レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと未知との遭遇2

「婚約者が囚われている場所は、この町の郊外にある」

「では、乗るがいい」

「船では目立つのでありがたい。では、失礼して」

 

 宇宙人は琥珀が猫の姿から虎の姿になったことに驚いたがすぐに跨った。

 

「セレナ、姉さん、瑠璃ちゃんは留守番をお願い」

「お任せください。真白様気をつけてください。琥珀様、真白様をお願いします」

「うむ、任された」

「弟くん、無事に帰ってきてね」

「お兄ちゃん、無理はしないでください」

「琥珀達がいるから大丈夫だよ。本当にやばくなったら逃げるから。それじゃあ宇宙的結界を解いてください」

「しかし」

「大丈夫、琥珀は空が飛べるので」

「おお! やはり君に頼んでよかった!」

 

 真白と宇宙人は拳と拳をぶつけた。

 

「そういえば、宇宙人さんの名前は?」

「そうだった。名乗ってもらったのに、失礼をした。私の名は、ウィリアム・ヘンダーソンだ。親しい友人はウィルと呼ぶ。気軽に接してくれ」

「ワシは琥珀だ。よろしくウィル」

「カー!」

「このカラスはクロウ様です。わたくしは楓にございます」

「ああ、よろしく頼む、真白、琥珀、クロウ、楓!」

 

 宇宙人と友人になった真白は、琥珀に跨った。

 

「では、行くぞ!」

「では、結界を解く!」

「うん」

 

 結界が解けると同時に、琥珀が空を駆け抜ける。

 

「ウィルよ、ナビを頼む」

「任せてもらおう!」

 

 気がつけば夜になっていた。

 星々が輝く櫻川丘の夜空に、宇宙人と真白たちが琥珀に乗り目的地を目指していた。

 

「あの施設だ。あそこに婚約者がいる」

「……一見するとただのビルみたいだね。さて、たとえ宇宙人だろうと誘拐するような人間は碌な人間じゃないよね。まずビルに入る前に監視カメラとか機械類をどうにかしたいんだけど、ウィルの宇宙的な技術でどうにかできないかな?」

「……そちらは私に任せてほしい」

「おおっ、宇宙的な技術でなにかしてくれるの?」

「いや、ただのハッキングだ……露骨にがっかりしたな、友よ」

 

 宇宙的なにかを見せてくれると思っていたが、スマホらしきものを取り出して慣れた手つきでぽちぽちしているだけなので少しがっかりしてしまった。

 

「友よ。あのビルの十五階に婚約者は囚われている」

「カメラは?」

「すべて使えなくした。過去の映像も破棄した。力を持たない者とそれと君達と似た力を持つ人間がいるから気をつけてくれ」

「了解」

「早く救出に向かおう。婚約者は、ミス惑星の候補に選ばれるほど美人だ。……万が一、辱めなどを受ける前になんとしてでも助け出したい」

 

「え?」と真白と琥珀は、つい驚きを口に出してしまった。

 幸いなことに、宇宙人ウィルは婚約者の心配をしていたせいで真白達の声は耳に入っていないようだ。

 よほど宇宙人的には美人なんだろう。

 外見で判断することは間違いだとわかっているのだが、さすがにそれはありえないと思う。

 

「ごめんね。さすがに宇宙人のグレイ型に欲情できる上級者はいないかな。どちらかと言ったら、解剖されるんじゃないかってほうが心配だよ」

「解剖だと!? やはり地球人は恐ろしい生命体だ。昔、やんちゃな若者たちがロズウェったときも、キャトったときも、運悪く捕まってしまった同胞たちが帰らぬ人となったが……」

「あー、聞こえない聞こえない。 僕は世界の秘密なんてなんも聞いてないですからー」

 

 ロズなんとかも、キャトなんとかも、知りたくない。

 ファンタジーを飛び越えてSFにまで足を突っ込むつもりも、日本以外の事情を知るのも、まだ早い。

 

「とりあえず、婚約者救出大作戦だね。覚悟はいいかな。ウィル?」

「できている!」

「試しに作ってみたけど、念のためみんなこれを貼って」

「これは?」

「これは『身代わり札』って言って、付けている人が受ける傷を肩代わりしてくれるの。これを付けていれば、死に至る怪我まで無効化できるよ」

「『身代わり札』を作れるようになったのか?」

「うん、神前試合の時に作れるかわからないけど、術式を見て覚えた。ただ……まだ実際に使ってないから発動するのかわからないんだよねー」

 

 試しに作ったのはいいが、まだ使ったことがないので発動するのかが不安だった。

 

「ふむ……術式に問題はない。大丈夫じゃろう」

「しかしそんな貴重な代物をいいのか?」

「あはは、貴重な物と言えばそうだけど、僕だったらいくらでも作れるから問題ないよ。琥珀たちなら問題はないだろうけど、念の為にね」

「真白……」

「主さま……。お気遣いありがとうございます」

「カー……」

「すまない、助かる」

 

 真白にとって琥珀達は大切な家族なので、傷ついてほしくない。

 

「みんな行くぞ!」

 

 琥珀に乗った三人はビルに降りる。

 ビルに降り立ち、琥珀が作戦を言う。

 

「真白、クロウはウィルの恋人を救出。儂と楓は能力者の相手をする」

「了解」

「わかった」

「了解しました」

「カー!」

 

 一方そのビルの中では。

 

「侵入者よ! 戦闘が可能なランクCは1階に配置しなさい!」

 

 ルチルの指示のもと、階数15階にも及ぶ高層ビル型の仮設支部内では、組織の構成員が慌ただしく走り回っていた。

 その理由は、支部へ向かってくる集団の存在を、ルチルが感知したためである。

 

「白い虎と白いカラス。そして、白髪の幼女に幼い男の子ね……あのグレイが正体を明かして助けを呼ぶなんて、中々面白い事をするようね」

 

 向かってくる集団の姿を感知しながら、ルチルはひとり呟いた。

 その言葉には、たった四体で襲撃を仕掛けてくる相手の自信への焦りも含まれている。

 

(おそらく、四体とも只者ではないのでしょうね。相当厄介だわ)

 

 考えを巡らせている中、ルチルのもとへ部下が報告に訪れる。

 

「攻撃と防御に特化したランクC異能者13名、一般戦闘員30名、配置完了しました」

「わかったわ。あなた達も配置につきなさい」

「「はっ!」」

 

 ルチルへの報告を終えた部下は、すぐさま自身の待機位置へと戻っていった。

 

「ジェントル、サンゴ、エンデヴァーあなた達も位置につきなさい。指揮はエンデヴァーに任せるわ。ジルコン、あなたは私と共にここで待機よ」

「了解だ」

「了解なのである」

「はーい」

「了解しました」

 

 仮設支部内で最も強力な戦力である四名を、ルチルの指示のもと配置へとつく。

 

「……ルチルさん。あの宇宙人が連れてきた相手は四人は相当な自信があるという事。本当に大丈夫なのでしょうか?」

 

 襲撃に備える中、エンデヴァーとジェントルとサンゴが去っていった室内で、ジルコンは抱えている不安を口にした。

 

「大丈夫……とは、言えないわね」

 

 ジルコンへ向けて、ルチルは率直な感想を口にする。ルチル自身も同じ不安を抱えていたためだ。

 

「それでも、このビルに施した人員を突破して二十八階までくるのは、相当困難なはずよ」

「確かに……そうですね」

 

 ルチルの言葉に、ジルコンは配置された人員の技量を考える。

 1階にいる異能者はランクCとはいえ、戦闘に特化した異能を持つ戦いのプロである。そして、異能を持たない一般戦闘員も、特殊な訓練を受けた戦闘のプロなのだ。

 

「『擬似・阻害結界』」

 

 琥珀の言葉と同時に、ビルとその周辺を覆う巨大な結界が展開される。

 この結界は以前、クロウが襲撃した神社に張られていたものと同じ特性を持つモノであり、内部で起こった異変を外から認識できなくする効果があるのだ。

 

「これは?」

「カー?」

「今張ったこれか? これは、結界に似たモノ……だ。本物の結界ではない」

 

 琥珀の言葉通り、これは本物の結界ではない。琥珀が持つ妖としての能力によって生み出したモノなのである。

 

「ちゃんとした説明は今度しよう。長く保つものでは無いのでな、今は時間が惜しい。真白とウィルは恋人の救出を急いでほしい」

「わかった」

「了解した!」

「そうはさせない」

「させないであるよ!」

「行かせるわけないでしょ!」

 

 真白達の前に大男と燕尾服の男にタンクトップの女が立ちはだかる。

 

「気をつけてくれ、特にあの大男は強敵だ!」

「わかっておる」

「行かせるわけがないだろ」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、大男が拳を構えた。

 観察すると、この大男は異能者だ。

『強化』。自身の身体能力と触れている物体の性質を強化できる異能みたいだ。

 素早い足運びとともに真白に向かってくる。

 

「やば……」

「『擬似・防御結界』!」

「琥珀ありがとう。助かったよ」

 

 お礼を言い、琥珀のおかげで無事だった。

 

「隙だらけだな。戦闘の実践経験が足りない」

「もしかして、お兄さんザコザコなのー?」

「そこの宇宙人が連れてきたわりには弱そうなのである」

 

 言いたい放題である。

 大男ことエンデヴァーの言う通り実践経験は足りない。

 琥珀がフォローしてくれなければやられていた。琥珀たちを連れてきて大正解だった。

 あの三人の中ではエンデヴァーが強いことがわかる。術やスキルを使ってもギリ勝てるかどうかだ。

 

「この大男は儂に任せろ。楓とクロウは燕尾服の男と女童めわらしの相手を頼む」

「了解です!」

「カー」

「ふふ、面白い。貴様名前は」

「琥珀だ」

「琥珀とやら、俺を楽しませてくれよ!!」

 

 エンデヴァーは、容赦無く琥珀に攻めてくる。

 空手にムエタイに中国拳法と技がアレンジされているのか、そのどれもがかなりのレベルだ。

 大男は琥珀に任せて燕尾服の男とタンクトップの女の子は楓とクロウに任せ、真白は琥珀達に強化を施してビルに突入しようとした。

 

「行かせないのである! 異能『玩具』!! 発動である!!」

 

 ジェントルはそう言うと同時に、指をパチリと鳴らす。すると、道路脇に止められていた車や植えられていた樹木が変形し、総数11体の人形が出来上がった。

 

「いくのである!」

 

 ジェントルの合図とともに、樹木人形はその巨体からは想像もつかないほどの速度で真白へと迫る。

 

「カアァァァ────!」

「『飛ぶ斬撃』」

 

 楓の小刀で切り裂かれ、クロウの咆哮によって軽々と打ち砕かれる。

 続けて、クロウは樹木人形の頭上を通過しながら衝撃波を放ち、あっという間に撃破した。

 

「お前たちの相手は自分だ」とでも言うような眼差しを2人へ向ける。

 

「カー!」

 

「ここは自分と楓に任せて!」とクロウ言ってるようだった。

 琥珀達に相手を任せて真白とウィルは恋人を救出にビルに突入した。

 

「なるほど、飛ぶ斬撃と衝撃波を発生させる異能であるな。でも、これならどうなのである!」

 

 カラスと真白の技を確認したジェントルは敵わないと判断し、クロウへ車から作り出した機械人形をさし向ける。

 だが、上空へ回避できるうえに常識を超えた速度で飛行できるクロウを、捉えることができない。

 

「しかし、私の機械人形を倒すこともできていないようであるな」

 

 ジェントルの考察通り、クロウは機械人形に有効打を与えられずにいた。

『玩具』によって作製された人形は、人の形を保ってさえいれば、どれほど攻撃を加えられても動かすことができる。

 そのため、多少パーツが削られる程度の威力しかないクロウの衝撃波であれば、問題なく活動することができるのだ。

 

「カー」

 

 そんな状況の中、クロウは冷静に機械人形を見据える。

 そして、機械人形の大振りを躱すと同時に、その腕へと降りたった。

 

「な、何をしているのである!?」

 

 自ら敵の腕へとまるという謎の行動に、ジェントルは疑問を深める。しかし、その答えはすぐに明かされる事となった。

 

「う、腕が!」

 

 次の瞬間、機械人形の腕がバラバラに砕けたのだ。

 

「触れたものを破壊!? いや、共振による破壊であるな。振動を操作する異能であるか!」

 

 衝撃波の発生と、触れたものの破壊。それだけの情報から、ジェントルはクロウの持つ能力を正確に見抜く。

 ジェントルの考察通り、クロウは振動によって機械人形の腕を破壊したのである。

 

「だが、わざわざ腕にとまったということは、破壊は触れることでしか発動できないようであるな」

 

 この技は空気を介すると威力が激減するため、直接触れることでしか発動できない。ジェントルは技の詳細と同時に、その欠点すらも見破ったのだった。

 

「厄介なのは変わりないであるが、対処できないわけではないのである!」

「カ!?」

 

 クロウは再び機械人形の腕へ着地するが、部品がいくつか取れた程度で腕を破壊するまでには至らなかった。

 

「カー、カカ!」

 

 だが、クロウも破壊を防がれた理由にすぐさま気がつく。

 機械人形自体が微細な振動を発したことで、自身が起こした振動の効果が弱められたのだ。

 

「完全に無効化はできないであるが、これである程度は防げるのである!」

 

 ジェントルの熟練度であれば、操る人形を震わせる程度の操作は容易に行えるのである。

 

「カー……」

 

 自身の技が封じられた状況下で、クロウは静かに機械人形を見据える。

 

「さて、これで状況は……なっ!?」

 

 そしてクロウは、機械人形へ向けて『飛ぶ斬撃』を放った。

 

 琥珀の使用した『擬似・防御結界』は、攻撃が集中する箇所の強度が上がるよう調整されている。だが、攻撃が集中していない箇所の強度は落ちるという大きな弱点があった。

 エンデヴァーは結界の一番脆い点を探し出して壊したのである。

 

「結界は破った。俺をもっと楽しませろ、お前の本気を見せてくれ!

「いいだろう……敬意を払い、本気は出そう。だが、それを見て儂の能力を理解できるかはわからんがな」

「!?」

 

 琥珀の言葉と同時に、エンデヴァーは危機感を感じて全力で肉体に強化の異能を使った。

 

「な……何が起こった……」

 

 そしてエンデヴァーは、神と崇められるにまで到った『化け猫』の実力を知る事となるのだった。

 

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