『空間跳躍』を使い、真白は家の前に転移してきた。
「一瞬で場所が変わった!?」
「なんですかこれ!?」
「後で説明します」
二人は一瞬の風景が変わり驚いていたが、舞花がエンデヴァーの足止めをしてもらっているので説明する暇がない。
「カー!」
「主さまー!」
「真白様」
「真白くん」
「お兄ちゃん」
「大丈夫か」
「真白さん大丈夫ですか」
真白の気配に気がついたのか、クロウと楓にセレナ、紗希と瑠璃にウィルとシスベルが駆け寄ってくる。
「ごめん、悪いけど叶魅さんと皐月さんをお願い。それと家の外には絶対に出ないで、家には結界が張って安全だから」
エンデヴァーは厄介な相手だ。傷は完治しておらず、本調子ではないだろうが油断はできない相手だ。
真白は再びエンデヴァーの元へ転移した。転移して戻ってくると舞花はエンデヴァーに締め上げられていた。
「舞花さん!」
「……戻ってきたか。少しは退屈しのぎにはなったぞ」
そう言ってエンデヴァーは舞花を投げてきた。急いで駆け寄って抱き抱える。
「はあはあ、……ゲホッゲホッ……神原くん……ごめんなさい。大した足止めはできなかった……」
舞花はものすごく悔しそうにしている。
「アイ」
『ハイ』
「アイは少し下がって、舞花さんのそばについててほしい。離れすぎないで」
『了解デス。マスター』
舞花を離れた距離に下がらせて、アイに任せる。
真白は警戒しつつ拳を構えて、エンデヴァーを睨みつける。
「ルチルからは関わるなと言われてるが、この状況じゃ仕方ないだろう」
不敵な笑みを浮かべながら、エンデヴァーが拳を構えた。なるほど、こちらの事情は関係ないわけだ。
叶魅達を襲ったのは許せないし、そちらがやる気なら受けて立つ。
舞花その横へ鞄とアイを置く。
そして、真白も拳を構える。
「いくぞ!」
素早い足運びとともに、いきなり眼と喉を突かれそうになる。ギリギリのところで躱す。
エンデヴァーは的確に膝や鳩尾を突いてくる。
最初の構えからボクシングかと思ったが、違った。ジークンドーか。
「タフというより、ダメージが無効化されてるみたいだな。それも陰陽術か?」
「企業秘密です!」
この前のシルクハットと違って、この人は『陰陽術』を知ってるみたいだ。
先ほどから死んでもおかしくないほど急所を突かれているが、『身代わり札』のおかげで無傷だ。
しかし、枚数には限界がある。やられっぱなしではいずれ負ける。
「こちらも反撃させ……ゴハッ」
「反撃の暇は与えない」
首を掴まれ、アスファルトに叩きつけられた。背後には、重機ロボの鉄拳と同じくらいのクレーターが出来上がっている。
首を掴んだまま真白を地面に押し付け、反対の腕で拳を放ってきた。
「このっ!」
だが、黙ってやられるつもりはない。首を掴むエンデヴァーの腕を掴み返し、巴投げの要領でエンデヴァーを蹴り飛ばす。
「攻撃の無効化に怪力か。報告では、空飛んだり斬撃飛ばしたりもできると聞きまていたが、厄介だが面白い」
困ったようなセリフを吐きながらも、エンデヴァーの笑みは深まっていく。バトルジャンキーだ。
「俺を楽しませてくれよ!」
「ちょっ、まっ!」
エンデヴァーは、こちらの意向など無視して容赦無く攻めてくる。
空手にムエタイに中国拳法。技のデパートだしかも、そのどれもがかなりのレベルだ。
「がっ、ぐはっ……」
「ふん、この程度か?」
神様が強化してくれた身体能力に『強化』の異能を重ね掛けしても、パワーは互角。
その為、純粋な武術の熟練度と戦闘の経験差で押し負けている。
「くっ……!」
「多少は武術の心得があるみたいだが、無駄だ!」
「がはっ」
真白が放つ拳も蹴りも、難なく躱され倍になって返ってくる。
その度に繰り出してくる技を習得してはいるが、その技は相手の体格と体重に馴染んだ動きなため、真白使用すると僅かなズレが生じる。
動画で習得した技も同じだ。オリジナルには敵わないのである。
こんな事なら、ちゃんと鍛えればよかったと真白は後悔する。
「『アストラルバインド』『捕縛』『鈍足スロー」
「鬱陶しいが、効かん!」
エンデヴァーを拘束する。しかし動きを止められたものの拘束を解かれてしまう。
『鈍足スロー』もあまり効果がなく、少し動きが鈍くなった程度だ。
「ほいっ!」
「背負い投げか。柔道の心得もあるようだな」
大男の襟を掴み、一本背負いの体勢に入る。真白のほうが小柄な分、懐へ侵入しやすいのだ。
「だが、悪手だな」
「ガッ!」
しかし、エンデヴァーに背負い投げは成功しなかった。
さらに、生じた隙を突かれて蹴り飛ばされた。めちゃくちゃ痛い。
「まだだよ」
「いいタックルだな」
痛みを堪え、すかさずタックルを仕掛ける。
しかし殴る蹴るの応酬で、無理やり引き剝がされた。
「ガッ!」
「やれやれ、こんなものか? 琥珀はこの程度ではなかったぞ」
「うるさいですね。こっちは元々一般人なんですよ」
真白は高い身体能力と一見見るだけで対象の技能、能力を習得はできるが熟練度が低い。
琥珀は数百年生きる伝説の妖で戦闘経験が豊富だ。
そして楓は純粋な正面戦闘では最強クラスの戦闘力を持つ。異能や陰陽術を使っても勝てるかどうか怪しい。
「『分身』」
「ふっ、今度は何をするつもりだ?」
瞬時に十人まで分身する。全員でエンデヴァーを囲み、襲いかかる。
一人、二人やられては分身を出しては、殴る蹴るを繰り返していく。少しずつだが確実にダメージを与えられている。
「チッ、鬱陶しい」
「『機神』『全武装展開』『攻撃開始』」
爆音と共に全ての武装が火を吹く。
分身達は一目散にエンデヴァーから離れた。
砲撃がエンデヴァーに直撃した。一発一発の威力は高くない。普通の人間に撃ったらまずいが、相手は『強化』の異能者、身体能力が強化されているので、死ぬことはないが無傷とまではいかないだろう。
煙が晴れると、エンデヴァーは立っていて服はボロボロになっている。
ところどころ血が滲み出て傷が開いてきている。
「ふははは、面白い! もっとお前の能力を見せろ!」
「攻撃……がはっ!」
エンデヴァーはさらに闘志を燃やして、分身をものともせずに真白に容赦なく攻める。
こちらも応戦していくが、段々と苛烈になっていく。
殴る蹴るの応酬を繰り広げていく。
「いい加減諦めてください」
「甘い甘いな! 戦いで死ねるのなら本望だ!」
叶魅達を襲ったのは許せないが、死んでほしくはない。
エンデヴァーもそれなりにダメージを食らっているのに、倒れる気配がなく、なかなかのタフだ。
「『アストラルバインド』『アイスバインド』『捕縛』」
「無駄だ!」
エンデヴァーを拘束したが、またすぐに拘束から無理矢理振り解いた。
一瞬だけでも動きを止められただけでも良かった。
「『加速アクセル』」
動きを止めたエンデヴァーに急接近を仕掛けた。
「『フレアフィスト』!」
スピードと重心、力を乗せてエンデヴァーに殴りかかった。
拳がエンデヴァーの体に触れた途端、爆発を起こして燃えた。
「見事だ……」
そう言い残してエンデヴァーは倒れた。
「や、やっと倒せた〜。うへえー、制服がボロボロだよ〜」
かなりの辛勝だったが、なんとかエンデヴァーを倒せた。戦いの緊張が消えて、真白は地面に座り込む。
持っていた身代わり札は全て使い果たしてしまった。家にはストックが残っているが、補充する必要がある。
エンデヴァーが万全の状態だったら勝てなかっただろう
今すぐにでも家に帰ってベッドに倒れ込みたいが、まだ事件は解決していない。
「マスター、無事デスカ!?」
「神原くん、大丈夫!?」
「大丈夫です。緊張が解けただけなので」
戦いを終えると、アイと舞花人が駆け寄ってくる。
「舞花さんも怪我とかは大丈夫ですか?」
「うん、神原くんが身代わり札を渡してくれたおかげで怪我はないよ」
エンデヴァーと戦う前、舞花と合流した真白はその時に身代わり札を渡しておいたので、舞花に怪我はなかった。
真白は立ち上がり、エンデヴァーのところに向かった。
「『擬似・水療波』
「なぜ治療をした?」
「まだ意識あったんですか。タフですね」
「動けないがな。いいから答えろ」
「命令とはいえやったことは許せないですけど、敵であっても死んではほしくないですから」
「ふん、甘いな」
「叶魅さん達が心配なので、僕は家に帰りますが、舞花さん達はどうしますか?」
「私も楓原さんと月詠さんが心配だから寄ってもいい?」
「はい、もちろんです」
「あとの事後処理はお願いします」
「お任せください舞花様」
術師に事後処理を任せた舞花は真白に連れられて、家に転移したのだった。
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