折角ファンパレで壊玉・玉折やってますしね
ただ九々等は「や」でおさまり悪いので、とりあえず元の年齢優先の高専3年生(五条世代の1コ上)ということで
作者のファンパレの招待コード:MTcRqztbAnEd
↑あんま仕様分かってないですが折角なので、ファンパレやってる人ご自由にお使いください
【壊玉・玉折if√】玉石 -壱-
西暦2006年、季節は春。
東京、呪術高専にて。
「あ、財布忘れた。傑ー、ジュース奢ってー」
「またかい? 何度目だよ悟。今度焼肉奢って貰うからな、高いやつ」
「あ、それ私も連れてけー。どうせ五条家の金でしょ?」
「しっかたねえなぁ――ん?」
高専内の自販機置き場。
「やっほー噂の2年生ズ。で合ってるだろ? 有名人だぜ君たち」
春の陽気を透過する窓脇のベンチに腰掛けていたのは、高専の制服を着た青年だった。
まず目につくのは特徴的な長い金髪。後ろでひとつに纏めたそれが揺れる様は、どこか獣の尻尾を思わせた。
体躯は細身、容姿も線が細く美形。そんな顔に似合わないようで似合う粗暴な表情や乱暴な言動も含めて五条悟に少し似ている、と夏油は感じた……違うのは五条の根底にある「品」のようなものが彼からはあまり感じられないことだろうか。染めたのだろう金の長髪に勾玉のようなピアスは、端正な顔立ちだからこそ辛うじて調和しているだけで、要素だけを抜き出せばチャラい現代の若者そのものだ。
こちらを見やる
そんな金髪の男の言葉に、五条はいつもの調子で不遜に笑いながら応える。
「へえ、何て? 『最強だ』って?」
五条悟と夏油傑。彼等には『最強』という称号を自称する程の自負がある。
片や五条家の天才、うん百年ぶりの六眼と無下限呪術の抱き合わせ。
片や非術師の家系から生まれた天才、呪霊操術という超貴重な術式の使い手。
夏油の肩に手を置いてふんぞり返る五条悟に、しかし男は首を横に振った。
「
ずる、と期待と違う答えに五条の姿勢が崩れた。
日頃の行い故に文句を言えない五条・夏油に対し、しかし彼女は不服を口にする。
「私をこいつらと一緒にしないで貰えます?」
金髪の男は家入硝子に視線をやり、彼女が咥えたタバコを見て苦笑する。
「おっと、こっちは別ベクトルで問題児。酒とタバコは18になってからにしときなよ」
「いや、それを言うならハタチからでしょ」
夏油のツッコミも、家入の未成年飲酒・未成年喫煙を黙認している立場故にどこか空虚であった。そも呪術師とはモラルの枠からはみ出しがちな存在、特に反転術式のアウトプットが出来る術師の心労を考えればある程度は仕方ないことでもあるが。
と、ここで五条悟が復活、初対面の相手に六眼でガンを飛ばしながら乱雑に問う。
「で、あんた誰?」
「ああ、オレは
初対面の相手の名乗ったその名前に、しかし夏油は聞き覚えがあった。
「あなたがあの……」
呟くと、喜色を湛えた琥珀の瞳がこちらを向く。
「あれ、もしかしてオレも有名人?」
「ええ。1年生で1級になった麒麟児であり、しかしながら半年前突如として
柔和な作り笑いでそう皮肉れば、彼――九々等八壱は笑顔から打って変わって難しい顔でふんぞり返った。
「麒麟児ねえ。その割には敬意ってモンが見えないんだが。特に白髪。オレ一応3年よ?」
「そりゃ当然、俺たちのが強いし」
「うっへぇ、こりゃキッツい物言い――」
夏油からしても「ちょっとどうなの」という五条の物言いに、九々等は大袈裟に傷ついた顔をして。
「――生意気だなァ2年坊」
声は背後から。
気付いた時には、九々等八壱は五条悟と夏油傑の背中を取っていた。
「「!?」」「わお」
ばっ! と五条・夏油は咄嗟に飛びのく。振り返ればベンチには誰もおらず、眼前には最初からそこに居たかのような態度で九々等が立っていた。
「(速い! 動きが見切れなかった?)」
「(術式、だよな……六眼でも一瞬過ぎて見抜けないとか、どんな速さだよ)」
九々等の身長自体は夏油よりも低い……だというのに腰を落として身構えていたからか、五条・夏油両名には九々等が妙に大きく見えた。
注視するふたつの視線の先で、九々等は敵意が無いことを示すように両手を開き、軽薄に笑う。
「ま、よろしく頼むよ五条悟。んで、えっと確か……」
「……夏油傑、です」
「家入硝子ー」
「オッケー覚えた。よろしくねゲトーくん! ショーコちゃん!」
とここで、五条・夏油が家入の前に立ちはだかった。
「せんぱーい、うちの硝子を気安く下の名前で呼ぶのやめてくださーい」
「硝子ちゃんが嫌がってまーす」
「え、何急に。もしかして3人は
「うげ、マジでやめてください気色悪い。こいつらがバカなだけなんで」
「何よ硝子、私達とは遊びだったの!?(裏声)」
「そうよ、今更全部無かったことにするつもり!?(裏声)」
「……あーなるほど理解した。そういう感じねー」
「こういう感じでーす。不本意なことに」
家入を挟んでやいのやいのと騒ぐ男2人。
そんな彼らの様に、最初は困惑していた九々等も思わず噴き出した。
「ま、楽しそうで何よりだ。仲良くしようぜ2年坊。またなー」
そう言って立ち去る九々等。どうやら特に用件は無かったようだ。
尾のような金髪が揺れる背中が角を曲がって消えるまで、五条はサングラス越しにねめつけていた。
「九々等八壱、ね」
その口元に浮かぶのは笑顔。新しい玩具を見つけた子供のような顔だった。余程先の高速移動が興味深かったらしい。
そんな彼の横で、夏油は先のやり取りから感じていた僅かな違和感に意識を向ける。
『ま、よろしく頼むよ五条悟。んで、えっと確か……』
「(……なぜ九々等先輩は悟の名前だけ明確に覚えていた? 確かに悟は有名人だが、先輩は最初『五条悟』ではなく『噂の2年生ズ』と言っていた。何故……興味が悟だけにあることを隠すため? もしや先輩には何か目的があって悟と接触を……?)」
と、夏油の思考を隣からの声が遮る。
「? どうかしたか傑?」
「――いや、なんでもないよ」
不思議そうな五条へ微笑みながら即答する。だが、別に隠し事をする意図は無い。
「(ふ、考え過ぎだな。最近任務で呪詛師とやりあったからか、人を疑う癖がついてしまったみたいだ)」
内心で苦笑して、当初の予定通り自販機でジュースを購入する。
ガコン、と落ちて来るジュースを手渡しながら、ふと夏油傑は思い出した。伝聞で聴いた彼の生家を。
九々等八壱。
「(菅原家は半年前に何か異変が起こったと聞く。戒厳令が敷かれる程の異変と九々等先輩の謹慎の時期が被っているのは偶然とは思えない。そういえば、謹慎についての話もそれとなく逸らされた。考え過ぎではなくやはり何かあるのか……?)」
夏油の中で一度は消したハズの疑いが蘇る。缶ジュースの表面で結露した水滴のように、一度脳にこびり付いた疑念はいくら払おうとも完全に消え去ることは無かった。
――呪術高専東京校2年、五条悟・夏油傑は『最強のふたり』である。
自称ではあるがその実力は確かに他とは一線を画す。故に彼等に回される任務は高難易度のものが殆どであり、それはその日も同じであった。
「――
教室で担任教師・夜蛾正道からの説明を受けた五条は、聴いた単語をオウム返しに呟いた。
夜蛾はうむと重苦しく頷き、迫力のある強面の顔で説明を続ける。
「ああ。特級呪物・両面宿儺の指。東京郊外の祠に封印されていたソレが紛失した。残穢から見て、呪物は紛失して1週間は経過している。おそらく呪物の呪力にあてられた呪霊が取り込んだか、呪詛師に奪い去られたかのどちらかだろう。封印を破ったことを考えると件の呪霊もしくは呪詛師は特級相当の可能性が高い。今回のオマエ達の任務はその調査と呪物の回収だ」
宿儺の指。千年前の呪いの王・両面宿儺の遺した呪物――ようするに彼の死蝋が呪物化したもの。如何なる手段でも破壊は不可能であり、日に日に強まる呪いは時として封印も間に合わない程だ。
強力な呪物は呪力を放ち、呪霊や悪事を企む呪詛師を呼ぶ。だがその呪力さえ封印してしまえば、その存在は他の呪いを寄せ付けない魔除けにもなる。要するに呪物が放つ気配は呪霊たちにとっての毒であり、それが放つ呪力は餌という訳だ。だからこそ祠、おそらく呪いが吹き溜まり易い場所に封じられていたのだろう。
だが今回、その「餌」としての特性が裏目に出た。封印が緩んだのか、あるいは……兎に角特級呪物の紛失など放っておけば碌なことにはならないだろう。だからこそ五条たちに回収の任が下されることとなった。彼等なら仮に特級が相手でも後れを取ることはないだろうという判断だ。
しかし、五条の表情は不満たらたらであった。
「それは分かったけどさぁ、どうやって奪われて1週間も経つ呪物を探すワケ? そんだけあればどこにだって持ち出せるだろ。いくら俺の眼が特別製っつっても『多分日本のどこかにある呪物を頑張って探してください』とか流石にありえねーんだけど?」
そんな彼のぼやきに、隣に座った夏油が口を挟む。
「……いや。残穢の状態によっては追跡は不可能ではない。それに取り込んだのが呪霊だとしたら、そこまで捜索範囲は広げなくても良いだろう。呪霊は元来生まれた場所に留まるものだからね」
「へーさっすが呪霊マスター。奴らの生態に詳しいこって」
「悟、真面目に」
机に突っ伏したままというやる気が感じられない五条の態度を咎めながら、夏油は顎に手を当てて考えながら続ける。
「ですが、問題は」
「ああ」
「?」
通じ合う夏油・夜蛾に対し、五条はまるで理解していない顔。
そんな彼に聞かせる目的で夏油は己の考えを口に出す。
「特級呪物を取り込んだ呪霊が起こす事件なら、ほぼ間違いなく
「今の所確認されていない」
「……成程。ひとまず安心、ですが手がかりも無しと。呪詛師の仕業である可能性も増しましたね。幸運なのか不運なのか」
成程、と五条も無言で納得した。
怪死・変死などの明らかに呪霊が原因と思われる事件があれば、事件が起こった場所から呪霊の居場所を割り出したり能力を推測したりできる。だがそんな事件が無いのであれば居場所の特定はほぼ不可能、更に呪物を取り込んで成長した呪霊が1週間も大人しくしているとは考えにくいので犯人は呪詛師の可能性も出て来た、と。
彼の思考の先を引き取るように、夜蛾が教壇の上で核心を口にした。
「今回の件はあまりに謎が多い。呪霊の仕業だった場合その等級は特級となるだろうし、場合によっては捜索に時間を取られたり、分断された状態で件の呪霊・呪詛師と遭遇する可能性もある。よってオマエ達の他に1人、1級の術師を同行させる」
「はぁ?」
「……(今手が空いている1級、と言えば)」
意味不明、と呟く五条の横で冷静に「助っ人」の正体を推測する夏油。
その時、がらり、と教室の扉が開いた。
奇しくも現れた顔は、夏油が思い描いたのと同じ顔。
即ち、長い金髪を尾のように揺らす美形で粗雑な3年生。
「やっほー2年の問題児ズ。特級呪物の回収任務、一緒に頑張ろうぜ!」
九々等八壱。
それが宿儺の指捜索任務に参加する、3人目の術師の名前だった。
東京郊外、宿儺の指が封印されていた祠がある山の中。
昼間だというのに木々に囲まれた山中は薄暗く、じめじめとした湿気に包まれている。頭上から降る烏の鳴き声、ぐちゃりと靴を舐める湿った土。そして、かすかな呪力の匂い。
余人は近寄らないだろう寂れた山道を歩きながら、五条は夏油に文句を溢す。彼が抱く不満はしかし、この居心地が良いとは言えない山に対してではなく、2人の少し後ろに居る金髪の男に対してのものであった。
「はー意味分かんねー。こんな任務俺と傑だけで十分だろ」
「腐るなよ悟。我々が過小評価されている訳ではない。それほど今回の任務が重要だということだ」
「宿儺の指、だっけ? それそんなにアブねーの?」
「ああ、20本に分割された指の一本すら未だ消し去れていないんだ、歴史上最も危険な呪物と言っても過言ではないよ。封印されて尚数多の悲劇を生む呪いの王……これが呪詛師によって復活させられたら、と思うと上層部の懸念も決して過大ではないだろう」
「ハッ、宿儺って大昔の術師だろ? 仮に呪物から復活したとして俺と傑なら殺せるだろ」
「それは最終手段だよ悟。最善は未然の対処、要するに復活させないことだ」
「へいへい」
そう会話をしていると、件の上級生、九々等八壱が足を速めて彼等に近づいて来た。並んだ彼は2人の間に割り込むようにして会話に口を挟む。
「何話し込んでんだ2年坊共。好きなグラドルの話かァ?」
そんな彼に対し、五条は不機嫌を隠さずに。
「アンタの悪口だよセンパイ」
「こら、悟」
「ったく、クソ生意気だな五条悟ゥ。先輩を見下ろしやがって。ぶん殴るぞ?」
「やれるもんならやってみろよチビ」
「はぁ? テメエがデケぇんだよ白髪ノッポ」
「まあまあ、落ち着いて。すみません九々等先輩、うちの悟が」
睨み合い言い合う両者の間に割り込む夏油。だが九々等はそんな夏油にも胡乱気な目を向けた。
「……オマエもデケえのな夏油」
「……まあ、はい。平均よりは背が伸びたという自覚はあります」
「ちぇ、屈め屈め巨人ども。オレだって平均よりはあるんだぜ?」
そんな風に会話していると、3人は気付けば目的地である祠に辿り着いていた。
木製の黒ずんだ小さな祠だ。べたべたと張り付けられた呪符がなんとも物々しく、壊れかけた祠と相まって不気味な雰囲気を纏っていた。
だが五条たちが目を見開いたのは別の理由だ。
「……壊されてるな」
「ああ」
祠の扉は壊されていた。扉の破壊痕から覗く中には何もない。何かが置いてあった後や呪力の様子から「本来あるべきものが無い」と3人は直感させられた。
3人は破壊された祠に近寄る。と、夏油は地面に落ちていたソレを発見した。
「これは……扉を封じていた呪符かな。外から剝がされた形跡がある」
「ふぅん? ちょっち貸してみ」
「どうぞ、先輩」
呪符を受け取った九々等はその模様や裏面などをじっくりと観察し……気付く。
「……この呪符、
「(呪符の読み取りか、流石1級術師の上級生。それよりも……) つまり呪霊ではなく呪詛師の仕業、ということですか」
「その可能性大だなこりゃ。残穢も巧妙に隠されてる。1週間経ってるとはいえ余りにも不自然だし、少なくとも『呪霊が暴れ回った』って感じはしないんじゃね?」
話し込む九々等と夏油。そんな彼らの会話を聞きながら、サングラスをズラして祠を眺める五条は呟く。
「呪詛師の仕業ねえ……宿儺の指、過去一レベルで禍々しい残穢だぞ。こんなん盗んで喜ぶ奴の気が知れねー」
オエー、と吐く真似をする五条を窘めるように夏油は語る。
「力と悪意を持て余した者が居るのさ。秩序を崩壊させかねない呪術界の癌だ。出来ればここで祓いたいものだが……」
だが、九々等が言うように残穢は巧妙に隠されており、手がかりらしきものはない。また活動範囲が限られやすい呪霊と違い、呪詛師が犯人ならその行動は全く読めない。宿儺の指を取り戻すのは難しいと言わざるを得ないだろう。
そんな夏油の判断を理解しつつ、九々等は上級生として方針を纏める。
「ま、任務失敗ってとんぼ返りもなんだしな。最低限の捜索はしてこうぜ」
それに反対する理由は五条・夏油には無かった。
夏油は等級の低い呪霊を複数呼び出しながら言う。
「私は呪霊を使って周囲を探ります」
「ならオレは周囲の呪力を感知する。五条悟、オマエ六眼持ってんだろ? 残穢の追跡やれ。これ先輩命令な」
「……」
五条悟、不満を露わにしたとんでもない変顔。
器用にも九々等が振り向いた時には普通の顔に戻っていたが、何らかの違和感を感じた九々等は眉を顰めた。
「? なんだ、今なんかしてたか?」
「なんでもありませーん」
一部始終を見ていた夏油に脇を小突かれながら、五条も渋々捜索を開始した。
……そんな彼等を、
額に縫い目のあるその人物は、にやりと笑って呪詞を唱える。
――闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え
彼等にとって、予兆は無かった。
突如として頭上の空に闇が現れ、それがドロドロと地表に向かって降り注ぐ。
夜が降る、異様な光景。
「「!?」」「
全員驚愕。その中で放たれた九々等の叫びはその正体を言い当てていた。
帳、それは基本的に術師が非術師に活動を隠すために使用される結界術。だが。
「(補助監督が連絡もなく!? いや違う、この帳、私と悟たちを分断している!)」
次に気付いたのは夏油。捜索の過程で、彼は五条・九々等と少し離れてしまっていた。ばっ、と五条の方を振り向くも、遠くに見えた親友の姿は下りてきた帳に覆い隠された。
夏油は思わず帳に駆け寄ろうとして……その足が止まる。
いつの間にか彼の周囲は、複数の呪霊に取り囲まれていた。木陰からずるりと這い出て来た呪霊たちは夏油の支配下に無い呪霊――つまり、敵だ。
「(……そして、足止めするかのように現れた呪霊。余りにも作為的だ。呪物を盗んだ術師の仕業である可能性が高い)」
夏油は虹龍――捜索に使った下級呪霊とは比べ物にならない強さの呪霊――を呼び出し、丁寧な口調でも隠しきれない怒気を孕んだ口調で告げる。
「今急いでる。悪いが手荒くさせて貰うよ」
対して、『帳』内部。
「傑!」
五条も咄嗟に振り向き、帳が親友との間を塞ぐように下りてきたのを見た。
「(帳による分断! 帳の呪力は補助監督のとは違う、例の呪詛師だな!)」
五条の眼は特別だ。一瞥で帳が補助監督の手によって下ろされたものでは無いことを見抜く。それでも夏油との合流が間に合わなかったのは、帳の術式効果が視覚効果より優先されていたから……つまり夜が降り切るよりも早く、気付いた時には分断は成立していたのだ。
夏油と分断された。
その事実に焦る五条に対し、声をかける者が居た。同じく帳に巻き込まれた九々等である。
「おい後輩」
「ああ!?」
焦りを隠さない五条に対し、しかし九々等は楽し気に笑って
「喜べ。こっちが本命っぽいぞ」
彼が指さした先には、いつの間に現れたのか、一体の呪霊が立っていた。
おおよそ人型をした呪霊だ。2本の腕に2本の脚、青ざめたような不気味な肌色。特徴的なのは顔の右側に目が上下ふたつついていることと、その呪力。
「(――! この呪力、呪物を取り込んだ呪霊か!)」
六眼を持つ五条にはすぐに分かった。
祠に残されていた呪物の残穢と、呪霊が放つ呪力は全く同じ。そしてその呪力の量と圧は、間違いなく特級レベル。
――さて、お手並み拝見
宿儺の指を取り込んだ特級呪霊を前にした五条悟と九々等八壱。
帳の外で足止め目的の呪霊を独り相手取る夏油傑。
そんな彼等をどこからか見ているその術師は、額の縫い目を指で撫でながら楽しそうにそう呟いた。