レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと決闘

 昼休み。

 光瑠は由紀達がいない隙を狙って不機嫌さを消さず、真白のところにやってきた。

 

「神原、少しいいか」

「ああ……はい」

 

 断れるはずもなく、真白は教室の辺りを見渡す。すると誰も関わりたくないのか誰も彼もが視線を逸らされる。

 昨日のことについて聞きに来たのだろう。

 光瑠についていき、人の気配が一切しない場所に向かう。

 校舎裏の片隅。ちょうど死角となっている場所だ。

 

「昨日、由紀と一緒にいたんだ。お前が由紀と何をやっていたのか、説明しろよっ」

 

 どうして由紀と真白が一緒にいたのか。

 二人で何をしていたのかを、光瑠は知りたがっていた。

 

「由紀と遊びに行った帰りで、夕方に女の子を一人で帰すわけにはいかなかったから送っていたんだ。だから天草くんが気にするようなことは何もないよ」

「いいか、由紀は優しいから断らなかったんだろう。お前の勝手な都合で付き合わせたりするな……彼女の優しさに甘えるなよ? 由紀の幼馴染として、忠告してやる」

 

 由紀は誰に対しても優しいので自分が特別だとか勘違いするつもりは毛頭なかった。

 

「神原、お前シロウだろ? 今夜、アストラルに来い俺と決闘しろ!」

「ちょっとまっ……」

 

 昨日レメを見て気がつき、光瑠はもしやと思ったのだ。

 待つよう言ったが光瑠は教室に戻っていった。真白はどうしたものかとため息を吐くのだった。

 午後の授業中、ぼんやりと黒板を眺めながら光瑠との決闘を申し込まれたがどうしたものかと頭を抱える。

 できれば光瑠とは戦いたくなかった。例えばシロウが決闘に勝ったところでプライドの高い光瑠はチートやズルなどと言われて勝ちを認めない可能性もあった。

 真白としては穏便に済ませたいが光瑠のことだから、聞く耳を持たないだろう。

 今日はアストラルにログインをしたくなかったが、決闘から逃げれば光瑠の不戦勝ということになる。

 考えても仕方ないので、さっさと帰ることにした。もし勝てたらとりあえず由紀との仲を認めてもうことにした。

 

「真白くん、なにか悩んでるみたいだけどなにかあったの?」

「なんだか深刻そうな顔をしてるみたいだが、何かあったろ?」

「今日はアストラルでなにしようかなって考えてただけだよ。だから由紀と玲二が心配することはなにもないさ」

「でも……」

「本当か?」

「大丈夫大丈夫。本当に気にしないで」

 

 二人は気になっていたがそれ以上は深く聞かず、シロウは申し訳なく思いつつも話すことはなかった。

 

 シロウは帰ってくるとすぐさまアストラルにログインする。

 フレンド登録してあるヒカルからメッセージが届き指定された場所に向かう。

 機械都市フレスベルクの人気がなく、廃工場のような場所だった。

 

「神原、逃げずにちゃんと来たみたいだな」

「うん、あの……できれば現実世界での名前じゃなくてアストラルでのプレイヤー名で言ってほしいな」

「ふん、別にいいじゃないかどうせ周りには人がいないんだし」

 

 アストルムで本名を言うのは、マナー違反だ。

 現実世界での名前がバレてしまったら、他のプレイヤーから攻撃を受けることがあるかもしれない。

 直接攻撃してくるってことそんな過激なことをする人いるかもしれないのだ。

「プリンセス」「プリンス」になればあらゆる夢が叶う。どんなことだってする人はいるかもしれない。なので本名で呼ぶのは、ゲーム外だけにしてほしかった。

 

「ヒカルくん、できれば戦いたくはないんだ。なので話し合いで解決は……」

「断る! 神原真白! 俺と決闘しろ! ハンデとして武器を捨てて素手で勝負してやる! 俺が勝ったら、二度とユキには近寄らないでもらう! そして、ギルドにいる彼女達も全員解放してギルドも解散してもらう!」

 

 ヒカルは、もう止まらないと言わんばかりに剣を地面に突き立てるとシロウに向けてビシッと指を差し宣言した。

 剣を地面に突き立てて素手の勝負にしたのは、ヒカルは家の道場で武道を習っていたため、シロウに勝てると思い込み、ハンデをやるつもりなのだ。対してシロウは現実世界では武道を習ってはいなかったが、色々とゲームをやってきたためPSプレイヤースキルは高い。

 ユキ達とジュン達も流石にヒカルの言動にドン引きしていた。

 ユキ達はシロウとヒカルの様子がおかしいと思い後を追ってきた。

 

「いやいや、待って待って、ユキはまだわかるけどなんでひなた達までなの」

 

 概ね予想通りの発言だが、ひなた達までとは予想外だった。

 

「何をごちゃごちゃ言っている! 怖気づいたか!」

「ヒカル、いい加減にするんだ」

「姉さんなんでここに……」

「私が呼んだのさ。ヒカルの様子がおかしかったから、ルカ姉さんにヒカルの暴走を止めるためにね」

 

 物陰から隠れて様子を見ていたジュン達はヒカルの暴走を止めるべく出てきた。

 

「俺は別に暴走なんて……」

「してるさ、嫉妬に駆られて少年に迷惑をかけるんじゃない」

「……おかしいじゃないか。ユキは、ずっと俺の傍にいたし……これからも同じだろ? ユキは、俺の幼馴染で……だから……俺と一緒にいるのが当然だ。そうだろ、ユキ」

「えっと……ヒカルくん。確かに私達は幼馴染だけど……だからってずっと一緒にいるわけじゃないよ? それこそ、当然だと思うんだけど……」

「そうだよ、ヒカル。ユキは、別にキミのものじゃないんだから、何をどうしようと決めるのは由紀自身だよ。いい加減にするんだ」

「すまない少年。うちの弟が迷惑をかけて今まで軽い注意に留めていたせいで、甘やかすことになってしまった」

「僕は別に大丈夫なので頭を上げてください」

 

 姉のルカが出てきて頭を下げて謝罪してくる。

 シロウは慌てて頭を上げるように促す。

 

 幼馴染の二人にそう言われ、呆然とするヒカル。その視線が、スッとシロウへと向く。シロウは、どうすればいいのか困り果てていた。そのシロウの周りには美女、美少女が侍っている。その光景を見て、ヒカルの目が次第に吊り上がり始めた。あの中に、自・分・の・ユ・キ・が入ると思うと、今まで感じたことのない黒い感情が湧き上がってきたのだ。そして、衝動のままに、ご都合解釈もフル稼働する。

 

「ユキ。行ってはダメだ。これは、ユキのために言っているんだ。見てくれ、あの神原を。女の子を何人も侍らして、メイドの女性は神原の事を『シロウ様』って呼ぶそうじゃないか。きっと、そう呼ぶように強制されたんだ。メイド服だって強制させられて着ているに違いない。神原は、女性をコレクションか何かと勘違いしている。最低だ。ユキ、あいつのギルドに入っても不幸になるだけだ。だから、俺達のギルドがいい。いや、入るんだ。例え恨まれても、君のために俺は君を止めるぞ。絶対に行かせはしない!」

 

 ヒカルの余りに突飛な物言いに、ユキ達が唖然とする。しかし、ヒートアップしているヒカルはもう止まらない。説得のために向けられていたユキへの視線は、何を思ったのかシロウの傍らのセレナ達に転じられる。

 シロウ以外は女の子なので否定できずにグサグサと心に刺さり項垂れる。

 

「そこは否定できませんね」

「そうだな」

 

 女の子を侍らせているところは否定できないのでセレナとレメはフォローはしない。

 

「君達もだ。これ以上、その男の元にいるべきじゃない。俺のギルドに行こう! 君達ほどの実力なら歓迎するよ。共に、塔の頂上を目指すんだ。俺と共に来てくれるならメイドの女性も、もうシロウ様なんて呼ばなくていいしメイド服を着なくてもいいんだ」

「いえ、ヒカル様これは元々です。ですので強制はされていません」

「さあ、俺の手を取るんだ。今助ける!」

 

 爽やかな笑顔を浮かべながら、セレナ達に手を差し伸べるヒカル。ジュンとルカは顔を手で覆いながら天を仰ぎ、ユキは開いた口が塞がらない。

 

 そして、ヒカルに笑顔と共に誘いを受けたセレナ達はというと……

 

「「「……」」」

 

 もう、言葉もなかった。光輝から視線を逸らす。

 

 そんなセレナ達の様子に、手を差し出したまま笑顔が引き攣るヒカル。視線を合わせてもらえないどころか、引き気味にシロウの影にそそくさと退避する姿に、若干のショックを受ける。

 そして、そのショックは怒りへと転化され行動で示された。

 ヒカルは完全に自分の正義を信じ込んでおり、シロウに不幸にされている女の子達や幼馴染を救ってみせると息巻き、元々の思い込みの強さと猪突猛進さ、それに初めて感じた〝嫉妬〟が合わさり、完全に暴走しているようだ。

 

「はぁー、私が前にヒカルくんに言ったのにわかってくれてないなんて、酷いな。もうこれはヒカルくんを理解わからせるしかないかな」

「お兄ちゃん、お姉ちゃんが激怒です。やばいですよ」

「ひえっ……優しい人程、怒らせてはいけない」

 

 スタ○ド? を背後に出現させながら、仁王立ちで笑い合うサキにシロウとルリが傍らで抱き合いながらガクブルしていた。

 サキは優しいが怒らせると怖く、それを一番知っているのは幼馴染のシロウと妹のルリの二人である。

 

「少年、すまないがヒカルとの決闘を受けてくれ、完膚なきまでに叩き潰して構わない。負けてもギルド解散などをさせるようなことは私がさせない」

「……わかりました。もし僕が勝ったらお姉さんの方からヒカルくんに決闘を挑まないことと、本名を言うのはマナー違反だと伝えてもらっていいですか? 僕から言っても聞いてくれるかわからないので」

「ああ、わかった。勝っても負けてもヒカルにはちゃんと言い聞かせておく」

 

 シロウは話し合いで解決するのを諦めて、嫌々ながらヒカルからの決闘(デュエル)を受けることにし、ヒカルが【PvP】の申請を送ってくるのだった。

 

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