レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと未知との遭遇1

 帰り道。テストが終わり気分転換も兼ねて本屋に来ていた。

 今日は待ちに待ったラノベの発売日だった。真白は新刊コーナーに目当てのラノベを見つけた。

 残りは一冊で真白はその新刊に手を伸ばした。すると横から手が伸びてきた。

 

「「あっ……」」

「す、すいません」

 

 手が軽く触れ合い真白は慌てて離して謝る。

 

「あの……それ良かったら買ってください」

「え……いいんですか?」

「僕はまた今度で平気ですから」

「ふふ……ありがとうございます」

 

 クスリと笑う女の子が可愛いと思った。

 新刊が発売日に読めないのは痛いが、これもまた人助けと思い真白は女の子に新刊を譲る。

 

「それじゃあ、この辺で……って、それ、そのスライムのキーホルダー、あの人気小説のやつですよね?」

「あ、はい。知ってるんですか?」

「もちろん。漫画版買い逃して、それ手に入れられなかったんですよね」

「あ、私、別のパターンのやつも、持ってます。2冊、買ったので」

「おお、凄いですね」

「あの……急にこんなこと言ってすみません。よければ少しお話ししませんか? この小説、好きな人にリアルで出会えたの初めてなので」

 

 もちろん真白は断る理由がないので近くの公園のベンチに座り、その後、驚くほど会話が盛り上がった。人気ラノベからマイナー漫画まで、話してみると物凄く趣味が合ったのだ。やはり、オタク文化は偉大だなとしみじみ感じた。

 彼女の名前は月夜見皐月つくよみさつきで年は18で真白の一つ上で真白とは別の高校で見た感じ、舞花と同じ制服のようだ。

 

「あ、結構遅くなっちゃっいましたね」

「そう、ですね」

 

 公園の時計を見ると、もう5時を過ぎている。日が沈み始めていた。

 もう少し話したいが、仕方ないがお開きだ。

 

「送っていきますか?」

「大丈夫です。近くに、友達が来ているみたいなので」

 

 スマホの画面を確認した皐月が、そう呟いた。一緒に帰る相手がいるなら大丈夫そうだ。

 

「あの……今日は本当に、楽しかったです。また、話したいです」

「僕も楽しかったですよ。また話ましょう」

 

 真白と皐月は連絡先を交換した。

 真白も皐月も人と話すのは苦手だが、趣味があったことにより連絡先を交換することができた。

 

「神原さんはアストラルってやってますか?」

「はい、もちろんやってますよ」

「もし良かったら今度アストラルで会えませんか?」

「はい。もちろんいいですよー」

「ありがとうございます。それじゃあ、またアストラルで会いましょう」

 

 mimiにフレンド登録をすると、アストラルで会う約束をした。

 皐月は真白の帰り道とは反対の方向へと駆けていった。

 

 皐月と別れて、自宅に向かって路地を進んでいた時だった。

 

「そろそろ帰ろっかな。──って、あれ?」

 

 ──周囲から人の気配が消えた。

 

 民家は並ぶが、耳を澄ませても生活音が聞こえない。もちろん、声も、犬や猫の鳴き声も、カラスのやかましい声すらない。静寂の世界だ。

 

(僕だけ切り取られた感じ? 結界とはちょっと違う。なんだろこれ?)

 

 少なくとも霊力を感じなかった。

 敵意も感じない。足を止め、警戒しながら周囲を見渡していると、ふ、と視界の中に『何か』がいた。

 

「──え?」

 

『それ』は電柱の影にいた。

 薄暗くなり電灯が道路の一部を照らしている。

 その中に『それ』はいた。

 

「──え? え?」

 

 小柄な人型だった。

 しかし、あきらかに人ではない。

 百五十センチ半ばの真白よりも少し背丈は小さい。おそらく百五十センチないだろう。

 頭は大きく、手が長い。それでいながら、足は短く胴が長かった。

 目を引くのは、感情が何も籠らない、顔の大半を覆う大きさの真っ黒な目。

 

「いや、あの、さすがにこれは──」

 

 見ていると吸い込まれてしまいそうな目も気になるが、なによりも印象に残るであろう、灰色の肌だ。

 全裸なのか、全身タイツなのかわからないが、とにかく灰色なのだ。

 

 真白はビビった。

 

 ──なにせ『それ』は俗に言うグレイと呼ばれる宇宙人だったのだ。

 

「コンニチハ、チキュウノセイメイタイヨ。ワタシハ、キミタチガ、ウチュウジントヨブ、セイメイタイダ」

「……未知との遭遇」

 

 真白は宇宙人とコンタクトしてしまった。

 

(この未知なる生命体は素直に怖い! キャトられたらどうするんだ!? 僕、嫌だよ、明日の朝、内臓がなくなった姿で発見されるのとか!)

 

 普段は冷静な真白だが未知との遭遇によりパニックになっていた

 真白は本気で霊力を高めてて逃げようとした。かつてない全力だった。

 これほど力を使おうと思ったことがあるだろうか。しかも逃げに徹するために、必死になったことはあっただろうか。

 

「マッテホシイ、ショウネンヨ。ハナシヲキイテホシイノダ。キガイヲクワエナイトヤクソクスル。ダカラ、タノム」

 

 単調な声のはずが、どこか焦っているように聞こえたので、真白は逃げようとしていた足を止める。

 

「……何か焦っているみたいですけど、何かあったんですか?」

「……ハナシヲキイテクレテアリガトウ」

「だけど、おかしなことをしたら拘束するので変なことはしないでくださいよ?」

「ムロンダ。ハナシヲキイテクレルノニキガイヲクワエタリシナイ」

 

 ビビってはいるが、宇宙人に興味がないわけではない。

 宇宙船に連れ去られたとしても、最悪全力で抵抗すればいいだけだ。

 いつでも逃げられる準備をしながら、話を聞くことにした。

 

「ワタシハトオイホシカラ、コンヤクシャトコンゼンリョコウデチキュウヲオトズレタ」

「ん? 今婚前旅行って言いました?」

「ソウダ。ワタシトコンヤクシャハ、オサナイコロカラノ、オサナナジミダッタガ、タガイニスキアイケッコンノヤクソクヲシタ」

「……素敵な幼馴染みのようですね」

「アリガトウ」

 

 いろいろ突っ込みたいところはある。

 婚前旅行に地球の日本に来ているのもそうだし、婚約者がいるのなら、もうひとりグレイ型の宇宙人がいるのだろう、と警戒するが、近くにいない。

 

「婚約おめでとうございます? でも、その話をするために僕を通せんぼするのはなんか違くないですか?」

「……マワリクドクテスマナイ。タンテキニイウト、キミニチカラヲカリタイ」

「力を? なにかあったんですか? 宇宙船が壊れたとか?」

 

 宇宙船に関することならば、チート能力を持っただけの高校生にできることはない。

 近くの整備工場に駆け込んだ方がよほど力になってくれる気がする。いや、そもそも宇宙船を直せるか問題もある。

 だが、宇宙人は首を横に振った。

 

「ソウデハナイ。コンヤクシャガ、ツカマッテシマッタ」

「婚約者が捕まった?」

 

 聞き逃せないことを宇宙人が言って、彼は続ける。

 

「コノマチニスム、ニンゲンニ、コンヤクシャガホバクサレテシマッタノダ。フシギナチカラヲツカウノデ、アラゴトニナリソウダガ、ゲンチノセイメイタイニ、キガイヲクワエルトモンダイニナッテシマウ」

 

 宇宙人の身体が小刻みに震えているのがわかった。

 悲しみなのか、怒りなのか、それともそのどちらもだろうか。

 

「コマッテイタトキ。キミカラフシギナチカラヲカンジタンダ。コンヤクシャヲトラエタニンゲント、ニテイルヨウデチガウチカラ。ゲンチノセイメイタイニショウタイヲアカスコトハユルサレテイナイガ、ドウシテモコンヤクシャヲトリモドシタイ」

「わかりました」

「──ナニ?」

「僕でよければ力になりますよ」

「ホントウカ?」

「もちろんです」

 

 未知なる生命体に怯えていた真白はもういない。

 すがる思いで正体を明かし、婚約者を助けたいと願う男の助けになりたかった。

 宇宙人とか人間とか関係ない。

 誰かのために、行動できる人は大好きだ。

 恐怖を捨てた真白は、宇宙人に近づき腕を伸ばした。

 

「僕は、神原真白です。貴方の婚約者を取り戻しましょう」

「──アリガトウ、カンバラマシロ」

 

 宇宙人は灰色の長い五本の指で真白の手を握りしめた。

 

「アリガトウ、チキュウノショウネンヨ」

「お礼はいいんですけど、できればわかりやすく喋れることはできませんか?」

「シバシ、マッテホシイ」

 

 手を離した宇宙人は、自分の喉に触れ「あー」「うー」とまるで調節ができるかのようになにかしている。

 しばらくすると、再び宇宙人は真白に向けて声を発した。

 

「これでよいだろうか、地球の少年よ」

「おお……すごく素敵なお声ですね」

 

 感情の籠らない無機質な機械音のようだった声が、テノールな素敵な声になっている。

 

(これはなかなかのイケボ。やだ……とぅくんってしちゃう)

 

「ごほん。よし、会話がちゃんとできるようになったところで、質問に答えてくれませんか?」

「了解した」

「これなんですか?」

 

 真白は空を指差す。

 会話の間に探っていたが、どうやら一部の範囲をなにかが包んでいるようだった。

 

「さすが力を持つ少年だ。この力は隔離結界だ。君だけを、結界内に取り込んでいるため周囲は君や私を感知できず、君と私も周囲の人々を感知できない」

「どうやるんですか?」

「……宇宙の不思議パワーだ」

「宇宙の不思議パワーならしかたないですね。貴方に闘う力はないんですか?」

「我々に戦う技術はあるが、戦いを好まない。また、地球人を傷つけると罰則がある。無論、婚約者のためなら罰を受ける覚悟はあるが、この星の力と私の所持する力では相性の問題があり、出力的な問題で被害が大きくなってしまう」

「それで、僕ってことですか?」

「そうだ。私が調べたところ、この辺りで一番力を持っているのが君と不思議な猫と白髪の幼子だ」

「それ、僕の家族ですね」

 

 ルールがあるのなら、仕方がない。

 話している限り、誰かに危害を加えることをよしとしていないのがわかる。

 婚約者を奪われて焦っているが、短慮な行動を起こさないよう自制しているようだ。

 

「……ここだけの話、私と婚約者の両親は母星でそれなりの地位にいるため、私がなにかしてしまうと私の父だけではなく、婚約者の両親にまで迷惑がかかってしまう」

「そこまで聞けば大丈夫です。婚約者を助けに行きましょう。場所は?」

「このにある『デウス・エクス・マキナ』』なる施設だ」

 

 非常に気になる組織だが、すべきことからしていこう。

 

「その前に僕一人の力だけで助けられるか不安なので琥珀達……頼りになる家族を連れてきていいですか?」

「ああ、もちろんだ。感謝する」

「転移するので、僕の手を繋いでください」

「ん? ……ああ、わかった」

 

 宇宙人は不思議に思ったが、今は一大事なので手を繋いだ。

 真白は自宅に座標をつけて転移した。風景が変わり真白は自宅前についた。

 

「おお……すごいな。キミは一体何者なのだ?」

「僕のことは後で話しますよ。今は婚約者を救出に向かう準備をしますか。ただいまー」

「おかえりなさいませ」

「おかえり」

「カー!」

「おかえりなさいませ、主さま」

「おかえりなさい。弟くーん!」

「お兄ちゃんおかえりなさい!」

 

 宇宙人を連れて家に帰るとセレナ達が出迎えてくれた。

 

「真白様。その方は……!?」

「弟くーん!? それは何を拾ってきたの!?」

「未知の生命体です!? 私たちキャとられるちゃうんですか!?」

「説明するから落ち着いて」

 

 宇宙人を連れて帰ってきた真白にセレナ達は驚いた。

 驚くのは無理ないが、セレナ達に事情を説明した。

 紗希と瑠璃は衝撃的なのか、口をぱくぱくしている。

 

「……なるほどの。その婚約者を助けるために真白の力を語りたいと?」

「ああ、どうか婚約者を助けるために力を貸してほしい!」

「うむ、わかった。嘘はついているわけではないみたいだ。我々に任せるがいい」

「すまない。感謝する」

 

 琥珀は真白が宇宙人に操られたのかと思ったが、嘘をついていないことも分かり、婚約者を助けたいと真摯な想いが伝わってきた。

 琥珀は自宅の電話を使い龍翠に電話した。

 

「あー、もしもし。ワシだ。龍翠、すまないがちょっと力を貸して欲しい。詳細は後で話すが真白が厄介事に首を突っ込んでの。できれば龍翠が信頼できる、本当に口の堅い方だけを、頼む」

 

 琥珀は龍翠に後の事後処理を任せるために助けを求めたのだった。

 

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