レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと墓標迷宮2

「あっという間にボス部屋まで来ちゃったねー」

「あっという間だったな」

「それじゃあ、二人とも準備はいい?」

 

 シロウの問いかけにカナミとレメは頷いた。

 転移陣の中に全員踏み込み、パーティリーダーであるシロウが、開いた転移先のウィンドウをタッチする。

 燐光に包まれたシロウらが転移した先は、大洞窟とも言うべき広い場所だった。ちょっとした広場ぐらいの広さはある。

 天井も高く、周りには光苔が相変わらず生えているので暗くはない。

 正面にさらに奥へと続く洞窟があったが、そこからスケルトンが現れた。

 ただのスケルトンではなく、【スケルトンウォリアー】、【スケルトンアーチャー】、【ボーンマジシャン】、【ボーンナイト】、【スケルトンキング】それぞれ武器が違うスケルトンのようだ。

 

 シロウとカナミは大きく迂回して、スケルトンウォリアー、スケルトンナイトの後方にいたスケルトンアーチャー、ボーンマジシャンへと向かう。

 

「【クロススラッシュ】」

「【ホーリースラッシュ】」

 

 シロウとカナミはスケルトンを切り裂いたつもりだったが、見えない障壁に阻まれた。

 ポーンマジシャンによる魔法だ。

 スケルトンアーチャーが矢をボーンマジシャンが火の魔法を放ってきた。二人は矢と火の玉を避ける。

 

「まあそう簡単にやられてはくれないよね」

「どうしようか?」

「これならばどうかな、【サークル・ソード】」

 

 スケルトンの範囲に剣の雨を降らせる。

 ボーンマジシシャンは障壁を展開した。だが止められるはずがなく、シロウの攻撃は協力だったのだ。

 既に虫の息の状態になった。

 

「カナミさん、今だよ」

「いくよー! 【ホーリースラッシュ】!」

 

 聖属性がついた剣が横なぎりに切り裂いた。

 すでに虫の息状態からのとどめだった。周りにいたアンデットは光の粒となって消えた。

 残るはスケルトンキングだ。

 手下を倒されたことで怒ったのか骨をカタカタ震わせている。

 

「なんだか怒ってるみたいだな」

「残りはスケルトンキングだけだね」

「ボスを倒して次の階層に向かおうか」

 

 アンデッドのボスなので聖属性が付与されてないためほんの少し削られただけだ。

 

「【シャイニングエッジ】!」

「【分身】、【雷天帝壮らいてんたいそう】、【ファントムラッシュ】」

 

 

 スケルトンキングの注意が少しこちらに向いたところで、カナミがすかさず反撃する。

 聖属性が付いたスキルなのでアンデッドには効果は抜群だ。

 分身からの全方位攻撃。ボキリと膝から下が砕け、両足を断ち切られた、スケルトンキングは大きくバランスを崩す。

 

「いまだぜ!」

「【セイクリッドバニッシュ】!」

「【雷天双光撃らいでんそうこうげき】」

 

 両足を失ったスケルトンキングにシロウとカナミが攻撃を加えていく。

 スケルトンキングのHPはレッドゾーンに突入した。

 

「二人とももう少しだぜ」

「うん」

「了解」

「いくよー。【シャイニングレイン】!」

「【シグナス・スライサー】」

 

 二人による同時スキル。

 

 HPが0になったスケルトンキングがガラガラと崩れ落ちる。光の粒となって消えていく。

 

 

「【墓標迷宮】五層ボス、【スケルトンキング】が討伐されました。

 

 

 

 討伐ギルドである【スターライト】、【聖剣の集い】、以上の方々に討伐報酬が贈られます。討伐おめでとうございます』

 

 

 

 討伐成功を知らせる個人メッセージウィンドウが表示された。

 

「倒したな!」

「やったね!」

「おつかれー」

 

 ウィンドウの報酬リストをチェックする。

 

「ドロップした物は『スケルトンキングの骨』、『スケルトンアーチャーの弓』、『スケルトンナイトの鎧』、『ボーンマジシャンのローブ』か」

「少し休憩したら次の階層に行ってみよう。まだまだ時間は大丈夫だし」

「了解。次の階層に行ってみよう」

 

 少し休憩を取ってから次の階層に向かうことになった。

 次の階層に繋がる階段を下ると景色が変わり、辺りは森の景色に変わった。

 

「わあー。すごーい景色が変わった」

「墓地から森に変わったな」

「墓標迷宮の中だけど外にいる感覚で変な感じだよねー」

 

 さすがはレジェンドオブアストラルだ。

 中にいるのに外にいるかの錯覚に陥る。

 六階層は出現するモンスターが変わるアンデットから植物系のモンスターに変わる。

 

「辺り一面が森だから迷いそう」

「六階層からは植物系のモンスターに変わるから、木に擬態してるトレントには気を付けて」

「うん、わかった気を付けるね」

「結構深い森だな…」

 

 三人は森の中に足を踏み入れる。

 鬱蒼としたその森は上空からの光をほとんど通しておらず薄暗い。

 それに、藪も多くモンスターの奇襲攻撃に向いた地形だ。

 周りを警戒しつつシロウの陰に隠れるようにして森を進んでいく。

 その後三十分。

 三人が危惧した奇襲攻撃は結局一度もなく、平和な探索が続いていた。

 

「何も出てこないね?」

「もう、出てこなさ過ぎて不気味だよ」

「あはは…確かにな…」

 

 しん、と静まり返った森はカナミの言うように不気味だった。

 奥に行くにつれて本当に物音一つしなくなっていく。

 擬態しているモンスターを警戒しつつ、時折、シロウが木に登って次の階層に繋がる階段を探しつつ一時間。

 モンスターとプレイヤーが戦っている姿が見えた。

 

「カナミさん、モンスターと戦っているプレイヤーを見つけました。どうしますか」

「困っているなら助けに行こう」

「了解です。僕が先行するので後からついてきてください」

「わかった」

 

 木の上に飛び移り、移動していく。

 

「わあ……はやい」

「急いでオイラたちも追いかけようぜ!」

「うん」

 

 シロウに続いてカナミとレメは走り出した。

 走ること二十分。

 茂みに隠れて様子を見てみることにした。

 

「ちょっと待って、そこに隠れてる人! 手を貸してくれないかい⁉︎」

「……僕たちですか?」

「そう! 【鷹の目】で見えたのはあなたたちだけなのよ! 近くに誰もいなくて……! ちょっと私たちだけじゃ負けそうなのさ。だから手伝ってくれない⁉︎」

 

 焦った様子で獣人族ビーストぞくの女性がそう語る。レアモンスターに遭遇するのはなかなか難しい。倒せばレアアイテムが手に入るが、負けてしまえば当然、手に入らない。チャンスをふいにしたくないって気持ちはわかる。

 モンスターはブラッドロータスだ。花が赤く色づいてる植物モンスターで、花の色が赤く染まっているほど凶悪で強力になっている。

 花の色は濃く染まっている。

 ブラッドローゼスのHPは半分ほど減っていた。この状況なら参加してもアイテムドロップは普通に落ちるだろう。

 

「いいですよ。じゃあ申請送るんで」

「ありがとう!」

 

 ポップした二人の名前、『セイジ』と『ゼイユ』のうち、リーダーマークのあるセイジの方へ戦闘参加申請を送る。

 すぐさま『許可』と返信がきて、戦闘に参加できるようになった。面倒くさいが、トラブルを避けるために必要なことだからだ。

 セイジ、彼は上位プレイヤーの一人だ。イベントでは八位にいる。

 

「よし、じゃあいきますか」

 

 刀を構えてセイジは蔓の攻撃を防いでいるセイジとは逆の方にカナミは走る。

 植物系のモンスターは火属性魔法が弱点だ。だからシロウは剣から杖に変化させた。

 

「【ファイヤーストーム】」

 

 炎の竜巻が巻き起こる。

 火が弱点だからかダメージが大きく減っている。

 脅威と認識したのかシロウに蔓の鞭が襲いかかってくるが、それを躱していく。

 

「【一ノ太刀・陽炎かげろう」

「【ストライクショット】」

「【光剣】

 

 ブラッドロータスの前にセイジが瞬間移動して斬りつけ、ゼイユ一が放った矢が刺さり、カナミの光輝く剣で斬り裂いた。

 

『ギシャッアアアッ』

 

 痛みのためかブラッドロータスが大きな唸り声を上げる。

 怒りで狂暴化し始めて蔓の鞭がやたらめったら襲いかかってくる。

 シロウとカナミとセイジはそれを避けつつ、斬り込むタイミングを計らっていた。

 ブラッドロータスのHPはもうすでに五分の一も残っていない。一気に畳み掛けるなら今だ。

 

「【サークル・ソード】」

 

 ブラッドロータスの頭上に無数の剣が降り注ぐ。

 

『ギシャッアアアアアアアッ』

 

 ブラッドロータスは痛みでもがくようにめちゃくちゃに周りを攻撃している。隙だらけだ。

 

「一ノ太刀・風見鶏かざみどり」

 

 火炎疾風の渦がブラッドロータスを斬り刻んだ。

 

「【火炎斬】」

 

 カナミは炎を纏った剣で斬り裂いた。

 

「【フレアショット】」

 

 燃え盛る一本の矢が唸りを上げていたブラッドロータスに突き刺さった。

 ブラッドロータスが燃え上がる。横倒しに倒れ、弾けるように光の粒へと変わっていった。

 

「ふう」

「やったね!」

 

 飛び入り参加だったが、なんとかなった。

 

「助かりました。ありがとうございます!」

「いえ、お気になさらず」

 

 セイジが頭を下げてくる。

 人懐っこく、爽やかな好青年だ。モテるのも納得だ。

 セイジを見ながらそんなことを考えていると、後方からゼイユが駆け寄ってきた。

 

「ありがとう、いやー助かったわ。運悪く強い個体に出くわしちゃってね。他の仲間がやられちゃってさ、アンタら二人が来なかったら全滅してたわ」

「いえいえ、間に合ってよかったですよ」

 

 カナミの言う通り間に合ってよかったと思う。

 

「よし、シロとカナミにドロップしたやつ譲ろうと思ってるんだけど、セイジいいかい?」

「うん、もちろんだよ。姉さん」

「いや、別にいいですよ。僕の方もドロップしましたし」

 

 ゼイユがそう申し出るが、断った。

 インベントリを見ると、【ブラッドロータスの花】と【ブラッドロータスの蜜】、などを入手している。

 

「遠慮しなくていいさ。使わないからどうせ売っちゃうし。いらないんだったら売っちゃってもいいしさ」

「そうですよ。遠慮なく受け取ってください」

「わかりました。それじゃあ遠慮なく貰います」

 

 セイジたちとはフレンド登録を交わして別れた。所属ギルドは【月夜の黒猫団】、『セイジ』に『ゼイユ』か。

 

「シロウくん、レメちゃん今日は楽しかったよ。また遊ぼうね!」

「オイラも楽しかったぜ。またな!

「うん、僕も楽しかったです。また遊びましょうね」

 

 カナミはログアウトしていった。シロウもログアウトすることにしたのだった。

 

 カナミと冒険してから数日。

 真白はとある悩みが頭の中を埋め尽くしていた。

 

 

「戸籍と住民票……かぁ」

 

 その悩みとは、楓の戸籍と住民票についてである。楓は式神だが、普通の式神と違って消える気配がない。

 琥珀づてで舞花のお父さんにも聞いてみたが、そんな前例がないため、消し方もわからないそうだ。

 ということは、これからも真白と一緒に暮らしていく事になる。そうなると、身分証明が必要になる事態は、必ず訪れるだろう。

 

「どうするかなぁ……記憶操作できる術とか、無いのかなぁ……」

 

 催眠術の動画はいくつも見たが、習得はできなかった。どうやら、事前の暗示が重要な技能らしく、動画で見た範囲では習得に至るほどの情報が得られなかったのだ。

 陰陽術については、舞花の父親である龍翠にまた聞いてみようとも思うが、すでにお世話になり過ぎてしまっている。これ以上頼むのは、真白としてはさすがに忍びない。

 今の所は問題ないし、追い追い何とかするしかない。

 

「真白。お願いがあるんだけど……」

「ん? どうしたのひなた」

「お願い! 勉強を教えて!」

 

 ひなたは申し訳なそうにしつつも真白に勉強を教えてもらえないか頼み込む。

 そろそろ期末テストが近いのだ。

 別に勉強は出来なくはないが出来るとも言えないくらいのひなただが、数学はかなり苦手らしく、赤点神回避を毎回披露している。

 

「うん、それはいいけど。もしかして中間テストの結果悪かった?」

「うん、中間テストの結果は赤点をギリギリ回避できたんだけど、次の期末テストで点数が悪かったら部活とアストラルを禁止にするって親に言われて……」

「なるほどね。そういうことなら、任せてよ」

「ありがとう! よろしくお願いします!」

 

 

 というわけで一緒に勉強をすることになった。

 ついでに由紀と玲二が一緒に勉強してもいいかと言ってきたのだ。もちろん了承した。

 ちなみに、玲二はやれば出来るけどやらないのでほどほどの成績、由紀は不得意科目はないそうで、平均以上に何でも出来る優秀な女の子だ。

 ウェンディは現代文が苦手でそれ以外はできるそうだ。

 そつなくこなすタイプで上中下で言えば大体上の分類だ。

 真白はといえば、勉強自体嫌いではなく問題が解けたり、わからないことがわかるようになる達成感があることと、知識が増えることで楽しさを感じるのだ。

 放課後、図書室に集まり勉強会を始める。

 見返しやすく要点をまとめたノートはかなり見やすいと自賛できるほどのもので、玲二はノートを覗き込んで「うへえ、きっちりしてら」と呆れと感嘆のどっち付かずな様子を見せている。

 ひなたは基本は応用問題が苦手だから、応用問題にどう公式を当てはめていくかの考え方を教えてやっていく方がいい。

 ひなたは頭が悪いというより、使い方が分からないからとけない、といった方が正しいので、そこさえ理解すればそれなりに点数は取れる筈なのだ。

 真白はひなたに理解しやすい様に教えて、由紀や玲二もわからないところ聞いてきては真白その都度教えていた。

 

「……つかれたー」

 

 開始して二時間ほど過ぎたところで、ひなたは辟易したような声で呟いた。

 時計を見上げると時刻は十七時になっていた。そろそろ帰る頃合いだろう。

 

「まあ時間だし今日はここまでにしようか」

「真白のおかげでだいぶわ解けるになったよ。ありがとう!」

「どういたしまして。忘れないように予習もしっかりとやってね」

「ううっ……はーい」

 

 ひなたは勉強が苦手なので、苦虫を噛み潰したような表情をしたのだった。

 

「今度の土曜日、由紀とひなたに玲二とウェンディが僕の家で勉強会するんだけど、楓ちゃんとどこかに連れて行ってもらえるかな?」

 

 夕食後、共にシンクに皿を持っていきながら、セレナに思い出したように告げる

 

 真白としては、別に由紀達が居ても勉強自体は出来るので、勉強会自体は構わなかった。

 楓はとても良い子だが、勉強会なので楓を構ってあげられないし暇になるだろう。

 交代制でセレナと紗希がご飯を作ってくれるのだが、楓も手伝ってくれて大助かりなのだ。

 セレナが来る前は交代制で作っていたが、最近では紗希とセレナが台所に立つことが多く任せきりになっている。

 

「ええ、わかりました」

「わたくし、主人様とどこかにお出かけしたいです

「期末テストが終わったらでいいなら、楓ちゃんの行きたいところ行こうか。それでいいかな?」

「もちろんです。主さまとのお出かけ楽しみに待ってますね」

 

 楓に名付けを行って以降、流暢に喋れるようになった。

 楓は良い子だなと思い、頭を撫でた。

 くすぐったそうにしつつも撫でられるのを受け入れて、嬉しそうだった。

 

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