セルフ脳破壊で過酷なソロぴょいをしてしまうカワイイカレンチャン 作:名無しの権兵衛
「お兄ちゃん、改めて言うけど本当にありがとう!」
最近色々とバタバタしていて大変だったけど、最近ようやく落ち着いてきたからやっとお兄ちゃんとゆっくりお話しする時間が取れたんだ。
「お兄ちゃんも手伝ってくれたおかげで、アヤベさんも、やっと元気に……!」
「あははっ、まぁあんまり手伝えなかったけど、本当によかったよ」
「そんなことないよ! だってお兄ちゃんが救急車を呼んでくれなかったら、今頃アヤベさんは……」
「まぁ、そこはもういいじゃないか。とりあえずアドマイヤベガが無事だったんだし」
あれから、私とアヤベさんのトレーナーさん、アヤベさんの同期のみんな、そしてお兄ちゃんの協力もあって、アヤベさんは前を向いて歩けるようになりました。
あれからわざわざ私にも謝りに来てくれて、アヤベさんとの距離もぐっと近づいた…… と思う。
「さて、それじゃあこの後用事もあるし、そろそろお暇させてもらおうかな」
「えっ、何の用事?」
思わず、気になって聞いてしまった。
だって最近、お兄ちゃんの周りに女の人が多いんだもん。
この前はカレン一筋って言ってくれたけど、それでも恋愛は別って考えてるかもしれないし、まだまだ油断はできないよね?
「あぁ、実はアドマイヤベガのほうも落ち着いてきたし、あの子のトレーナーにお礼もかねてご飯に誘われているんだ」
「えっ?」
たしかあの人って、お兄ちゃんの学生時代の後輩で、明らかにお兄ちゃんに気がありそうなそぶりをしてたよね。
まぁ、お兄ちゃんは全く気が付いてなかったし、そういう目でも見ていなさそうだったけど。
「どうしたんだ?」
「……ううん、なんでもないよ!」
油断はできないけど、さすがにそこまでお兄ちゃんのプライベートには干渉できないし、わがままを言ってお兄ちゃんに重い女って思われたくない。
だから、とりあえずここは様子見と牽制をしておこう。
……大丈夫だよね? だってあの人結構ヘタレだし。
「でももっとお兄ちゃんと一緒におしゃべりしたかったなぁ」
「ごめんな、この埋め合わせはまた今度するから」
「やったぁ! それじゃあ今度のお休みに一緒にデートしよ!」
お兄ちゃんの腕に抱き着いて甘えると、お兄ちゃんは苦笑しながら私の頭を撫でてくれた。
「わかったよ、それじゃあ今度のお休みは一緒にお出かけしようか」
「ありがとう! それじゃあ楽しみに待ってるね!」
「あぁ、それじゃあもう行くよ」
「行ってらっしゃい!」
お兄ちゃんの背中に手を振って、見えなくなってから寮へと向かって歩き始める。
少し気持ちが高ぶり足はだんだん速くなって、競歩のようになってしまう。
でも、仕方ないよね?
だって今日はアヤベさんの帰りが遅いし、お兄ちゃんは女の人とお食事に……
こんな絶好のシチュエーションを、逃すことはできなかった。
アヤベさんの一件があって、急速に近づくお兄ちゃんとアヤベさんのトレーナー。
学生時代から淡い思いを抱いていたアヤベさんのトレーナーは、この機会を逃すはずもなくお礼もかねてお兄ちゃんをお食事に誘う。
おしゃれなお店で食事をする二人、いつも知っている彼女と違っておしゃれを決めている姿にどぎまぎしてしまうお兄ちゃん。
そこでアヤベさんのトレーナーを女の子として意識してしまい、徐々に二人の仲が近づいていく。
その後も食事だけでなく、一緒に遊びに行き、かつて何もなかった青春時代を取り戻すように中を深めていき、そして……
パチッ
そして、二人はやがて恋仲となり、同じ職業ということもあってお互いに切磋琢磨していく。
パチッ パチッ
忙しいトレーナー業であっても、お互いに理解があるからすれ違うこともなく順調に愛を育んでいく。
パチッ バチッ
それでもやっぱり一緒の時間が欲しい二人は、同棲を始める。
バチバチッ バチッ
そんな二人に付け入るスキなんてなくて、泣いて二人を見ているしかなくて……
バチバチバチッ
そして、二人の結婚式に、私とアヤベさんが呼ばれて、私とアヤベは、別々の理由で泣いて……
バチバチバチッ バチッ
そして、二人は指輪を、交換して、ついに……
バチンッ
「……あの、カレンさん?」
「あっ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて」
「大丈夫? あんまり無理してはだめよ」
「うん、ありがとうアヤベさん」
気が付けば、もうアヤベさんが帰ってくる時間になっていた。
少し息の上がっている私の様子を見て心配してくれたアヤベさんに、ちょっと申し訳なさを感じてしまう。
何とか話題をそらそうして、アヤベさんが見慣れないリストバンドをしていることに気が付いた。
「あれ? アヤベさん、そのリストバンドはどうしたんですか?」
「あぁ、これ?」
リストバンドのことを聞かれて、アヤベさんは愛おしそうになでながら話してくれた。
「これは、私がふわふわが好きだからってもらったの。いい感じのふわふわで、普段使いさせてもらってるわ」
「わぁ、いいですねぇ!」
アヤベさんの様子からして、とっても大切なものなのだろう。もしかしたらアヤベさんのトレーナーさんからもらったのかな?
「……ねぇ、カレンさん」
「はい、どうしたんですか?」
アヤベさんはリストバンドを撫でながら、恥ずかしそうに話をしてくれました。
「あなたのトレーナーって、変な人よね」
「……えっ」
確かにお兄ちゃんには変わったところがあるけど、いきなりアヤベさんにそんなことを言われるとは思わなくてびっくりしてしまった。
すると私の様子を見てしまったと思ったのか、アヤベさんが慌てて口を開いた。
「ごめんなさい、悪い意味じゃないの! ……ただ、担当でもないのに、私なんかのために必死になって頑張ってくれて、私のこと気にしてくれるし」
「アヤベさん……」
少し寂しそうにしているアヤベさんの隣に座って、抱きしめる。
「私なんかだなんて、言わないで。みんなアヤベさんだから必死に頑張っていたんですよ?」
「……そうね、ごめんなさい」
「そこはありがとうって言ってほしいかな」
「ふふっ、ありがとう」
いつもは強がりなアヤベさんだけど、今日だけはちょっと甘えて一緒のベッドで寝てくれました。
アヤベさんのトレーナーの秘密
実は昔、お兄ちゃんへのストーキング行為がばれてドン引きされたことがある。