レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと闘技場

 シロウとセレナが幽霊屋敷を探索してから数日。

 流石にセレナはまだ、もう一度ホラーエリア挑戦しようという馬鹿げた考えが浮かんでいない頃、シロウはギルドホームでくつろいでいた。ピロリンとメールが届いた音を知らせる。シロウはメッセージの内容に目を通した。

 

「運営からで。『チャンピオン大会』のお知らせだって。誰か出場したい人いる?」

「はい! はい! 私が出る!」

 

 鼻息荒く真っ先に手を挙げたのはヒナタだった。

 

「私はあまりそういったことに興味がないからパスするわ。それに私の職業じゃ厳しいし」

「お姉ちゃんと右に同じく」

 

 リサに続いてユカも辞退のようだ。

 

「私もあまり目立つような場にはちょっと……遠慮しておくよ」

「私わたくしも同じく。遠慮しておきます」

「私は興味があるけど、魔法使いで勝ち抜くのは難しいかなぁ……。私のスキル構成って、多人数戦をメインにしてるから、一対一の対人戦だと厳しいんだよね〜」

 

 ウェンティはむむむと残念そうに唸る。

 確かに魔法使い系はよほど特化しないと一対一の戦いだと難しいと思う。詠唱中に攻撃されるから。【召喚術】とかで護衛獣を召喚して、相手の攻撃を防ぎつつなんとか、ってところだ。

 

「お姉ちゃんは興味ないから、いいかな」

「私も興味ないので、でないです」

「騎士くんは出るの?」

「僕は見てる方が面白いし、遠慮しておくよ」

 

『チャンピオン大会』に出場するメンバーは決まりヒナタが出ることとなった。

 

「他には何かある?」

「ギルドから各一名に招待状が。ソロの人は参加できないみたいだよ」

 

 ヒナタの質問にシロウが答える。

 

「その試合って年齢制限はないの?」

「えっと……。大丈夫みたい。普通の【PvP】形式、【ダイイングモード】でやるみたいだよ」

 

【ダイイングモード】……HPが1だけ残る仕様だ。

 

「10位まで賞金も賞品も出るみたいだけど……。優勝すると『王者チャンピオン』のジョブにジョブチェンジできるみたいだね」

「なにそれカッコいい!」

 

 ヒナタの目がキラキラと輝きだした。

 

「特殊スキルが使えるジョブみたいだけど、条件があって『闘技場』で1位をキープしてないとダメみたいだけど」

 

 まさしく『王者』でいなければならないの。転落すればその恩恵を失う。

 

「一年に一度、その中から『王者の王グランドチャンピオン』を決めるみたい」

 

「騎士君、申請しておいて! 私出るから!」

「う、うん、わかったよ」

 

【スターライト】の代表出場者はヒナタとなった。

 

『闘技場』の見た目的には、まさにローマのコロッセオに似ている。しかしマップで見る限り、ローマのコロッセオのように楕円形ではなく真円に近い。

 外観は白い大理石のように輝き、すでに多くの人々が群がっている。プレイヤーも多いが、NPCも多い。

 

 トーナメント参加者は別の入場口から入るらしく、ヒナタはシロウらと別行動だった。チャットはできるので、何かあったら連絡が来る。

 

「ヤッホー! シロウ久しぶりだね!」

「あ、ハルカ、カオリ、コウキ、イオリ達も来てたんだね」

 

 立ち止まっていたシロウらに声をかけてきたのは、以前【カレイドブラッド】に襲われていた所を助けた【月夜の黒猫団】の面々でハルカがギルマスを務めるギルドである。

 ハルカの後ろには【獣人族ビーストぞくのカオリ、【人間族】のイオリがいた。ハルカは【エルフ族】である。

 もう一人のメンバーである【魔族】のコウキの姿が見当たらない。

 

「コウキがいないけど【チャンピオン大会】に出場するの?」

「そうだよ。ま、私達のメインは『スターコイン』の交換だったんだけどね」

「あ、交換しに来たんだ なんかいいのあった?」

「ハルカとカオリは交換したみたいだけど、今回僕は欲しいものはなかったよ。いいアイテムや珍しい武器や防具、その他、使えるスキルオーブなどはあるけれど『ソルコイン』が足りなくて。さらに言うなら、今『ソルコイン』ってかなり高く売れるみたいでさ。手持ちのコインを売って、そのお金で強い武器とか作れるんじゃないかって……」

「これからプレイヤーが増えるって考えるとコインの数は増えて価値は下がっていくでしょう? 売るなら今か……って」

 

 そんなに高騰しているのか。町での初回NPCイベントならほとんど貰えたりしたけど。まだ序盤のプレイヤーならお金が必要だろうし、クエストで手に入れても売っちゃう人も多いかなあ。

 

「ま、結局僕はもう少し様子見ってことにしたよ。交換する物のラインナップも定期的に変わるらしいし、それならガクンとコインの値が下がることもないかってね」

 

 イオリの言う通り、交換する品物が定期的に変わって、欲しい人がそのたびに現れるなら、コインの需要はずっとあるか。

 みんなが欲しいものがポンと出れば、いきなり跳ね上がることもありうるけど。

 とりあえず物を見てみないことには話にならない。

【月夜の黒猫団】のみんなと別れ、シロウらはマップにある交換所へと向かった。

 交換所は闘技場の外壁に埋まるようにいくつかのカウンターが設置されており、中にはNPCのお姉さんたちがいる。まるで宝くじ売り場だ。すでに何人ものプレイヤーがカウンターに並んで交換していた。

 

「騎士くん、こっちに交換してもらえるリストがあるよ」

「お、どれどれ」

 

 ユキの指差す方の壁には、まるで受験合格者の掲示板ではのごとく、数多くの交換リストが書かれていた。多かった。

 SSスクリーンショットを撮れば自分のウィンドウにデータとして落とせるので、そちらで見ることにする。武器防具は装備できるものに分けて、スキルは一応全部目を通す。何に使うかわからないスキルも多い。

 武器や防具は珍しいのがあるけど、使えるかというと微妙なのが多い。このレベルだったらリサに作ってもらった方が強い。ネタ装備としては面白いのが多いかった。

 

「あ、家具類とかインテリアもあるよ」

 

 ウェンティの言う通り、アイテムのところには家具類やインテリア、小物類がたくさんあった。

 こうして見ると、『スターコイン』で交換できるものは、あまり強力ではないが持っていると楽しめるものが多い気がする。

 ここにあるのはスタートプレイヤーでもコインさえあれば手に入る物だから、あまり強すぎるのはダメなのかもしれない。

 

「アクセサリーもいろいろとあるんだよねー……」

「『スキル』も面白いのばかりだよな」

「そうです……」

 

 ね、と言いかけて、いつの間にか隣に立っていた男にシロウは目を見開く。

 

「やあ。久しぶりだね、プリンセスナイト」

「貴方はっ……!」

 

 思わず身構える。

 そこに立っていたのは茶髪の長身痩躯の男、ニヤニヤとした人を食ったような表情が張り付いていた。

 PKギルド『カレイドブラッド』のメンバー、ツカサであった。その後ろにはギルドメンバーであるノウェムとヤエもいる。

 セレナが、ユキを守るように前に出る。

 

「おいおい、そう警戒しないでくれよ、ここじゃ戦闘はできないのは知ってるだろ? 何もしないさ」

「……なんの用ですか?」

「知り合いの顔が見えたから挨拶しようと思っただけさ」

 

 このゲームではPKが認められている以上、それも一つの楽しみ方だ。迷惑ではあるし、他人の恨みを買うだろうが、そのリスクを背負ってまで決めたプレイスタイルを貫くならば、他人がどうこう言うのは筋違いである。

 だが、それと好き嫌いは別だ。少なくともシロウは仲良くしたくない相手である。

 

「……なんか用ですか?」

「ははは、まあいいさ。それはそうとキミは、試合には出ないのか?」

「……いや、出ないです。見る方好きなので」

「リベンジできるかと思ったんだけどな、アテが外れたか」

 

 ツカサがおどけたように肩をすくめる。ってことはツカサは出場するみたいだ。

 

「まあいいか。いずれ借りは返すよ。それまで他のPKに狩られないでくれよ」

「勝手なこと言わないでください。そっちこそせいぜいここを出てすぐにPKKされないようにしないでください。周りのプレイヤーも貴方達が誰かわかっているみたいですから」

 

 シロウらの周りにいる何人かのプレイヤーが、さっきからこちらをじっと監視している。おそらくツカサ達にかけられた賞金狙いのプレイヤーだろう。

 闘技場以外の戦闘が許されていない。もしツカサたちに対して、攻撃や捕縛に類する行動をとった場合、逆にペナルティが発生することもありえる。最悪、仕掛けた方が犯罪者としてオレンジネームに落ちる可能性だってあるのだ。

 だから彼らはツカサたちがコロッセオを出る瞬間を狙っているんじゃないかと推測する。もちろん、ツカサたちもなにか対策はしていると思う。

 

「ツカサ、急がないと参加者の入場に間に合わなくなりますよ」

「ツカサ、さっさといくぞ! お前らまたなー。次会った時は負けないからな!」

「はいはい。わかったわかった」

 

 後ろから飛んできたヤエとノウェムの声にツカサが答えた。

 

「んじゃ。首を洗って待ってなよ、プリンセスナイト」

 

 呵々と笑いながら『カレイドブラッド』の面々がシロウらの前から去っていく。それに伴い、周りにいたプレイヤーたちもぞろぞろと遠巻きにツカサたちを囲みながら消えていった。

 

「変なのに目を付けられたねえ、シロウ」

「うへぇー……まったくだよ」

 

 ウェンティの言葉にため息混じりで返す。不幸中の幸いなのは、ただPKをするのではなく、正面から戦って僕を倒したいと思っているところか。少なくとも不意打ちや暗殺的なことはしてこないだろう。PK相手にそれがどれだけ信用できるかと言われると難しいが。

 

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