レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトとエリアボス

シロウたちは、昴から届いたメッセージに書かれた場所を訪れていた。

 ここは【ルベリオ火山】で炎系のモンスターが多い。火の蜥蜴、『サラマンダー』や、マグマの中から飛び出してくる魚、『マグマフィッシュ』など、さほど強くはないが、群れで襲ってくるモンスターが多い。

 

「昴さんのメッセージには、このエリアのボスを倒してソルオーブをゲットしろって書いてあったな……」

「ねぇ、騎士君。あのメッセージを送ってきた人って、前に騎士君が話してくれた人だよね?」

「うん、そうだよ」

「騎士くんを無理矢理、『アストラル』にログインさせたって話は聞いたけど、悪い人なのかな?」

「酷い人なのは間違いないよ。自分は高みの見物で、やるべきことを他人にやらせているんだもの」

「それについては本当に申し訳ありません。昴様は言葉足らずな方で」

「セレナちゃんが謝るようなことじゃないよ。シロくんも昴さんに怒った方がいいと思うよ」

 

 無理矢理、ログインされた時は戸惑いが大きく怒るということはなかったが、シロウはどうして自分がプリンセスナイトに選ばれたのかが気になった。

 

『私が自分でやらないのは、ログインできない状態だからでーす!』

 

 急に目の前に画面が現れて昴が出てきた。

 

「騎士君の言ってた人?」

「こ、こんにちは……」

「この人がシロくんの言ってた……迷宮寺昴……? 『アストラル』の開発メンバーで、『ウィズダム』の七冠(セブンクラウンズ)がどうして……」

『やあ。ども、迷宮寺昴でーす。開発者特権で少年をプリンセスナイトにしました!』

「ノリが軽い……」

 

 詫びれもせずに朗らかに、シロウを『プリンセスナイト』にしたことを言う。

 

「……それで? その開発メンバーがシロくんたちにソルオーブを集めさせて、 ヒナタちゃん達をプリンセスにしたいって?」

『そうだよ。キミらにはそこの少年と一緒に、各エリアのボスが持ってるソルオーブを集めて欲しいんだ』

「わかりました。昴さん一つ聞いてもいいですか?」

『んー? なんだい少年。お姉さんのスリーサイズが聞きたいのかい?』

「あはは、違います。昴さんはどうして僕をプリンセスナイトに選んだのかなって」

『んー、今すぐ答えなきゃダメ?』

「今すぐじゃなくてもいいですけど」

『別にいいんだけどねー、ただちょっと話すのは気恥ずかしくてねー』

「昴さんに恥ずかしさなんてあるんですね……」

『ちょっと少年!? 私にだって恥ずかしいこと一つや二つはあるよ!?』

「ふふ、冗談です。ごめんなさい」

『まったく……大人をからかうなんて』

「それじゃあ、『アストラル』をクリアしたらその時は、『プリンセスナイト』に選んだ理由を聞かせてくださいね」

『ああ、わかった。もちろん、その時はちゃんと話すよ』

 

『アストラル』でヒナタ達の願いを叶えたら、シロウを『プリンセスナイト』に選んだ理由を教える約束をした。

 

『それとキミらが今、敵対してる【カレイドブラッド】は厄介だから、気をつけといてねー』

「ホントに厄介だよー。騎士君が大変な目にあったしさー」

『もう知ってると思うけど、ヤツらが持ってる武器で倒されるとログインが出来なくなるから注意してねー』

「対策とかってないんですか?  昴さんなら何か出来るはずですよね?」

『ないっ! おっともうこんな時間か。 次の機会にはもっと色々話したげる。 それじゃ、オーブ集め頑張ってー』

 

 画面が消えて昴はいなくなった。

 

「……消えちゃった。そういえばここのボスってわたしたちの実力だとまだ危ないはずだけど、大丈夫かな?」

「大丈夫。きっとなんとかなるよ! じゃあ早速オーブを集めに行こう! ほらみんな、早く早くー!」

「待ってヒナタちゃん! 一人で先に行くと危ないよ!」

「……セレナ、ヒナタはああ言ってたけど、 ホントに大丈夫かな……?」

「負けたとしても、また再挑戦すればいいですよ」

「そうそう、迷宮寺さんは高見の見物で、やるべきことを他人にやらせてるのが少し気に入らないけど、塔の頂上を目指すにはオーブが必要なんだし、負けたら対策していけばいいんだよ」

「ユカの言う通りだぜ! もっと気楽に行こうぜ」

「ふふ、それもそうだね。負けてもまた再挑戦すればいいか」

 

 奥まで進むとエリアボスを発見した。

 

『ウオォォォォォーーーーーーーーーーォォンッ!』

 

 高らかな雄叫びが響き渡る。犬、いや、これは狼だろう。間違いなかった。

 毛並みは紅色でその双眸は赤色だ。

 これがエリアボスの、炎狼スカーレットウルフ。

 

「気をつけて下さい。来ます」

 

 ヒナタはガントレットを構え、セレナとシロウは腰から剣を抜き放ち、スカーレットウルフに向けて構えた。

 

『オオオオオオオォォォォォォォォォッ!!』

 

 突然、大音響と共に衝撃波のようなものが走り抜ける。シロウは動きを予想して『変幻自在』を【形態変化】させて大盾を構えた。

 身体が動きが鈍くなる。【ハウリング】だ。

【状態異常耐性(大)】を持っていたおかげで、動きが鈍くなる程度で済んだが、【状態異常耐性】などを持ってないヒナタ達は身体が硬直した。

 

「【多重障壁】【防御障壁】」

 

 大盾用の【不動】などのスキルを持ってないシロウは、防護魔法を使って補う。

 ヒナタら目掛けて、スカーレットウルフが風のように突進し、大盾を構えていたシロウをいとも容易く吹き飛ばした。

 

「うぐっ」

 

 防護魔法のおかげで大きなダメージを受けずに済んだが、空中に投げ出されたシロウは背中から落ちる。それが合図だったかのように、ヒナタ達の硬直がふっ、と消えた。

 

「騎士くん、大丈夫?」

「ん、へいへいき」

 

 吹っ飛びはしたものの、多少のダメージで済んだのでシロウは立ち上がり、大盾を剣に戻すと再び構えた。

 シロウを吹き飛ばした張本人のスカーレットウルフは、体を反転させると再びヒナタらへと向けて襲いかかってくる。赤色の目がセレナの方を向いた。

 

「【加速(アクセル)】」

 

 セレナへ向けてその大きな口を開き、鋭い牙を突き立てようとしたスカーレットウルフだったが、次の瞬間、ガチッ! と歯を合わせただけになった。

 加速したセレナはスカーレットウルフの牙を避けて、その横を抜けざまに左前足を斬りつけた。

 

『グルガアァッ!』

 

 今度はその左前足でセレナを踏み潰そうとするが、寸前でそれを避けて後方へと飛んで避ける。

 

「おりゃあああああぁぁっ!」

「はああああぁぁっ!」

 

 セレナとすれ違いに飛び込んできたヒナタの拳とシロウの剣が、スカーレットウルフへ向けて弧を描く。

 

『ガアアァアァッ!』

「「っ!」」

 

 突然、スカーレットウルフの毛が逆立ち、空中の二人に目掛けて打ち出される。

 毛が発火して、まるで炎の雨のように放たれたのだ。

 撃たれた二人はダメージを受けて落下する。

 落下した二人はすぐさま起き上がり、スカーレットウルフから離れた。

 

「ヒナタ、大丈夫?」

「びっくりしたけど平気! そんなに大きなダメージは受けていないよ。騎士君は?」

「僕も平気だよ」

 

 にかっと笑うヒナタに平気そうなシロウ。まだHPには余裕があるようだ。

 スカーレットウルフに向き直ると、セレナは攻撃を躱しつつ、素早さを活かして翻弄していた。

 

「【ホーリーレイ】!」

「【ストライクショット】!」

 

 そこにユキの【ホーリーレイ】とユカの【ストライクショット】が撃ち込まれる。

 光の光線と矢が一直線にスカーレットウルフに向かうが、口から炎のブレスを吐き出して打ち消してしまった。

 

「ユキとユカさん、もう一度魔法と矢を、準備ができたら合図を」

 

 頷いてユキは魔法を弓を構えたユカ。シロウらはスカーレットウルフへと突撃した。

 スカーレットウルフが撃ち出す毛の針を、左右に躱しながら、その巨体を斬りつけていくが、大きなダメージは入っていない。

 

「騎士くん、いつでも撃てるよ!」

「私もオッケーだよ!」

「よし、みんな離れて目を瞑って!」

 

 その一言でシロウが何をしようとしているか皆には伝わったようだ。

 スカーレットウルフは距離を取ったシロウらを追いかけて来ようとする。そのタイミングでインベントリから出した『それ』をシロウは【投擲】で投げつけた。

 

「くらえ!」

 

 ガラス玉のような『それ』がスカーレットウルフの額に当たると、眩い閃光が辺り一面に放たれた。スカーレットウルフに挑む前にリサが渡してくれた『閃光弾』である。

 

『グルガァッ!?』

「ユキ、ユカさん、今だよ!」

 

 眩しい光を腕で防ぎながら叫ぶ。

 

「【ホーリーレイ】!」

「【ストライクショット】!」

 

 目が眩んで立ち尽くすスカーレットウルフに向けて、セレナが光の光線を放ち、ユカが矢を放つ。

 

『グルガフッ!?』

 

 矢が右目に突き刺さり、横っ腹に【ホーリーレイ】を受けて、スカーレットウルフは吹っ飛ぶ。

 その隙に死角となった右側から回り込んで、スキルを発動する。

 

「【シグナス・スライサー】」

「【クロススラッシュ】」

「【バーニングラッシュ】!」

 

 高速の突進がスカーレットウルフの背中に繰り出される。

 背後に回ったヒナタとセレナ。

 ヒナタの炎を纏った拳のラッシュでふらつき、セレナの振り下ろされた双剣が、スカーレットウルフの尻尾を斬り落とした。

 

『ギャアァァアアァンッ!』

 

 跳ね飛びながら、スカーレットウルフが全身の毛を逆立てて、炎を纏った毛の針を撒き散らす。

 炎を纏った毛の針を周囲にいたシロウ達を襲った。

 

「【防御障壁】!」

 

 ユキが咄嗟に張った防護魔法のおかげで、ダメージを受けずに済んだ。

 スカーレットウルフはよろめきながら、シロウらから距離を取った。

 相手のHPを三分の一減らした。

 

『オオオオオオオォォォォォォォォォッ!!』

 

 再びシロウらを衝撃波のようなものが貫いていく。【ハウリング】だ。再び全身が硬直して動けなくなる。

 硬直で動けなくなった隙を狙って、これまでよりも疾いスピードでスカーレットウルフが突進してくる。まるで放たれた矢のようにシロウらへと向かってきた。

 

「うぐっ!」

「うわっ!?」

「きゃっ!」

 

 轢き逃げのような体当たりにシロウにヒナタ、セレナが吹っ飛んだ。

 起きあがろうとしたシロウをスカーレットウルフはその巨体で押し倒して、右肩に鋭い牙を突き立てられる。

 

「ぐっ!」

 

 痛みはなく、肩を力強く掴まれているような感じだ。

 

 

「【ホーリーアロー】」

「【ストライクショット】!」

 

 シロウに噛みついたスカーレットウルフの横腹に、ユキの魔法とユカの矢が突き刺さる。

 硬直が解けたみたいだ。

 

『グルガァッ!?』

 

 飛び退くようにシロウから離れたスカーレットウルフに今度はセレナとヒナタが襲いかかった。

 

「【アクセル・ファング】」

「【フレアフィスト】!」

 

 セレナは高速で左右四回ずつの斬撃が繰り出し、ヒナタの拳が触れた瞬間、爆発を巻き起こす。

 ブレイドウルフは爆発の余波で横倒しになった。

 その間にシロウはHPを回復させて立ち上がった。

 

「【サークル・ソード】」

 

 HPを回復させたシロウはすぐさま戻り、剣の嵐を降らせた。

 

『ギャオアアァァァァッ!』

 

 セレナにヒナタ、ユキとユカのおかげでHPゲージが、半分から四分の一まで減っていた。

 起き上がったスカーレットウルフは左耳がなくなり、傷だらけになっている。

 スカーレットウルフが口を開き、咆哮を轟かせる。

 

『ウオォォォォォーーーーーーーンッ!』

 

 スカーレットウルフが咆哮すると、姿が変化して全身を炎で纏うようになった。

 

「スカーレットウルフの最終形態だよ。みんな気をつけて!」

 

 スカーレットウルフが炎を纏ってこちらへ向けて再び突撃してくる。

『変幻自在』を大盾に『形態変化』させる。

 

「【石壁】」

「【多重障壁】【防御障壁】」

 

 前に出たシロウはそれをそれを防ごうと大盾を構え、シロウは石の壁を出現させて、ユキはシロウに防護魔法をかけた。スカーレットウルフが盾に正面から激突した。

 

「ぐっ……!」

 

 激突して後ろに下がるが、吹き飛ばされそうになるのをなんとか堪えて踏ん張った。

 

「【加速】

 

 加速したセレナはスカーレットウルフの顔面を斬りつけた。

 それに続いてヒナタが拳を入れるが、スカーレットウルフは避けてその場から飛び退く。

 大盾を杖に【形態変化】させてシロウは魔法を使う。

 

「【アストラルバインド】【ヴェノムバインド】」

 

 スカーレットウルフの足下に鎖と毒を持った蔓がスカーレットウルフを拘束する。

 

『ガッ!? グガッ!? グガガガガッ!』

 

 拘束されたスカーレットウルフは必死にもがくが、引きちぎっても引きちぎっても抜け出さないでいる。

【ヴェノムバインド】の効果でスカーレットウルフに紫色の泡のエフェクトが出現する。『毒』のエフェクトだ。

 拘束されて動けないでいるスカーレットウルフ。再び突撃されてはたまらないので、動けないでいるスカーレットウルフを逃すシロウらではなかった。

 

「【アクセル・ファング】

「【フレアフィスト】!」

 

 スカーレットウルフに向けて、セレナとヒナタのスキルが炸裂する。拘束されて動けないスカーレットウルフは避けることもできずに、その攻撃をただ食らうだけだった。

 毒の効果もあり、スカーレットウルフのHPはレッドゾーンに突入した。

 

 

「【ホーリーレイ】!」

 

 トドメとばかりにユキは最大級の魔法を練り上げて、光線が眩しく輝き放たれた。

 

『グルガァァァァァァァッ!』

 

 断末魔の雄叫びを放ち、炎狼は光に飲み込まれていく。

 光線を受けて、その場に力無く倒れたスカーレットウルフは光の粒子となって儚く消えていった。

 

 ファンファーレが鳴り響く。

 

『エリアボス、【スカーレットウルフ】の討伐に成功されました。

 

 討伐パーティの五名、

 

【シロウ】

【セレナ】

【ヒナタ】

【ユキ】

【ユカ】

 

 以上の方々に討伐報酬が送られます。討伐おめでとうございます』

 

 討伐成功をお知らせする個人メッセージウィンドウが表示された。

 

「やったーーーーっ!」

「やったね!」

 

 ヒナタとユキが手を取り合い喜んでいる。

 

「お疲れ様でした」

「そっちもね」

「つかれたねー」

 

 セレナ、ユカとハイタッチしてお互いの健闘を讃える。

 

「討伐報酬とかが気になるところですが、まずはここから出て、先に進みましょう」

 

 セレナの指示に従い、大きな扉前に進む。

 正面に立って扉を押すとギギギ……と重い音を軋ませながら大きな扉が開いた。

 階段を登っていくと出口が見えてきた。

 外に出ると空は雲に覆われている。

 街道は草むらと木々が立ち並び、モンスターの姿はない。ここはセーフティエリアのようだ。

 シロウらは木の下に腰を下ろして手に入れたアイテムを確認する。

 インベントリを開き、ソルオーブがあるか確認する。

 スカーレットウルフの討伐報酬が、『炎狼の牙』と『炎狼の毛皮』が三つずつで、『炎狼の爪』が一つそして『ソルオーブ』を見つけた。

 

「あったよ『ソルオーブ』」

 

 シロウはインベントリから手のひらサイズの金色に光る宝玉を取り出した。

 

「これが『ソルオーブ』……」

「綺麗……」

 

 

【ソルオーブ】 Sランク

 

 ⬜︎各エリアのボスがドロップするアイテム。ソルの塔に必要なもの。

 ◼️売却不可/譲渡不可/破壊不能

 

 

 こうしてシロウ達はソルの塔を攻略するのに必要な鍵、ソルオーブを手に入れたのだった。

 

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