要望があった、高専if√での百鬼夜行参戦回です。京都校メンバーとの交流回も兼ねて〼。
あと、高専if√は全部おんなじ世界線で統一するということにしました。本筋は泳者√で、高専if√――交流会、1級審査、この百鬼夜行は時系列バラバラだけど同じ世界線の話……という想定です。交流会で東堂と仲良くなった世界線と今話の世界線も同じです。
「京都側のヘルプに来ました、東京校2年、昇格したて1級術師の
12月24日、京都。
まだ燦燦と降る陽光が窓から覗く時刻、九々等八壱は元気な声で自己紹介をした。
特級呪詛師・夏油傑による百鬼夜行。それを当日に控えた現在、京都校は援軍として複数人の術師を東京から呼び寄せた。九々等はそのうちの1人だった。
京都には御三家の禪院家、加茂家が居を構えており、一見して戦力は十二分に見える。だが加茂家は相伝の術式使いが高専所属中の次期当主以外ほとんどおらず出せる戦力は少ない、禪院家も保守派や総監部のお偉い方の護衛に人員を割かれて百鬼夜行に注力することは出来ない。
何より……東京・新宿側には「五条悟」が居る。彼が居る限り、東京・新宿側の術師が敗北することはあり得ない。故に京都側により多くの人員を割くのは当然と言えた。
そんな訳で京都側で百鬼夜行に参加することになった九々等は、共に戦う京都校メンバーと顔を合わせる。その中に見知った顔を見つけ、九々等は手を上げて挨拶。
「お、
帯刀した青髪の少女、京都校1年・三輪
「お久しぶりです。先生が言ってた1級術師って九々等さんのことだったんですね」
『……三輪、知り合いカ?』
彼女の隣から発せられた問いに、九々等は代わりに返答。
「三輪ちゃんとはシン・陰流の道場でちょっとね。それで君は、突然変異呪骸……って感じじゃないね。パンダみたく可愛い系じゃないし」
『(パンダ……?) メカ
「メカ丸くんは遠隔操作系? それとも鎧系? もしくはやっぱり突然変異?」
『……それに答える必要があるカ?』
「勿論! 遠隔操作だったら最悪見捨てるけど、それ以外だったら助けなきゃだろ? デリケートな問題なのかもしれないけど、できれば百鬼夜行前に知りたいな」
『……遠隔操作ダ。いざという時は見捨ててくれて構わなイ』
「おっけ、ありがとね」
メカ丸との挨拶を終え、九々等の視線は次の人へ。
「それで……わお、超美人」
その人物を目にした瞬間、九々等はびしっと姿勢を整え(本人の中では)誠実な態度で声を上げる。
「オレは九々等八壱、17歳! お名前聞いてもよろしいでしょうか!」
その問いを向けられた京都校1年女子は、視線も合わせず短く答える。
「……
「禪院! てことはもしかして、
「っ、どうでもいいでしょそんなこと」
「――それもそうか。よろしくね!」
何らかの「闇」を察した九々等はすぐさま撤退、それ以上言葉を重ねることも無く視線を次へ。
「やっほー
「ああ。おまえに言われると多少複雑だがな」
と、京都校2年・加茂
「私は別にフツーだけど……九々等くん。悪気が無いのは分かってるけど、あんまり真依ちゃんを刺激しないで」
同じく2年・西宮
なんだかあんまり歓迎されてない感じのムードの京都校。
しかしそれを1人で覆す、とんでもなく「よく来たな」オーラ全開の男が居た。
京都校2年、1級術師・
「
「葵」
顔を合わせた2人は――どちらともなく、がしっと音が鳴るほど固い握手。
「良くぞ来たな。オマエが隣に居てくれれば、百鬼夜行の只中すら俺たちの独壇場となる」
「つまり2人でダンシングパーリナイってことか?」
「フッ、
「イエーイ、良いね良いね、任せとけって!」
そんな彼等を見て、京都校の残りのメンバーは困惑だったり嫌悪だったりを自由に抱く。
「これが1級どうしの会話……私には何言ってるかサッパリです」
『俺もダ、三輪』
「1級には馬鹿しかいないのかしら」
「九々等くん、普段はカワイイくらい良い人なんだけどね……」
「強さだけは確かなのがまた、な……」
まあそんな感じで、九々等含めた京都校メンバーは百鬼夜行に備えるのだった。
時刻、夜。
闇に包まれた京都の町を、重ねるように別の闇が包む。
「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え――」
複数の補助監督によって京都全域に下りた帳。その中は、膨大な量の呪霊が蠢く人外魔境と化していた。
街路を往くは呪いの群れ。空に飛ぶあれは龍か怪鳥か。淀んだ空気、どす黒い呪力で満たされた京都の町の中で、奇形奇妙な怪物の集団は、与えられた命令に則し鏖殺の限りを尽くさんと暴れ回る。
そんな中で、一筋の剣閃が閃いた。
黒の中で輝く青白き光は、涼やかに
「そら!」
それを振るうのは九々等八壱。金の髪を尾のように揺らしながら彼が握った刀をひと振りすれば、群がる呪いが一刀の元に両断され
刃が閃く。それは金の尾を引いて戦場を駆ける、流星が如き一陣の風。
剣が踊る。それは無双を体現する、獅子か猛将を思わせる戦場の英雄。
一刀両断。その男こそ九々等八壱、神速の刃で呪いを屠る1級呪術師。
そんな彼の八面六臂・縦横無尽の雄姿を見ながら、道を走る少女は戦場に似合わぬ声を出す。
「うわー。九々等さん、あんな強かったんだ……」
「霞、集中」
「ご、ごめん真依。そうだね、メカ丸と加茂先輩とも別行動なんだし、集中しないと」
百鬼夜行に突入した京都校は、想定以上の呪霊の数に別行動を余儀なくされた。
殲滅力のあるメカ丸と加茂は前線へ。東堂は最初からどっか行った。西宮は全体の俯瞰役として空中。
正直あんまり戦力にならない三輪と真依は、前線から遠く離れた場所で待機、襲って来る弱めの呪霊だけを退治する役割に落ち着いた。そして、西宮が
移動速度:9倍と、攻撃力:9倍や跳躍力:9倍、刀身の長さ:9倍などを駆使して超速で周囲の呪霊を片付ける九々等。彼にかかれば2級相当も一太刀で両断・霧散する。倒した呪霊の数は既に100を優に超す。
そんな彼が、「まあ大丈夫だろ」と判断し打ち漏らした低級呪霊が三輪に迫る。
三輪は一瞬慌て、すぐに落ち着いて刀を構え。
「シン・
『抜刀』!!
居合切りで呪霊を討伐。やった、と思わず溢す彼女の頭上から、鳥型の低級呪霊が強襲し。
銃声が響く。
呪力の籠った銃弾に射抜かれた鳥型呪霊は、そのまま断末魔の声と共に消滅した。
「真依!」
「ほら、よそ見しない」
建物の屋根から眼下の三輪を銃で援護する真依。
そんな彼女の乗る民家、その下からキチキチと何かが蠢く音がした。
咄嗟に振り向いた真依が見たのは、
「クソ!」
バンバン、と襲い掛かってくる呪霊に銃を乱射する。だが6発撃って倒せた呪霊は数匹、彼女に迫る呪霊の数はそれよりもはるかに多い。
彼女の持つ銃はリボルバー、一度に討てる弾数は6発、装填には時間がかかる。三輪も援護するには遠い。そのまま百足の濁流が、禪院真依を食い散らそうと襲い掛かり――。
「呪力出力:9倍」
バヴッ!!! と振り抜かれた刀から放たれた呪力が、呪霊の群れを一掃した。
「無事? 真依ちゃん」
それを成した術師、九々等八壱は、刀を鞘に納めながら振り向く。金の髪が、その背で尾のように踊っていた。
その様を思わず見入り……真依は目を逸らした。
「……ええ、まあ。お陰様で」
「なら良かった。おっと」
九々等は視線を下へ。眼下の街路では、三輪が低級呪霊の群れ相手に刀を振り回していた。
「三輪ちゃん、大丈夫かー?」
「大丈夫じゃないです! 助けて下さい九々等さーん!」
と、九々等が屋根から飛び降りる前に三輪に助太刀が入る。
それは、巫女服を着た女性の術師・
「先生!」
「良かった。2人とも無事みたいね」
西宮が連れて来た援軍に、三輪・真依はほっと一息。
そんな彼女の前に降り立ち、九々等は問う。
「それじゃ、ここ任せていいすか歌姫先生」
「ええ。九々等くん、あなたは前線で暴れてきて」
「了解!!」
そのまま移動速度:9倍と跳躍力:9倍で飛び去る九々等。その背は瞬く間に闇の中に消えていった。
先よりも前線に近い場所。闇に包まれた町の一角で、爆炎にも似た呪力が瞬く。
『「
腕部を変形させ、砲弾として呪力を撃ち出す。その威力に堪らず呪霊の群れが消滅・霧散した。
天与呪縛によって広大な術式範囲と実力以上の呪力出力を持つメカ丸――
『(数は多いがほとんどは烏合だナ。問題ハ……)』
そんなメカ丸は、腕部に籠った熱を放熱しながら上を見上げる。
頭上を回遊する――龍。白い鱗は光の当たり方によって七色に煌めき、ぎょろりと突き出た目は黄色、口は人を飲み込めそうな程大きい。
そんな龍の呪霊――
虹龍が、鏖殺の邪魔になると見做したメカ丸をぎょろりと睨み、そのまま空を滑るように急降下しながら突進を始めた。
『(来るカ!)』
メカ丸は腕部を再び変形。
右腕の肘から下、その装甲がパージされ、中から鋭い刃が展開される。
右腕の肘がジェット噴射のように呪力を放出、攻撃の速度と威力を高める。
そのまま間近に迫った虹龍に、メカ丸は回転する右腕を突き出す。
『迎え撃ツ!!』
『
ドリルのような一撃が、虹龍を迎撃した――しかし。
『(硬イ……!)』
虹龍の鱗が、メカ丸の一撃を受け止めていた。そのまま勢いを増した突進で、メカ丸の体が吹き飛ばされる。
ズガ、と近くの壁に激突する
『(『
虹龍の攻撃をなんとか凌ぐだけで精一杯のメカ丸。高威力の攻撃を放つための変形には時間を要するが、その隙を虹龍は与えてくれない。
そんな苦境に、突如としてその男は現れた。
「メカ丸くん!」
『!』
建物上を駆けていた、闇夜に揺れる金の髪を携えた男。
メカ丸の
「状況は!?」
『――龍の呪霊が倒せン、硬度が高イ!』
「おっけ!」
九々等は虹龍とメカ丸の間に割り込むと、鞘に納めていた刀の柄を掴む。
彼が持つ刀は、呪具『
「『九頭龍剣』の鋭さ:9倍、攻撃力:9倍」
呪具、呪いによって強化されている刃の鋭さが、九々等の術式によって更に9倍に増す。
「
ぴぃん、と九々等の足元に展開される、凪いだ湖面を思わせる程美しい簡易領域。その練度が三輪のそれとは比べ物にならないことを、メカ丸はその一瞬で理解させられた。
虹龍の突進が迫り――その鼻先が、九々等の簡易領域に触れ。
刹那、その刃は放たれた。
世界がまばたきをした一瞬の間、その中で全ては終わっていて。
りぃん、と鈴の鳴るような音を、メカ丸はその刹那の内に聴いた気がした。
気付けばその刃は振り抜かれており――それから一拍の間を置いて、虹龍の顔が縦にずるりと
九々等は『九頭龍剣』を鞘に納め、ふうと残身の息を吐き。
「秘儀『居合・
斬!! と龍の肉体を、一筋の斬撃が通り抜けた。音も衝撃も遅れる程高速の刃で体を右左2つに分かたれた虹龍は、そのまま断末魔すら上げられず消滅する。
虹龍から溢れた紫の返り血を一滴頬に浴びながら、九々等はメカ丸の方に振り向いて問う。
「これ以上の手助けは必要?」
今しがた魅せた芸当に見合わない、日常の只中に居るような涼しい顔だった。
メカ丸は少し周囲を見渡し、そして答える。
『……不要ダ、手が空いているなら加茂の方へ行ケ』
「了解!」
そのまま九々等は、一瞬で見えなくなるほどの速度で街の頭上を駆けて行った。
呪霊の群れが迫る。
だが彼に焦りは無かった。ただ己の中の恐怖心を律し、呪力を練って
「
懐から取り出した輸血パック、どんな武器にもなりそうにないそれが、彼の意思ひとつで途端に高速回転する
そのまま腕を前に出せば、血の円刃はひとりでに前へ。
『
高速回転する刃が、呪霊の群れを一息に両断した。
ふぅ、と軽く息を吐く加茂憲紀……そんな彼に、不意に声がかかる。
「それが加茂家相伝の赤血操術かー。便利だなー」
「……九々等」
振り向けば、そこには九々等の姿。加茂の目の前で、夜を切り裂くような金の髪が揺れていた。
「よっす加茂くん。手伝いに来たけど……この感じだと必要なさそうかな? 加茂くん強いもんねー」
「……」
軽い口調に何も返せず、ただ沈黙する。
加茂憲紀は九々等が苦手だ。それは先の交流会・個人戦で彼に敗北したからという理由が大きかった。
九々等八壱。東堂と同じ、学生で1級になった呪術の天才。非術師の家系とも術師の家系とも言い切れない家庭に生まれた彼は、境遇こそ加茂に似ていたもののその在り方は真逆といっても良い程似ていなかった。
術式の有無が明らかとなり、生家から放れ五条家分家・菅原家に迎え入れられた九々等は、しかし五条悟の介入もあり五条家本家に取り立てられた。ここまでは、妾の子でありながら加茂家の後継者として祭り上げられた憲紀と似ていた。
だがそこからが違う。九々等は五条悟に触発されたか、呪術界の伝統など意味がないと叫ぶが如く奔放に振舞っていた。まるで何も背負ってなど居ないかのように、軽薄に個人主義に、自由に。
そんな彼に対し、加茂憲紀はただ「苦手だ」と内心で呟く。己の内に隠れた感情を、その言葉で覆い隠すように。
「大丈夫そうだし、他の所に行って来るねー」
「……ああ」
加茂家と五条家、同じ御三家の人間として仲良くしなければとは思っている。だが上手く言葉が出てこない。
何も気の利いた事を言えないまま、九々等が地を蹴ろうとするのを加茂はただ見つめ……。
ぞわ、と。
濃い呪力の気配に、2人は同時に振り向いた。
「!」
街路の先、曲がり角の奥。そこから何かが近付いてくる。肌を刺すような呪力がそれを伝えてくる。
加茂が血を、九々等が刀を構えた前で、その呪霊は曲がり角からずるりと姿を現した。
「ね ぇ」
瞬間。即応しようと身構えていた加茂と九々等の動きが止まる。
色を失った世界の中、呪霊――長いぼさぼさの黒髪と全身に巻いた包帯で顔を隠した、コートを着た女性の形をした怨霊が不気味に歪んだ声を放つ。
「わ た わ タ わ た し き れ い ?」
身動き一つ取れない中、口だけが動くことに気付いた加茂は戦慄していた。
「(仮想怨霊!! 質問に答えるまで不可侵を強制する簡易領域――少なくとも1級以上の呪霊!!)」
どこかで聞いたことのある怪談をなぞるような呪霊の術式。それに捕らえられた彼は、嫌な汗を大量に流しながらも全力で頭を回す。
「(母様から聞いたことがある怪談に似ている……だがどう答えるべきだ!? 民間怪談は千差万別、一方では完璧な対処法が他方では致命的な回答ということもある! タイムリミットはあるのか!? どうする加茂憲紀――)」
返答を誤れば即、死に直結する。
間延びした時間の中、不気味に圧を放つ怨霊の前で必死に思考する加茂の耳に、その声は夜風のように涼やかに響いた。
「加茂くん、もっと肩の力抜いてこうぜ」
その言葉に。目だけを動かして隣を見れば、こちらにウインクする九々等の姿。
何故、と思わず口にしてしまいそうな程場にそぐわない表情だった。
「ね ね ネ え 、 わ た し き れ い ?」
問いに答えない2人にしびれを切らしたのか、怨霊は手に持った鋏を突き付けながら問いを繰り返す。ぎらりと鈍色に光る鋏。
正解が分からない問いに加茂が何も言えない間に、しかし九々等は何でもないように言い放った。
「――そうだな。少なくとも初対面で刃物突き付けてくる女は、容姿云々の前に論外かな!」
怨霊が激昂したのが加茂にも分かった。ぎりぎりと、掴んだ錆だらけの鋏を音が鳴るほど怨霊が握りしめ。
瞬間、九々等の全身を切り裂くための鋏が実体化し。
「甘いね」
鋏が肌に食い込む前に、問いに答えたことで体の自由を取り戻した九々等はその「構え」を取る。
――速度:9倍×『落花の情・意無』!!
バチン! とカウンターで解放された呪力が、実体化した10以上の鋏を全て同時に叩き落とした。
怨霊が驚愕すると同時、九々等は叫ぶ。
「加茂くん!」
その声に即座に反応し体が動いたことに、加茂本人が一番驚いていた。
「赤血操術――」
内心を包んだ驚愕とは裏腹に、体は素早く輸血パックを取り出し両手に挟んで「加圧」する。
『
ピタ、と一瞬世界が止まり。
「――『
放たれた神速の血液が、
「あ" ぁ ……」
体が崩壊し、消滅する怨霊。
それを確認し、加茂は喜ぶよりも先に九々等に振り向いて問う。
「九々等。今の、狙ったのか」
「今の」とは、呪霊を激昂させ自分を狙わせることで加茂が動く隙を作った一連のことだ。
冷静で大胆、勇猛で慧眼。そんな印象を持ちながら、そうなのだろうと問えば。
「? いや、全然」
「……」
本当に何も考えていない顔でそう言われて、加茂は一瞬表情に迷った。
そんな彼の目の前に、すっと手が翳される。
「でも成功するにしろ失敗するにしろ早い方が良いだろ。特に今は『次』が待ってんだから」
ナイストドメ、とハイタッチの手を構えた九々等に、加茂は思わず目を見開いた。
この男は、自分と見えている物が余りに違う。彼が見ているのは、きっと過去でも今でも、後ろでも横でもなく……前。その闇夜で輝く琥珀の目はただひたすらに真っ直ぐ前だけを見据えているのだと分かったのだ。
「(九々等、おまえは……)」
軽薄、個人主義、自由。言い換えるなら――天衣無縫。何にも縛られず、あらゆる思惑と悪意をすり抜け、恐怖や逡巡にすら囚われないで思うままに世界を羽ばたく金の鳥。
加茂はようやく受け入れた。自分が抱いていた苦手意識の正体……それが「憧れ」であることを。
「……そうだな。呪霊の気配はまだ大量に残っている。無駄話は終わった後にしよう」
「お、加茂くん、ちょっと肩の力抜けたんじゃない?」
おまえほどじゃない、と思いつつ、口にせずに加茂は考える。
分かっている。自分は彼のようにはなれない。
だが。鳥籠の中で藻掻く自分は、その眩しい光を纏う彼に成れなくとも……鳥籠に近寄ってきてくれた彼と、友人くらいには成れる筈だ。
「……
「おっけ、ならオレも八壱で。じゃ、後で会おうぜ
飛び去って行く九々等を見ながら、加茂はその背にふっと笑いかける。
「ああ。おまえもな、
金の軌跡が夜闇を切り裂く。きらきらと残光を残して飛ぶそれは、まるで地上から天に昇る流星のよう。
そんな流星の尾を、地に立つ少年は眩しそうに目を細めて見上げていた。
・
九々等の愛用する刀身1m程の青龍刀(正式には柳葉刀)。以前はただの刀だったが、九々等が1年時から愛用し続けたため呪力が染みついて呪具化した。通常の武器よりも鋭く壊れにくいこと以外これといった術式効果は持たないが、九々等の術式対象に選択できる呪具ということで使い勝手が良く重宝している。命名は九々等で、刀身に彫られた龍の紋様と漫画の技名から着想を得た。