トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
アグネスタキオンの研究室。
「……ふむ」
紅茶を飲みながら、アグネスタキオンは手にしたとある実験内容が書かれた資料を読んでいた。
「愛は生物にエンドルフィンなどの幸せの脳内物質を生み出し、その結果身体機能の向上などにつながる……と。ふむ」
カップに残った紅茶を飲み干すと必要な物を買いに研究室を後にした。
数時間後。
「よし、出来た!」
アグネスタキオンの手のひらには怪しい色合いの赤い錠剤が一粒あった。
「これを飲めばどんなに好きな人の前ではぶっきらぼうな態度を取る者でも好意的な態度を取らざるえないほど愛してしまう惚れ薬。あぁ、こんなものをすぐに作れてしまう私はどんなに素晴らしいのだろう!」
そう言って自画自賛するアグネスタキオンはふと現実に振り返る。
「待てよ、惚れ薬を作ってみたのはいいものの……これは本当に効果があるものなのか?」
本来ならばマウスやモルモット役であるアグネスタキオンのトレーナー(以下タキトレ)に試す。しかし現在その効果を試す存在はアグネスタキオンの近くにはいなかった。
「……まぁ、この惚れ薬は適量を守れば人体には
一刻も早く発明品の効力を知りたいアグネスタキオンは惚れ薬を口に含んだ。
数分後。
「悪い、タキオン! 会議が長引いちゃって……え!?」
タキトレが研究室の扉をノックもせずに慌てて入るや否や、アグネスタキオンはタキトレの胸に飛び込んだ。
「バカ、バカバカバカ! なんで私をこんなに待たせるんだい! 寂しかったじゃないか!!」
ひとしきりタキトレの胸を叩くと、アグネスタキオンは目に涙を浮かべてタキトレを見る。
「…………」
初めて見るアグネスタキオンの顔と行動に、タキトレはその場で固まる。
「わ、悪かったよ……今度からもっと早く会議から抜け出せるようにするから。じゃあ予定通り人体実験……じゃなくて研究に付き合った後にトレーニングを──」
そう言ってアグネスタキオンを離して行動しようとしたタキトレを
ギュッ!
タキトレの胸辺りの服を掴んだアグネスタキオンが止めた。
「いやだ、ずっとこうしてほしい」
「え!?」
普段とは違うアグネスタキオンに、タキトレは驚きを隠せなかった。彼女にとって実験とトレーニングは、食欲・性欲・睡眠欲と人間の三大欲求と並んで重要なものだったからだ。
それよりも優先して自分とこうして密着することを選ぶアグネスタキオンに、タキトレの頭は思考停止してしまう。
(……こ、これは。どうすればいいんだ……)
いつもと違うアグネスタキオンとは違う可愛らしいにタキトレは戸惑うことしか出来なかった。
翌日。
アグネスタキオンは体調が優れないと病欠申請し、開発した惚れ薬を処分したが、なぜ彼女がそうなったかは神のみぞ知るところである。