レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと花園の庭園

シロウとレメはギルドホームに帰ってきた。

 

「んー……戻ってきたけど……みんなどこかに行ってていないみたいだね」

「そうだな。なあやることないんだったら、【星門(スターゲート)】を使ってシークレットエリアを探しに行かないか? 前にシークレットエリアに行ってみたいって言ってただろう」

「うん、それいいねー。そうしようか」

 

ランダム転移のため狙った場所には行けないが、未だ行ったことのないエリアに行くのも楽しみの一つだ。

シロウとレメが次の行動を考えていると、入り口からセレナが現れた。

 

「今ちょうど出かけようと思っていたんだがセレナも一緒に行かないか?」

「星門スターゲートでのランダム転移、ただし危険でドキドキな出かけになるけどね」

「そう…ですね。はい、いいですよ」

 

セレナが快く快諾したため三人で外へと向かう。

 

「お二人は何処へ行ってたのですか?」

「「んー…神様のところかな」」

「えっ……?」

 

セレナの予想を遥かに飛び越えたその答えに思考がフリーズする。

 

「あの……何を手に入れたのですか?」

 

一瞬思考がフリーズしたセレナだが気になって恐る恐る聞いてみた。

 

「んー説明するよりも見せた方がいいかもしれないね。ちょっとだけ、【武装展開・左手】」

 

シロウの左手からは銃が展開された。

 

「これは……一体なんなのですか?」

「そういう反応だよなぁ。オイラも見た時は驚いたぜ」

 

シロウは見せた後すぐに武装をしまう。

驚いているセレナに【神装】を手に入れた経緯を説明した。

 

「なるほど……やはりシロウ様は変…いえ、変わった方ですね」

「なんだか酷いこと言われた……」

「まあシロウが変なのは同意だな。そんなことよりもはやく出かけようぜ」

 

二人に変な人認定されてしまうシロウだが気にすることはなく、レメに急かされてスキルウィンドウを開き、【星門スターゲート】をセットする。

 

「じゃあ行くよー!」

 

星型の魔法陣にシロウとレメが入り、最後にセレナが足を踏み入れたその瞬間、転移が始まった。

一瞬にして背景が切り変わった。

転移はすぐに終わり、シロウ達は見たこともない場所に立っていた。

 

「おおっ! 綺麗だなぁ」

「とても綺麗な所ですね」

 

あたり一面は花畑で目を凝らして見ると中央の方にポツンと建物が見えた。

シロウはとりあえず現在地を確認しようとマップを呼び出し、自分達のいるところにあるマーカーを見た。

しかしマーカーがなく、マップ表示には【花園の庭園】と出ている。

 

(マップ上に存在しないエリア……。もしかしてここはシークレットエリアなのかな?)

 

シロウはこんな簡単にシークレットエリアが見つかるとは思っていなかった。

見つかるとしても、もっと時間が掛かる思っていた為に驚きだった。

 

「あはは、これは珍しいお客様だね♪」

 

不意に背後からかけられた声に思わず振り向くと、そこには140cm以下に見える子供だったが、纏う雰囲気は異質といってよかった。瑠璃色のセミショートヘア、宝石すら色あせる程に美しい翡翠色の瞳、少女にも少年にも見える愛くるしい顔、黒く大きめのコート。大部分袖が余っているせいかローブの様に見える服に身を包んだ子供は太陽の光に照らされて芸術の様に異質な煌めきを放っていて、シロウ達は見とれてしまった。

 

「まさかシャルの結界を飛び越えてやってくるなんてね。妙な技を持っているみたいだねー」

 

まるで花が咲く様な愛くるしい笑顔を浮かべる少女または少年の頭上にネームプレートがポップする。

 

「ボクはラピスラズリ……ラピスでもラズリでもラピでも好きな呼び方してくれていいよー。キミ達の名前は?」

「ああ、僕はシロウです……」

「オイラはレメだ」

「セレナと申します」

「シロウくんとレメちゃん、それにセレナちゃんだね! よろしくー」

「よ、よろしくお願いします。ラピスさん」

「よろしくな! ラピス」

「よろしくお願いしますラピス様」

「様と敬語なんていらないし、もっと気楽に接して大丈夫だよ」

 

愛くるしい顔で笑うラピス。しかし口調や見た目は幼いのに、声の感じとか雰囲気とか随分大人っぽく不思議で、ただの少女または少年には見えないのだ。

 

「じゃ、じゃあ、よろしくね。ラピス」

「うん。よろしくね!」

「ここはどこなのですか?」

「花園の庭園だね。普通の人は辿り着くことはできない理の外にある。それにしてもキ・ミ・達・は不思議な力を持っているみたいだね」

 

ラピスの視線はシロウとセレナに向けられる。

 

(ラピスはこの力に気づいている? でもキ・ミ・達・……?)

 

まさかと思うがラピスは神様から貰った力のことを言ってるのかとシロウは考える。

達と言うからセレナの方に視線を向けた。

セレナの方に視線を向けるが全く何を考えているのかがわからないが、微妙に険しい顔をしていることに気がついた。

 

「ごめんごめん、そう警戒しないでよ。深くは聞かないからここで話もなんだし、お茶を出すから付いてきて」

 

ラピスはスタスタと花畑の中を歩いていく。シロウ達も追いかけてその後をついていくと、中央の建物まで来た。

建物にはメイドがいた。

 

「ラピス様、お帰りなさいませ」

「うん、ただいまー。あ、紹介しとくね。この子はアナ。こっちが……」

「初めまして、シロウと言います」

「オイラはレメだ」

「セレナと申します」

「初めまして、シロウ様、レメ様、セレナ様。アナスタシアと申します」

 

銀髪の髪、微かな皺も見当たらないメイド服を着こなす小柄な女性、アナは深く頭を下げながら挨拶をしてくる。

ただならぬオーラというか物凄い落ち着きをはらった雰囲気のある方で、同じメイドであるセレナとはまた違う雰囲気だった。

 

「アナー、お客様にお茶の用意を」

「かしこまりました」

 

ラピスがのんびりと笑顔で告げると、目の前にティーカップとお皿が現れてお茶の用意をする。

 

「ここは何者も侵入できない場所……だったのになー」

 

シロウ達を見ながら苦笑のような微笑みを浮かべるラピス。

 

「お茶とお菓子のお持ちました」

 

紅茶が載った盆とお菓子が載ってるお皿を持ってくる。

シロウ達はアナスタシアの入れた紅茶を一口飲む。

正直シロウとレメには紅茶の良し悪しなどわからないが、アナスタシアの入れた紅茶は非常に美味しく感じた。

 

「……美味しい」

「……美味いな」

「……美味しい紅茶ですね」

「お褒めにあずかり光栄です」

「さて、シロウくん達はどうやって入ってきのかなー? 見たところ【連合】や【同盟】の者ではないみたいだけど」

「【連合】、【同盟】……?」

「わからなければいいよ。気にしないでー」

「レメとセレナは何か知ってる?」

「お、オイラは全然これっぽっちも何も、し、知らないぞ」

「いえ、何も」

 

レメはわかりやすく、あからさまに知ってそうで目を泳がせて口笛を吹くが吹けていない。

セレナは表情が変わらないが何か知ってはいそうではある。

二人は知ってそうな感じではあるが、今は深く聞かないことにした。

 

「それでどうやって来たのかなー?」

「えっと……【星門スターゲート】というスキルを使って、ですね」

「なるほどね。【星門スターゲート】か。珍しいスキルを持っているんだね。でもそんな簡単に言っていいのかい? 知り合って間もないのにスキルを教えるなんて」

「ラピスには隠し事はできなそうだと思ってね。それにラピスになら話しても大丈夫かなって」

「もしボクが悪い人だったらどうするんだい?」

「んー……まあその時はその時かな」

「軽いねー」

 

ラピスに苦笑される。口調や見た目は幼いのに、声の感じとか雰囲気が随分大人っぽく不思議で安心感があり、

シロウはラピスは大丈夫そうな人だと判断したのだ。

 

「ラピスは何者なの?」

「何者、かね。なんて答えたらいいんだろうねー。暇を持て余した魔族だよ」

「魔族? 人間にしか見えないけど……ツノとか尻尾が見当たらないよ」

「魔族といっても全員がツノとか尻尾は生えてるわけじゃないんだ」

「そういうものなんだね」

 

さっきから妙にレメとセレナは静かだ。

目を向けると二人はアナスタシアの出したクッキーに夢中だった。

 

「……うまーい!」

「……美味しいです」

「ははは、良い食べっぷりだねー。さてシロウくん達は異邦人だよね?」

「うん、そうだね」

 

シロウ達プレイヤーはアストラルに降り立った異邦人として認識されている。ラピスが何者だったとしてもそれは変わらないのだ。

 

「うん、これも何かの縁。僕が関わることはないと思ってたけど。三人共ちょっとこっちに近くに寄ってくれる?」

 

自ら机の上に乗り出して来たラピスが手を掲げて、光出した。

 

「ラピス様……何を……」

「ちょっとしたおまじないだよ。はい、これで終わり」

「暖かいな」

 

ラピスがかけたおまじないは優しい暖かさを感じた。

 

「三人共、ボクの頼みを一つ一つ聞いてくれないかな?」

「もちろん、いいよ」

「頼みってなんだ?」

「頼みですか?」

 

シロウは快く引き受けて、レメとセレナは訝しげな目で見る。

 

「大したことじゃないよー。時々でいいからここに来て、ボクの話し相手になってよ。さっきも言ったけど暇でね。外界の話を聞きたいんだ」

 

ポーン、という音ともにウィンドウが開く。

 

★クエストが発生しました。

 

【ラピスラズリの話し相手になろう】

□未達成

□報酬 ???

 

*このクエストはいつでも始めることができます。

 

「僕達でよければ。と言っても、身の回りで起きたことぐらいしか話せないけど」

「かまわないよー。むしろそっちの方がありがたいからね」

 

少しばかりたわいのない話をしてから、お茶とお菓子のお礼を言って別れようとした。

 

「はい。これ、話し相手になってくれたお礼だよ」

 

ラピスはコートから丸い物とお菓子を取り出す。

シロウとセレナにはスキルオーブをレメにはマカロンを渡した。

ありがたく受け取り、お礼を告げてから別れようとして、ふと一つの疑問が浮かぶ。

 

「……そう言えばラピスって、男の子? 女の子?」

「ボク? どっちにでも変われるよー。今は女の子だけどね」

「……魔族って自由に性別を変えられるのが普通なの?」

「ううん。色々だよ。人族と同じ様に男女があるのもいれば、生殖しなくて性別自体がないのもいるし、ボクみたいに好きに変われるのもいるよー」

「へー、不思議なもんだね」

 

アストラルは謎の多いゲームだと思った。

このゲームのNPCには喜怒哀楽があり、楽しければ笑い、腹が立てばお怒り、悲しければ泣く。

プレイヤーとは見分けがつかなく、ポップしたネームプレート色の違いがなければプレイヤーだと思ってしまうだろう。

 

「またお話ししようね」

「うん」

「ああ!」

「はい」

「またねーシロウくん、レメちゃん、セレナちゃん」

 

無邪気な笑顔で手を振るラピスにもう一度お礼を告げて離れたところでちら、とラピスを見る。シロウ達が見えなくなるまで見送るつもりなのかまだ手を振っている。

仕草は人間そのもので、機械的なところは全くない。

シロウは様々なVRゲームをしてきたが、アストラルのNPCはトトやラピスの様にみんな表情や表現が豊かだった。

他のVRゲームではどこか機械的なところがあったり、何か制限があったりするものなのだ。

噂ではアストラルは異世界なのではと噂があるのだった。

シロウ達は星門スターゲートを使ってギルドハウスに戻ってきた。

戻ってきて早速貰ったスキルオーブはなんだろうと楽しみにしながら、インベントリにスキルオーブを入れる。そこに現れたアイテム名は『【ソードビット】のスキルオーブ』と『【追撃】のスキルオーブ』。

セレナのスキルオーブのアイテム名は『【神速】のスキルオーブ』と『【影使い】のスキルオーブ』。

 

「おおっ!」

「これは……」

 

どちらも星が二つついた、二つ星のレアスキルだった。

 

 

 

シロウ達が帰った頃、ラピスは見ればわかるほどに機嫌が良く、鼻歌を歌っていた。

 

「ラピス様随分、ご機嫌なのー!」

「ヨホホホ、今日は何か良いことがあったのですか?」

「うん。面白そうなプレイヤー達に会ったからねー♪」

「へぇー、詳しく聞かせてくだせえ」

 

どこからともなく妖精と全身甲冑騎士の骸骨と大鬼が現れた。

 

「本来ならここにはプレイヤーなんて来れないんだけどね。スキルを使って来たみたいなんだー。かなり確率は低いけど」

「それはすごいのー!」

「その方達は随分と運が良いみたいですねー」

「ほほう」

「まぁ、ボクとしては良い出会いが会って嬉しいけどねー」

 

無邪気な笑顔で呟くラピス。クッキーを美味しそうに口に運ぶ姿は子供であったが、静かに未来を見据えるかのような翡翠の瞳にはーーー確かな威厳が宿っていた。

 

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