レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトとお礼

組織『デウス・エクス・マキナ』との戦いを終えて一週間が経過した。

 

「リンゴジュース飲む?」

「カー!」

 

 クロウが元気な返事を返してきた。

 

「先ほど、手紙が届いておったぞ」

 

 リンゴジュースを口元を汚しながら、琥珀が封筒を差し出してきた。

 

「普通の手紙みたいだね。『こんにちは、ノノミです。たすけてくれたおれいにこれつくりました、おくります』か」

 

 ノノミからの手紙だ。一葉達の恩師で一葉たちを助けるよう頼んできた人だ。

 それにしても、酷い字だ。下手なうえにひらがなばかりで読みづらい。

 

「真白様、他にも何か入ってるみたいですよ」

 

 取り出してみると、『神原楓』という人物の戸籍謄本と住民票のコピーだった。

 

「かんばらかえで?」

 

 これってもしかして、楓の戸籍と住民票みたいだ。

 しかも実親が真白の両親になってる。生年月日的に、真白の妹って事になってる。

 

「一葉さん達の恩人の人たちからか」

「かもしれんな。今は遠くにいると言っていたが、その者ならば戸籍とやらを作ることも可能なのではないか?」

「確かに、異能とか使えば可能なのかもしれないね」

 

 何らかの異能を使って、真白が楓の戸籍と住民票をどうにかしなければと思っていた事を知って、それらを改竄して作り出したということか。

 『たすけてくれたおれい』というのは、一葉を助けた事に対してなら納得がいく。

 

「便利な力があるんだねー」

「お主ほどでは無いと思うがな」

「にしても、楓ちゃんが妹か。クロウの後に生まれたんだから、むしろクロウの妹な気がするけどね」

「カー」

 

 そう呟くと、クロウが静かにひと鳴きした。

 

「となると、お主はクロウと楓とアイの親に当たるわけだな」

「それ、なんかややこしいね」

 

 だが、言われてみればその通りだ。

 まだ高二なのだが、いつの間にか親になっていた。

 

「とりあえず、これは貰っておこうか。このお礼はありがたいね」

 

 棚に大切な書類用引き出しへ、楓の戸籍謄本と住民票を仕舞う。

 

「それを送ってきた者について、もう少し考えなくてもよいのか?」

「いいよ。今考えても多分わからないだろうし。それに一葉さん達の恩人だって言うし、たぶん良い人なんじゃないかな? 少ししか話してないけど、大丈夫だよ」

 

 手紙の字が下手だったのは、筆跡を隠すためにわざとそう書いた可能性が高い。だとすれば、相手はこちらに素性を知られたくないのだろう。

 この予想が正しければ、ノノミという名前も本当かどうかわからない。

 

「楓ちゃんの戸籍を作ってくれた事は素直にありがたいよ」

 

 むしろ親への説明は大変だ。真白と親の仲は良くない。

 滅多に帰ってくることはない。帰ってきても宿泊施設として使ってるだけで幼い頃からあんまり両親の顔とか見ていない。

 親らしい事はされた覚えがなく、真白の育ての親は実質ハウスキーパーの人と紗希達の親。二人とも、外に愛人作ってそっちにかかりきりでお金だけ渡して放っている状態だ。

 

「どうしても気になったら一葉さん達に聞けばいいでしょう」

「確かにそうだな」

 

 琥珀も納得してくれたようだ。

 

 クロウは考える。

 

『クロウの後に生まれたんだから、むしろクロウの妹な気がするけどね』

 

 真白が何気なく発したその一言が、妙に胸に残っているためだ。

 

「カー……」

 

 何かを忘れているような奇妙な感覚に襲われながら、クロウは首を傾げる。

 いくら考えても思い出せないが、そんな焦燥感だけが込み上げてくるのだ。

 

 時は少し戻り、ジェントルとサンゴの二名が真白の家を襲撃する前まで遡る。

 

「カーカーカー、カカカカカ〜♪」

 

 櫻川丘町の上空に、鼻歌?を口ずさみながら飛ぶ白いカラスの姿があった。

 

 そのカラスの名はクロウ。真白の式神術によって生まれた、鳥型の式神である。

 

「カーカ」

 

 『今日は山の方まで行ってみようかな』とでも言うように、クロウは一声鳴く。

 

 真白が高校へ行っている間、琥珀が家の見張りをしてくれている時は、市内の観察を兼ねて空の散歩をするのがクロウの日課なのであった。

 

「カー?」

 

 そんな時、ふと気になる光景を見つける。

 路地裏のゴミ捨場に、ビニール紐でぐるぐる巻きにされた一羽のカラスがいたのだ。

 そして、そのカラスを的にしながら落ちているゴミを投げつけるガラの悪そうな2人の男達がいた。

 

「「カー!」」

「「カーカー!!」」

 

 周辺の建物の上には、虐められている仲間を気にしながらも助けられずにいるカラス達が、男達を威嚇している。

 

「カー……」

 

 ある意味これも自然の摂理なのかと、クロウはその状況に納得しようとする。

 だが、同じカラス同士思うところもあり、その光景から目を離せずにいた。

 

「いつもいつもゴミ漁りやがってよぉ〜、オラァ!」

「ガッ」

「そんなにゴミ欲しかったらやらぁ、おらよ!」

「カーッ」

 

 男達は相当酔っているらしく、加減を知らない様子だ。

 ゴミをぶつけられているカラスの羽には、血が滲んでいた。

 

「カー……」

 

 クロウは考える。目立つ行動をとれば、主人の『平穏に生きたい』という目的を乱してしまうかもしれない。

 だがーーー

 

「うおっ、なんだぁこの白いカラスは?」

 

 ーーーこのまま放っておく事など、到底出来なかった。

 

「カッ!」

「いでっ!」

「ごはっ!」

 

 クロウの鳴き声とともに発せられた衝撃波は、男達を2メートルほど吹き飛ばす。

 

「ば、化けもんだ、カラスの化けもんだぁ!」

「だからカラス虐めるなんて、おれぁ反対だったんだ!助けてくれぇー!」

 

 あまりの衝撃に酔いが覚めたのか、男達は必死になって逃げていった。

 

「カ!」

 

 逃げていく男達は無視し、クロウは虐められていたカラスの元へ駆け寄る。

 そして極小の『飛ぶ斬撃』を放ち、紐を斬ってあげた。

 

「……カー」

 

 助けられたカラスは困惑しながらも、クロウに感謝の意を示す。

 

「カ!」

 

 『一件落着』とでも言うようにクロウは鳴き声を発し、飛び去った。

 これ以上この場に留まる理由は、彼には無いためだ。

 

「「「カー……」」」

 

 周囲の建物に留まっていたカラス達は、自分達が到達できる最高高度。その遥か上へ軽々と飛翔していく白いカラスの姿に、目を奪われる。そして、感嘆の声を漏らす。

 

 カラスの世界には、ボスやリーダーといった地位は存在しない。

 しかし、強い者に魅了され、安全な場所を求めるという本能は存在する。

 

 あるカラスは、ただの好奇心から。

 あるカラスは、強者への憧れから。

 あるカラスは、強者の庇護下という安全な場所を求めて。

 

 そんなカラス達が、クロウの元へ集まるようになるのは必然だった。

 

「……」

 

 空の散歩の度に付いてくるようになったカラスの群れを見て、クロウは呟く。

 

「カー……」

 

 『なぜこんな事になっているんだ……』と。

 

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