セルフ脳破壊で過酷なソロぴょいをしてしまうカワイイカレンチャン 作:名無しの権兵衛
「……よし、アヤベさんに聞いてみよう」
正直、それでアヤベさんとの関係が崩れてしまうのは怖い。
でも、このまま黙っておにいちゃんを取られるのも、いや。
だったら、ちゃんとアヤベさんと向き合って話すしかない。
アヤベさんは昨日外泊届を出していたので帰ってきていない。
さらに昨日おにいちゃんと一緒におにいちゃんの家に向かっていた。
……本当は、二人の関係を知るのが怖い。
だってもしかしたら、もうすべて手遅れで、アヤベさんとおにいちゃんは付き合っているかもしれない。
でもおにいちゃんが学生に手を出すような人とも思えない。
つまり、結局自分でいくら考えても分からないってことでしかない。
そんなことを一人で考えて悶々としていると、寮部屋の扉が開いて、ルームメイトのアヤベさんが入ってきた。
「ねぇアヤベさん、アヤベさんっておにいちゃんのことが好きなの?」
ドキドキしながら私は、アヤベさんが帰ってくるなりさっそく本題を切り出す。
するとアヤベさんは、突然のことでしばらく呆然とした表情をした後、顔を真っ赤にさせて慌て始めちゃった。アヤベさんカワイイ♪
「なっ、なななっ、何を言っているの//// わ、私がおにいさんを好きだなんて、一体どうして……」
「だってカレン見ちゃったんだもん、昨日おにいちゃんとアヤベさんが一緒に歩いているところを」
そうカレンが笑顔で告げると、何故かアヤベさん、顔から血の気が引いちゃったみたい。いったいどうしたのかな?
「……そうね、たぶん、彼のことが好きなんだと思うわ」
「……たぶん?」
「えぇ、だってこんな気持ち初めてで、本当に好きなのかどうかも、まだわかってなくて……」
「アヤベさん……」
そう胸を抑えながら苦しそうに話すアヤベさんを見て、私まで心が締め付けられそうになってしまう。
そっか、そうだよね。だってアヤベさんが自分のための人生を歩み始めたのは、つい最近だもんね。
恋心とか、まだちゃんとわかってなくてもおかしくないよね、でも……
「もう一つ聞きたいんだけど、アヤベさん、昨日はおにいちゃんの家にお泊りしたの?」
「……えっと、それも、昨日見てたの?」
「見てっていうか、おにいちゃんの家の方に歩いていくのが見えたから……」
「……////」
私の質問に、アヤベさんは顔を真っ赤にして小さく頷く。ふふっ、アヤベさん初心でカワイイなぁ~ これがおにいちゃん関連でなければ。
「そ、その、でも、別に変なことはなかったのよ! が、頑張って勇気を出したのに、添い寝だけで終わっちゃったし……」
「へぇ……」
アヤベさん添い寝してもらえたんだぁ、カレン一度もしてもらったことないのに。
「そ、それよりもカレンさん、アナタはどうなのよ?」
「へっ? 私?」
「アナタだって、おにいさんのこと、好き…… なんでしょう?」
「そ、それは……」
アヤベさんの問いかけに、言いよどんでしまう。
果たして、親友であり恋敵でもあるアヤベさんに、自分の本当の気持ちを告げてもよいのだろうかと。
でも、アヤベさんの気持ちだけ聞いて、カレンだけ黙ったままなんて、そんなのフェアじゃないし、なにより可愛くないよね?
だったら、カレンも覚悟を決めないと……
「うん、カレンもおにいちゃんのことが好き」
「……そう、なら私は」
「だからアヤベさん、ここからは勝負だよ」
「……えっ?」
多分アヤベさんは、自分から身を引いてしまう。
でもそんなのだめだよ。たとえ先に他の人が好きだったからってあきらめちゃ。
ちゃんと自分に納得できないまま諦めて気持ちに蓋しちゃうなんて、可愛くない。
だからここは、正々堂々勝負しないと。
恋もレースも、全力でぶつかるのがウマ娘だよ♪
「「好きです」」
ある日の夕方、担当に放課後までトレーナー室で待つように言われた俺に待っていたのは、担当であるカレンとその親友のアヤベからの告白だった。
普通なら美少女、しかも二人からの告白なんて喜びそうなものだが、自分の中にあるのは『困惑』の感情だけだった。
なんせ、カレンは自分の担当ウマ娘で、アヤベはその親友、つまり二人ともまだ学生なのだ。
それに、カレンは今まで俺のことをからかってきて反応を楽しんでいたし、アヤベに至っては確かに最近は何度も一緒にお出かけをしたり学園内でそこそこ話したりする程度の中で、まさか告白されるほど好意を持たれているとは露ほども考えていなかった。
そもそもこれは何かの罰ゲームじゃないか、とも一瞬疑ったが、即座にその可能性を頭の中から消し去る。
二人はそんな人を傷つけるような冗談をするような子じゃないと知っている。
それに、こういう経験はないが、なんとなく二人の目が嘘をついていないと語り掛けてくるように感じた。
でも、なんで俺なんだ……?
「あっ、おにいちゃん、どうして自分なんだって思ってるでしょ?」
「えっ!? なんでそれを……」
「それくらい、貴方の顔を見ればわかるわ。ほんと、変な人ね」
「うぅ……」
なんというか、どこか気恥ずかしさを感じてしまい顔を伏せてしまう。
「あのねおにいちゃん、カレンはね、あの日遊園地で出会った時から、おにいちゃんのことが好きなんだ」
「……えっ?」
あの日って、初めて遊園地で出会ったあの日からってことか!?
そんなに昔から……
「カレンの夢を笑わないで、本気で応援してくれた。あの時の思い出があるから私は今のカレンでいられるし、カワイイを極めることができた」
「それがまさか、トレセン学園で再会できるだなんて思わなくて、あの時ばっかりはカワイイをかなぐり捨ててでもおにいちゃんを逃せないって思って必死だったなぁ……」
「カレン……」
「それからおにいちゃんと一緒に過ごすうちに、やっぱりステキな人だって改めて思うようになっていったの」
「ちょっと頼りないけど、やるときはビシッと決めてくれて、とっても優しくて、気が利いて、カレンのことを理解してくれて、カワイイを極めるために手伝ってくれて……」
「あの時と変わらない、ううん、それよりもっと好きになっちゃった」
「だからカレンは、私は貴方のことが好きです」
「自分からの告白は可愛くないとか、もうそんなことはいないくらい、カレンのカワイイを突き破っちゃうくらい、どうしようもなく、大好き……」
「カレン……」
まさか、カレンがそれほどまでに俺のことを好きでいてくれただなんて……
その気持ちにも気が付けないだなんて、情けないばかりだ。
「わっ、私も、貴方のことが好き!」
「……アヤベ」
「あの日の天体観測の時に助けてくれて、それがきっかけで一緒に色々お出かけ行くようになって……」
「一緒にお出かけしたり、初詣に行ってカフェで一服したり、遊園地デートに行ったり、天体観測に行ってキャンプしたり、クリスマスイヴにイルミネーションを見に行って、貴方の家に泊めてもらったり……」
「一緒にいるときのささやかな気配りがうれしかった、余計なことはしないで静かに傍にいてくれたり、本当に必要な時は無理にでもかかわってくれたり、どうして担当でもない私をって聞いたら、私のことをほっておけないからって…… そんなこと言われて、意識しないようにするなんて、無理よ」
「貴方のプレゼント、全部大切に使ってるの。リストバンドも、タオルも、ツーショット写真なんて、こ、こっそり待ち受けにしてるくらいで……////」
「……私、今まであの子の為に生きてきたから、これが本当の好きって気持ちなのかわからなかった」
「でも、今ならこの気持ちの名前が、わかるの」
「好き、好きよ」
「たとえカレンさんより後に好きになったとしても、この気持ちは負けない……」
「私は、貴方のことが好きです、おにいさん、大好き……」
「アヤベ……」
まさか、アヤベまでそんなに俺のことが好きだったなんて……
……それなら、俺も二人の気持ちにしっかり向き合って、答えを出さないといけない。
「二人とも、俺は……」
「「まって!」」
「えっ?」
思い切って返事を使用をしたその時、二人からまったがかかった。
いったいどういうことだろうかと困惑していると、カレンが先に口を開いた。
「あのねおにいちゃん、今日私たちは、告白のお返事が欲しくて気持ちを伝えたわけじゃないの」
「えっ、どういうこと?」
カレンからのまさかの回答に、さらに困惑してしまう。
……つまり、これは思い出作りという奴だろうか?
告白できないまま卒業するくらいなら、返事はなくとも自分の気持ちを伝えておきたい、みたいな……
「うーん、なんか勘違いしているみたいだから言っておくね? 正確には、今すぐお返事が欲しいわけじゃないんだ」
「今すぐ、ってことは」
「あっ♪ 気づいちゃった?」
「気づいたみたいだから行ってしまうけど、この告白の返事はカレンさんが卒業するまで待っていてほしいの」
「そう、だっておにいちゃんもいきなり告白されて、すぐには決められないでしょ?」
「えぇ、それに一人ならまだしも、二人同時に告白されたわけなんだから、しっかり時間を取って考えてもらおうと思ってね」
「えっと…… でも、さすがにそれは長くない? それに途中でアヤベ卒業しちゃうし……」
だってカレンの卒業って、あと2年はあるよ? その間告白の返事を待たせてしまうのも申し訳ないし……
あれ、もしかしてこれって「トレーナーと生徒」の関係性を理由に断るっていう逃げ道失った?
「あら、卒業したら会ってくれないの?」
「いや、そんなことないけど……」
「ならそこは問題ないじゃない」
「うっ……」
確かにそれはそうだけど……
「そ・れ・に♪ カレンたちもただ返事を待っているだけじゃないよ?」
「……えっ?」
「それはそうよ、だって私とカレンさんは恋のライバルなんだから」
「この2年間の間にしっかりおにいちゃんのハートを射止めちゃうから、覚悟しててね♪」
その言葉に驚き、二人の目を交互に見る。
……本気だ。
いや、本気どころか彼女たちの目は狩人のそれになっていた。
これは……
「あっ、でもおにいちゃんがその時に私たちのどっちも選ばなくても怒ったりしないよ?」
「えぇ、その時は私たちの魅力が足りなかったってだけだもの。何なら他に彼女を作ってしまえば私たちも諦めるわ」
「私たちがそんな隙与えないけどね♪」
「ヒッ」
思わず喉から空気が漏れる。
……だが、二人の気持ちはよく分かった。
「……それなら、カレンの卒業式に返事をする。それでいいんだな?」
「えぇ、お願いするわ」
「もし、それまでに好きな人ができたら俺のことは気にしなくてもいいからな?」
「……おにいちゃん、それは私にもアヤベさんにも失礼だよ?」
「……すまん」
「でも、これからはそんな世迷言、言えないようにしてあげる」
「えっ?」
「おにいちゃん」
「おにいさん」
「「覚悟しててね!」」
それからというもの、二人の激しい攻勢が始まった。
まず真っ先に始まったのは、今まで以上のスキンシップだ。
「おに~ちゃ~ん♪」
「うおっ、どうしたんだカレン? いきなり抱き着いてきて……」
「えへへっ、なんでもな~い♪」
「……おにいさん」
「アヤベ、なんで手をつないで……」
「……ダメ?」
「だ、ダメじゃないけど……」
単純に距離が近い、積極的なボディタッチ、腕を組んできたり手を繋いだり……
いくら相手が年下とはいえ、女性への免疫がない俺にはかなりきついものだった。
さらに二人ともいつもトレーナー室に入り浸るようになり食事も一緒にするようになったから、以前よりも関わる機会がかなり増えてきたのだ。
もちろんそれだけでは終わらない。
休日になればデートが待っている。
「へぇ~、ここがおにいちゃんの家かぁ」
「このフワフワソファーは私の定位置よ」
「それ買ったの俺なんだけど……」
「アヤベさんいいなぁ、カレンも私物置いておこうかなぁ」
「……もう勝手にしてくれ」
時にはおうちデートと称して俺の家にお泊りをしに来た時もあった。
その際に合鍵を二人に持っていかれ、俺の家に二人の私物が増えるようになっていった。
正直、美少女二人に毎日言い寄られて何もできないのは、色々ときついところがある。
……だが、この生活もアヤベが卒業すれば少しはましになるはずだ。
そんな考えは、一瞬で砕け散ってしまったのだが。
「お邪魔するわよ」
「……もう、またカップ麺ばっかり。ちゃんとしたもの食べないと」
「うっ、それは……」
「……そうね、これから毎日料理作りに来てあげるから。楽しみにしてて」
「えっ!? でもそれはさすがに悪いって……」
「大丈夫よ、私がやりたいだけだから。……それに、そのためにここら辺に引っ越したんだし」
「……えっ?」
気が付けば大学生になったアヤベさんが毎日のように家に来て、料理や掃除、洗濯をしてくれるようになった。
……これって、いわゆる通い妻ってやつでは?
なんか嫌な予感がしながらも、相手は合鍵を持っているためどうしようもなかった。
さらには、カレンの猛攻も止まらなかった。
「つぎのレースだが、ここは……」
「こうしたらいいんだよね? それじゃあ……」
「……カレン、なんでミーティング中ずっと手をつないでるんだ? それも、こんなつなぎ方で」
「えっ、恋人つなぎのこと? こうやって恋人つなぎしながらだとリラックスしながらミーティングできるんだけど…… ダメかな?」
「……わ、わかったよ」
「やった♪」
カレンはトレーナー室にアヤベがいないことをいいことに、積極的なスキンシップを図って来ていた。
中にはまるで恋人のような接し方をしてくることもあるため心臓にわるい。
逆に休日には二人で俺の家に泊まることがあるが、二人が牽制しあっているのか直接的な接触は少なく二人も自然体で過ごしているので、ある意味安息の時間となっていた。
もちろん、季節のイベントはほとんど二人と過ごすこととなった。
6月に何故か三人でゼクシィを見ることになったり、夏には海や祭りに行き、ハロウィンはコスプレに誘惑されながら用意したはずのお菓子がなくなり悪戯され、クリスマスには三人で一緒に聖夜を過ごす。
さらには、お正月には二人が一緒に俺の実家まで来たいとまで言ってきたのだ。
さすがにただのトレーナーと学生という関係でそこまでは許せないと断ったはずだが、二人に言いくるめられ気が付けば3人で帰省することになっていた。
「いやぁ、まさかあんたがこんな美人さんを二人も連れて帰ってくるとはねぇ」
「いや、だから担当とその友だちだって」
「それにしても、お二人はどうしてうちに来たんだい? ここら辺なんて何にもないのに……」
「それはですね、大好きなおにいちゃんの過ごした場所のことを知りたいなぁって思いまして♪」
「私も、大好きなおにいさんの過ごした家のことを知りたいと思って……」
「はっはっは! お前随分とモテてるじゃねぇか!」
「兄ちゃんすげぇ」
「なんで兄貴がこんなにモテるのよ」
「笑い事じゃねぇ……」
「それで、お二人のどっちと付き合ってんの?」
「ちょっ、母さん!?」
「私もアヤベさんもおにいちゃんに告白したんですけどぉ、まだお返事もらってないんですよねぇ」
「カレンさんの卒業式の日にお返事をもらえることになってるので、そのあとならお応えできると思います」
「……あんた」
「その日まで返事待ってってお願いされたんだよ!」
そのあと母さんは二人と仲良くなって我が家の味を教えるとか言って二人に料理を教え始めた。
親父からはからかわれ、妹は疑いの目で、弟はなぜか羨望の目で俺を見るようになった。
そのあとは年明けに家族も一緒に初詣に行って、のんびりと正月を過ごしてトレセン学園に戻ることになった。
帰り際に母親から「あの子たちのこと、ちゃんと幸せにしなさいよ」と言われた。
そんなこと、わかってるって……
その後はバレンタインをはさんで、ついに決断の日がやってきた。
カレンの卒業式。
式中の時点で泣きそうになるも何とかこらえ、式後に校舎裏に呼び出された。
そこにはもちろん、カレンとアヤベが待っていて、再び俺に告白をしてくれた。
どうやら、自分たちの気持ちが変わっていないことを伝えるためでもあったらしい。
そしてその返事を伝えるときが来た。
俺の気持ちは固まっていなかった、だけど返事だけは決まっていた。
「二人とも、ごめん」
俺の返事に二人は言葉を失い、震えていた。
その姿を見て心が痛む、でも二人のためにも、せめて誠実に答えよう。
「この二年間、辛かったり耐え切れそうになかったり、大変なこともあった」
「でも、本当に楽しい二年間だったんだ」
「二人と一緒にお出かけして、おしゃべりして、ご飯を食べて、お泊りして、全部初めてで、新鮮で、たのしくて……」
「そんないくつもの積み重ねがあって二人は、俺にとってとても大切な人になっていた」
「カレンはとてもかわいくて、自分の夢に全力で、ストイックで、色々振り回されることもあるけどそれも楽しくって……」
「カワイイに全力な時の姿がとてもキラキラしてて、からかう時の小悪魔な笑みにドキッとして、甘えてくるときの姿が愛おしくて」
「そんなカレンのことが、大好きだ」
「おにいちゃん……」
「アヤベはとても綺麗で、お人好しで、得意でないといいながら料理も頑張ってて、どこか抜けてるところがあって放っておけなくて、ふわふわが大好きで……」
「自分の気持ちに素直になれないところが可愛くて、俺のためにフワフワの寝具を探すのを手伝ってくれて、かと思ったらフワフワかどうかを確かめるためって言い訳して一緒の布団に入って甘えてくるのが愛おしくって」
「そんなアヤベのことが、大好きだ」
「おにいさん……」
俺の話を聞きながら、二人は目じりに涙をためている。
そのことに胸を痛めながらも、言葉を続ける。
「俺にとって二人は、とても大好きで、かけがえのなくて、愛おしくて、大切な存在になっていたんだ」
「だけど俺は優柔不断で、二人のうちのどちらかを選ぶことなんて出来なかった」
「二人を傷つけたくないあまりに、結局二人を傷つける手段しか思いつかなかった」
「そんなどっちつかずで最低な俺が二人を幸せにすることなんて、できない」
「だから、ごめん」
自分の気持ちを正直に打ち明けて、頭を下げる。
これが勇気を出して気持ちを伝えてくれた二人に対する、せめてもの償いであると思って。
「……」
「……」
沈黙が広がる。
だがそれも無理はないだろう、年頃の二人の気持ちを散々かき乱して、この二年間を無駄にさせて、挙句この対応だ。
罵倒どころか暴力を振るわれても仕方ないとすら思っている。
「……おにいちゃん、顔を上げて」
そして頭を下げ続けしばらくたった後、ついにカレンがこの静寂を破った。
覚悟をしながら顔を上げると、予想外の光景が広がっていた。
二人が顔を真っ赤にさせて、涙を目じりに溜めながらも嬉しそうな顔をしていたのだ。
「つまりおにいちゃんは、私たち二人のことだ大好きで、どっちとも付き合いたくて一人を選べないから、断ったってことだよね?」
「……えっと、そうです」
「つまり私たちが二人同時に付き合ってもいいっていうなら、問題はなくなるのよね?」
「そうです…… あれ? いやいや! その理屈はおかしいだろ!?」
なんで二人を振ったはずが、二人と付き合う流れになってるんだ!?
この流れはまずい、何とか軌道修正しないと……
「二人同時に付き合うって、それって浮気ってことだろ? 変なことは考えずに……」
「でも、私たちがオッケーって言ってるんだよ? それって何か問題があるかな?」
「い、いや、でもそんなことするやつは、他にも浮気するかもしれないだろ? そしたら傷つくのは二人の方だし……」
「それじゃああなたは、私たち以外に言い寄られたら好きになっちゃうの?」
「……いや、でも二人同時なんて、きっとうまくいかないし」
「今までは大丈夫だったよね? 何か問題あるかな?」
「……ないです」
ま、まさか今までの生活がここで牙をむいてくるとは……
だが、まだ何とかなるはずだ。
「そうだ、たとえ二人と一緒に付き合えても結婚はどちらか一人としかできないじゃないか!」
「おにいちゃん、事実婚って知ってる?」
「内縁の妻、いい響きね……」
いや良くないだろ!?
「そ、そう簡単に言うけど、それがどれだけ大変なことかわかってるのか?」
「わかっているわ、でもきっと大丈夫、私たちを救ってくれた貴方がいるんだもの」
「確かに大変なところもあると思うけど、私たち3人で力を合わせれば、きっと大丈夫だよ」
二人の真剣な瞳が、俺を射抜く。
だ、だが、このままだと……
「……おにいちゃん、もしかして嫌なの?」
「えっ?」
「カレンたちと一緒にお付き合いするの、嫌?」
「いや、それは……」
「貴方が嫌だというのなら、私たちは無理強いしないわ…… グスッ」
「そ、そうだよね、おにいちゃんが嫌なことを無理やりさせるのは可愛くないよね…… グスッ」
「い、嫌じゃないから! むしろ嬉しいくらいだから!」
二人が涙ぐむ姿を見て慌てて本音をぶちまけると、その先に満面の笑みが待っていた。
「よかった! それじゃあ何の問題もないね!」
「えっ?」
「それじゃあ、これからよろしくね、おにいさん」
「えっ? えっ?」
まさかこれは、騙された!?
「いっ、いや、だから俺は二人とは……」
「なら別にいいわ、勝手に彼女面しとくから」
「あっ、そういえばカレン、新生活のために物件探してるんだけど、おにいちゃん手伝ってくれる?」
「えっ? あっ、別にいいけど……」
怒涛の流れに思わずOKしてしまったが、これが間違えだった。
「見てみておにいちゃん、この物件とかよくない?」
「えっ、ちょっと広すぎない? それに家賃も高いし……」
「そうかしら? 三人で住むならこれくらいは必要だと思うけれど、それに家賃は三人で払えばいいでしょ?」
「それにここからならカレンの大学からもアヤベさんの大学からも、トレセン学園からもちょうどいいくらいの距離だもんね♪」
「えっ、いや俺は……」
「さすがにこれは二人だと家賃が厳しそうよね?」
「そうですね~、こんないい物件なのに二人だと大変だなぁ~」
「うっ……」
「みなさい、この極上のふわふわを」
「さすがアヤベさん、やっぱり寝具やソファーはアヤベさんにお任せするのが一番ですね♪」
「いや、さすがにこのベッドは大きすぎないか?」
「何を言ってるの? 三人で寝るんだから、これくらいのサイズは必要でしょ?」
「えっ? ちょっと待って……」
「それじゃあ次はお布団見に行きましょ?」
「そうね、お布団も極上のふわふわを見せてあげるわ」
「さっすがアヤベさん! それじゃあさっそく行きましょっか♪」
「えぇ」
「ちょ、待ってくれ二人とも!」
……ゴーン リンゴーン
ついに、この時が来てしまった。
結局俺は、この二人から逃れることができずに、来るところまで来てしまった。
……いや、正直に言おう。俺も、この二人を手放したくなかったんだ。
「おにいちゃん」
「おにいさん」
黒いウェディング勝負服を身に纏ったカレンと、白いドレス勝負服を身に纏ったアヤベが俺を見つめる。
わかってる。ここまで来たのだ、覚悟は決めている。
「「私たちを、幸せにしてね」」
「もちろんだ」
Ending No.1
True End
Wedding 私たちの大好きな人