要望があった「高専メンバーとの模擬戦」とはちょっと外れるのですが、書きたくなってしまったので
前回のif√と世界線は同じ、九々等は3年生へ
九々等が虎杖・伏黒・釘崎の3人と模擬戦する話
時系列的には虎杖たちが1級に推薦された後~渋谷事変の間のどこかのイメージです。
九々等は「極ノ番」「反転術式」「術式反転」未収得、その代わり元世界線よりバランスよく色々出来るという想定。
時は2018年10月中旬。
東京都内にある呪術高専、その1年の教室で、五条悟は今日も明るくこう言い放った。
「今日の皆には、とあるゲストと模擬戦をして貰いまーす」
「「「?」」」
その言葉に1年ズ……虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇の3人は、皆一様に首を傾げた。
「任務じゃなくて模擬戦?」
と虎杖。他2人も同じような疑問を抱いていると表情からありありと察せられる。
そんな3人の表情を目隠しの下から読み取った五条は、少し真面目な口調で回答。
「そう。1級審査もかねたチームワークの訓練ってとこかな。本当は任務でやる予定だったんだけど、最近妙に呪霊たちが大人しいからね。相応しい任務も無いから、急遽こういう形で代用したってワケ」
と、ここで再び軽い笑顔と口調に戻った五条は、教室の扉の方を示しながら言う。
「それでは特別ゲスト、どうぞ~!」
ガラリ、と扉が開き。教室に入って来たのは……。
木造の床を踏む足音が響くたび、長い尾にも似た髪が揺れる。
その線の細い風貌、『少年的』と『華奢』の中間に立つかのような細身の体躯は、何処か猫科の獣を思わせた。ひとつに纏めた長い後ろ髪、美しいと形容して差し支えない整った顔立ちも、血統書付きの家猫のよう。
一見して性別を躊躇わせるようなその人物は、五条が示した教壇の前に立ち、獅子のそれに似た双眸で射抜くように虎杖たちを見下ろす。
ごくり。こちらを睥睨するようなその人物の、品格すら漂う静かな威圧感に喉を鳴らす3人。
そして数拍の沈黙の後……その金髪の人物は「にかっ」と笑った。実際に音が聴こえて来そうな程に快活な表情の変化だった。
瞬間、血統書付きの家猫の顔は無邪気な野良猫の笑みに掻き消され。
品格もクソも無い粗野な口調で、その人物は名乗りを上げた。
「どうも、初めまして1年ズ! オレは呪術高専3年生・
声も仕草も正真正銘男、そんな彼・九々等は、伏黒にだけは目配せと共にぱちんとウィンク。「来たぜ!」と声が聴こえるほどに雄弁で隠し事のできない表情だった。
それを見た虎杖――この場で最も物怖じしない男が手を上げて問う。
「先輩、伏黒とは面識あんの?」
「そりゃ当然。オレは恵のお兄ちゃん的立ち位置だからね。それよりお2人さん、お名前は?」
人好きのする野良猫の笑顔で問われた2人は、素直に自己紹介。
「
「
個性的な自己紹介、特に釘崎の生意気ともいえる態度にもへそを曲げる様子はなく、九々等は忘れないように今知った名前を反復する。
「虎杖くんに野薔薇ちゃんね。あれ、イタドリユウジって確か……」
「そう。噂の宿儺の器だね」
と横から五条が補足。
それに、3人は少し身構えた。虎杖――宿儺の器のことを危険視する術師は珍しくない。前の交流会でも虎杖を殺そうとする勢力は居た。この九々等という先輩はどちらだ、と警戒し。
九々等は教壇から下り、虎杖の席の前に立つと……その肩に手を置いて顔を覗き込む。
「へえ、五条先生がいつも言ってる1000年に一度の逸材くんが君か! オレが指取ってきたら取り込むとこ見せてよ。一緒に宿儺ブッ殺しようぜ!」
……言いたいことは色々あるが、とにかくこの馴れ馴れしい男は虎杖を殺そうとする術師の一味ではないらしい。ほっと胸をなでおろす伏黒と釘崎、彼等は教室の端で壁にもたれかかりながらニヤニヤしてる五条の姿を見て、「事前に言っとけよ」と無駄な心労を抱えたことに対し怒りを募らせる。
そんな怒りを誤魔化すように、五条は手を叩きながら、
「じゃ、自己紹介も済んだところで外にGo!」
と一行を運動場に誘導。教室内で模擬戦が出来る程、高専の建物は大きくない。
先行する五条、九々等を少し後から追う1年ズ3人。
移動教室的な時間の中、虎杖は横の伏黒に声を潜めて問いかける。前の方で尾のように揺れる金髪を指さしながら。
「伏黒、あの人がお兄ちゃん代わりって……」
「んな訳ないだろ。九々等さんが勝手に言ってるだけだ。付き合いもあの人が高専に来てから、3年前からだ」
伏黒の辟易したような顔は、その発言が真実であると何よりも雄弁に語っていた。
呪術高専内、運動場。陸上のトラックが敷かれたそこは、かつて乙骨が真希たちと修行したり、今は釘崎がパンダにぶん投げられまくってる高専生には見知った場所だ。
そんな場所に並び立った虎杖、伏黒、釘崎の目の前で、3年生の先輩にして1級術師・九々等八壱は語り出す。
「――さて。これから始まるのは模擬戦であり、1級術師であるオレが『君たちが1級に相応しいか』を見る
少し緊張感のある空気が1年ズを包むなか、九々等はぴ、と指を1本立てた。
「オレが出す
五条先生に「
「……『先輩に勝てれば』、じゃないの?」
「ああ、それは無理。オレ、君たちの9倍は強いし」
春の次は夏が来るんだよ、というくらい当たり前といいたげな口調で即答した九々等は、ぴくりと表情が硬直した3人の心境を知ってか知らずか更に優しい口調で言葉を連ねる。
「という訳で、本気で殺しに来なよ? 遠慮は無用、五条先生ほどじゃないけど、オレめっちゃ強いからね。君たちじゃどう足掻いても殺せないんじゃないかな。だから安心してかかっておいで」
その、本人からしてみれば優しさから出た忠告は、普段バラバラな3人の心をひとつにした。
「「「(勝つ! んで泣かす!!)」」」
メラメラと燃える3人分の怒りの炎。それに気付いていないのか穏やかな微笑のままの九々等。
そんな彼らの戦いの火蓋は、
「五条先生、合図お願いしまーす」
「オッケー。じゃ、模擬戦スタート!!」
酷く軽い口調で切って落とされた。
――瞬間、虎杖悠仁は駆け出していた。
「!」
凄まじい瞬発力、身体能力。完全に戦闘モードに脳を切り替えた虎杖は、一息で九々等の懐に潜り込み呪力の籠った拳を構える。
天与呪縛によって凄まじい身体能力を手に入れた禪院真希を凌ぐ、人間離れした膂力と格闘センス。そこに黒閃経験で急成長した淀み無い呪力操作技術。その拳による渾身の初撃は。
空手の回し受けを思わせる九々等の防御によって、半ばで軌道を逸らされた。振り抜かれた拳は虚空を突く。
「(受けた手が痺れる……)危ない危ない。凄い身体能力だね」
「(受けられた! 強いなこの人)」
追撃する虎杖。その突きを、蹴りを、悉く躱し受け流す九々等。
身体能力は虎杖の方が上。だが呪力強化、呪力操作技術によって九々等は彼と五分以上に打ち合う。
そんな2人の戦いに割り込む、人よりも一回り巨大な影。
「『
「わお、なんか前よりデカくなった!?」
その爪牙による攻撃を、服の袖を破られる正に紙一重で回避した九々等に、両刃剣の呪具を影から取り出した伏黒が迫る。その刃の一撃を、剣を持つ手の根元たる手首を受け止めることで防御する九々等。
「(あの犬、前見たときより速くて力強い。そんで恵も結構動けるね!)」
「(『玉犬・
虎杖、伏黒、そして玉犬。3対1、数の利が九々等の余裕を削る。
「(超パワーの虎杖くん、式神とその
九々等は三方向の敵に対応するべく、全力で力を溜め地を蹴る。地を蹴り得たエネルギーを、強靭な体幹で全身を回しながら蹴りに乗せる。
ある種の美すら纏う、轟と風を切る回し蹴りによる薙ぎ払いが、虎杖、伏黒、玉犬を同時に襲って吹き飛ばす。
だが。3者はそれぞれ防御しており……そして虎杖と伏黒は、背後に吹き飛ばされながらも笑っていた。
そんな2人の間をすり抜けて、「それ」は矢のように飛来する。
「(釘!?)」
九々等の眉間を狙って放たれた五寸釘――呪力の籠ったそれが、真っすぐ狙いに向かって迫り。
ピタ、と。残り数センチといったところで、九々等の人差し指と中指に挟まれて停止した。
九々等は額に迫っていた釘を見上げながら笑う。
「危ない危ない。良い連携だね! 決め技が弱いという点に目を瞑れば、だけど」
しかし、1年ズの「決め技」はまだ終わっていなかった。
「それは――」
「――これを喰らってから言うことね!」
「『
九々等の額から数センチで止まった五寸釘、その切っ先が伸びるように呪力が炸裂し、九々等の眉間を打ち据えた。その首が衝撃に上を向く。
芻霊呪法『
そんな決め技を繰り出した釘崎は金槌片手にガッツポーズ。
「ぃよっし、ドタマぶち抜いてやったわ! よく隙を作ったわね男共、褒めてつかわす!」
「いや釘崎、頭はヤバくね!? 九々等先輩死んだんじゃねえか!?」
「……その場合私は悪くないわよね。あっちが『殺す気で来い』って言ったんだし」
釘崎が冷や汗を流しながらそう溢す。結果から言えば、それは無用な心配だった。
「――やるね。思わず術式使っちゃったぜ」
そう呟いた九々等は、ぐるんと上を向いていた顔を前に戻す。
その額は――傷が無い。血も出ていなければ擦過傷すら残っていない。
手ごたえはあった……そう思っていた3人の間に戦慄が走る。
「(無傷……!?)」
「伏黒、九々等先輩の術式は!?」
「知らねえ」
「かーっ、使えないわね!」
たった今決め技を無効化した、術式も分からない不気味な相手は、釘を放り捨てながら勝気に笑う。
「今ので君たちの手札は大体分かった。次はこっちから行くぜ!」
その言葉に、させまいと虎杖が地を蹴り、伏黒が影絵を構え。
それより前に九々等は動いた。尾のような長い後ろ髪、ひとつに括ったそれを手繰り寄せ、長い金髪の端を摘まんで2本ほど力任せに千切る。
千切った髪の毛に呪力を込めれば、途端に細い髪は別の姿に変化した。
全身を覆う金の鱗、縦に裂けた瞳孔を持つ黄金の瞳。手も無く足も無く、獲物を噛み砕くための歯も、胴と尾の区別も持たず、ただ細長い肉体と1対の長い牙のみを武器とする生物を模したそれは、主の呪力によってかりそめの命を流し込まれ目を覚ます。
全長2m程、人間の腕ほどの太さを持つ黄金の蛇。その名は。
「『
「(式神!)」
「(千切った髪を媒介……術式じゃなく『使い捨て』か!)」
「――そら、野薔薇ちゃんと遊んできな!」
九々等の手から放たれた2匹の蛇の式神・『
咄嗟に伏黒は『鵺』を呼び出し、蛇の胴を掴んで飛翔させることで式神のうち1匹を無力化。だがもう1匹は問題なく釘崎の元へ。
その尾を追うのではなく、逆に背を向け、虎杖は九々等の元へ走った。
「(式神使いは、術者本人を叩く――)」
それは五条先生から聞いた対式神使いのセオリー。体に染みついた知識が反射で肉体を駆動させ、蛇の式神が釘崎を襲う前に九々等を打倒せんと虎杖は走る。
その瞬発力、刹那の判断力は驚嘆に値する。
だが、誤算がひとつ。
『式神使いは術者本人を叩くべし』。それは、術者を先に倒せば式神を倒す必要がないという理由のほかにもうひとつ。式神使いには前に出るタイプが少ない、つまり近接戦闘が得意なものが少ないからこそのセオリーである。
そして、得てしてセオリーとは、考えなしで従うと「例外」に当たった時に痛い目を見るものだ。
九々等は虎杖が自身に迫るのを視認した瞬間、
「シン・
徒手居合の構えを取り、足元に『簡易領域』を発動。
それは弱者の領域であり――同時に、術式の必要ない呪力操作による「武術」、即ち『シン・陰流』の基本の構えでもある。
その技は、領域内(今回は半径1.21m)に侵入したものを「全自動」反射で迎撃する(両足が展開時の
更に正面の敵に特化したその技は、
――『抜刀』!!
簡易領域に侵入した虎杖悠仁の右頬を、痛烈な
「~~ッ!?」
彼が先の交流会で見た『抜刀』とは一線を画す速度。それを見誤り、強烈な一撃に悲鳴未満の苦痛の息を漏らしながら吹き飛ぶ虎杖。そんな彼を見ながら、残身の構えで九々等は軽口を溢す。
「ま、
その様子に、『鵺』の電撃で『
「(虎杖が押し負けるほどの近接戦闘能力! なら距離を取り『こいつ』で拘束する――)」
『
それは『
「――『
羽の生えた蛙の式神、それが複数体伏黒の影の中から這い出るように出現。
蛙たちは口を開き、遠距離から九々等を拘束しようとその長い舌を伸ばし。
両手を前に出し中段に構えた、簡易領域とはまた違った構えを取った九々等の腕、足、胴に縄のように巻き付いた蛙の舌が、巻き付いたそばから「バチッ!」という電撃にも似た音と共に切断された。
「!?」
伏黒は大きく動揺する。簡易領域による反射反撃ではない、それではさばききれない量の攻撃だったハズだから。それどころか、今、九々等は
そんな伏黒に、九々等はネタばらしをするように言う。
「オレも一応『御三家の術師』なんでね。こういう技も覚えてるのさ」
――
『落花の情・意無』で身を守りつつ、九々等は伏黒の奥に目をやる。そこには伏黒が取り逃がした残り1匹の『
「この、ちょこまかと……!」
釘崎の放つ五寸釘、そして金槌による攻撃を、細長い体でするすると躱す金色の蛇。
反撃として繰り出された、牙を剥きだした素早い飛び掛かりを、釘崎は咄嗟に腕で受け止める。肉に食い込む牙、だが細いそれは流血こそ齎すものの動きを鈍らせるほどの痛手にはならない。
「んなもん!」
効くかよ、と言いながら噛み付いた蛇を振り払い、地面に叩きつけられた蛇の頭目掛けて金槌を振るおうとした彼女の前で。
「ハイそこ、油断し過ぎ」
『
巨大化した蛇は釘崎の金槌、インパクトのタイミングを外されたそれを大きくなった鱗で受け止めると、長くなった尾で彼女を締め付けそのまま逆さ吊りにしてしまう。
「はあああああ!?」
釘崎の良く通る悲鳴を聞きながら、九々等は一歩踏み出す。既に半分無力化した釘崎ではなく、未だ健在の伏黒の方へ。
「式神使いは術者本人を叩く、確かにセオリーだ。
その言葉に、式神使いである伏黒は背筋を貫く危機感を憶え。
「ッ、『
「わお!?」
咄嗟に大量の兎の式神で壁を作る。
未知の式神に塞がった視界。流石に動きが止まった九々等。
その隙を突くように、虎杖は走る。
先の攻撃で吹き飛んだ彼は体勢を立て直し疾走。頬を打ち据えた一撃は痛むが、強靭な彼の動きを鈍らせるほどでは無い。
虎杖は九々等……ではなく釘崎の方に突進し、彼女をぶんぶん振り回している巨大な金色の蛇に突っ込むと、その驚異的な威力の拳で『
胴を粉砕され、頭と尾で2つに分かたれた式神は消滅。
空中で解き放たれ、落下する釘崎を虎杖は両手でキャッチ、出来るだけ優しく地面に下ろす。
「釘崎、大丈夫か!?」
釘崎はぐわんぐわんと回る目を抑えつつもなんとか強気に返す。
「……
そんな彼女とそれを支える虎杖、その隣に『脱兎』で九々等の間合いから離脱していた伏黒が並ぶ。
「てことはやっぱり、今の式神は『使い捨て』か。俺の『
「でもアイツ巨大化してなかったか?」
「それは多分……式神の能力じゃなく、九々等さんの術式だ」
それぞれ肉体的、精神的に
「毒持ちの式神なんて生得術式でもなければ作れっこないからね。そういう所から情報を得るのは凄く良い。実戦経験豊富な証拠だね」
その誉め言葉を素直に受け止めて喜べるほど、1年ズに余裕はなかった。
そんな彼らに追撃するように、九々等は「でも」と続ける。
「君たちは確かに、1級に推薦されるだけの『強み』を持ってる。それは格上にも通用する長所だ。でも同時に、1級術師に相応しくない、格下に足を掬われる原因になる『弱点』もある」
九々等はびし、と3人それぞれ人差し指を突き付けながら言う。
まずは虎杖。
「虎杖くん。君は『接近戦は俺の土俵』ってカオしてるし実際そうなんだろうけど、近付くまでの組み立てが雑。そんでもうちょい慎重さが欲しいね。特に相手の手の内がハッキリしてない時は。さっきのオレの一撃が手刀じゃなくて本物の刀だったら死んでたぜ?」
次に伏黒。
「恵。術式の対応力の高さは認める。でも対応即ち後手だ、もっと強みを押し付けないと。情報収集は自分から攻めながらでも出来るんだぜ? それと、
最後に釘崎。
「野薔薇ちゃん。分かり易い術式タイプで他2人に比べたら近接苦手。術式の不意打ちは良い発想だったから、もうちょい工夫があると良いね。あと、たった数手で敵の実力を見極めたと思うのは危険だよ。今しがた痛い目見ちゃったみたいにね」
ぐむ、と口をへの字に曲げる3人。だが実際にその指摘はある程度正鵠を得ており、また現状3人がかりで押されているため異論を唱えるのも憚られ、ただ堪えることしかできない。
そんな彼らと相対する九々等は、しかし後輩を虐めたい訳では無かった。寧ろ真逆の理由から彼等に厳しく接していた。
「――呪術師として生きるなら。自分の強み、自分だけの武器を伸ばすのは勿論大事。でも長く術師をやっていたら、自分の弱みを突いてくる敵とは必ず出会うことになる。そんなときどうするか、そこまで組み立てが出来てこその『1級』だ。弱みがそのままの君たちに合格判定はあげられない。そんなんじゃ1級になった所ですぐ死んじゃうからね」
それは、我が子を千尋の谷に突き落とす獅子の如し。愛ゆえの厳しさ、実戦で命を落として欲しくないが故の
九々等が放つ呪力の圧が一段階増す。びりびりと震える空気に、それを前にした虎杖、伏黒、釘崎はそれぞれ別の顔を思い浮かべつつも、同じ言葉を内心で叫ぶ。
「(この呪力、あの時の特級より上……! さっきまでは全力じゃ無かったのか!!)」
「さて。今からオレは抑えてた術式をフルで使って、君たちの弱点を突いていく。1級術師になりたいなら、今の9倍頑張ってなんとかついてきてくれよ?」
1級の卵たちを前に、現役1級術師たる九々等八壱は猛獣を思わせる顔で笑った。
・『
九々等の髪の毛を媒介として呼び出される「使い捨て」の式神。全長2m程の金色の蛇の姿をしている。攻撃力、耐久力、速度、全てが並の域を出ず、また特殊な能力なども持たないため、基本的にすぐ破壊される斥候役。その代わり九々等の術式によって呪具化しており、遠く離れていても破壊されない限りは九々等の術式対象にいつでも選択できる。
縛りは「呼び出すにはある程度長い髪の毛が必要」「同時に存在できるのは2体まで」「細かい命令は口頭で指示する必要がある」というもの。
このSSでは、基本的に「後天的に作成した式神は術者の能力を超えられない」という設定。
・九々等の『簡易領域』
五条悟を窓口にシン・陰流に弟子入りして習得。最大展開範囲は半径3.13m。
領域展開習得済みの九々等は、主に『抜刀』と組み合わせた近接戦闘での補助技・カウンター技として使用。徒手居合の構えを取り、通常の『抜刀』と同じ仕組みで手鞘の中の手刀を呪力で纏い加速させる通称『徒手抜刀』は九々等のオリジナル技。刀・鞘なしで『抜刀』によるカウンターを行える便利技だが、1級術師である彼の呪術センスがあって初めて再現可能な高等技術である。
また九々等は手を鞘に見立てることで刀のほかに手刀、小刀、槍、多節棍、鞭や鎖分銅、果ては紙製の名刺などでも『抜刀』を再現可能。ただその際、武器の間合いに合わせて簡易領域の展開範囲を調整しなければ反撃が空振りしてしまうという弱点もある。