セルフ脳破壊で過酷なソロぴょいをしてしまうカワイイカレンチャン 作:名無しの権兵衛
「やったぁ、今週末はお兄ちゃんとデートだ♪」
ヤッホー、カレンだよ♪
今日は久しぶりにお兄ちゃんとデートの約束をすることができたんだ。
最近はあの女の人と会ってたみたいでなかなか一緒にお出かけする時間がなかったから、今週末がとっても楽しみ!
「……あれ? なんか声が聞こえる」
お兄ちゃんとのデートに着ていく服を見繕いに行こうと校門へ向かっていると、どこからか聞き覚えのある声が聞こえる。
不思議に思って声のするほうへ向かってみると、物陰のほうにいたのは…… マヤノちゃんのトレーナーさん?
「だから、もう会うつもりはないってないって言ってるだろ?」
『……して、……なに……ってくれたじゃなぃ……』
うわぁ、修羅場だ……
そういえばお兄ちゃんが言ってたっけ? マヤノちゃんのトレーナーさんはモテるって。
さすがに盗み聞きしたらだめだよね、っと思っていこうとしたけど、話をしている相手の人の声、どこかで聞いたことがあるような?
しかも、最近どこかで……
「はぁ、もういいか? 二度と電話しないでくれ」
『えっ、まだh』プツッ
「……よし、これであいつに集るハエがまた一匹消えたな」
そういいながら懐から出した写真を眺めるマヤノちゃんのトレーナーさんは、今まで見たことがない表情を浮かべていた。
「まったく、綺麗な花の手入れは大変だな……」
手に持っている写真については、なんとなく知らないほうがいいような気がした。
「やべっ、そろそろマヤノが待ってるし行くか」
そういって急いでこの場から立ち去るマヤノちゃんのトレーナーさん。
さすがに盗み聞きは可愛くないなぁと思ったけど、どうしてもさっきのことが引っかかってしまう。
「今の人、もしかして……」
あの時、お兄ちゃんと一緒にいた……
いや、そんなこと考えても仕方ないよね!
とりあえず次のお休みのために、お洋服を見に行かないと……
「~♪」
お兄ちゃんとのデートのことを考えると、思わず鼻歌を歌ってしまう。
久しぶりのデートなんだから、いっぱいおしゃれして、お兄ちゃんにカワイイカレンチャンをいっぱい見てもらわないと!
それに、カレンのカワイイでお兄ちゃんを虜にしないと、この前みたいに……
「……ですか、それなら……」
「あっ!」
今の声って、もしかしてお兄ちゃん?
あたりを見回して声のするほうへと向かっていく。
人ごみをかき分けると、お兄ちゃんはすぐに見つかった。女の人と一緒に。
「えっ……」
なんで、お兄ちゃんが女の人と一緒に……?
その時、この前のことがフラッシュバックする。
カレンの知らない人と一緒に、楽しそうに歩くお兄ちゃん。
もしかしたら、お兄ちゃんを取られるかもしれないという恐怖。
そして、あの時感じた言葉にできない奇妙な感覚と、わずかな高揚感。
それらすべてが、一気にカレンの脳内を駆け巡る。
「……で、あとはその道を突きあたりで右に曲がれば目的地です」
「すいません、ありがとうございます!」
「……はっ!」
二人の会話が耳に入り、何とか正気を取り戻す。
そっか、お兄ちゃんは優しいから、また困ってた人に道を教えてあげていただけなんだね?
よかった、カレンの勘違いか…… なんて油断してたら、その女の人から信じられない言葉が飛び出してきた。
「あの、もしよければ今度、お礼にお食事に行きませんか?」
「えっ?」
何を言っているのこの人は?
確かにお兄ちゃんは優しいけど、ちょっと優しくされたからってそんな熱い視線を向けるなんて……
「えっ、い、いいですよ……?」
「やったぁ! それじゃあ連絡先を好感しましょう?」
「えっ、うん」
しかもお兄ちゃんもお兄ちゃんで、鼻の下を伸ばして連絡先を交換してるし!
もう、お兄ちゃんにはカレンがいるっているのに……
「ありがとうございます、また連絡しますね~!」
「う、うん、またね……」
嬉しそうに手を振る二人を見て、さっきの不安が再び押し寄せてくる。
もしかしたら、お兄ちゃんはまた女の人と……
その時、再び脳内に電流が走った。
後日お礼のために再び出会う二人、最初はどこかたどたどしいけど、徐々に共通の話題で話が盛り上がり、緊張も解けてくる。
その日はそれで終わるも、後日また食事をすることを約束してから解散する二人。
それから何度も一緒に過ごすようになり、二人の仲が縮まるにつれて私との時間がどんどん減っていく。
私も何度もお兄ちゃんと一緒にお出かけしようと約束するも、なかなか予定が合わなくなる。
気が付けば二人は恋仲に、そして独占欲の強い彼女のためにお兄ちゃんはより時間が取れるように転職してしまう。
パチッ パチッ
それでもあきらめきれない私は、お兄ちゃんと会おうとするけど、お兄ちゃんの恋人さんに邪魔されて、段々疎遠になって……
パチパチッ パチッ
でも、どうしてもお兄ちゃんを、忘れられない私は、就職しても独り身で、過ごして、そんなときに、二人の、けっ、こんしきの、しょうたい、じょう、が……
パチパチパチッ パチッ
「……レン、カレン!!」
「あ、あれ、お兄、ちゃん?」
気が付くと、目の前にお兄ちゃんがいた。
うれしいはずなのに、どこか胸が痛み、心の奥底から、何かが漏れ出てくるような感じがしてしまう。
でもお兄ちゃんは、カレンの反応を聞いて、どこか嬉しそうに声をかけてくれた。
「よかった、青い顔で立ち尽くしていたから心配したんだ」
「……そっか、心配かけてごめんね」
「それで、体調は大丈夫か? 新品のお茶あるけど、いるか?」
お兄ちゃんが私の心配をしてくれている。
そのことに喜びを感じるけど、今のカレンの顔は可愛くないから、見てほしくないな……
「大丈夫だよ、それより用事があるからカレン行くね!」
「あっ、おいカレン!」
結局あの後走って寮まで帰って、着替えもせずにベッドにダイブして考え込んでしまった。
お兄ちゃんが他の誰かにとられそうになるたびに、暗い感情とともに心のどこかでわずかに、わずかにだけど喜びを感じてしまった。
もしかしたら私は、お兄ちゃんのことが、そこまで好きではないのかもしれない。そんな漠然とした不安が頭の中を支配してしまった。
カレンはお兄ちゃんのことが大好き。でも、他の女の人にとられそうになるとどこか喜びを感じてしまう。そんな矛盾に、心の整理が追い付かない。
「カレンさん、大丈夫…… じゃ、なさそうね?」
「アヤベさん……」
気が付けば結構時間がたっていたのか、アヤベさんが帰ってきて声をかけてくれたけど、今はあんまり見られたくないな。
だって今のカレンの顔、絶対可愛くないもん。
「さっきあなたのトレーナーに聞いたわ、なんだか体調が悪そうだから気にかけてあげてって」
「ありがとう、でも大丈夫だよ」
こんなちょっとの優しさでも、こんなに胸が熱くなる。その時やっぱりカレンは、お兄ちゃんのことが好きなんだって再確認できた。
「……よかった、マシな顔になったわね」
「ありがとうアヤベさん、心配してくれて」
「……別に心配なんてしてないわ、あなたのトレーナーに頼まれただけだもの」
「ふふっ」
アヤベさんのカワイイ顔も見れたし、心の靄はほとんど晴れてくれた。
「ところで新しい服は買えたの?」
「……あっ」
「えっ、今度はライスちゃんのトレーナーさんと!?」
「まぁね……」
結局あの後、あの女の人とお兄ちゃんは食事へ行くこともなく、ライスちゃんのトレーナーさんと一緒に歩いているところを目撃してあきらめがついたらしい。
それにしても、カレンのお兄ちゃん、運がなさすぎでは?
いやでも、この前のことを考えるとライスちゃんのトレーナーさんも…… さすがにそれは邪推かな?
「それで、これでカレンの気持ちも晴れたかい?」
「うん、もちろんだよ! ……え?」
あれ、もしかしてこれ、カレンの気持ちばれちゃった?
いやでも、ばれたならばれたでこっちのもの、このままお兄ちゃんに意識してもらえれば……
「それにしても、もしかして俺がとられちゃうかもって思って嫉妬しちゃったのか? そういうところもカワイイな!」
う~ん、そうだけどそうじゃない!
多分これって、恋愛面じゃなくて子どもとして考えられているよね?
もう、カレンはお兄ちゃんにガチ恋なのに……!!
「でも大丈夫だよ、俺はカレン一筋だから」
あっ、でもそうやって頭なでなでされながらささやかれたら許しちゃう。
もう、なんでお兄ちゃんはいつも私がしてほしいことをしてくれるんだろう❤
でもそっか、お兄ちゃんはカレン一筋なんだね。
……なら、
頭の中でくらい、いろんな妄想をしても大丈夫だよね?
ライスとマヤノのトレーナーの秘密
二人とも、花によって来る虫の駆除が得意。