トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
フジキセキのトレーナー(以下フジトレ)の部屋。
『フジトレ! てめぇ、何してくれてんだよ!!』
フジトレの胸倉をつかむヒシアマゾンのトレーナーを筆頭に、トレーナー達がフジトレに半殺しにする勢いで詰めかけていた。
「い、いや……それに関しては……俺も……被害者なわけで……」
一人用の狭い部屋に怒りに満ちた何十人というトレーナーが密集するという状況に、フジトレは酸欠になる頭でなぜこんなことになったのか思い返した。
昨日 フジトレの部屋。
「トレーナーさん。明日老人ホームや児童施設で披露しようと思っているマジックがあるんだけど、見てもらえないかな?」
「あぁ、それはいいけど。どんなマジックをするんだ?」
訪ねた学生服のフジキセキを部屋に入れたフジトレは首を傾げる。
「じゃあとりあえずカードマジックを……」
「あれ? トランプ忘れた? じゃあ俺のを──」
ポケットを何度もまさぐるフジキセキにフジトレが立ち上がろうとする。
「あぁ、大丈夫だよトレーナーさん」
トランプを持ってこようとするフジトレをフジキセキが手で制する。
「ここにトランプがあるから」
そう言うとフジキセキは口を大きく開けると
バサバサバサッ!
とトランプを取り出した。
「……!?」
口から大量のトランプが出てくるという光景に、フジトレは驚きを通り越してドン引きする。
そんなフジトレを気にする素振りも見せずにフジキセキは続ける。
「それじゃあこの大量のトランプをシルクハットに──」
「いや、シルクハットないみたいだけど?」
「いや。今すぐ出すから……ハァ、ハァ、ハァッ……ハァァァクションッッッ!!」
フジキセキが顔を横にすると口からシルクハットが勢いよく飛び出した。
「…………!!??」
口からシルクハットという生まれて初めて見る手品に、フジトレは口からトランプを出す以上にドン引きする。
「フジキセキ……もう口から何か出たりしないよな?」
「あはは! もう出ないよ」
笑顔で言うフジキセキにフジトレはいぶかしむ。
「いや。そう言って口から剣とか花とか取り出すんじゃないだろうな?」
「いやいや、もうないって」
そう言ってフジキセキは大きく開いた口内をフジトレに見せつける。
「ほぉ、それは良かった」
安堵するフジトレに
「でもシルクハットの中にはあるんだけどね」
と被っていたシルクハットを外すと、質量保存の法則を無視するほどの大量のハトが部屋中に飛び出した。
「いや! ちょっと、フジキセキ!?」
部屋中を飛び回るハトに混乱するフジトレにフジキセキは「ごめんごめん」と謝るとシルクハットに戻るようにハトに指示をする。
すると飛び回っていたハトはシルクハットに入っていき、フジキセキが一度被ってから外すと、大量に入ったはずのハトは一羽もおらず逆に大量の硬貨があった。
「じゃあ今度はこの硬貨を消してみせるね」
そう言うとフジキセキは真っ白なハンカチをシルクハットの上に乗せると、どこからか取り出したのかステッキでポンポンと叩く。
「それじゃあ、ハイ!」
フジキセキがハンカチを勢いよく外すとそこには、大量の硬貨が依然としてあった。
「あ……」
ショックで崩れ落ちるフジキセキとともに、大量の硬貨が部屋中に散らばり硬貨が転がる音が部屋中に響き渡る。
「だ、大丈夫だよ……どんな有名マジシャンだって失敗はあるよ」
慰めるフジトレに
「違うんだ。私はとんでもないものを消してしまったんだ……」
「とんでもないもの?」
フジトレは次の言葉を待つ。
「トレーナーさん達の……預金」
「ッ!?」
フジトレは慌てて鍵付きの机の引き出しを開けると通帳を見る。そこにはつい先ほどまで10万円以上あった預金額が0と記されていた。
「わ、私は……とんでもないことを……」
「……だ、大丈夫だよ。だ、誰にだって失敗はあるものだから……」
ショックから立ち直っていないフジキセキにフジトレは苦笑いを浮かべつつも必死に慰めた。
しかし預金額が0になっていたという事実に気を取られ、フジトレは気がついていなかった。
『トレーナーさん
とフジキセキが言っていたことを。