レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと束の間の平穏

 宇宙人との邂逅を経て翌日。

 真白は、セレナと、楓、雅、琥珀、クロウ、ウィルとシスベルの八人で朝食の席を確認していた。

 雅は半熟のベーコンエッグを食べ終えて残った黄身の部分をご飯にかけて美味しそうに頬を緩ませている。

 真白、セレナ、ウィルとシスベルは、たっぷりバターを塗ったトーストとスクランブルエッグとコーンスープをゆっくり食べていた。

 楓と琥珀、クロウはふりかけをかけて、硬めに焼いたベーコンエッグと味噌汁と一緒に食べている。

 

「ウィルとシスベルさんは今後、どうするの?」

「ホテルを拠点に観光をしようと思っている」

「提案があるんだけど、二人が良ければ家に暮らさない?」

「……親切にしてもらって感謝する。しかし迷惑では?」

「迷惑だったら、言わないよ。それにまたウィルとシスベルさんが狙われる可能性もないわけじゃない。家は比較的安全だから、うちを拠点にしていいよ」

「感謝する。真白は本当に優しいな」

「素敵な方と出会えたことに感謝します」

「琥珀たちもいいよね?」

「うむ、いいぞ」

 

 琥珀達にも聞いてみるとみんな賛成とのこと。

 ウィルとシスベルの二人は神原家で生活しそうな流れになった。

 二人とならお互いに遠慮することなく気楽に過ごせるだろう。

 

「そういえば、雅さんは今日どうするんですか?」

「今日はお休みだから、ウィルさんとシスベルさんが観光で、私が案内を兼ねて一緒にいるよ。ウィルさんとシスベルさんが真白くん家に居候するなら私も住んでいいかな? 実は、そろそろ家を出ようかと思っていただ。隠さなければならないブツもあるから。家賃と食費払うんでお願い」

「もちろんいいですよ。だったら琥珀と楓ちゃんとクロウにセレナ、二人の護衛をお願い」

「うむ、わかった」

「お任せください」

「カー!」

「私もですか? 琥珀様達がいれば大丈夫なのでは?」

「たまにはセレナもゆっくり過ごしてもいいんじゃないかな。家事とかしてくれて感謝してるし楽しんできなよ」

「私は居候させてもらっている身ですし、当たり前のことをやっているだけです」

「まあまあそう言わずにセレナだって自由な時間があってもいいと思うんだ」

 

 セレナは家事などをやっていてくれるが不満一つ言わない。真白としてはセレナには自由に過ごす時間があってもいいんじゃないかと思った。

 

「……わかりました。真白様ありがとうございます」

「お礼なんて別にいいって。セレナも楽に過ごしていいんだから」

 

 ウィルとシスベルは常識人だが、いつまた能力者に擬態がバレて捕縛される可能性もないわけではない。琥珀達がついていくのなら、安心だ。

 

「いってきます」と言い、雅の車に乗ると爽やか笑顔を浮かべるウィルと、可憐な笑みのシスベル、そして窓手を振る楓たちに真白も手を振った。

 

 机に頭を乗せ、ぼんやりとしていた真白のところへ玲二がやってきた。

 

「おう、真白。なんだか眠そうだな」

「うへへ、そんな顔してるー?」

「ああ、大丈夫か?」

「ただの寝不足だから大丈夫だよ」

 

 そんなに眠そうな顔をしているだろうか。あとで鏡でも見てくることにした。

 

「この前のテストの順位が発表されているから見に行こうぜ」

「うん」

 

 頭はぼんやりしつつも、玲二に促されて廊下に出た。

 

「一位って、真白はすごいね」

「真白は入学してからずっと首位をキープしてるんだよ。すごいよね」

 

 廊下の掲示板に貼り出された定期考査の順位を眺めて、ウェンディは感心する。

 真白は、勉強会の後もせっせと勉強に励みテストに挑んだ。

 

「隆太はもう少し勉強を頑張ってもらいたいね」

「うぐっ……」

 

 隆太は努力とか熱血とか根性が大好きな脳筋思考人間なので勉強は苦手だ。

 なので毎回赤点スレスレで順位はしたから数えた方が早い。

 毎回赤点スレスレの点数で下から数えた方がいい。

 

「由紀は今回五位に入ってるんだね」

 

 後から見にきた真白に由紀とひなたが微笑む。

 美少女四人も集まれば注目が集まるものだ。

 

「私もここまで行くとは」

「頑張ってたもんね。休み時間も勉強してたけど」

「……うん」

 

 由紀は勉強を頑張っていた。

 成績優秀ではあるが由紀は努力を怠らないのだ。

 

 

 櫻川丘にあるビルの一室では、頭を抱えるルチルと、外の景色を眺めるエンデヴァーがいた。

 あの後警察に捕縛されたが組織により釈放された。

 

「神原真白……彼は一体、何者なのでしょうね」

「さぁな? 俺は琥珀に負けたんでな、分からんな」

 

 ルチルの疑問に、エンデヴァーは興味なさげに答える。

 

「彼を調べたけどわかったことは平凡な一般人なのよ。家には透明な防壁が張られていて、内部は感知できないし……謎は深まるばかりよ」

「ノノミとキョウヤが居れば、その防壁の中も覗けたかもしれないな? ネットは繋がってそうだが……」

 

 その言葉を聞いたルチルは、空気が凍るほど冷たい視線をエンデヴァーへ向けた。

 

「何を言っているの? 彼らは死んだわ。そもそも、彼らのせいで『寒熱』『付与』『結合』の3人が逃げ出したのよ? 裏切り者の話はよしなさい」

「おっと、すまんな」

「それと、本部が神原真白家のパソコンにハッキングを仕掛けているけど、成功はしていないそうよ。だから、彼らがいた所で結果は変わらないわ」

 

 冷たい怒りをぶつけながらも、ルチルはエンデヴァーの疑問に答えた。

 

「そうか……すまないな」

 

 組織を裏切り、始末された過去の仲間達。その話を思わず出してしまったエンデヴァーは、ルチルに向き直り、静かに反省する。

 エンデヴァーの思いがわからないでもない彼女は、それ以上何も言わず、話題を戻すことにした。

 

「とりあえず。神原真白の件については、本部も驚愕していたわ。ランクAの貴方とランクBの異能者2人を倒すことできる仲間がいることは、さすがに予想していなかったみたいね。本部では、今も徹夜で会議が行われているそうよ」

「……そうか」

 

 気を取り直し、他人事のような態度を貫き直したエンデヴァーをルチルは睨むが、外を眺めているエンデヴァーは気づかない。

 

「はぁ……」

 

 そんなエンデヴァーの様子に一際大きなため息を発した後、ルチルは今後の展開を語りはじめた。

 

「とりあえず今は、本部からの指令を待つしかないわ。おそらくだけど、『寒熱』『付与』『結合』の捕獲を優先しろという指令がくるはずよ。その時に備えて、今はできるだけ怪我を治して休んでおきなさい」

「了解だ」

 

 真白の平穏を乱すべく、異能組織は静かに動き出した。

 

「キョウヤくんキョウヤくん。これ見てください」

「ノノミ、どうした?」

 

 とある道の駅。その駐車場に停められたキャンピングカーの中では、1人の少女が興奮した様子でパソコンの画面を眺めていた。

 

「今ですね、組織の活動記録にハッキング仕掛けたんです」

「お前……あっちにも『電脳』の異能者がいるんだぞ?」

「大丈夫です。ランクB以下のひよっ子達には、負けないので。と言っても活動記録掠めとるのでギリギリでしたけどねー」

 

 今の生活を揺るがすような行為を何気なく行なっていたノノミに、キョウヤは呆れたような表情を向ける。

 

「それより。これこれ、見てください」

 

 キョウヤと呼ばれた青年は、パソコンの画面を覗き込む。

 

「これはっ、組織の連中が日本に来てるのか!? それに、櫻川丘って」

「はい……叶魅ちゃん達がいる所ですね」

 

 キョウヤの表情が歪む。

 

「今すぐ助けに……」

「ダメです! これ見てください。ランクBが2人に、ランクAが3人も来てるんですよ!? キョウヤくんは強いですけど、この5人が相手じゃ無理です」

「だが、このままではあいつらが捕らえられる。そうなれば、この世界が組織の手に落ちるかもしれない」

 

 キョウヤは悔しげな表情を見せながら呟く。

 

「その前に、これ、見てください」

 

 ノノミと呼ばれる少女は、キョウヤへ再びパソコンの画面を向けた。

 

「なんか、異能を持ってる猫ちゃんとカラスに幼女が、ランクBの2人とランクAのエンデヴァーを倒したみたいなんです。それだけじゃないみたいですよ。猫ちゃんの仲間っぽい高校生くんがルチルとジルコンを倒したみたいです」

「なっ!」

 

 キョウヤは、その事実に驚愕する。

 報告書には「見た目で侮っていたが強い者たちだった」とあるが、五人はかなりの強敵だとキョウヤは知っているためだ。

 ランクA、エンデヴァー。戦うことにしか興味がないが、戦闘においては組織の中でもトップクラスの実力を誇る異能者である。

 キョウヤ自身も、覚悟を持って挑まなければ勝てない相手だ。

 

「その高校生くんに、叶魅ちゃん達をお願いしようかな〜って思ってるのです」

「なっ!」

 

「何を言っているんだ!」と叫びかけ、キョウヤは押し黙る。重要な決断において、ノノミが適当な考えを口にする人間ではないことを理解しているためだ。

 

「大丈夫ですよ、ちゃんと考えての事です。この高校生くん、神原くんって言うんですけど。経歴を調べたら、普通だったんです。どこからどう調べても普通、平凡な一般人そのもの」

「……どういうことだ。それ?」

「それがわからないんですよ。平凡な一般人だった彼が異能の力を持つなんて。でも一般人を演じているって事は、悪い人じゃないと思いますよ? 制限や条件があるのかもしれないですけど、金持ち! とか、ハーレム! とかなら簡単に叶えられそうですし」

「なるほど……」

「ま、全部推測ですけどね。取り敢えず今わかってる事は、神原くんには叶魅ちゃん達を助けられる力があって、組織とは敵対している。そして、私達には助けられる力はない。ってことですかね」

「選択肢は、他に無いか……」

 

 ノノミの説明を聞いたキョウヤは少しだけ考えた後、その提案に賛同することを決めた。

 

「それじゃあ、この人に助けを求めてみますね」

「わかった。だが、何かあった時は俺も動くぞ?」

 

 組織が『神の異能』を手にすれば、今の生活は確実に崩れ去る。ノノミと話せるこの瞬間すらも尊いと思うキョウヤは、そう考え、静かに覚悟を決めた。

 

「大丈夫ですよキョウヤくん。もう、私たちの自由は奪わせない。誰にも、絶対に……」

 

 強く握られたキョウヤの拳を、ノノミの手が優しく包み込むのだった。

 

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