トレセン学園の謎〜ウマ娘達が消費する食料は何処から来ているのか?〜 作:筆先文十郎
5月3日 ナリタブライアンのトレーナー(以下ナリブトレ)の部屋。
「パクパク、ムシャムシャ!」
換気扇がフル活動した部屋でナリタブライアンはひたすらプレートで焼かれた肉を頬張っていた。
この日。ナリタブライアンは自身の誕生日ということでナリブトレに「今日はブライアンのために特別な肉を用意したんだ。ぜひ来てくれ!」と誘われ、言われるがままひたすら大好きな肉を食べていた。
「どうだ、美味いかブライアン?」
台所で肉を切っていたナリブトレが大皿を持って現れる。
「ムシャムシャ、ムシャムシャ……あぁ、美味い! 美味くてこうしてしゃべる時間も惜しいくらいだ!」
そう言ってナリタブライアンはちょうどよく焼けた肉を塩やタレなど色々な味を堪能しながら食べ進めていく。
「そうかそうか!」
嬉しそうに微笑むとナリブトレはお刺身のように綺麗に並べられた薄切り肉と
「ブライアン、今度はこいつを刺身にして食べてくれ!」
「さ、刺身だと!?」
ナリタブライアンはピクッ! と眉を上げる。
生の肉や内臓は食中毒の原因となる菌やウイルスが付いている。いかにウマ娘が丈夫だとしてもそんな危険なものを食べさせようとするナリブトレに反応してしまうのは無理のないことだった。
「あ、すまない! 言い忘れていた……」
ナリブトレは頭を下げると慌てて説明する。
「この肉は牛や豚と違って体温が高く、食中毒では代表的なカンピロバクターやO157などの腸管出血性大腸菌といった菌やウイルスが繁殖しにくいんだ。だから牛や豚と比べて安全性が高いというわけだ!」
「……本当に大丈夫なんだろうな?」
説明を受けてもまだ信じることが出来ないナリタブライアンは疑いの眼差しを向ける。
「あぁ、安心してくれ!」
自信満々に胸をポンと叩くナリブトレに、ナリタブライアンは醬油皿に醤油を入れると一枚だけ薄切り肉をくぐらせ口へ運ぶ。
「!」
その瞬間、ナリタブライアンの目が大きく見開く。
「美味い! 肉特有の脂っぽさがほとんど感じられず焼いた時にはわからなかった肉のうまみと甘さがよくわかる!」
その美味しさに感動したナリタブライアンは先ほどの疑いが嘘のように薄切り肉を醬油にくぐらせ、
「ふう、美味しかった!」
大皿に乗せられた薄切り肉を全て食べたナリタブライアンは満足そうにいつも咥えている葉を咥え、少し膨れたお腹をさする。
「ところでトレーナー。あの肉は何の肉だ?」
「あぁ、あれか……」
少しだけ間をおいて、ナリブトレは言った。
「あれはウマ娘の肉だ」
その言葉にナリタブライアンは目を大きく見開き、咥えていた葉を落とす。
「今……何だって?」
大きく見開いた目でナリブトレを見ながら、ナリタブライアンは尋ねる。その言葉には「嘘だと言ってくれ!」という期待と恐怖が帯びていた。しかしナリブトレの次の言葉がナリタブライアンを更なる絶望へと追い込む。
「いやぁ、さすがは『皇帝』と呼ばれるシンボリルドルフに『女帝』のエアグルーヴ、『女傑』ヒシアマゾンに変幻自在の脚質のマヤノトップガン、そしてサクラローレル。どれも調理しがいがあった!」
うんうんと
「中でも一番はブライアンが最後に食べたビワハヤヒデだな! いやぁ、あの超がつくほどのくせ毛には苦労したがブライアンの舌を
「!!」
ブチッ!!
ナリタブライアンの中で何かが切れた。気づけば右手は握り拳を作りナリブトレに向かって拳を放っていた。
「うわっ!? 何をする、ブライアン!?」
突然の攻撃に間一髪で避けたナリブトレが冷や汗を流す。
「黙れ! 私の大切な仲間を! 親友を! そして姉貴を殺した
そう言って
「ま、待て! ブライアン!!」
慌てたビワハヤヒデが部屋へと入る。
「……あ、姉……貴?」
腰を抜かすナリブトレの顔面でナリタブライアンは拳を止めた。
「ふふ、ブライアンのあんな顔……初めて見たな」
「だからあんな人が悪い冗談はしない方がいいとあれほど……」
少し苦笑したシンボリルドルフと呆れた顔のエアグルーヴ、その後ろにヒシアマゾン、マヤノトップガン、サクラローレルが顔を
「……? ……!?」
ナリブトレに殺され肉となったウマ娘たちの姿に信じられず口をパクパクとさせるナリタブライアン。そんなナリタブライアンに
『ブライアン(ちゃん、さん)! 誕生日おめでとう!!』
と全員がクラッカーを鳴らして祝福の言葉を
クラッカーから飛び出たテープを払い、
「ん?」
ビワハヤヒデを始めとするウマ娘たちが生きていたと分かり、
「……私が食べた肉が姉貴たちじゃないとすれば……あれは何の肉だったんだ?」