レジェンドオブアストラル   作:Yukimidaifuku

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プリンセスナイトと闘技場での戦い

「あっ、シロウくんだ。おーい!」

 

 聞き覚えのある声に振り向くと、遠くで【聖剣の集い】のカナミが手を振っていた。後ろには【聖剣の集い】のギルドメンバーも勢揃いしている。こういうイベントの会場でだと、知り合いによく会う。

 

「あれ? カズハさんがいないですけど。ああ、そっか、出場者でしたけ?」

「うん、そうだよ。私らはてっきりシロウ君が出るもんだと思っていたんだけどなあ」

「ですね。あ、アストラルでは初めまして、サツキです」

「あ、どうもシロウです」

 

 アストラルでの皐月のアバターは【エルフ族】みたいだ。

 

「おいおい、カナミンがいるぞ」

「生で見ると可愛いな」

「隣にいる女の子も可愛いくね?」

 

 トップギルドの【聖剣の集い】にアイドルのカナミがいることで周りが大騒ぎになってきた。

 

「シロウさんは出ないんですか?」

「あはは、僕は見てる方が楽しいですから」

 

 もしもカズハとツカサが当たったらどっちが勝つか気になるだ。

 

「そうですか……。少し残念です……」

「ヤッホー! シロウくん」

「わあっ!?」

 

 突然後ろから大きな声をかけられ、驚いてビクッとなってしまった。

 振り向くと、可愛らしい幼女が立っていた。ラピスラズリだ。

 

「こんにちは!」

「ああ、こんにちは……じゃなくて。なんでラピスがここに?」

 

 シロウがそう問いかけたとき、ラピスの後ろに別の人物が立っているのに気がついた。【魔族】の女性だ。

 ネームプレートはONになってないらしく、視線を向けてもポップしない。

 相手は高身長で絶世の美女と言うべきか、クールで儚げな印象である。

 

「ノインを案内しているんだ!」

「は、初めまして、シロウです。ラピスにはいろいろとお世話になっています」

 

 少し緊張するシロウ。

 

「我はノイン。ラピス様からは主ぬしのことはよく聞いている」

「ノインさんは『チャンピオン大会』に出場をするんですか?」

「ああ、そうだ。ラピス様に案内をしてもらっている」

「シロウくんは出場するの?」

「僕は見る専門だから、出場はしないよ」

「それなら急いだ方がいいわよ。そろそろ受付終了時間だから」

 

 リサがウィンドウの時計を見ながら教えてくれた。

 

「受付ならここを真っ直ぐに行った先です。早く行って下さい」

「それじゃあ行こうかノイン。シロウくん、セレナちゃん、レメちゃん、また今度ゆっくり話そうね」

「では失礼する」

「はいまた」

「またなー!」

「私達もそろそろ観覧席に行こうか」

 

 カナミの言葉にシロウらはぞろぞろと連れ立って歩き出す。ふと、ウェンティがいないことに気付いたシロウが振り返ると、彼女はその場でボーッと立ちつくしていた。

 

「……なんで『氷姫』が? 嘘でしょ……! 『冥王』はいったいなにを……?」

「おーい、ウェンティ?」

「え!? あ、ああ! ヒナタとカエデちゃんの応援だね! 早く行かないと!」

「あ、や、うん?」

 

 ウェンティが慌てて走り出し、シロウを追い抜いてセレナたちに追いつく。

 『雪姫』『冥王』なんのことだろと思った。なんだか気になるワードを言っていたが、ウェンティはラピスとノインを知っているような口ぶりだった。

 シロウもヒナタとカエデを応援するためにみんなの後を追った。

 

 

 

 

「一瞬かよ……」

 

 シーンとした観客席に、誰かがつぶやいた声がやけに大きく響いた。

 しかしそれも一瞬のことで、次に湧き上がったのは今日一番の歓声。万雷の拍手が武闘場の勝利者へと降り注ぐ。

 小さくぺこりとお辞儀をして舞台を後にした。

 隣に座るセレナが話しかけてくる。

 

「今の見えました?」

「いや、全然動きがまったく見えなかったよ」

「あの速さが気になります。一瞬にして相手の懐まで移動しました……。あれはなんのスキルなのでしょうか?」

「おそらく【縮地】じゃないかな」

「【縮地】?」

 

 前の席で唸っているセレナがにシロウ尋ねてみる。

 

「【縮地】スキルは極めて短い距離という制限はあるけど、A地点からB地点へと一足飛びに移動できるスキルらしいよ」

 

 A地点からB地点へとって、まるでワープじゃないか。

 一撃必殺。それに特化したスタイルとなると。

 

「HPたいりょく勝負かな」

「ですかね。防ぐことができないのなら受けるしかない。『肉を切らせて骨を断つ』ってことですか。私わたくしにはできそうにないですね」

 

 私は紙装甲だから。セレナがそう呟くと、後ろにいたウェンティが口を挟んできた。

 

「私ならウォール系の魔法を乱発して【縮地】の発動を邪魔するかな……。直線的な動きしかできないなら、だけどね」

 

 そういう手もある。本当に空間を歪めてワープしているのでなければ、移動線上に壁が現れたらぶつかる。相手が自分に向かってくるのならどう移動してくるかはわかる。

 

 凍えるような冷気が襲いかかった。

 思わず視線を闘技場へと戻すと、対戦していた片方が氷を纏ってバッタリと倒れる。何かが起こったようだ。

 

「おいおい、また一撃かよ……!」

 

 どこからかそんなつぶやきが聞こえてくる。ノインの次の試合も始まってすぐに終わったらしい。

 闘技場に立つそのプレイヤーは佇んでいた。【エルフ族】の特徴である長い耳見える。

 美女の手には杖が握られていた。『魔法使い』なんだろうか。

 

「あれが『氷帝』か。凄まじい冷気だね」

「『氷帝』? 騎士くん、有名なプレイヤーなの?」

「上位に入るくらい強い人ではあるよ」

「『氷帝』ってのは通り名でして。【エルフ】のソロプレイヤーなんです。見ての通り、氷を操り、それでいて接近戦も得意だそうです」

「接近戦もできるってことは、魔法スキル持ちの『魔法剣士』なの?」

 

 ユキが疑問を呈すると、それに答えてくれたのはシロウじゃなくセレナだった。

 

「おそらくですが」」

「なるほど。あれ? でもソロプレイヤーってこの大会に参加できないんじゃ?」

「蛇の道は蛇。そこはなんとでもなります。一時的に他ギルドに入ってもいいしですし、知り合いに登録だけしてもらって幽霊ギルドを立ち上げてもいいです。そういうのを募集する掲示板もあるりますしね」

 

 その後も試合は順調に進んでいき、とうとうヒナタの番になった。

 

「ヒナタちゃーん! がんばれーッ!」

「ヒナタちゃん! がんばって!」

 

 ユカとユキから力一杯の声援が飛んでいく。

 ヒナタの対戦相手はランキング一位の『剣聖』であるカズハだ。

【魔族】の特徴である角と尻尾がある。

 一回戦の対戦相手が上位一のプレイヤーだ。なんというかツイてない。

 

「やあっ!」

 

 試合開始の合図と同時に飛び出したのはヒナタ。

 だんっ! と、ヒナタが自分の身長の二倍以上も飛び上がり、蹴りをくり出す。

 

「【ブレイズキック】!」

「おっと」

 

 蹴りを剣で受け止めるカズハ。

 

「しょっぱなから飛ばすね。シロウのギルドメンバーだとしても、僕は手加減しないよ」

「わっ!?」

 

 蹴り受け止めたカズハはヒナタを跳ね上げる。バランスを崩したヒナタが空中に浮かび、その下のカズハが剣を下段に構えた。

 

 

「【聖竜剣】!」

「くっ!」

 

 斬り上げられた光の剣がヒナタを襲う。なんとか身体を捻り、直撃は避けたものの、ヒナタの身体がかすっただけで回転して吹っ飛んだ。

 そのまま地面に落ちるかと思いきや、ヒナタは猫のように身体を反転させて着地。と同時に力強く地面を蹴り、低姿勢のまま再びカズハへと突っ込んでいく。

 

「【火拳】!」

「【ソードバニッシュ】!」

 

 タイミングを合わせたようにカズハの突きが放たれる。合わせたように、じゃない。合わせたようだ。

 カズハの【カウンター】スキルが発動する。

 

「うわっ!?」

 

 押し負けたヒナタが突進した時の倍の勢いで吹っ飛ばされていく。武闘場から飛び出してしまうと場外負けだ。

 

「こんにゃろ……! 【フレアアクセル】!」

 

 場外まで飛ばされないように踏み止まった。ヒナタは爆炎を上げて突っ込んでくる。

 

「【光剣】!」

「【フレアフィスト】!」

 

 ドガァンッ! と大きな破壊音を響かせて、ヒナタが武闘場に激突する。舞い上がった砂煙で見えないが、カズハに当たったのだろうか。

 

「うわぁっ!?」

 

 次の瞬間、ドカンッとぶつかる音がして、砂煙の中からヒナタが場外へとバウンドしながら吹っ飛んでいった。負けたようだ。

 モニターウィンドウに映る表示はKOなので、場外負けじゃない。普通にHPが無くなっての負けだ。(ダイイングモードなのでHP1は残ってるが)

 惜しい。ヒナタのスキルが決まっていたら勝てたかもしれない。

 試合はカズハの勝利となった。

 

 

 

 

「う、う、う〜っ……! 負けた〜!」

「残念だったね……。次また頑張ろうよ」

 

 とても悔しそうにしている。ユキ達が励まれている。シロウも励ます。

 

「勝負は時の運。負けたのは仕方ないよ。ウェンティの言う通り、またこの次に頑張ればいいさ。これで終わりってわけじゃないんだし」

「そうだよ! ヒナタ! 次、頑張ろう!」

「ええ。大事なのは不撓不屈ふとうふくつの精神です。頑張りましょう、ヒナタ様」

 

 不撓不屈という難しい言葉を言うセレナ。

 みんなに励まされ、しばらくするとヒナタもだいぶ落ち着いてきたようだ。

 

「おいおい、なんだよ!? まったくついていけねえよ!」

「どちらも攻防一体だな」

 

 武闘場では冗談のような戦いが繰り広げられていた。

 両手に持った双剣を操るのはPKギルド『カレイドブラッド』のメンバー、ツカサ。

 それに対峙してファイティングポーズをとるのは、魔族の女性、【雷帝】だ。

 

「キミ、なかなかやるねー!」

「お兄さんも強いッスねー!」

 

 ツカサが繰り出した横からの剣を【雷帝】跳び上がって躱した。そのままくるりと横に半回転しながら、ツカサの後頭部に踵蹴りを放つ。

 

「はははッ……! 面白い!」

 

 その蹴りをツカサもギリギリで躱し、体勢を崩しながら闘技場を転がり、相手から離れた。

 着地した【雷帝】は、ツカサ目掛けて突進し、雷を纏った両拳をまるでマシンガンのように打ち付けている。左右に手にした双剣でツカサが防戦。ガンガンと金属がぶつかる鈍い音が武闘場に響き渡った。

 

「それッ! 【クロススラッシュ】!」

「おおっと」

 

 ツカサがスキルを放つ。

 【雷帝】がバックステップで躱す。そしてそこから一気に高く宙へと飛び上がり、くるりと前に回転して、雷を纏った蹴りを放つ。

 

「【雷脚】!」

「ちっ!」

 

 自分へ向けて落ちてくる【雷帝】の蹴りを、双剣をクロスさせガードするツカサ。

 バッ! と、両者が離れ、距離を取って再び対峙する。

 その後もガンガンと打ち合うスタイルの戦いが続いた。防御をしていても互いに少しずつHPが削られていく。

 

「まどろっこしいッスね! 【紫電閃砲】!」

「へぇー……!」

 

 【雷帝】の両手が閃く。

 大きな雷の玉が放たれた。

 

「【流星双斬】!」

 

 ツカサの両手が閃く。左右同時の八連撃が放たれた。

 ツカサは雷の玉を切った。

 

「【アクアジェット】!」

 

 水を纏い突っ込んでくる。

 

「【雷火崩拳らいかほうけん】」

「【水龍双星斬すいりゅうそうせいざん】!」

 

 そのまま一瞬にして距離を詰め、雷と火が混ざった拳と水の龍が現れて触れたと思いきや、次の瞬間、爆発するかのような轟音ともに【雷帝】は数メートルも吹っ飛んでいった。ドウッ、とそのまま場外へと【雷帝】が落ちる。

 

『プレイヤー1、場外。勝者、プレイヤー2。ギルド【カレイドブラッド】所属、ツカサ』

 

 勝者を告げるアナウンスが流れると、会場に歓声とブーイングが響き渡った。

 

「うへー……。ツカサさん、前より戦ったときよりも強くなってる……」

「ツカサ様が今回優勝するのでしょうか?」

「んー……。たぶんノインさんが優秀するんじゃないかな」

「ノイン様がですか?それはなぜでしょうか?」

「初めて会った時、只者じゃないなってね。底が見えなかった」

 

 なんとなく勘でしかないがノインが優勝しそうな感じがするのだ。

 闘技場にいる中でノインが強いとシロウは感じていた。

 シロウは再び正面に視線を戻し、始まった次の試合に集中することにしたのだった。

 

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