レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと拠点突入1

 舞花を連れて戻ってきた真白はひと息ついていた。

 

「真白くんが家に連れて来てから、叶魅さんと皐月さん、玄関で急に意識を失っちゃって……」

「あれだけのことがあったんだもの……倒れるのも無理がないと思う」

 

 真白がエンデヴァーの所に戻った後、叶魅と佳織は玄関で意識を失ったのだ。

 

「楓原叶魅サン、皐月サン、バイタル正常。本当ニ気ヲ失ッテイル、ダケデス」

 

 バイタルチェック機能あるみたいで、アイ凄いなと感心する。

 

「あの、ところで神原くん……白虎様はどこかに出かけてるの?」

「そういえば、琥珀とクロウの姿が見えないですね。楓ちゃん何か知らない?」

「クロウ様は組織の拠点を探しに、琥珀様は龍翠様のところに行かれました」

 

 舞花のスマホに電話がかかってきた。

 

「ど……どういうことですか!? 楓原さんが病室から、連れ去られたって!?」

『うちの術師からのエマージェンシーによれば、奪還は正に一瞬の出来事だったようだ。恐らく、『捕縛』の異能使いの仕業だろう」

「ま、舞花さん! ちょっと代わってもらえますか!?」

「う、うん」

 

 一葉が連れ去られたことに驚いた。真白は動揺しつつも、舞花のスマホを借りて真白は代わってもらった。

 

「龍翠さん」

『その声は、神原くんだね? 丁度よかった。先ほど私の所に、白虎様がお見えになってね。奴らの拠点を特定し次第、神力をもってこれらを滅すると申し出られた。あの方も、帰り際に病室襲撃の報は聞いていたが……。そちらには戻ってないようだね』

「は、はい……」

 

(もしかしたら、僕を巻き込まないために単独で動いているのかもしれないけど、せめて一言くらい連絡をしてほしかったな)

 

 平穏な生活を望んでいる主に、琥珀はきっと真白を巻き込まないように配慮したのだろう。平穏な生活を望んでいるとはいえ、関わったことには最後まで付き合い結末を迎えたいのだ。

 

『となるとすでに……』

「マスターマスター。オ話中スミマセン。ノノミサンカラ、『デウス・エクス・マキナ』ソノ、拠点座標及ビ、構成員データガ転送サレテキタノデスガ……」

「ノノミさんから?」

「ハイ、ソウデス」

『神原くん?』

「あっ……ちょっと、すみません。今スピーカーに変えます」

 

 真白はスピーカーに変えて、龍翠に組織の拠点の座標が送られてきたことを話す。

 

『……なるほど。それは確かな筋からの情報なのかい?』

「はい、一度しか会ってないですけど、少なくとも悪い人じゃないので信用はできるかと……。龍翠さんには真偽が怪しい情報だと思いますけど、僕は信じてみようと思います」

 

(それでこそ、神原くんだな……)

 

『いいだろう。神原くんが信じるなら、私も信じてみよう。……舞花』

「は、はいっ!」

 

 龍翠に名前を呼ばれて舞花はドキッと驚いた。

 

「正義感の強い、お前のことだ。今の話を聞いて、自分も行こうと思っているだろうが……。お前はすでに、今日一戦交えた後だね。とすれば、自身の霊力残量からも分かっているはずだ。自分が行って戦力になるか、はたまた神原くんの足を引っ張ることになってしまうか」

「りゅ、龍翠さん! そんな……」

「いいの、神原くん……! 悔しいけれど、お父様の言う通りだから」

 

 舞花自身もわかっているのか、悔しそうにしている。

 

「それに、今この状態の二人を放っておくことはできないから」

 

(……っ。確かにそれもそうだ……。待っててね叶魅さん、月詠さん。必ず僕達が組織を倒して、一葉さんを必ず取り戻すから……)

 

 一葉を取り戻すと決意をした真白は『デウス・エクス・マキナ』の本拠地を目指すことにした。

 

「楓ちゃん、一緒に来てくれるかな?」

「もちろんでございます。私わたくしは主さまの従者。どんな時でもお側にいます」

「ふふふ、楓ちゃんがいてくれるなら心強いね。神原くんをしっかり守ってね!」

「はい! 必ずや主さまをお守りいたします」

 

 大変心強いのだが、幼女に守られる主なんて情けない気がした。

 

「よしっ、それじゃあ行こうかみんな。いざ、デウス・エクス・マキナの本拠地に」

「真白様、お気をつけください」

「真白くん、危険だったら必ず逃げるんだよ」

「お兄ちゃん気をつけてくださいね!」

「真白。気をつけて帰ってくるんだぞ」

「真白さん達の無事を祈ってます」

 

 セレナ達に見送られながら、真白と楓とアイはデウス・エクス・マキナの本拠地に向かったのだった。

 

 

 

「戦闘が可能なランクCは1階に配置しなさい! 強化や加工の異能を持つ者は、支部をできる限り補強するのよ。敵が何を仕掛けてくるかわからないわ、建物の強度は最大限まで高めなさい!」

 

 ルチルの指示のもと、階数十階のビル型の仮設支部内では、組織の構成員が慌ただしく走り回っていた。

 その理由は、神原真白の家から支部へ向かってくる集団の存在を、ルチルが感知したためである。

 あの後、警察に捕まったルチル達だが、釈放された。

 いくつかある緊急用の仮施設にいた。

 

「白色の獅子と白いカラスに白髪の幼女。そして、神原真白ね……も」

 

 向かってくる集団の姿を感知しながら、ルチルはひとり呟いた。

 

(神原真白もだけど白色の虎と白いカラスも相当厄介だわ。ジェントルとサンゴもいない。エンデヴァーは『結合』の捕縛に失敗して負けた。『結合』の確保まであと一歩というところで!)

 

 ルチルはジェントルとサンゴとエンデヴァーがいない今。絶望的だった。

 どうにか、この状況を打破しようと思案する、ルチルのもとへ部下が報告に訪れる。

 

「攻撃と防御に特化したランクC異能者13名、一般戦闘員30名、1階への配置完了しました」

「建物の補強が行えるランクC異能者と一般戦闘員、各階に配置完了しました」

「わかったわ。あなた達も配置につきなさい」

「「はっ!」」

 

 ルチルへの報告を終えた部下は、すぐさま自身の待機位置へと戻っていった。

 

「あなた達は1階につきなさい。私とジルコンは8階で待機しているわ」

「了解しました」

 

 ルチルの指示のもと配置へとつく。

 

「……ルチルさん。これほど急なタイミングで仕掛けてくるということは、相手にも相当な自信があるという事。本当に我々だけで大丈夫なのでしょうか?」

 

 襲撃に備える中、去っていった室内で、ジルコンは抱えている不安を口にした。

 戦力だったエンデヴァーはいない。ジェントルとサンゴも再び捕えられた。

 

「大丈夫……とは、言えないわね」

 

 ジルコンへ向けて、ルチルは率直な感想を口にする。ルチル自身も同じ不安を抱えていたためだ。

 

「あの三人がいない今、状況は絶望的。たとえあの三人がいたとしても神原真白達には勝てない。けど……それでも私達はなんとしてもやるしかないのよ」

「確かに……そうですね」

 

 ルチルの言葉に、ジルコンは配置された人員の技量を考える。

 1階にいる異能者はランクCとはいえ、戦闘に特化した異能を持つ戦いのプロである。そして、異能を持たない一般戦闘員も、特殊な訓練を受けた戦闘のプロなのだ。

 だが、ジェントルとサンゴがいなく。エンデヴァーが負けてしまった今、指揮はただ下がりだ。

 

「こちらには『寒熱』の人質がいる。彼がいる限り、ビルを倒壊させるような派手なことは出来ない筈よ。そして、空を飛んで途中階や屋上から進入しようとすれば、強化を施した迎撃システムが作動するわ。けれど足止めが精一杯でしょうね……」

「……」

 

 ルチルの言葉にの不安は少しも晴れることはない。

 

「……そうよ。たとえ何があっても、対処してみせるわ」

 

 ジルコンへ説明を行なったルチル自身も支部の防衛力を再確認し、襲撃者と対峙する覚悟を固めるのだった。

 案内役であるクロウが声をかける。

 

「カー! カーカ」

「ふむ、あそこか。拠点の特定ご苦労だったな。クロウ」

「カー!」

 

 相手の本拠地が見えてきたため、クロウへ知らせたのだった。

 

 アイにデウス・エクス・マキナの拠点を案内してもらいビルが見えてきた。

 

『ピピピ……。目的地、位置座標確認。目ノ前ニ見エルビルガ、『デウス・エクス・マキナ』の、拠点デス』

「前の拠点は放棄したのかな? まあいいか」

「琥珀サン、クロウサンノ生体反応ヲ、感知シマシタ。建物内ニ、イラッシャルヨウデス』

「あー……。やっぱりかー。アイ! ノノミさんから送られてきた構成員データ……幹部の特徴から、ルチルさんって人がいるフロアも割り出せないかな?」

『? ヤッテミマスガ……』

「主さま、どうするのですか?」

「指揮系統を潰しちゃった方が、手っ取り早いからね。それに……一葉さんがせっかく捕らえた人質なら、有事の際に対応できるよう、きっと近くのフロアに置くと思う。僕が敵だったらそうするよ」

「……なるほど。さすが主さまです」

「マスター、位置特定シマシタ」

 

 アイが敵の指揮官である、ルチルの位置を特定した。

 

「『感知』異能者、ルチル。『捕縛』異能者、ジルコン。共に八階ニテ確認」

「おお、さすが。アイくん! じゃあ、まずはそこを目指して……」

「八階ですね。了解しました」

「まっ……!」

 

 楓が高くジャンプした。

 真白は嫌な予感がして、楓を止めようとした。

 しかし止める暇もなく楓は飛ぶ斬撃を放った。

 

(????? あれれ? 楓さーん……?)

 

「楓サン、八階ノ下……七階ノ天井部ヲ、切断」

「いやいやいやいやいや!! 逃げようもある琥珀達ならともかく! 一葉さんが巻き込まれてたらどーするの!?」

「ア、ソレハ、心配ナイデス。一葉サンガイルノハ、ドウヤラ七階のヨウデスノデ。チョット天井ガ、吹キ飛ンダ程度デ、済ンデマス」

 

(大丈夫じゃないよー……。それは全然大丈夫じゃないよアイさーん……)

 

 幸いだったのが、一葉がいる場所を斬られなかったところだ。

 

 1階の戦闘員へ先制攻撃の指示を出そうとした直後、ルチルは不審な揺れを感じ取った。

 その違和感を確認するため、『感知』を用いててビルの外観を見たルチルは、凄まじい光景を目撃する。

 

「地震……か?」

「ビルが、ズレてる!?」

 

 

 彼女が驚くのも無理はない。自身のいる階層の1つ下、7階のフロア全体が斜めに切断され、そこからビルがズレ落ちようとしていたのだ。

 

「ジルコン! 今すぐ、ビル全体を『捕縛』で固定して!」

「えっ……」

「いいから早く!」

「『わ……わかりました! 異能『捕縛』!!」

 

 同じ部屋で待機していたジルコンは焦るルチルに、急いでビルを対象に全力で『捕縛』を発動する。

 彼の持つ『捕縛』の異能は、視界に入る対象の運動を止める効果を持つ。

 本来であれば、視界に入る物の動きを遅くする程度の異能なのだが、ランクAにまで到る彼の『捕縛』は、ズレ落ちようとするビルの動きさえも止める事が可能なのである。

 

(これは……! 建物が……フロアごとズレている……!?」

 

 ルチルに言われた通りにビルを全力で『捕縛』を発動すると、フロアごとズレていることに気がついた。

 

「だいぶズレましたけど、なんとか止まりました。それにしても、今のは一体……」

「敵の1人が放った攻撃よ。報告にあった斬撃を飛ばす技、それの最上位互換でしょうね」

「!!?」

 

 ルチルの言葉を聞き、の背筋に冷たい汗が流れる。

 もしも、今の斬撃が達の居るフロアを横に切断するよう放たれていたら……それだけで戦いが終わっていたかもしれないのだ。

 

「ジルコン、気をしっかり保ちなさい。まだ戦いは始まったばかりなのよ」

「は、はい。すみません」

 

 気を取りなおすジルコンを横目に、この衝撃的な状況を作り出した白髪の幼女をルチルは睨む。

 

「これは、私達が蹂躙される側ね……」

 

 彼らには地獄となるであろう戦いが、始まるのであった。

 

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