セルフ脳破壊で過酷なソロぴょいをしてしまうカワイイカレンチャン 作:名無しの権兵衛
「……お兄ちゃん、お話があるんだけど、ちょっといいかな?」
「うん? 大丈夫だよ」
結局、今日のクリスマスデートは楽しむことができなかった。
お兄ちゃんとせっかくのデートだったっていうのに、思考の端で常にアヤベさんがチラついちゃって、楽しむどころが少し泣いてしまいそうにだってなった。
だから、デートの最後、この思い出の詰まったトレーナー室で、お兄ちゃんとアヤベさんの関係を問い詰める。
そして、ここでこの気持ちにも決着をつける!
「お兄ちゃん、アヤベさんとどんな関係なの?」
「……えっ?」
カレンの質問に、動揺するお兄ちゃん。
……やっぱり、そういう関係なの?
「い、いきなりなんでそんなことを聞くんだ?」
お兄ちゃんが目を泳がせながら聞き返してくる。
やっぱり、やましい気持ちがあるのかな?
「だって、昨日アヤベさんと一緒にデートしてたよね?」
「……!?」
目を見開き、驚くお兄ちゃん。
へぇ、そんな表情しちゃうんだ。
そんなにばれたらまずいのかな?
「ねぇ、どうして黙っているの?」
「ちょっと待ってカレン、それは勘違いなんだ」
「勘違い? でも昨日一緒にいたよね?」
「そ、それは……」
何かを隠すように言いよどむお兄ちゃん。
勘違いなら、何も隠すことなんてないはずなのに……
「ねぇ、お兄ちゃん」
「やっぱり、アヤベさんとお付き合いしてるの?」
「い、いや、それは……」
「やっぱり、二人は付き合っているんだね?」
「それは違う、勘違いだ!」
「何が違うの!?」
もはやお兄ちゃんの言うことなんて信じられない。
思わず声を荒げて涙があふれてしまう。
こんなかわいくないところ、お兄ちゃんにだけは見られたくなかった。
「昨日仲よさそうに一緒に歩いて、お兄ちゃんのおうちのほうに歩いていって……」
「それで勘違いってどういうことなの!?」
「カレンの気持ち知ってるくせに!!」
「その場しのぎの嘘ついて、淡い期待を持たせて、カレンの気持ちを弄んで……」
「そんなの…… そんなの、ひどすぎるよ!!」
でも、もう気持ちを抑えることなんて出来なかった。
カレンのかわいいでは、お兄ちゃんへの大好きを隠せるはずがなかった。
「アヤベさんが好きなら好きって言ったらいいでしょ!?」
「アヤベさんのことが好きだから、カレンの気持ちには答えられないっていえばいいじゃない!!」
「なに? それともカレンはキープ?」
「あははっ、まさかそんな風にコケにされるなんて思わなかったなぁ……」
「でもいいよ? たとえお兄ちゃんの一番になれなくても、お兄ちゃんのそばにいられるんなら!」
「か、カレン…… そんなわけ」
「そんなわけない? カレンにはそんな価値もないってわけ!?」
こんなことを言いたいわけじゃないのに、涙と一緒にカレンの思いもポロポロこぼれてしまう。
「カレンはお兄ちゃんのことこんなにも好きなのに、あの時からお兄ちゃんのことずっと好きなのに……」
「こんなの、こんなのひどいよ!!」
「私がどれだけお兄ちゃんのことを好きか教えてあげようか? あの日の思い出がどれだけ私にとって心の支えになったか…… どれだけお兄ちゃんのことを……」
「カレン? 俺のこと、そんなに……」
「大好きだよ!! あの日の思い出も! 久しぶりの再会でも変わらず優しいところも! カレンのために頑張ってくれていることも! カレンのことを覚えていなくても、カワイイを極めるための活動に理解して、応援してくれることも!」
「優しい笑顔も! かっこいい声も! 大きな背中も! 相性のいい匂いも! 優しい言葉も! カレンのカワイイに負けない強い心も! お仕事のためにずっとずっと頑張っていることも! カレンだけじゃなく、みんなに優しいところも……」
「全部全部、大好きなのに!」
もう、涙をこらえることなんて出来なかった。
せっかくのデートに向けた気合のメイクも、どんどん崩れちゃって、かわいくなくなって……
「こんな、こんな気持ちになっちゃうなら……」
「もういっそ、お兄ちゃんと「カレン!!」……!?」
言ってはいけない、酷いことを言おうとしたその時、衝撃とともにぬくもりに包まれて……
って、これもしかして、だだだだだ抱き着かれて!?!?
「ごめんカレン、そんな気持ちにさせてしまって……」
「はわっ、へっ? ふぇ?」
「今まで、ずっとカレンの気持ちに気づかないふりをして、逃げていた」
「えっ、あの、その……」
「でも、もう逃げたりなんてしないよ」
えっ、ちょっと待って、どうしよう、頭が幸せでいっぱいで……
今までにないくらいの真剣な表情に、思わず可愛くない声が出てしまう。
でもお兄ちゃんは、覚悟を決めた様なかっこいい表情で、カレンの目をじっと見つめてくる。
ど、どうしよう、心臓がどきどきして、うまく頭が働かなくて……
カレン、こんなにちょろかったのかなぁ?
「昨日、アヤベと一緒にカレンのためのプレゼントを探していたんだ」
「それで、アヤベとのことで、君を悩ませてしまって済まない」
「そ、そうだよ! アヤベさんとのことはどうなの!?」
危ない、流されるところだった。
だって昨日アヤベさんと一緒にお兄ちゃんの家のほうに行ったの見たもん!
それに、結局アヤベさん昨日帰ってこなかったし、やっぱり何か言えないことがあるんじゃ……
「あれは、うちにあるフワフワクッションを一晩中堪能したいからって言われて家にいれただけで、決してやましいことなんてなかったんだ!」
「……本当に?」
「本当に」
……まぁ、おにいちゃんは嘘ついてないみたいだし、ここは引いておこうかな。
「まぁ、おにいちゃんにそんな甲斐性があるとは思えないもんね」
「カレン、そういうのは結構傷つくぞ……?」
フーンだ、カレンの乙女心を傷つけたんだから、これでおあいこだよね。
そんなふうにそっぽを向いていると、おにいちゃんがそわそわし始めちゃった。
いったいどうしたんだろう?
「カレン、話があるんだ」
「えっ、は、はい……」
そういうと、お兄ちゃんはきれいな包みの箱を取り出してカレンに差し出してくれた。
「えっと、これは……?」
「ごめんな、もっと早く渡せばよかった」
そうして、お兄ちゃんは包みをはがして、中身を取り出した。
「……これって」
「あぁ、この前欲しそうに見ていたから」
それは、この前のアクセサリーショップに置いていたピンクの宝石が付いたリングネックレスだった。
それをお兄ちゃんは、ネックレスからチェーンを取り外して、カレンの右手を取ってくれた。
「えっ、あの、それは……」
「カレン」
「はい!?」
「今はまだ本物は渡せないけど、君の薬指を予約してもいいかい?」
「……はいっ!」
そんなこと言わなくても、カレンの心は予約済みだよ♪
あの時遊園地で出会った時から、ずっと……
Ending No.2
Happy End
Reserve 右手に輝くは黝輝石