レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと約束

「ただいまー」

「おかえりなさいませ。真白様」

「おかえりなさい。お兄ちゃん!」

 

 今日のセレナはエプロンを身につけ、髪をポニーテールにまとめあげた姿で瑠璃と一緒に出迎えてくれた。

 先にご飯を作ってくれていたらしいセレナと瑠璃は真白が帰ってきたのに合わせて玄関に来てくれた。

 一応遅くなると連絡はしておいたのだが、セレナに気を遣わせていたらしい。

 

「お兄ちゃん、今日はセレナさんと一緒にご飯を作りました!」

「そっか、瑠璃ちゃんありがとう」

 

 褒めて褒めてと、撫でて欲しそうな顔をしているので、瑠璃の頭を撫でる。

 撫でると『えへへ』と目を細めて嬉しそうにしている。可愛いなと、思いながら癒される。

 

「真白様、その袋は?」

「友達とゲーセンに行ってきた。まあ戦利品だね」

 

 色々と取ったので大袋にぎっしり入っていて、セレナからも中身がたくさん入っている事が分かったのだろう。

 

「随分とたくさんですね?」

「まあ、セレナになにが気に入りそうなのかわからないから、多めに取ってきた」

「私にですか? 何を取ってきたのですか?」

「あとでね。お腹すいたよ」

 

 今渡してもいいがどうせならゆっくりと反応を見たいので、後回しにしておく。

 それに空腹もあるので、早くセレナのご飯が食べたかった。

 

「わかりました。では先に手を洗って着替えてきてください。それとうがいもです。その間にご飯をよそってますので」

「ん、りょーかい」

 

 おかんみたいだなとは思ったものの口には出さずに、言われた通りに洗面所に向かった。

 

「……で? そんなに何を取ってきたのですか?」

 

 夕食後、セレナは気になっていたのかソファーの側面に寄りかかっている戦利品の袋をちらりと見て聞いてきた。

 

「ん? ぬいぐるみだよ」

 

 隠すつもりはないので袋を持ち上げて膝にのせて、留めていたテープを剥がしつつ答える。

 

「ぬいぐるみですか?」

「セレナはぬいぐるみ好きかな?」

「別に嫌いではないですけど……」

「セレナの好みってわからないから、紗希姉さんと選んで取ったんだー」

 

 なにが好みなのかはわからないために、紗希と一緒に選んだ。

 今日一番の収穫は割と大きいぬいぐるみをワンコインで獲得したことだ。真白としては地味に自慢だ。

 黒の毛並みにつぶらな瞳の猫を取り出して、セレナに渡す。

 何のキャラクターかよくわからないがとりあえずセレナは猫っぽい雰囲気なので取ってきたのだが、セレナは渡された猫をじっと見つめるだけだった。

 

「どうして私にぬいぐるみを?」

「セレナには家事とかでお世話になっているから、日頃の感謝も込めて何かをあげたいと思ってさ」

「昴様の頼みを引き受けただけです。ですので別に何かしてもらうことは必要ありません」

「それでもだよ。僕が勝手にやってるだけから気にしないで」

「ですが……」

「別に僕がそうしたかっただけだから、君が気にすることじゃないよ。それに、僕はセレナのことを色々と知りたいとも思っているんだ」

 

 別に対価がほしくてあげている訳ではなくて、セレナはなにが好みで食べ物以外で喜ぶのか気になって与えただけなのだ。

 これだとセレナが喜ぶのが対価の様に聞こえるが、結局のところは自己満足だしあげたいからあげているのであって、本人が気にする必要はなんらないのだ。

 それでもセレナは貰い受けるのは気に病んでいるらしい。

 むしろ真白としては彼女に面倒を見てもらっているので、恩としてもこれでも釣り合わないと思っているのだが。

 

「それでも、私も何か返したいです」

「強情だねー。……んー、そんなに気にするなら、一つくらい貰っとこうかな」

「私にできることなら、何でも」

 

 本当に言ったら何でもしてくれそうな気がしてちょっと危うく感じるのだが、流石に変なことや負担のかかることを頼む訳にはいかないだろう。

 

「んー……今度の休み、セレナと一緒に買い物したり遊んだりしたいかな」

 

 なので、真白が喜んでセレナの好みもわかればいいなと思い頼む事にした。

 

「それってつまり……デートってことですか!?」

「単にセレナと一緒にどこか出かけたいと思っただけだよ」

「弟君、傍から見たらデートに誘ってる様なもんだよ」

 

 二人から見たらデートに誘っているに見えるが、真白としてはたまにはセレナと買い物したり遊びに出かけたいと思っていた。

 

「……お出かけですか?」

「セレナが良ければだけど」

「……わかりました。それで、どこに行くつもりですか?」

「えっ、そ、それはまだ決めてないけど」

「決めてないのですか……」

「……そのセレナがどんなところ好きかわからないし……」

「え、私ですか?」

「……折角一緒に出かけるなら、二人で楽しめるところがいいなって」

 

 ダメかな? と上目遣いに言われて駄目と言える人間が居る筈がなかった。

 可愛いと思ってしまうセレナだが、表情を変えずにクールに装う。

 セレナはシロウは年上キラーなんじゃないかと思う。どうにも母性本能をくすぐるところがある。

 

「……それなら、行きたい場所があります」

 

 一度行ってみたい場所がセレナはあった。

 

「どこかな?」

「笑いませんか?」

「笑わないよ」

「……猫カフェ」

 

 そう、可愛いらしい猫がたくさん居るあの猫カフェだ。

 セレナは動物が割と好きだったりする。

 昴の実家の方には犬や猫などを飼っていたので、メイドの仕事が休みな日には戯れて遊んでいたりなどをしていた。

 一人でそういったカフェに行こうとしたが、なかなか今まで実行には移せなかったのだ。

 

「……その駄目でしょうか?」

「そんなことはないよ。じゃあ、その一緒に行こうかー」

「……はい」

 

 受け入れてくれた事がありがたくもあり、気恥ずかしくもあり。

 微妙に熱が宿り始めるのを感じながらもそれを押し隠したセレナに、真白は小さく笑う。

 

「そのあとはどうしますか?」

「そのあとは、一緒に買い物して……セレナはゲームセンターは行ったことはある?」

「ないですね……ゲームセンターに行ってみたいです。私はああいうところ行った事なくて」

 

 やはりというかお嬢様らしいセレナはゲームセンターも行った事がないらしく興味を示していたので、それなら勉強もかねて連れていってしまえばいい。

 セレナと一緒に取るのも楽しいだろう。

 

「ならそこでいいか。猫カフェ行ってご飯行って買い物してゲームセンター行って、って感じかな」

「はい」

 

 一応当日のスケジュールがある程度決まってほっと一息ついていると、セレナが真白に顔を見せるように上を向いた。

 

「……楽しみですね」

 

 表情はこそ変わってないが、声音からは楽しみにしているのを感じた。

 

「……お姉ちゃん、何だか空気が甘ったらしいです」

「だねー。お姉ちゃん、無性に壁を殴りたくなってきたよー」

 

 甘酸っぱい空気になり二人は無性に壁を殴りたくなる衝動に駆られた。

 

 今度の休日に出かける約束をしたあと、すぐさま『アストラル』へと真白とセレナはログインする。

 紗希と瑠璃も今日はログインすると言っていた。

 視界を開くとギルドホームの自室にいた。

 ウェンディのプレイヤーネームである『ウェンティ』を確認してみると、まだログインしてないらしい。

 彼女のログインを待つ間に、真白はチャットで他のみんなに呼びかけることにした。ヒナタとユキは近くの平原で狩りをしていて、リサとユカは工房にいるようだ。

 自室を出るとセレナも出てきて、噴水広場にサキとルリが待っていた。

 姉のサキは【人間族ヒューマンぞく】で妹のルリは犬の【獣人族ビーストぞく】だ。

 

「お待たせー」

「お待たせしました」

「私達も少し前にログインしたところだよー」

「お兄ちゃんの仲間はどこですか?」

「そろそろ来るはずだよ」

 

 と、そのタイミングで『ウェンティ』から連絡が入る。

 

『ログインしたよー。今どこにいる?』

「噴水広場にいるよー」

『わかった。すぐに行くねー』

 

 少し待っていると噴水広場に一人の少女がやってきた。それと同時にヒナタとユキとリサとユカもやってくる。

【エルフ族】の少女だ。耳が長く、魔法に長けた種族。

 装備は杖。腰には剣。

 金髪のロングヘアで、ベレー帽を被り。上は清楚な白いブラウスに、下は青いティアードスカート。そこから伸びる足には黒いニーソックス。そして白衣のようなローブを装備していた。

 

「『シロウ』だよね?」

「うん。そっちは『ウェンティ』だね」

「うん。待たせてごめんね」

「大丈夫だよ。そんなに待ってないから。みんな、この人達を紹介するね。サキと、その妹のルリ。それからウェンティ。三人は現実リアルでの僕の知り合いだよ。今はソロらしいみたいだから今回パーティに誘ったんだけど、いいかな?」

 

 一応、さっき話を通しておいたが、もう一度確認のためにみんなにお伺いを立てる。

 

「私は別にいいよ!」

「私もいいよ」

「ふふふ、可愛い子なら大歓迎よ♪」

「みんながいいなら、私も構わないよ」

「シロウの知り合いなら問題ないぜ」

「私からは特に何もございません」

 

 みんなから承諾を得て、サキとルリ、ウェンティがパーティに加わった。

 

「リゼルちゃんは魔法使いなの?」

 

 ウェンティの杖を見ながらユキが尋ねる。

 

「そうだよ。【風属性魔法(中級)】、【付与魔法(中級)】を持ってるよ。それと【剣の心得】も取ってる」

「レベルと熟練度はどれくらいなのですか?」

「レベルは48で、熟練度はどっちも五割くらい? 上級までまだ時間がかかりそうです」

 

 セレナにウェンティが答える。

 

「それよりも、気になっていることがあるんだけど……」

 

 ちら、とシロウの方を見るウェンティ。なんだろうと思う。

 

「その剣が杖に変わるのを【カレイドブラッド】戦の動画で見たんだけど、もしかして【ユニークシリーズ】?」

「うん、そうだよ」

「わ、やっぱり!? それ気になっていたんだよね」

「それじゃあとりあえず、慣らし運転ってことで、みんなで【へイニス街道】に行こうか」

 

 シロウが今日の方針を決める。【ヘルニス街道】はここ【機械都市フレスベルク】の東に広がるただっ広い平原だ。

 モンスターのレベルはそんなに高くなく、安心して狩れる。

 シロウ達にはうってつけなので、【ヘルニス街道】に向けて出発した。

 

「【ウィンドウブラスト】!」

『グギャァァァァ!』

 

 ウェンティの風魔法で、三体のリザードマンが切り刻み込まれる。

 

「なんだか、ステータスが上昇して魔法の威力が上がってる?」

「ああ、そのことなんだけどこれは僕の能力なんだ。バレると狙われるかもしれないから秘密にしてほしいんだ」

「うん、それはいいんだけど……い、いいの? そんな簡単に能力を見せて?」

「いーよいーよ。ウェンティなら大丈夫そうだし。それにこの能力はパーティに入ると勝手に発動するんだよね」

「シロウがいいならいいんだけど、もし私が口を滑らせたらどうするの?」

「んー、別にどうもしないかなー。それにウェンティはそんなことしないでしょう?」

「うん、それはもちろんしないけど、簡単に信じて大丈夫なのかなって……」

 

 ウェンティなら能力を見せても大丈夫だと思い、信じているのだ。

 

「シロウ様、敵です」

 

 話しているとセレナが注意を促す。シロウ達の前に現れたのは『ビッグマンティス』という、人より大きな蟷螂であった。それが二匹いる。

 シロウは腰にある『変幻自在』を【形態変化】させて『神秘書庫アルカナ』に変える。

 

「【挑発】」

「【ファイアーボール】」

「【ウィンドウブラスト】!」

「【ストライクショット】!」

 

 サキがビッグマンティスの注意を引きつけて、シロウの魔法とウェンティの魔法とルリのスキルが炸裂し、ビッグマンティスは光の粒子となって消えた。

 しばらく【ヘルニス街道】でシロウ達は狩りまくり、それから【機械都市フレスベルク】へ戻って、新しく仲間になったウェンティ、サキ、ルリの歓迎会を開いた。ウェンティにはシロウ達の目的を話した上でパーティに入ってくれることになったのだ。

 ウェンティ、サキ、ルリの三人はみんなと馴染んだようでよかったなと思うのだった。

 

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