転生したら女の子だった 作:カヤをいじり隊
3~4日間隔で投稿したいけど間にあわなかった~!
あの密会から数日が経ち…
私は今離れの庭園にいます。
目の前では土鍋がコト、コト♪と白い湯気を上げ、炊きあがるその時を今か今かと待っています。
(わーわー!)
(きゃー♬)
(これおいしー!)
(焦げた!?)
近くからはジュウジュウと鉄板の上をに油が踊り、深く息を吸えば香ばしい焼けたお肉の香りが漂っている。
そちらを向けば20人に届かないくらいの子たちがワイワイ言いながら焼かれた肉をほおばって満喫している。
「カヤ様~このお肉凄くおいひぃです!」
「それはなによりです」
「こんな高そうなもの私たちも頂いて本当によろしいのですか?」
「勿論ですよこれは
たまにこちらへ来る子達に適当に相づちを打ちながら、私はご飯が炊けるのを待っていた。
えぇ、今日はジュキさんとの密会の場で働いてくれた子たちを集めて焼肉パーティを開いています。
慰労会だけあって厳選された肉は勿論、百鬼夜行の牧場から直接仕入れた和牛という主役もあります。
ふふっ、これを味わうために昼食の量も減らしました!
焼肉と言ったら米だよなぁ!という内なる声に導かれるままにコメを炊き始めて少し…
カルビやロース、タンも良いですが…ここは熱々のザブトン*1をワサビ醤油にくぐらせ白米と一緒にかっ食らう!
く~ぅ悪魔的発想!こんなこと思いつてしまうなんて我がことながら恐ろしいですね…
カルビやロースであんなに喜べる
この離れは本校から距離がある上、参加してない派閥の子たちには連絡しています。
なので一般の生徒は迷い込む以外にここに来ることはあり得ませんから…
見えました…ってあなたでしたか。
まぁ来るかもなーとは思ってましたよ。
色んな意味で鼻が利きますし、こんな風に皆で食べるのが好きみたいですからね!
土鍋の火を消して現れた人影の前に立ち塞がった。
「駄目ですよ?これは先日の会談を手伝ってくれた子たちへの慰労会なのです。あの日会談の場に来もせずにどこぞをふらついていた人にあげるお肉はありません」
そのまま普通に混ざってこようとするタイガさんをブロック。
「カヤちゃんっ、お願ぃー!」
「ちょっとだけ、少し食べてくだけだから…いいでしょ、ね?」
両手を合わせて上目遣いでおねだりしてくるタイガさん。そんなこと言われても…ダメですよ?
「駄目です、これはあの密談へ協力してくれた人たちへの慰労会ですよ。何もしていないタイガさんを参加させてしまっては示しが付かないでしょう?」
「こんなのあるって聞いてなかったもん!」
「そりゃ言ってないですからね!信賞必罰、働かざる者食うべからずですよ」
「そんなー!次からちゃんとするから!ねっ?」
タイガさんと問答すること暫く…
うー!
にゃー!
がぉー!
しゃーッ!
……ふふーん、勝ちました…ッ!
暫く威嚇しあっているとタイガさんは諦めて帰っていきました。
しかし…
「タイガさんのことなので、もう少し粘られると思っていたのですが…」
まぁいいかと土鍋へと戻る。今最優先すべきはとびきりの和牛と炊き立てのコメです!
ざぶとん♪ ぎゅうたん♪ さーろいん♬
炊きあがったご飯をよそおうとした所でタイガさんが戻って来ていた。
そして私の目の前には白目を向いて転がされてる2人の生徒、そしてタイガさんの後ろで状況が分からずキョロキョロと困ったように辺りを見回している子が1人。
「仕事したからお腹すいたー!」
「じゃあ、お肉貰うねー」
…えっ?
状況に頭が追い付いてない私の横を通りぬけていくタイガさん。
今思えばこの時にモタモタせずにしていれば私は…
私が困惑している間にも目を覚ました二人。どちらも私の派閥の子ですね…
派閥を立ち上げた時にすぐに加入してきた商人の子と、勢力が拡大するうちに入ってきた貴族の子、そして歩いてタイガさんに着いてきていた最近入ってきた純朴そうな一般生徒…
アレですかね?ですがそうなると貴族の子は置いといて、この子たちもスパイということに…
冗談でしょ?
とりあえず、その…話くらいは聞かないといけません、よね?
「お目覚めですか、いきなりタイガさんが失礼しましたね。ところで皆さん、何故ここに居るのか心当たりはありませんか?」
何となく分かってた貴族の子に揺さぶりをかける。
「い、いえ、特に思い当たることは… それよりこの様な扱い不知火さまとて看過できません!このことは次の派閥内の会談にて取り扱わせていただきます!!」
目が覚めた貴族の子がぞんざいな扱いについて捲し立てる。
「ふむ、因みに今ここではちょっとした慰労会を開いているのですが、何の慰労会なのかご存じですか?」
「知りません。誤魔化そうとしても無駄ですよ私はこれでも…」
「つい先日、天座ジュキさんと秘密裏に会談を行いまして」
「子爵家の令嬢、として…」
その言葉を聞いたお嬢様の勢いが萎んでいきます。そして私の言葉の裏を租借し始めましたね。自分の立場のことも
「その成果として私とジュキさんは同盟を結ぶことになったんですよね。こちら契約書の大まかな写しとなります」
「えっ!? あっ、その…おめでとうございますわ」
「ありがとうございます。それで、雑談の際に少々気になる話を耳にしましてね」
「えぇ、耳目に関しての話だったのですが…」
「…それは興味深い話ですわね」
おっと立て直しましたか、ジュキさんから任せられてるだけあって優秀な人ですね。いきなり拉致されて判断力が鈍っていたんでしょうが、同盟を組むからと言ってジュキさんが自分のとこのスパイを私に話するわけがありませんからね。
まぁここまでの反応でほぼ黒確定してるのでこの人は後回しでいいですか。
次は商人の子にカマをかけて反応を見るかそれとも…
「あのカヤさま、耳目ってなんですか?」
「あぁ耳目というのはスパイのことですよ」
「私スパイじゃないですよ?」
なんかオマケが話かけてきてますがここはスルーです。
もしもこのお嬢様を排除することで生じる今後の派閥への影響力と構成を練り直して…
さて、どう調理致しましょうかね
「まぁそうでしょうね。あなたからはスパイの気配どころか策謀の香りをこれっぽっちも感じません。むしろトリニティに有るまじき純朴さで…仮にスパイだったとしても大したことが出来なさそうですし」
「はい、私友達を作りに来たんです!サクラコさまがカヤさんの所なら沢山友達を作れるだろうから行って来てはどうでしょうって言ってくれて!」
「あとここならお菓子食べてても咎められないって聞きました」
「そうですか」
流石に貴族の子を排除するとどんな形であっても他の貴族の方からの追求が避けられませんね。
貴族は家同士の繋がりが強いですし幼いころから顔なじみの人も多いですし甘めの処置にせざるをえませんか。
「ここにきて話す人も増えて、シスターフットの子たちとは出来なかった買い食いも出来て…今が凄く楽しいんです」
「へぇサクラコさんから、それはなによりです」
さてお次は商人の方といきましょう。
とはいえこの方は私が派閥を作り始めた頃からいる方なので怪しいところがないのですが…家自体も普通の商家、そこいらの男爵家よりは裕福というくらいで怪しいところはなかったような
そもそもトリニティの経済に君臨しているのは不知火家なので大貴族や教会や騎士団などのお付きの商人以外は私の勢力といっても過言では…な
「「「って、サクラコさんから言われて!? 」」」
思わず三人で降り返った。
「ひぇ!はい、そうですけど…なにかおかしいこと言っちゃいましたか私…?」
私たちから凝視され悪戯がバレた子供のように落ち着かない様子の彼女
「いや、おかしい事といいますか…えぇ…」
「それ言ってしまって大丈夫なんですの?」
「とても賢明な選択とは思えないな…」
立場は違えど私たち3人の意見が一致していた。
あーもう!なんなんですかこの子は⁉
サクラコさんが諜報員として送り込んできたかどうかは分かりませんけどこの子は絶対に重要な仕事任せられないです。見てないところで何を口走るか分かったもんじゃないですよ…
ほんとなんでサクラコさんはこんな子を送って来たんですか!?
「はぁ、とりあえずあなたは帰っていいですよ。話すことももうないですし…」
「やった焼肉だー!」
「えっ?」
「えっと…違うんですか?タイガさまが『ちょっとカヤちゃんとお話してみない?ついでに焼き肉パーティしてるからさ、終わったらそのまま参加したらいいよー』って言ってましたけど?」
「・・・・・」
タ イ ガ さ ん ?
なに勝手にそんな約束を…?
というかそんなご飯をお預けされた犬みたいな目で見ないでくださいよ、あと口元のよだれはどうにかしなさい!あなたもトリニティの一員なのですから淑女の自覚を持ってください。
…まぁ良いでしょう。仮にスパイだったとしてもこれに何かできると思えませんし、材料も十全に用意してあります。お肉だけで100キロ以上ありますからね!
嬉しそうに駆け出していく様子を三人で見送ります。
(やれやれ、ですね)
(心中お察しいたしますわ)
(何とも現金な子だったな)
「「「あっ…」」」
目で会話していた二人から目を離します。すっかり忘れていましたが尋問中でしたね今⁉
「「「・・・・・」」」
あの子が居なくなった途端に満ちた沈黙。
貴族の子は勿論、商人の子も何も話そうとしない。
かという私も商人の子がどこのスパイなのか検討が付かずに切り出し方に困っています。
ていうかあの子でも何かあるなら、商人のこいつも絶対裏あるパターンじゃないですかー!
なんなんですかタイガさんは鼻が利くとかそういう次元の話じゃないでしょうッ!私の仕事増やす天才かよ!
あれだけ楽しみにしていた焼肉が遠いていくのが分かります。
しかも商人の方は一番口堅そうですし、かといってこのまま背後関係を明らかにせず返すとあとが怖い…
何もかんもアイツが悪い!パーティ会場を睨む。
すると私の視線に気づいたアシュリーさんが気付いてなにかハンドサインを送ってきましたね。
はい、えっと…リョウカイシマシタ?
分かってくれましたか。
ヨシ!そこにいるドラ猫にキツくお灸をすえて…あれ?どこかに行ってしまいました。
ていうかタイガお前気付いてるだろ!? なんで頑なにこっちを向かないで震えて…
あぁこっちまで肉の焼ける良い匂いが広がってきましたね。
あー!今頃炊き立ての白米片手にザブトンやら塩タンやらをかっ込んでいたのいうのに…
これが終わったらやけ食いしてやりますよほんとに!
…換気扇、こっち向けて回していませんか?
夕焼けも駆け足で去っていき、夕飯前の一番お腹が空く時間帯。そんな時に濃厚な肉の香りとパチパチという肉汁が跳ねる音が良く聞こえます。
おや、どうされました?
お2人とも先ほどまでのポーカーフェイスが崩れていますよ。
それにしてもアシュリーさんも酷なことをするものです。
食べ盛りの中学生+夕食前の5時を回った頃+暴力的な肉の匂い
これで焼肉へと注意を逸らすことでどこのスパイなのか尋問しやすくすると…
なるほど完璧な作戦っスねーーーっ
この私が巻き込まれてる点に目をつぶればよぉ~‼
うおぉぉー!
お腹がへるぅ!今平然な顔してますけどすごい勢いでハングリーメーターが減ってますからね⁉
今日の焼肉楽しみでお昼ゴハン少なめにしてたのですよ???
「きゅるきゅるー」
突然、鳴り響いた可愛い音に視線が貴族の子へ向かう。
「こ、殺してくださいませ…///」
羞恥に顔を染めて俯くお嬢様。まぁトリニティでお腹の音なんて人に聞かれたら引き籠りも止むなしですからね…
そして社交界で噂が広まろうものなら切腹もやむ無しといった感じのものです、
「ご安心ください、誰にも言いませんから」
「うぅ…確かに私は天座さまから不知火さんの派閥に行くように指示されていましたわ。ですが派閥での細々とした話を伝えたくらいで重要な機密を漏らしたことは一度もありません信じてください…」
羞恥、絶望、プライド色んなものがごちゃ混ぜになって決壊したお嬢様。ポロポロと情報を尾としてくれます、あーほんとに助かりますね。
共感しながら暫く彼女の独白を聞き…
「よく話してくれましたね。大丈夫です私は信じますよ。あなたもこの場では何も起きなかった、良いですね?」
しーっ、口の前で人差し指を立て商人の子を頷かせる。
そうですね~
「せっかくです。あそこで焼肉パーティを開いているのですが貴女もどうです?簡素で大味なのでお口に合うかは保証しませんが」
「うぅ…お言葉に甘えさせていただきますわ」
流石に後味が悪かったのでつい…
貴族の子がパーティ会場へと消えていった。
「どうしたんですか?」「泣いてるの?」「ほ、ほら!これ焼きたてです」「これも美味しいですよ」
「あ、あなたたち…」
「こっちもどうですかー」「ジュースもありますよ」「また焦げたぁ!」
「ではこれをいただいて…ほんとうに、美味しいですわ…」
楽しそうな声が聞こえます。こっちはまだ商人の子と
ていうかあの子もう馴染んでますね?あの図太さは見習いたいところです。…と合間に横目で眺めてたらまたアシュリーさんと目が合いました。
チャンス到来!
もういい加減に私一人で尋問するの限界でしたからね
それにそろそろ和牛が投入される頃ですから早く変わってください‼
和牛は私のだぞ!?
親指を立てて頷いてくれたアシュリーさん。
やりました、これで彼女と入れ替わり私は和牛を堪能できる訳ですよ、やはり持つべきものは頼れる腹心ですね!
「……っ、ふふ…っ、ふ~っ」
「タイガさまどうしたのー?」
その後すぐに
スピーカー? そんな出し物用意してなかったですよね?
「はいはーい!私の一推しはカルビです。今日のは特に凄くて、焼きたての熱々のお肉をタレに漬けて食べるとじゅわって肉汁があふれて頬っぺたが落っこちちゃうくらい美味しかったです」
目の前の子と会場を二度見する。いつの間にか出来てた大画面の液晶がカルビの焼ける場面を色鮮やかに映し出す。
えっこれで上手にアピール出来たら次のパーティでも用意してくれるんですか⁉ やりますやります!
「一番美味しかったのはサーロインですよ!職人の方に厚めに切って貰って鉄板の上で焼いたんです。ジュウジュウって油が跳ねて、お肉の香ばしい香りが漂ってきてですね。焼きあがったステーキをナイフとフォークで切って食べたんですが、もう美味しいってなんの!お肉が口の中で溶けるなんて初めてでした。ソースも岩塩と香草を付けて食べると味わいが変わって…また食べたくなっちゃいましたもう一回行ってきまーす」
「えっ私もですか…そうですわね。お勧めはタンですわね。牛の舌なんて気味が悪いもの食べさせるなんてと最初は思いましたが…しっかりと噛み応えがあって噛めば噛むほどしっとりと口の中に広がっていく旨味。レモンと塩のさっぱりとした味わい、たれの程よい辛味とタンから零れる肉汁がとても合って…けれどやはり一番は塩だけの味付けですわね。この美味しさは食べてみないと分かりませんわ。まだ食べてない方がいましたらどうぞ一口味あってくださいまし」
「「・・・・」」
食レポしてんじゃねぇ!!今何時だと思ってんだもう日が暮れて夕飯の時間だろ⁉
2時間も前から飲まず食わずで焼肉の匂いと音を聞かされてる身にもなれや!
というか何よりもアシュリーさんは早く私と尋問役を変わってください。こんな嫌がらせばっかりしてないでさー!
てか、おまえ、こんなん…こんなん戦争だろ???
尋問もクソもあって堪るか!もう知らん!
私は行くぞ、行ってやる!コメと和牛が待っとるんだー!!
「タイガさま、お腹痛いの?」「はい、暖かいお茶持ってきましたよ」
そしてアイツは絶対許さねぇ!
「実は僕は…」
お前はこのタイミングで語りだすなー!
「やっと、お肉が食べられます…」
もうすっかり日も暮れて天上の主役が星へ変わった頃、やっと慰労会へと戻ってこれました。
あれから商人のこの話を聞いて裏を確認して、解決の為に策をだして…
とまぁ色々とやっていたらこんな時間に…
まぁ問題はありません。
肉だってかなりの量を用意しているのでまだ残っているでしょうし、彼女たちから得られた情報の質が良かったので総合収支は+ですので。
「はぁ、もうどこの部位でも良いからお肉が食べたいですね…」
込み上げてきた疲れを振り払いながらヤキニク会場へと帰っていきました。
「はぁ、もう一度言ってください」
「え、えぇ…そのもう肉は残っていないのです」
「…カルビやステーキもですか?あと海鮮類は流石に残っているでしょう?」
トリニティではあまり海鮮を食べる習慣がないので、それに好みが分かれますし…
というか何人前用意したと思ってるのですか?優に100人は食べられる量を用意したと言うのに肉が残ってないって
「それが途中で参加されたタイガさまとお連れになった方がペロリと平らげてしまいまして…本当に何も残っておりません」
「・・・・」
「で、ですがカヤさまが開催された交流会は大成功でしたよ。参加されていた生徒の方は皆満足されていましたので、顔だけ見せにきていた貴族の方からの評判もよく……」
「…後片付けを。それと七輪を用意して」
「はっ、畏まりました」
私の企画した懇親会は大成功でした。
トリニティでは受け入れられるかどうか分からなかった焼き肉という料理は一般の生徒だけでなく機に敏い商人や舌の肥えたお嬢様たちにも絶賛されこれからも続いていくことになります。
不知火カヤの名声も一層広まって
「私のザブトン、牛タンがぁ…」
皆が帰ったあと庭園
肉の残り香と共に食べた焼きおにぎりはちょっとしょっぱかった。
もそもそ、もそもそ、ゴクリ…
最後の一欠片を飲みこんで立ち上がる。
「今回はタイガさんというイレギュラーがありましたからね。次はこんな事にはさせません」
とりあえずタイガさんの分は30人前として計算しておきましょうかね。次からはちゃんと仕事して正規ルートで参加して来そうですし。
そう私は不知火カヤ。いずれトリニティのトップへ立つ者なのですその為の計画も順調に推移しております。
これしきの失敗がなんだというのでしょう?
それに私は2度と同じ過ちを起こすことはあり得ません。今回でノウハウも詰めました、例え次に同じことが起こったらスマートに食事しながらでも尋問して差し上げましょう♪
「さて、次の交流会は何をしましょうかね」
屋敷へと帰っていくカヤの瞳にはさっきまで漂わせていた悲壮感は無かった。
スシ・〇ー〇●〇〇〇”編へと続く