転生したら女の子だった 作:カヤをいじり隊
「じぃじ、3時に作りたてのモノを届けるように。あと予備で2種類作ってあまれば派閥の方に流しておいてください」
登校前、今日の茶会の為の準備をさせています。
ふふっ、心が晴れ晴れとしております。
なんたってあの賭けに勝ちジュキさんを最大派閥へと押し上げた私は現政権の№2になりましたからね。
今や私はジュキさんと二人でこの中学の実権を握っているといっても過言ではないのです!
サンクトゥス派のトップとして一年生で私と並び立っているセイアさんも実際の所アデラさんが院政してるようなものですので。
実質的に一年生で学園の運営に干渉しているのは私だけで…
なんで中学生になったばかりの私が学園の運営を担っているのです???
ま、まぁ良いでしょう!今日は気分が良いので許してあげますよ!!
書類の量も少ないですし時差ボケに昼夜逆転が当たり前だった頃に比べればこの程度なんでもな…
「?」
ええっと何を考えていたのでしたっけ?
あぁ、一年生の有力者が集うナギサさんのお茶会でしたね。
ふふーん、ナギサさんのお茶会がなければ私が皆さんを茶会に招待して差し上げても良かったのですよ?
しかし勝って兜の緒を締めよと申します。
このような茶会の場でケチが付くことなどあってはなりませんからね。準備にも気合を入れねば…
ついでに集めたパティシエたちの評価を生粋のお嬢様たちからの反応を見てから決めたいですね。
半端なものを作るようなら、私が屋敷から蹴り出してやりますよ
「お嬢様?…いえ、準備が整いました」
(謎のシャドーボクシング)
「っと、では行きましょうか」
鏡を見ると制服を新品同然に輝かせ髪型も決まっている私の姿が見えます。
ふふっ、いいですね。これぞ不知火家たるものの姿です。この姿を見ればお母様もさぞ喜ばれることでしょう♬
「では、行ってきます」
「「「「「はっ!行ってらっしゃいませお嬢様」」」」」
多くの使用人たちに見送られて車へ乗る。
放課後
お茶会の会場である『庭園』へと向かいましょう。
余ったお菓子を派閥の子たちに分けてきましたが、私の派閥の生徒が本拠地としている『離れ』そこにいる生徒の数がだいぶ少なくなっていますね。
商人の子たちは勿論、商人以外の子も色々と仕事を受け持っているようで何よりです。
そうこうしているうちにナギサさんが貸し切っている『庭園』と着きました。
待っていた執事に案内され、咲き誇るバラの間を抜けてナギサさんたちが待つテーブルへと進みます。
おや、私が4番手でしたか。
ホストであるナギサさんが優雅にお茶を嗜んでおります。流石は桐藤家が誇る令嬢ですね、その姿は淑女の鏡と言われるだけはあります。
そして一緒に連れてこられたであろうミカさんがぎこちなく笑っています。なにかやらかしてナギサさんに怒られたのでしょうか?
あと…
…ってセイア、さん?
「ようこそお越しくださいましたカヤさん。どうぞそちらの席に…」
おっといけません。
ナギサさんに話しかけられ思考をお茶会へ戻します
「本日はお招きいただきありがとうございますナギサさん。では失礼して…」
ナギサさんと挨拶を交わしミカさんとセイアさんの間の席へと案内されました。
「やっほー!カヤちゃんこっちこっち~♪」
「ミカさんお久しぶりです…」
一発で今日どこに座るのかが分かりましたね。
ミカさんとセイアさん間の席と…
おや?ナギサさん前に私が言ったことを聞いてくれたんですね。
ミカさんの横というのは少し怖いですけどセイアさんもいるならまぁ…
何故か煤けていますけど()
「どうぞ」
「ありがとうございます」
セイアさんの傍に控えていたいた侍従から席を引いてもらい席に着く。
当然と言えば当然なのですがナギサさんのお茶会にいる侍従も一流です。
手際に迷いがありませんし、今も私の呼吸に合わせて自然と紅茶を注いでくれてます。並みの家ではこれほどの侍従を揃えることはできませんので流石は桐藤家と言う他ありません。
…しかし東欧系の浅黒い肌の方はあまり見かけないので珍しいですね
(じーっ)
…などと注がれたお茶を飲みながら考えていると妙に視線を感じます。
隣からは困ったような顔のミカさん、正面からはティーカップをもって見つめてくるナギサさん
…いや違います!
これは私を見ていません、私の隣…もっと言うと今私に紅茶を注いでくれた、メイドさんを、見て……
思わず声が洩れた
いや、なんであなたがここに…?
なぜメイド服を着て侍従の真似事をされているのです??
「アデラ、さ…ん?」
「はーい。ご機嫌よう不知火さま♪」
まるで砂漠の踊り子のようなエキゾチックな雰囲気、それに見合う明るい挨拶が返ってきた。
「あっ、今はセイア様の付き人として来ているのでそう気にされなくていいですよ?」
茶目っ気を感じさせるウィンクを一つ。
それからアデラさんは雰囲気を変えて周りの侍従の方と同じように振舞い始めた。
えっ、そんなこと…急に言われても……
「あははー。ちょっと困っちゃうよね☆」
「え、えぇ…」
「ところで私カヤちゃんのお茶会楽しみにしてるんだけどー?」
少し頬を膨らませて詰め寄ってくるミカさん。
じゃあ予定の空く日を教えてくださ…
えっ、何時でもOK?あっナギサさんから頭をはたかれています。
抗議しているミカさんと窘めているナギサさんの構図が面白いですね。
あっ、ナギサさんが予定表を取りださせて…えっと…?あー、都合がいいのはここら辺ですか。
分かりました、ではこの日に当家へお越しください。
「やった!じゃあお泊り会とかー」
「…ミカさんそれは流石にカヤさんに悪いですよ?」
「じ、冗談だよナギちゃん。だからそんなに怒らないで」
「別に怒ってないです」
私にお茶会を約束させたミカさんがナギサさんと話し始めましたがそれも束の間。ミカさんとの他愛もない話を恥ずかしがったナギサさんが話を打ち切る。
一度そうなってしまうと皆落ち着かずに…再び庭園に沈黙が居座ることになりました。
…さて状況を整理いたしましょう。
ここはナギサさん主催のお茶会の『庭園』です。出席者は一学年の有力貴族である私たち6人だけのはずでした。
が、何故かセイアさんの付き人としてアデラさんが来ている…
最上級生であるアデラさんが同じテーブルに居るだけで気を使うのですが…
彼女が従者として振舞っているのが状況をややこしくしています。
貴族社会において身に纏うモノはその者の立場を現します。
農民であれば作業服、商人であれば小奇麗な衣服、貴族であれば階級に応じた服飾を…
つまり仮に尊き王家の一員だったとしても、腰布しか纏っていなければ平民どころか奴隷の扱いを受けたとしても文句は言えないのです。
だから貴族はその家の格に応じて身にまとう気品・身に着けている装飾・着ている衣服まで全てを変えていく訳です。
今のアデラさんは従者の服を纏い、セイアさんの付き人として振舞っている。つまり私たちも同じようにアデラさんを一人の従者として扱わなければならないのですが…
彼女は2年間もの間トリニティの権力闘争を戦い抜きサンクトゥス派を維持させていた方で、私たちの誰よりもその手の権謀術数が上手であると言っていいです。
しかも家の格も私たちと同格である伯爵家、派閥は第2位そしてそこの実質的なトップ、そしてなにより二年分のアドバンテージを持っている先輩でもあるのですよ?
トリニティでは家格が優先されるとはいえ…先輩後輩の関係もないわけではないのです!
我々からしたらアデラさんは敬うべき先輩ということになるのですよ?
甲斐甲斐しくセイアさんのお世話をしている彼女を尻目に、目の前で
あなたが許可したんですよね!一体何の目的でアデラさんをお茶会に招いたのです⁉
しかし私の視線にも気づかないふりをして紅茶を飲み続けるナギサさん
むむっ、埒があきません!
こうなったら直接問いただして…
「御機嫌よう。この場にお招きいただきありがとうございます」
サクラコさんがログインしました。
彼女から醸し出されるほんわかとした方の空気が広がり庭園の雰囲気が和らいでいきます。
ヨシ!シスターフッドのサクラコさんなら同じように宗教色が強いサンクトゥス派のアデラさんとも幼いころから交流があるはずです。
ホントなんでアデラさんが居るのか分かりませんが…
もう全部サクラコさんに任せてしまいましょう!
席に案内されたサクラコさんを見守っていると…
「あっ、珍しい雰囲気の方がいると思いましたがアデラさんでしたか。御機嫌よう」
「御機嫌ようサクラコさん。貴女と会うのも久しぶりだね」
「はい、アデラさんもご健勝で…」
和やかな雰囲気で話してます。
…というかなんでメイド服着て侍従をしていることを指摘しないのです?
まぁいいです。挨拶もそこそこにサクラコさんはアデラさんと話しています。
やっぱり幼少期から付き合いがあったんですね。これで問題は解決されました…
「あっそのメイド服も可愛いですね、活発なアデラさんらしくて…」
「とても似合ってますよ」*1
な、なんてことを…⁉
アデラさんに向かって
えっもしかしなくてもアデラさんに喧嘩を売ってます?
いやいや宗教家同士の特殊な事情や確執がある可能性が…
(チラっ…)
視線をアデラさんへと向ける、ティーカップを傾けているナギサさんも様子をうかがっています。
そしてアデラさんは、ニコニコと陽気な笑顔を浮かべていますね
「ははっセイア様の為にそういう教育も受けてるからね。自慢じゃないけどそこら辺の従者より成績上だったよ?」
「そうなのですね」
あれ?思っていたより和やかな雰囲気ですね
私たちの思い過ごしなら良かった…
「そうだよだから、ね」
「セイア様の付き人は私たちがやるから態々人を用意しなくていいよ、桐藤さん」
重責のなかに妖艶さすら感じる視線がナギサさんを射抜く。
「…それは私が用意したモノは信用できないという意味でしょうか?」
「そんなこと言ってないけど。万が一があるからね。因みにこれサンクトゥス派としての総意だから、あんまり無下にしない方が良いよ」
「なっ…!」
一派閥の意見としてお前は信用できないと突き付けられたナギサさんが絶句している。
無理もないです。というか桐藤家はお茶会においてトリニティで一目置かれている家
中小の貴族なら桐藤の茶会に呼ばれることが一種のステータスとして見られるというのに…ここまで言われる謂れはないでしょう。
「すまないナギサ、止められなかった…」
遠くの方を見ていたセイアさんがナギサさんに謝ってます。セイアさんはこのことに乗り気ではない…と
しかしサンクトゥス派としての総意であることは否定しなかった、つまり…
「…分かりました。セイアさんの付き人に関してはそちらに一任しますが、桐藤のお茶会に相応しくない作法などあればその時は…」
「うん、そんな人は絶対に寄越さないから安心して。…じゃあ私は元の位置に戻りますので」
そう言ってアデラさんは雰囲気をガラリと変えセイアさんの後ろへと控えた。
まぁそうなります。
ナギサさんからすれば不愉快極まることですが、一派閥の総意であると言われれば否とは言えないでしょう。そんなことで派閥争いなんてしてられませんからね、それでも変な真似したら即追い出すと啖呵をきれるのが桐藤としての誇りを感じます。
話している途中に緊迫としたムードになってしまったサクラコさんが席に着いてます。
何も言えない空気の中、カチャリとティーカップの音だけが響きます。
「「「「・・・・」」」」
辛っ! この空気辛いですよ!
私はジュキさんと組んだことへの戦勝報告をしに来ただけというのに…
そんなこと置いといてもう帰りたくなってきました
(ガチャリ)
「私が最後のようですね…っとこの空気はなにが?」
訓練を切り上げてきたのでしょうか。
薄っすらシャンプーの香りを漂わせてミネさんが庭園に足を踏み入れた。
「
まだご機嫌斜めのナギサさんがミネさんを席へ案内する。
その言い方ですとナギサさんになにかあったと言っているようなものですけど…ミカさんも心配そうに見てますし先ほどのことが消化しきれてないのでしょうね
「では揃いましたので一学年の交流のためのお茶会を始めましょうか」
調子を取り戻したナギサさんがお茶会の始まりを宣言し、本格的な茶菓子が運ばれてくる。
はぁこれでまだ茶会が始まってなかったってマジです?
もうお腹いっぱいなのですけど??
そんな思いとは裏腹に始まってからのお茶会は楽しいじかんとなりました。
「あーこれ美味しい!でもナギちゃんが選んだとは思えないお菓子だけど?」
「そちらのスイーツはカヤさんからです。初めての感触ですが舌触りも良いですね…どこのモノなのですか?」
「そちらは東方から取り寄せたものをトリニティ風にアレンジしたもので…」
「うん、美味しいよ!ナギちゃんのお菓子も美味しいんだけどいつも似たようなものばかりでね、面白味がないっていうか~」
「…ミカさん?」
「べ、別にナギちゃんのお菓子が美味しくないって言ってるわけじゃないよ!」
「はぁ…カヤさん後でこれらのレシピを教えていただけますか?」
「はい、素材の仕入れもお任せください」
始まる前の空気もどこへやら桐藤家が誇る紅茶と伝統あるお菓子たちを満喫しています。
中ほどを過ぎてだした私のスイーツも好評で嬉しい限りです。
「ふむ、これは私も好きだな。アイスティーとも合うだろう」
「どうぞ」
「・・・・」
目の前に置かれたアイスティーを無言で飲み干すセイアさん。
「アイスティー用の茶葉のチョイスに蒸らす時間、最後の一滴を際立たせるための抽出方法…デキますね」
「ナギちゃんの目がマジだよー!」
アデラさんが紅茶を淹れる様子を食い入るように見つめていたナギサさん、その姿にミカさんが引いてしまっています。
てか、勿論あのナギサさんを納得させる腕も凄いんですけど…紅茶って淹れるのに5分ほど掛かりますよね?
つまりセイアさんがアイスティー欲しいって言う前から用意してないと間に合うはずがないのですが……
「…ってアデラ先輩がどうしてここに⁉」
「いえ、その前にその恰好は一体…?」
アデラさんのことを知らされてなかったミネさんが驚いています。
そりゃ驚くでしょうね…一年生の有力家の茶会で三年生の先輩が給仕していたら誰だって驚きますよ…
「セイアさんの付き人として来てるんですよ。『とてもお似合いですよね』*2アデラさんのメイド服♪」
「なっ!サクラコさん先輩に向かってその言いようはなんですか!ましてや似合っているなど礼儀を知りなさい!!」
「えっ!」
あっ、ミネさんがサクラコさんに突っかかってきました。そのまま闇聖女VS聖騎士のバトル勃発です。…相性悪くないですこの二人?
なんでいつも席順が近いのでしょうね。
まぁミネさんが言う事も分かります。騎士団は上下関係が厳しいので。
家格によって忖度されることが多いトリニティで、年功序列かつ実力主義がまかり通っているのが騎士団ですからね。
実はあそこの派閥も古くから存在する為貴族が多いのですが皆さん質実剛健というか…貴族らしさがありません。
実力や能力による区別はありますが家の地位でどうこうといった話はあまり聞きませんから。
ミネさんも主家の娘として特別扱いされずに扱かれていると聞きます。
いえ、寧ろ特別に並みの団員よりも厳しくされているようなので特別扱いなのでしょうか?
体育会系のことは良く分かりません。
「そういえばカヤさん。先日は大立ち回りだったそうですね」
お茶会が一区切りついたところでナギサさんが切り出した。
…来ましたね
給仕に扮しているアデラさんも聞き耳を立ててます。
「ふふっ、そうですね。しかしそのお陰でずいぶんと風通しが良くなりませんでしたか?」
「うーん、私はあんまり好きじゃなかったかな。同じ学校なんだしもっと仲良く出来なかったの?」
「騎士団としては何とも言えませんね。処断された方々は訓練に不真面目なものが多かったですし…しかし一報入れても良かったのでは?
「告知してしまっては効果が薄くなってしまいますからね。しかしあれから騎士団の空気も変わったと感じませんか?」
「確かに先輩がたはどこか…」
思い当たる節があったのか考えこむミネさん。
「あとミカさん勘違いしないで欲しいのですが、今後仲良くなれるようにやったのですよ」
「でもみんな泣いてたよー?」
まるで見てきたかのように語るミカさん。…あぁそうでしたね
「ミカさんが受け入れたのでしたね。…ナギサさんからも言われていると思いますけど」
「カヤちゃんまで!もうその話は聞き飽きたよ」
「でしょうね。でしたらあのやり方が彼女たちの今後にも良いと判断しただけです」
「うーん、そうかなぁ」
これ以上は蛇足になるので話を打ち切ります。
と言いますかミカさんの所に流れてしまいましたか…予想出来ただけに対策を打っていなかった私の失態ですね。
まぁミカさんに拾われたとはいえ、あの件で痛い目に遭い考え方を変えた子も多いでしょうからそこまで心配することではありませんか。
今後の私の構想を考えると手痛くはありますが許容範囲です。
感情的な二人が終わって残るは…
「では、
お茶を楽しんでる問とは違う伯爵家としてのナギサさんが私をここに呼んだ理由を問うた。
ふぅ、ある程度今後のことを話しているアデラさんも興味あり気に見つめてきますし、セイアさんも興味ないふりをしていますがしっかり注目しています。
…なぜサクラコさんはそんなにニコニコしているのでしょうか?シスターフットには何も言った覚えがないのですが。
それどころかあの粛清で一番被害が少なかったのはシスターフットなんですよねぇ…
…やはりどこかから漏れていましたか?
わざと視線を合わせても微笑むだけ…
ん~怪しい、もう一度派閥内の調査を行いましょう。
「私からは特に…なにせ政り事には疎いですからジュキさんから色々勉強させて貰う立場なので…」
「ですので入学前にやっていた序列主義に重きを置いた政治戻るかと思いますよ」
そうジュキさんは貴族らしい家柄至上主義の人です。私の派閥と手を組み方針をアデラさんにも認めさせた以上、以前よりも厳しくそれを推し進めるでしょうね。
つまり元から家格の高い私たちはあまり気にしなくて良い。家柄に見合わない役職についていたひとは肩身が狭くなりますが
ほっと胸をなでおろしたナギサさん。
…唯一まともに残っていた貴族派として邪険にされる可能性もあったので安心もしますよね
ミカさんやミネさんはフーンって感じですね。まぁ彼女たちにそんな影響ないでしょうから当然と言えば当然ですか。
確認終わり~!とばかりセイアさんの後ろに控えたアデラさんに――それを若干疎まし気にしているセイアさん。
さっきからずっとサクラコさんはニコニコしていますね。
想定内…いえ元から知っていたということですか?食えない方です…
細々とした質問に答えながら考えに耽る。
先ほど言ったとおりジュキさんが序列主義を敷くと問題が二つでてくるのですよね
まず私の不知火家は伯爵家とはいえ…歴史も浅く伯爵家の中で一番家格が低いこと。
そして例年であれば問題なく機能したはずの序列主義が今年度は上手く機能しないこと。
一つ目はけっこう痛いんですよねー。
おそらくジュキさんは最大派閥に返り咲かせた協力者とはいえ、政治を委任した私を伯爵家として最も下に扱います。
というよりもっとも粗雑に扱える大義名分を得たといったところでしょうか、なので私の派閥から貴族家の方は離脱していくでしょうね。
また私が立ち回りを誤れば派閥を崩壊させ取り込んでしまおうと策謀を仕掛けてくるかもしれません。
頭が痛いですね。まぁ冷遇されることによるメリットもありますし、寧ろ私はそちらが欲しいまであるので何とも言えませんが
で、今ジュキさんの頭を悩ましているであろう二つ目の問題。
主なきトリニティ…それは絶対的な統率者がいないことを意味します。
だからこそトリニティの覇権を巡って数ある伯爵家が争っていられる訳ですが…
それで例年であれば伯爵家が最も高い序列になるので派閥の長をトップに置いてしまえばそれで済むのですが…今年は例外となる公爵家がいます。
トリニティの長い歴史上で下の者が伯爵家を差し置いて上に立つことすら片手で数えられるほどの珍事
その者たちも最後には聖女や指導者としての地位を冠しているので例外という他ありません。
しかし
つまりジュキさんが序列主義を敷いた瞬間に自分の敷いた法理で自身の正当性を否定さかれるのですよ。
なんとかミカさんを説得しようにも――ジュキさんとミカさんでは考え方が一致することはないでしょう。
仮にミカさんから言質を取ったところで態々ジュキさんの治世にミカさんが協力するとは思いません。
そんな中で序列が~なんてことを言って政り事をしていれば逆賊と見なされる可能性すらありますからね。
私はあの手この手で説得しようとして失敗する様を傍から眺めさせてもらいましょう。
可哀そうなジュキさん…あなたの掲げる貴族至上主義、その頂点に君臨しているのは
精々苦しんでください、それを私たちを蔑ろにすることへの禊と致しますので…
「政治をジュキさんに任せるということは…カヤさんは『なにか別のこと』*3をされるのでしょうか?」
(な……っ!)
小首を傾げながらサクラコさんが聞いてくる。
他意はないですよ~とばかり笑顔…今の私にはそれが何より恐ろしい。
いえ、ただの質問ですね。
ここ最近の裏の読み合いで過敏になってしまっているようです。
「え、えぇ…実家でやっていた事業をやってみようかと…とはいえ(伯爵家の)学生がやれる程度のモノですけどね」
「そうなのですか。あっ
ミカさんやセイアさんが絶賛していたスイーツを見やりながら言うサクラコさん
じりじりと真綿を締めるかのような圧迫感が迫ってくる。
「そうですね。我が家御用達のパティシェに作らせたものですので自信作ですよ。…サクラコさんはどれがお気に召しました?」
「どれも美味しかったです。ぜひ『教会の子たちにも』食べさせてあげたいですね*4」
程よい光に満ちているはずの庭園が暗くなる。
これは、どっちですか…?
私がやろうとしていることを読んでの牽制?
そんな馬鹿な…表に出ている情報だけであのことに気付くはずが…
「・・・・」
「どうしましたカヤさん?」
「いえ、なんでもありません。今度教会にもお届けしますよ」
「よろしいのですか!?あぁ神よ。この巡りあわせに感謝します」
そう私が告げるとほほ笑んで神への祈りを捧げ始めたサクラコさんから逃げ…離れてナギサさんたちに視線を送ります。
なにか聞きたいことはないですか?
今なら大体のことにお答えいたしましょう!特別サービスですからね!!
「あぁ、じゃあ私からいいだろうかカヤ?」
「はい、どうされました」
ふと訪れた沈黙を今日一日覇気が籠ってなかったセイアさんが破った。
「いやなに単純なことだ。先ほど言っていたミカとのお泊り会に私も参加したいというだけだよ」
「えっ?」
いや、お泊り会って…
ミカさんにしろセイアさんにしろ私とそんな深い関係じゃないですよね⁉
そしてセイアさんを泊めるのは
というかさっき約束したのはミカさんをお茶会に誘う話であって、お泊り会の話ではなかったはずですが…?
「ふむ…勇み足がすぎたか。しかし一見は百聞に如かず、同時に百見は一考に如かず…実際に体験した方が早いだろう。先ほどの茶会の約束はミカがごねてお泊りとなるよ、何故かその席に私も居たから今その話をした」
「は、い?」
「なに君のやりたいことを邪魔する気はない。一人でゆっくりとした時間が過ごせるなら私はそれでいい」
「えっと…?」
「細かい事はアデラと話をしてくれ」
困惑しっぱなしの私のことを気にも止めずに後ろに控えていたアデラさんへと話をふるセイアさん
そう言葉を切りセイアさんが急に横にカップを突き出した。
いきなり何を?
ナギサさんやミネさんも驚いた顔を浮かべ…
「どうぞ」
アデラさんが突き出されたカップへと寸法違わずに紅茶を注いだ。
「…ありがとう」
そう言って紅茶を飲むセイアさんの身体はちょっと震えていた。
…もしかして私に
いや無理だが???
セイアさんにアイコンタクトを送る。
(無理です…宗教と政治関連は不知火カスタマサポートの対象外となっております)
(大丈夫だカヤ。近い将来君はアデラを何とかしていたよ)
(近い将来って具体的に何時頃です?)
(・・・・)
(そこで目を逸らさないでくださいよ!)
視線を合わせようとしないセイアさんに視線を追うことしばし…結局約束を取り付けられてしまいました…
しかもお泊りのことを聞いたミカさんが盛り上がってその約束もさせられました。
…これセイアさんがお泊り会と言いださなければミカさんもセイアさんも泊まりにくる事がなかったのでは???
仕方なしにアデラさんとスケジュールの調整とセイアさんのお世話の話を聞きに行く。
そしてサンクトゥス派から何人か派遣されること、調理場などを前日に見学しに来ることなどが伝えられ調整は終わった。
あっ、他の皆さんは日程の調整が利かなかったらしく不参加ですよ。心なしかサクラコさんがしょんぼりとしていた気もしますが…
ん~、サクラコさんを自宅に入れるのはちょっと怖いので助かりました。
こうしてお話も茶菓子も概ね満足に終えた帰り際――
お茶会で使われていたティーカップと同じものをアデラさんが給仕服にしまうところを目撃してしまいました。
「えっ……」
思わず二度見した後…セイアさんに目を向けます。
しかしセイアさんが私と目を合わすことはありませんでした。
「どうしてでしょう?ジュキさんやその派閥とお相手をするよりはるかに疲れたのですが…」
こうしてこれから派閥を率いていく1年生同士の肩ひじ張るお茶会が終わって一息ついた。
九月が始まった…