「ここからはなにがあるかわからないから気をつけて慎重に進みましょう」
シロウとレメ、トトは一メートル先も見えない濃霧の中をゆっくりと歩く。
「ん? これは……」
シロウの足先にコツンと当たった何かを拾い上げる。
それは壊れた機械だった。
様々なパーツによって組み上げられていたであろうものの残骸である。
シロウ積み上がった残骸の山の隙間を縫うようにまともに歩ける場所をじりじりと進む。
「なんだか寂しい場所だな」
「そうだね。それと如何にも、なにかでそうな雰囲気もあるよね」
「おいおい、怖いこと言うなよ」
「ここは壊れて動かなくなった機械達の墓場じゃ」
レメは怖がり、シロウにしがみつく。
シロウ達は霧が薄い方へと歩いていき、ついに最奥に辿り着いた。
壊れた機械の残骸が山のように囲まれた場所。
そして奥に一人の男が残骸にもたれかかるようにして座っている。
その体は機械でできていた。
人型に近く、目に光がない。片腕は半ばからなくなっている。
「トトお爺さん、この機械が一代目機神ですか?」
「うむ、そうじゃ」
シロウは動かなくなった一代目機神に恐る恐る近づいていき、胸のコアに触れる。
『グ…ガ……』
一代目機械神が動き出したためにビクッとして三人は機械の残骸に身を隠す。
「おい、動いたぞ! 壊れて動かなくなったんじゃないのか!?」
『我ハ王……機械ノ王…偉大ナル知恵ト遥カナル夢ノ結晶……』
「……」
「……
「我ハ……王……カツテノ王……淘汰サレタ者……」
レメは狼狽えるが、シロウとトトは一代目の言葉を静かに聞く。
『我ハ…………ナンダ…我ハ……?』
一代目は言葉はどんどん小さくなって途切れ途切れになり、ついに話さなくなってしまった。
「止まったぞ……」
心配するレメの目の前で赤い光が一代目を包んでいく。
『グ……』
「何か様子がおかしい……」
「なにがどうなってんだ……」
「一体どうしたというんじゃ……」
一代目の様子がおかしいことに気づく。レメはなにが起こるのか不安になっていく。
『我ハ…ガラクタノ王……ゴミノ中デ眠ル王……ユメモキセキモ……全テガラクタニ……』
そういうと一代目の体が変形する。
周りの残骸を吸収して、兵器を生み出し体に纏う。
銃が剣が次々と武装に展開される。
『オマエ達モ……ガラクタニシテヤロウ!』
「おい、ヤバいぞ! どうするんだ!?」
「戦って正気に戻すよ。レメとトトお爺さんは隠れてて」
「うむ、わかった。くれぐれも気をつけるんじゃぞ」
剣を構えて戦闘準備をする。戦う決意したその次の瞬間、シロウの視界を弾丸が覆い尽くした。
シロウは咄嗟に【防御障壁】を張ったおかげでダメージを受けずに済んだ。
「【多重連弾】」
とりあえずシロウが機械神に魔力の塊を撃ち込むものの、透明なバリアに阻まれて微々たるダメージしか与えられなかった。
全く効かないわけじゃないが効果が薄い。
「シロ坊、胸のコアを狙うのじゃ! たぶんそこが弱点だ」
「了解です」
機械の残骸に身を隠したトトがシロウに言う。
弱点である部分は胸のコアだ。
赤い光の留まった胸のコアを狙えばおそらく大ダメージを狙えるはずだ。
近づこうにも、近づけば近づくほど攻撃が激しくなる。
まずはそれを止めなくてはならなかった。
「【分身】、【加速アクセル】、【ファントムラッシュ】」
八人の分身を出し、さらに加速してからの四方八方からの同時攻撃で撹乱する。
魔法と同様に微々たるダメージしか与えられてないが、今は分身に機神からの攻撃を引き受けさせている。
シロウは機神に肉薄し赤い光の留まった弱点部分を狙った。
「【クロススラッシュ】」
弱点である部分攻撃したことにより、大ダメージを与えることができた。その結果なにやら機神の様子が変わった。
『グッ……カハッ……我ノ…意識ハ……モウ時期…消エル……ダガ……』
シロウは話し始めた機神の声を一音も聞き逃さないように耳をすませる。
『僅カニ意識ノ戻ッタ今……託ス…勇敢ナ…者…ヨ……』
そう言う機神の胸の穴には赤い光が留まり始めていた。
『……我ノ…力デ……我ダッタ…モノ…コイツ…ヲ……倒…セ……』
「シロ坊! ワシの機械を使うんじゃ!」
そう言うと同時に機械神はシロウに向けて古びた歯車を投げつけ、トトはインベントリから未完成の機械を取り出した。
『我ヲ……眠ラセテ…クレ……』
それと共に機神の様子が変わる。
全身が赤い光に包まれて、パーツの存在しない二代目の装備を身に纏い空へと舞い上がり赤い弾丸で攻撃してきた。
シロウは分身を解除して迫り来る弾丸を避ける。
『我ヲ倒スナド…不可能…』
無機質な声が上空から聞こえる。
内容からして二代目の声だろう。
一代目の体は二代目に乗り移られて無理矢理動かされている。
「シロ坊。頼む、機神を倒してくれ」
「もちろんです。任せてください」
頭の中にイメージが浮かび上がる。
「【接続開始】」
シロウが呟くと古びた歯車とトトの未完成の機械が反応した。
古びた歯車はシロウの体に吸い込まれて消えていった。
シロウはトトの機械を選択した。
二代目が何もない無から機械を創り出すことができるのに対して、一代目は材料が必要だった。
即ち。
装備を利用し、武器を生み出す力。
当然、材料が良質であればあるほどできる武装は強力になる。
「ワシの作った機械は全て最高の材料で作ったものじゃ! 思う存分使うがいい!」
「【全武装展開】」
静かに呟いたシロウ、コアが手に入ったことによりトトの機械はついに完成する。
身に纏うは黒い機械。
それから、夜空を思わせるような黒い武装が次々と展開される。
腕の部分からガシャガシャと音を立てて銃が組み立てられ、背中からはシロウの体と比較すると大きすぎる砲身が空に向けられる。
腕は同様の黒い刃に変化されて、それらを支える足腰は機械を纏ってより強靭になった。
胸から腹部にかけては大中小な歯車が回転して、顔の右半分から首には歯車や配線が複雑に覆っていた。
「いくよー…【アストラルバインド】、【ヴェノムバインド】【アイスバインド】」
ストックしている魔導書を使い、鎖と毒の蔓と氷の鎖で二代目の動きを拘束する。
機械なので追加効果の毒は効かないが拘束するのは可能だった。
氷の鎖の追加効果で徐々に二代目の体は凍結していく。
「これで…逃げられないね」
『フン…我ヲ拘束シタトコロデナニニナル』
余裕綽々といった感じで二代目はシロウを脅威と感じていなかった。
「【攻撃開始】」
爆音と共に全ての武装が火を吹く。
これらの武装は装備に見えるが装備ではなく、スキルの扱いになる。
熟練度があり、練度が低いと一発一発の威力はそこまで高くなく蓮撃に頼った武装で、熟練度が高くなっていくと威力も上がっていく。
熟練度の伸びは遅いがその分多くの武装が増えていく。
『グッ……コノ我ガ人間二破ラレルナンテ……』
一代目に乗り移っていた二代目は敗れた。
シロウは一代目を抱き抱えて静かに彼を彼の機械にもたれかからせたら。
『我ダッタ…モノヲ……倒シテ…クレテ……感謝…スル……』
一代目は最後に感謝の言葉を残して再び眠りについた。
「……」
「……帰るかのう」
「ああ……そうだな」
シロウ達はしんみりとした雰囲気で機械都市に戻っていく。
トトは行きとは違い帰りはスピードを落としていた。
「シロ坊にちび助、ワシの頼みを聞いてくれてありがとう」
「いえいえ、こちらこそ貴重なお話を聞かせてくれてありがとうございました。」
「ありがとうだぜ」
「シロ坊は機神の力を受け継いだのじゃな?」
「はい、そうみたいです。」
「その力はお主に受け継いだものじゃ、有効活用するがよい」
「はい、わかりました」
ポーンという音と共にウィンドウが開いた。
★クエストを達成しました。
◼️個人クエスト
【頼みを聞いてみよう】
◼️達成
◼️報酬 ソルコイン五枚 移動用機械
クエストを達成し、報酬として『ソルコイン』と『陸海空用機械』を貰った。
『ソルコイン』は五百円ほどの大きさだ。銀色の金属製で表には中央に大きく一つ、太陽が描かれている。
【ソルコイン】 Eランク
◼️太陽の力が込められたコイン。
個数によって、特定のアイテムやスキルと交換できる。
⬜︎収集アイテム
集めると闘技場にあるショップで交換することができるのアイテムだ。
「トトお爺さん、この機械を貰っていいんですか?」
「うむ、ワシはあまり使うことがないからお主にやる。乗り回すがいい。」
「わかりました。トトお爺さんありがとうございます。また来ますねー」
「トト爺、またな!」
シロウとレメはお礼を言って工房を出たのだった。
To be comtinued