トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
金曜日 サクラバクシンオーのトレーナー(以下バクトレ)の部屋。
「トレーナーさん! 私、
興奮したサクラバクシンオーはノックもせずに扉を開けると、バクトレにキスをするかの勢いで自身の希望を述べる。
「い、いや……近い! 近いから!」
そう言ってバクトレに肩を掴まされ強制的に離れさせる。
「えっと……バクシンオー。なんでいきなり鮒ずしを?」
その質問にサクラバクシンオーは待ってました! と言わんばかりにドヤ顔をする。
「昨日滋賀県出身のウマ娘さんとお話しする機会がありました。その方が言うには『地元に鮒ずしっていう名産品があって美味しいんだけど……人を選ぶのよねぇ』と。つまり美味しいけど食べるのに壁を乗り越えなければいけない食べ物ということ。他の生徒に模範とならなくてはならない学級委員長が率先して食べなくてはいけない食べ物であると!」
ビシッ! と決めポーズをするサクラバクシンオーはバクトレがため息をついたことに気がつかなかった。
ふとバクトレは背を向けると再びサクラバクシンオーに振り返る。
「じゃあバクシンオー。明日滋賀に行って鮒ずしを食べるとしよう。朝早く出発するから準備をしておいてくれ」
「わかりました! ではトレーナーさん! 明日の朝にまた会いましょう!!」
そう言ってサクラバクシンオーは「バクシンッ、バクシ~~~ン!!」と笑顔で走り去った。
期待を胸に楽しそうに走り去る担当バの後姿を見ながら、バクトレは涙を流しながら呟いた。
「……後でチヨトレ(サクラチヨノオーのトレーナー)かロートレ(サクラローレルのトレーナー)に金を借りよう」
翌日。
新幹線で滋賀県にやってきたサクラバクシンオーとバクトレは電車やバスを乗り継ぎ、
国宝の彦根城を観光し、彦根のシンボルであるひこにゃんと記念撮影。彦根の歴史と文化を後世に伝える彦根城博物館と庭園を巡り歴史を感じながら、城下町に向かい鮒ずしを扱っている店の
「お待たせしました。ご注文の鮒ずしです」
「おお! これが鮒ず……ウゥッ!」
感激したサクラバクシンオーはすぐに鼻をつまんで
机に出されたもの。それはシャリの上に魚が乗っている一般的な寿司とは少しかけ離れたものだった。
魚の切り身の下に、かろうじて形を保っているドロドロと溶けた米。そして発酵食品特有の
「な、なるほど……確かに人を選ぶとおっしゃっていた理由がわかりました。……しかし!」
サクラバクシンオーは箸に手を伸ばす。
「私は学級委員長! みんなのお手本にならないといけないわけです! ですからこの程度で箸を止めるわけにはいかないのです! ……いざ!!」
少しだけ
「う……う……う……」
「ば、バクシンオー……」
まずかったら吐き出してもいいんだぞ? とトレーナーが言おうとした時だった。
「美味いです!
「そ、そうなのか……じゃあ、俺も」
バクトレも恐る恐る鮒ずしに箸を伸ばす。
「……ん、結構イケるな! 臭いで躊躇してしまうが食べてみると少し酸っぱくて塩味があって……これは日本酒が飲みたくなるなぁ!」
そうして二人は鮒ずしを
「なぁ、バクシンオー」
窓側の席に座るサクラバクシンオーにバクトレは話しかける。
「鮒ずしを食べて思ったよ。俺は最近受け身になっていたな、と」
「……」
真剣な顔で言うバクトレの横顔をサクラバクシンオーは黙って見る。
「お前が長距離に挑戦しようとすること。これは
「……」
「だからこの教訓を無駄にしないために明日ホンオフェを食べようと思うのだが……どうする?」
バクトレの問いにサクラバクシンオーは力強く答えた。
「はい! そのホンオフェという料理、ぜひ食べに行きましょう!!」
桜の花びらの瞳を輝かせ、サクラバクシンオーは力強い握り拳を作った。
この時サクラバクシンオーは知らなかった。韓国発祥のエイを発酵させて作るホンオフェ。世界一臭いと言われるシュールストレミングに次ぐ、「クソ汚い公衆トイレの小便器の臭い」とも例えられるほど強烈なアンモニア臭を放つ料理だということを。
今回の元ネタは1日外出録ハンチョウ 第71話「未食」。この話ではドジョウなのですが、ドジョウを食べられる店が見つけられなかったので鮒ずしに。
ちなみに鮒ずしを食べたのは彦根城の帰りだったので彦根に。
鮒ずしは駄目な人は本当に駄目なようなので発酵食品が苦手な人は食べない方がいいかもしれません。ちなみに納豆よりも臭いとのことです。