアイネスフウジンはスキップするかのような足取りで奥の休憩室へと向かった。
「ふふ、アイネスちゃんが来て店も楽になったな。働き者だし明るいし……本当にアイネスちゃんが来てくれて良かったよ」
主人はテーブル席の食器を集め、テーブルを拭き食器を洗って元の場所へと片づける。
ぐ~
「おっと。今日は『がっつり食うぞ!』といっぱい作ったものの、朝バタついて食い損じた麻婆豆腐やらナポリタン、納豆ご飯、五目そば、トムヤムクン
そんなことを考えていた主人が店の前にある札を営業中から準備中に変えて奥へと下がった。そして
「あ、店長。ごちそうさま! 美味しかったの!」
ちゃぶ台を見る主人の先には空になった朝作った料理の皿と、ごみ箱に入れられた大量の菓子パンの袋。出産間近の妊婦と見間違えるほど腹が膨らんだアイネスフウジンが行儀よく手を合わせる姿があった。
「え、アイネスちゃん……。まさか、冷蔵庫の……全部食べちゃったの?」
(い、いや……まさかな)
あり得ないと心のどこかで否定する主人の考えを、アイネスフウジンの謝罪が打ち砕く。
「ご、ごめんなさい! 店長の料理、美味しかったから止まらなくなって……冷蔵庫の中のもの全部食べてしまいました!」
「!?」
その言葉に店長は冷蔵庫をバッ! と開ける。そこには上から下まで入れられた料理の数々。冷凍室に入っていた数箱分のアイスキャンディー……朝にはあったものがきれいさっぱり無くなっていた。
「あ、あの……ごめんなさい!」
目に涙を浮かべて頭を下げるアイネスフウジンに、店長は笑いながら手を横に振る。
「い、いや……冷蔵庫のものを好きに食べていいと言ったのは俺だから気にする必要はないよ! むしろアイネスちゃんはいっぱい働いてくれているんだからむしろこれくらい食ってくれる方が安心するよ」
「……店長、ありがとうなの!」
主人の言葉に感激したアイネスフウジンは喜びのあまり主人に抱き着いた。
アイネスフウジンに料理を評価された上に抱き着かれて嬉しい反面、心配をかけまいと笑う主人の心は滝のような涙を流していた。
(やべ、たぶん今日のアルバイト分がこれで消えてしまったよ……マジで赤字だよ!)
実馬のアイネスフウジンは大食漢だったらしく、開設されて間もなかった牧草がアイネスフウジンのパドックだけはげてしまったとか。