「夜分、呼び立ててすまない。神原くん、君に関してのおおよその話は聞いている。先の神前試合では、本当に世話になったね」
「いえ、こちらこそ」
「今後は当家としてもできる限りの協力はさせてもらうよ。というわけで、早速本題に入ろう」
真白は水瀬家に来ていた。遡ること二時間前……。
「む? こやつらはあの時の人間ではないか! どうしたんじゃ!?」
「いやぁー……話せば長くなるんだけど……」
帰宅後。襲撃された事実をみんなに相談した結果、舞花のお父さんを頼ろうという結論になった。
頼るのは心苦しいが、今回は仕方ない。他に解決策がないのだ。
琥珀曰く、舞花のお父さんは結構な情報通らしいので、何か知っているではとの事だった。
ちなみに襲ってきた二人は拘束して連れてきた。
「ちょっとちょっと! ボク達をどうするつもりなの!」
「この拘束を解くである!」
ギャアギャアと騒がしい。
「雅さんこの人たちはどうなりますか?」
「そうだねー。まあ一般人である紗希ちゃん巻き込んだわけだから、異能を封印することになるかも?」
「謝るから許してーおにーさん!」
「ジェントルさんとサンゴちゃんでしたっけ? どうして僕を狙ったんですか?」
「我々にとって、邪魔な存在だからであるよ」
「邪魔な存在?」
「そうそう。おにーさんが宇宙人を助けに来なければよかったんだよ」
「我々は負けて悔しくムカついたから、名誉挽回のためにお前を殺して上層部の点数を稼ぐつもりであったのである」
「なるほど。でも僕は狙うのはいいとして、どうして紗希姉さんまで巻き込んだんですか?」
「それは必要な犠牲であったからである」
何か問題があるとでもと言うような表情をしていて、真白は憤りを感じる。
自分が狙われるのはまだいいが、そのために紗希を巻き込んだことは許せなかった。
「こやつらには色々と情報を聞き出す必要があるな」
「姉さんを巻き込んだことは許せないけど、組織の目的を聞かないとね」
「ふん、言うわけがないであろう」
「そうそう、言うわけないじゃん♪ おにーさんバカなの?」
ジェントルとサンゴはバカにしたように鼻で笑う。
その態度に少々イラッとして、理解わからせてやろうかと思った。
組織を裏切るつもりはないので簡単に口を割るつもりはないだろう。
「それなら口を割るようにしてやろう」
琥珀は二人に視線を合わせると、急に静かになり意識が朦朧とし始めた。
「急に二人が静かになったけど、なにをしたの?」
「催眠術のようなものじゃ。さて、お主達に聞きたいことがある。お主達の組織『デウス・エクス・マキナ』の目的はなんじゃ?」
「我々の目的は神を作り出し、世界を支配することである」
「神を作るじゃと……? そんなことが可能なのか?」
「神を作るには『寒熱』と『付与』と『結合』の異能が必要不可欠である」
『デウス・エクス・マキナ』の目的が神を作ることに驚いた。
異能の力で神を作り出すなんて可能なのか疑問ではある。
「『寒熱』の能力で特殊な制御装置で神力操作し、『付与』によって強化した肉体に『結合』。そうして、人間を神の領域へ至らせるのである」
正直半信半疑で成功するのか疑わしい。
「その異能者たちはどこにおるのじゃ?」
「この櫻川丘にいると言うのは聞いてあるのだ」
「その者たちの名は?」
「楓原一葉かえではらかずはと楓原叶魅かえではらかなみと月詠皐月である」
「まってまって。あの二人、異能者だったの」
叶魅と皐月の名前を聞いて真白は酷く驚いた。
「真白よ知っているのか?」
「最近、アストラルで友達になった人で、叶魅さんは人気アイドルだよ。月詠さんとは少し前に知り合いになったよ」
「そうだったのか。ならば、龍翠に相談し護衛をつけさせよう」
「それなら私も父に話してくるよ」
方針は決まったようで、琥珀と雅は一葉と叶魅に佳織に護衛をつけることになった。
「真白」
「どうしたの?」
琥珀は真白を呼ぶと水瀬家の当主である龍翠の連絡先を渡された。
「これって……!」
「龍翠の連絡先じゃ。何かあればすぐ連絡していいと言っておった。お主がダイヤルしてくれれば、儂が話を通そう。それでよいか?」
「わ……わかった」
そして時間は戻り水瀬家。
「神原くん、もう知っていると思うが、キミを襲ったのは異能者のみで構成された組織。デウス・エクス・マキナのメンバーだろう。未だ、本拠地すら不明の大きな組織だ。その幹部連中が部下を連れて、ここ櫻川丘に潜伏していると──ー。政府からの排除要請を受けて、私も知った」
「!? ちょっ……と……当主様! そういうのって僕みたいな部外者に教えるのは、まずいんじゃ……」
「うん? はははっ……。なにを言うんだい、神原くん。キミが見てないもの聞いてないことは、私も見せていないし聞かせていないだろう?」
「あ……はい……」
「フッ……なんてな。いいんだ。キミの誠意には私も信頼で応えたいと思っている。もちろん、水瀬家当主の名に懸けてね」
「あはは……」
(それ……ある意味、脅しより怖い気がするよ)
「奴らは人目を避け、対象者を襲撃する傾向がある。深夜や早朝といった時間帯を狙ったり、或いは工作員を使い、民間人をそれとなく排除したり……よって、在校中を狙われる可能性は低いだろうが、念のため舞花にも気を配るよう言っておいた」
龍翠の隣にいる舞花がにこりと笑い軽く手を振る。
「なんらかの目的があって、櫻川丘に来ていたはずの彼らが、何故急にキミを狙ってきたのか……その理由までは、私にもわからない。だが、この国からお帰りいただくという結果が同じならば、詳細については知る必要はないだろう。分かるね?」
「……はい。龍翠さん、色々教えてくださってありがとうございました。僕自身なるべく、隙を作らないように、気をつけます……その上で、も……もし、水瀬家のミッションに助力できるタイミングがあったら……そのときは僕なりに動いてみようと思います」
式神とドームの件で水瀬家には色々とお世話になったので、助力する気でいる。
「あっ、いや……その人達には、迷惑してるのは僕も同じなので……差し出がましかったらひかえますっ!」
(いい子だ)
(な? 心配になるじゃろ?)
慌てる真白を見て、龍翠はいい子だと思い、琥珀はそんなお人好しな真白が心配になった。
琥珀の背に乗り帰っていく、真白を舞花と龍翠は見送っていく。
「……」
「……お父様……。わざと神原くんあんなものを見せて試しましたよね!?」
「やー……神原くんはいい子だね舞花」
「だから、そう言ってるじゃないですか!」
龍翠は真白がいい子だとわかっていたが、わざと真白に『デウス・エクス・マキナ』の資料を見せて試していた。
そんな父である龍翠に舞花は真白を試していたことに呆れて怒っている。
「(彼は本当に、凄腕の陰陽術師だな。だが、相変わらず霊力は感じない。彼が倒したのは、政府の資料にもあった上位ランクの異能者だろうが……。白虎様を助け、今や名を縛り使役するほどの力の持ち主……。彼には酷な話だが彼の存在それ自体が、今後更に大きな争いの火種となる気がして、ならない……)
龍翠は真白が事件に巻き込まれていく気がして、不安と心配があったのだった。
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