9×9=   作:龍川芥/タツガワアクタ

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・五条怜(モジュロ編オリ主)キャラデザイメージ

【挿絵表示】



≡1 次代

 今よりおよそ七十年前。

 新宿決戦における負傷により第一線を退いた当時の五条家当主・五条(ごじょう)(さとる)は、遠い血縁である乙骨(おっこつ)憂太(ゆうた)を五条家に招き当主として盛り立てることで、五条家を御三家で唯一家格剥奪から免れさせた。

 だが乙骨憂太が当主に据えられたとはいえ、幾筋にも分かれた五条家本来の血が途絶えた訳ではない。

 乙骨本人も師である五条の名と血脈の継承を望んだため、五条家には乙骨家と五条家、両方の姓と血とが残されることとなる。

 

 そのまま乙骨家の血筋は、代をひとつ挟んで真剣(つるぎ)憂花(ゆうか)という才能に到達。

 だがこの世代において真に血の価値を示したのは、ともすれば現当主・乙骨の血筋ではなく―――。

 

 

  西暦2070年

  五条(ごじょう)(れい) 爆誕

 

 

 

 

 

≡壱≡

 

 

 

 

  五条怜 6歳

 

 最近気付いたことだけど、どうやらわたしは『天才』らしい。

 

「素晴らしいぞ、(れい)。おまえは天才だ!」「ええ、もう術式を使いこなせるなんてっ」

 

 何をやっても上手くできる。

 

「怜様、もう呪霊を祓ったんですって!」「ホント、お嬢様が居てくれればお家は安泰ですねぇ」

 

 何をやっても褒められる。

 

「怜ちゃんは凄いね」「真剣(つるぎ)に勝ったんだってね? 悪いけど、また相手してあげてくれるかい?」

 

 わたしは何でもできるけど、周りはそうじゃないみたい。

 

 だから天才。

 だから孤独。

 誰もわたしを理解できないけど。

 ま、別にそれでもいいかな。だってわたしが最強だし。

 

 

 

  五条怜 10歳

 

 ―――ああ、いい加減気が付いた。

 みんな、わたしを見ていない。

 わたしを通して、ずっと前に死んだ『誰か』を見ている。

 『誰か』とわたしを見比べてる。

 

「乙骨の娘は『十種(とくさ)』らしい。禁術だが、術式の格はあちらが上……くそ、怜の術式が噂に聞く『無下限』だったなら次期当主の座は……」「やめてください、怜の前ですよっ」

 

 何をやっても、見てくれない。

 

「もう二級に? 凄い早さです怜様!」「でも、確かあの方は同じ年齢で既に一級に……」「ちょっと、そんなの今関係ないでしょう!」

 

 何をやっても、比べられる。

 

「怜ちゃんは先生みたいだね」「ああ。その力で真剣と憂花(ゆうか)を助けてやってくれると……」

 

 何でもできるハズなのに、それだけは絶対に変えられない。

 

 みんなの目の中には、わたしには見えない基準があって。

 それに及ぶと歓喜して、及ばないと落胆するのが伝わってくる。

 そして、何よりイラつくのは。

 みんなが見ているその『誰か』は、わたしよりもずっとずっと凄かったと、何となく分かってしまうことで……。

 

 だから、ただの天才。

 だから、ただの孤独。

 誰もわたし自身を理解しようとはしてくれない。

 なのに、わたしは『最強』ですらないらしい、なんて。

 ―――そんなのクソだ。ふざけんな。

 

「お嬢様、何処へ!?」

「知るか! わた―――ウチについてくんな!」

 

 というワケで、家中の襖を目に付いた端からブッ飛ばしたりなどをして。

 ウチは見事にグレたのでした。

 

 

「『ソイツ』が誰か知らねーけど……。

 ゼッタイ、ウチのが凄いって分からせてやる……!!」

 

 

 

  そして現在 西暦2086年

  五条怜 16歳

 

 高専内の神社境内にて。

 鳥居をくぐった神社の前、石畳の上で、二人の人間が会話していた。

 

「―――狐ジジイ! ウチと例のオッサン、どっちが強い?」

「またか。まだまだ答えは変わらんぜ。オマエの御先祖様のほうが上」

「ハァ!? またそれかよ」

 

 ぶっすー、と尻餅をついたまま頬を膨らませる怜。

 その恨みがましい視線は、悠然と立つ彼女の師匠―――『九尾さん』を自称する狐面の術師へと向けられている。

 

 五条怜とその師匠。

 彼等は今しがた修行―――という名の模擬戦を終わらせたばかりだ。

 結果は、少女の頭頂に出来た真新しいタンコブが物語る通り。

 とはいえ今日の内容は怜からすれば上出来で……ゆえに、修行を始めた日から全く変わらない師からの評価に、彼女はつい唇を尖らせる。

 

「……ジジイさ、長生きし過ぎてボケてんじゃねーの?」

「莫迦言え。ま、オレから一本も取れねえようじゃ、まだまだひよっこってコトよ」

「ざけんな! ジジイに勝つって、ソレ世界一強くなれってことじゃん! ぜんぜん手加減しねーくせに!」

「よく分かってんじゃねえか。オマエの目標は紛れもなく最強(ソコ)だぜ? ま、オレに勝ったら世界一強い、ってのは違うかもだが」

 

 負けた怜が喚き散らすのはいつもの事であり、狐面の男は老境らしからぬ爽やかな笑顔。

 金髪が朝の陽射しを帯びて少女の目を刺す。

 そうして彼女の師は、いつも通り先達らしい説教をひとつ。

 

「というかそもそも。強いとか弱いとか、そんな所に本質は無くてだな……」

「説教いらねー。じゃ、ウチこれから任務だから」

 

 そんな長話の気配を察知した怜は、素早く立ち上がって神社から逃げ出した。

 お得意の説教キャンセル。

 ここに来てからそんなのばかり上手くなっている気がする、なんて思うのは、少し厳しすぎる目線だろうか。

 

「……全く。最近の若者は難しいね、どうも」

 

 苦笑する狐面の男。

 現代唯一の特級術師などと囁かれる彼も、子どころか孫ほどに年の離れた思春期の弟子の前では、どうにも形無しなのであった。

 

 

 反面、森の中を高速で『飛ぶ』弟子・怜は、そんな師匠へ悪態をつく。

 

「ホント、いっつも同じことばっか。ぜってーボケてるってアレ」

 

 若作りめ、なんて呟いて、そのまま彼女は今日の修行から真っ直ぐ逃走。

 そもそもあの『狐ジジイ』は教えるのとか下手なのだ。

 毎日ずっと勝てない模擬戦をやらされて、それで弟子のモチベーションが持つと思っているなんて、やっぱり耄碌しているとしか思えない。

 柔軟な発想が足りないのだ、老人だから。

 

 そんな風に好き勝手こき下ろし、今日の敗北の溜飲を下げる怜。

 あの日の誓いは今も変わらず。

 けれど最近伸び悩んでいるというか、何となく焦っているというか。

 

「あーあ。もっとこう、分かり易い強敵はいないモンかなぁ」

 

 知らない『最強』の幻影も、勝ち目の見えない師匠―――怜から言わせると彼は『ズルい』ためノーカンらしい―――の相手も、正直切磋琢磨するには向いていないのだ。

 とはいえそれ以外に『天才』である自分の相手ができる強敵なんて覚えがないし。

 上は高すぎ、下は低すぎて、丁度いい修行相手が居ない。

 それが打倒『最強』を目指す五条怜の目下の悩みであった。

 

 

 

 

 

≡壱≡

 

 

 

 

 その日の事。

 任務を速攻の楽勝で終わらせ、補助監督が運転する車で帰路についていた五条怜は、ふと車窓の外に呪力を感知した。

 見れば、街の空を覆っていく結界。

 それは一般人には視認できない仮初の『夜』。

 呪いを隠すための呪い。

 

「『(とばり)』……? ああ、確かあの二人の任務がこの辺りで―――」

 

 呟いたのは補助監督。

 その脳内で点と点が繋がる。

 だが、そんな呟きは唐突に止まった。

 

 ぴたり、と。

 ブレーキも踏んでいないのに、勝手に車が停止したからだ。

 

「ご、五条さん!?」

 

 それが誰の仕業かを察し、慌てて助手席を振り向く補助監督。

 だが、先程まで隣に座っていた問題児は、既に扉を開けて車外に出た後だった。

 

「ねえ。ウチ任務終わってっし、自由行動でいいよね」

 

 当然、良いわけがない。

 

「そ、そんなぁ! 困ります、勝手に動かれると私の責任に―――」

「イイじゃん見物ぐらい。じゃ、後でねー」

 

 制止の声もまるで聞き分けず、ふわり、少女の体が浮かび上がる。

 そのまま彼女は待ったなし。

 まるで意志を持った風船のように。

 浮遊する怜の背は、術師ならぬ補助監督ではどうしようもない高みへと消えていった。

 

 

 

 

 ―――同刻・『帳』内。

 

 乙骨(おっこつ)真剣(つるぎ)・乙骨憂花(ゆうか)両名は、呪詛師・武田(たけだ)正樹(まさき)(仮名)との戦闘に苦戦。

 そのさいシムリア星人の特使マルル・ヴァル・ヴル・イェルヴリ―――通称マルが負傷を原因とした暴走状態に陥り、武田と交戦、これを圧倒。

 だが真剣はマルによる武田への加害及び殺害がシムリア難民との関係悪化の要因になり得ると判断し、両者の戦闘に割って入る。

 暴走を続けるマル。

 その危険性と反撃を赦されぬ立場を理解しながら立ちはだかる真剣。

 そして剣呑な思惑を抱え事態の顛末を密かに見下ろすマルの弟、クロス。

 

 そんな混沌とした状況の中―――。

 

 とぷん、と帳の境界を超えて。

 白髪の美貌、乱入す。

 

 空中より舞い降りたそれは、(よる)に包まれた世界において、寒月の化身のようだった。

 とん、と重力を感じさせず地を踏んで。

 現れた少女は、見知った親戚の負傷した姿に眉を(ひそ)める。

 

「―――真剣(つるぎ)じゃん。何してんの?」

 

 五条(ごじょう)(れい)

 乙骨兄妹にとっての親戚の登場は、この場の誰にとっても予想外の出来事だった。

 

「っ、(れい)!? なんでここに……」

「別に気まぐれ。で、アレ何? 人間だよね?」

 

 怜が指で示した先には、暴走するマルの姿。

 額にある三つめの瞳だけが開き、漲る呪力に反して殆ど意思を感じない状態だが……今は動きが止まっている。

 ギョロギョロと外界を凝視する視線の動きを見ると、どうやら現れた怜を警戒してのことらしい。

 そんなマルに対し、シムリアのシの字も知らない怜もまた警戒を露わに―――。

 

「……ウッソ。あの目、マジモンじゃん。気持ち悪~」

「……(コイツ、こんな時でもノリ軽いのかよッ)」

「ソレに何かヘンっつーか。明らかにフツウじゃ無くね?」

 

 思わず呆れる真剣。

 ともかく、怜はこう判断した。

 どう見てもまともな術師には見えない。つまり。

 

「ねー真剣。アレ、殺していいんだよね?」

 

 本人からすれば同い年の親戚への親切心。

 だが肝を冷やしたのは真剣だ。

 なにせ彼が知る五条怜という少女は、憂花(いもうと)など天使に思える我儘女王、容赦という言葉を胎内(はら)に忘れたナチュラルボーン暴君ギャル……!

 

「っ、手短に言う、アイツを傷付けるな! 宇宙人と戦争になる!」

「……ハァ? 何言ってんの? 錯乱の術式……でもないし。頭でも打ったワケ?」

「残念だがマジだよ……クソ、話が無駄にややこしく……!」

 

 思わず頭を抱える真剣。

 と、そんな彼の心痛を気にも留めず。

 

「ふーん。じゃ」

 

 怜が振り向く。

 その蒼い瞳が、この場にて意識を保つ()()()へと向けられる。

 

()()()は殺していいワケだ」

「!」

 

 視線の先には、子供のような矮躯をした老人の呪詛師。

 マルの猛攻を受け気絶したと思われた彼は、しかしまだ意識を保ち、逃げ出す隙を伺っていた。

 それを一目で見抜いた怜と。

 見抜かれたことを悟った呪詛師。

 だが……慌てて飛び上がった老人だったが、何故か、その場から一歩も動くことが出来なくて。

 そんな彼へと闇を裂く眼力を向けるは、白髪蒼瞳の五条怜。

 

「狸寝入りバレバレ。呪詛師でしょ? 逃がさねーし」

「アイツ、気絶してなかったのか……!」

 

 真剣の声に焦りが混じる。

 ここに来て考えなければならない要素が更に追加されてしまった。

 だが……人間万事塞翁が馬、というのか。

 奇しくも増えたトラブルは、対消滅の兆しを見せる。

 

「真剣ボロボロみたいだし。呪詛師(こっち)の相手、代わってあげよっか?」

「……、頼む」

「うわ、マジで切羽詰まってんじゃん。引くわー。まあいいけどさ、あっちの三つ目(めんどくさそう)なのは自分で何とかしてよねー」

 

 軽く言って、トラブルへと矛先を変えてくれた気紛れなトラブルメーカー。

 そうして真剣がマルと対峙する傍ら、邪魔者は邪魔者どうし刃を交えることとなる。

 

 

 ―――ざっ、とグラウンドを踏む音。

 相対するは美貌の少女と醜怪な老人。

 武田(たけだ)正樹(まさき)、あるいはマサヨシを名乗っていた呪詛師に対し……その偽名すら知らぬ五条(ごじょう)(れい)は、蒼穹めいて透き通る瞳を猫のように細める。

 

「んー、式神使い? ちょっと違う……術者に憑いてて媒介ナシで出てくる守護霊持ちか。でもソレを出せる状態(コンディション)じゃない系ね。ボロボロすぎてウケる」

(コイツ、何か妙だと思ったら……『六眼(りくがん)』! 五条の神童か!)

 

 呪詛師―――武田も聞いた事があった。

 当代にて五条の血筋に生まれた麒麟児。

 その名は呪術界に広く知れ渡っている。

 

 戦闘直前の緊迫した空気。

 全盛期が遠い老体に、真剣(つるぎ)と戦ったときとは違う満身創痍。

 だが三つ目(マル)と会敵した際の油断は無く、呪詛師は最初(はな)から全力で呪力を練る。

 

「女子とはドッジボールしないんだ。すぐ泣いちゃうからな」

「は? 意味分かんねー。どいつもこいつも、ジジイって皆ボケるワケ?」

 

 対し、怜は自然体。

 泰然自若とも見えない慢心(すき)だらけ。

 

(好機!)

 

 武田は己の術式で、巨大な()()()に似た武器を作り。

 ―――突進!

 一級術師相当の呪詛師の呪力強化は、爆発の猛々しさではなく、風のような捉えどころのなさをその痩躯に与えて疾走する。

 速度、威力、共に渾身の刺突。

 老獪な呪詛師の放つ全霊の初撃。

 

「ヒャア―――!」

 

 矮躯は疾風に。

 狙いは胴体、正中線ど真ん中。

 銀閃を帯びる切っ先は、回避の気配さえない高専制服を深々と抉る―――。

 

 ―――ぴたり。

 

 時間が止まる。

 武田が全体重を乗せて放った針の切っ先は、狙い違わず怜の胸に命中し……その衣服に触れた瞬間、冗談のように停止していた。

 

(!? 刺さってな―――)

「ボケ老人に言っても分かんねーだろうけど。()()()()()()()()()()()()

 

 いくら押せどもびくともしない殺人針。

 高専制服が鋼鉄の鎧になったかのような……違う。この手応えは単に硬いとか、呪力で防御されたと言った単純なものではない。

 つまり、冷たい六眼()で此方を見下す少女の術式によるもので―――。

 

「っ!」

 

 武田は咄嗟に後方へと跳ぶ。

 このまま至近に留まるのは不味い―――経験が培った直感による即断即決。

 そうして彼は距離を取り、敵の術式が不明なりに次の手を……。

 

「―――あのさ。逃がさないって言ったよね?」

 

 否。

 後背へ跳躍したつもりだった。

 だが事実として、彼の肉体はその場から一歩たりとも動いてはいなかった。

 

 そうだ。

 狸寝入りを見抜かれたときも、武田は飛び上がって逃走を図った。

 だが……()()()()()()()()()()()()()()

 まるで不可視の干渉にて、飛距離を『ゼロ』に書き換えられてしまったかのように。

 そんな不可解な事象が短時間に連続して二度。

 つまり。

 

「これは、術式……!?」

「せいかーい。褒めて欲しい? よしよし、偉いねーハゲじいさん……ま、こんなの猿でも術式(そう)だって分かるだろうけど」

 

 言って。怜が戦闘中だというのに、実にふざけきった態度で武田の禿頭を撫で回し。

 そのまま、少女の五指が()()()と喰い込む。

 

「じゃ、死ね」

 

 ―――瞬間。

 計十発を超える拳と蹴りとが、枯れ木に似た老体をへし折る勢いで撃ち抜いた。

 

 呪力強化の乗った打撃の凄まじさは機関銃(マシンガン)に例えるべきか。

 殺傷能力もまたそれに劣らず……けれどその威力をもろに受けた武田の体は、何故か後方へと吹き飛ぶことなくその場に(とど)まり続ける。

 故に、彼は衝撃を殺すことさえ出来なかった。

 まるで固定されたサンドバッグ。

 呪力防御など紙の鎧も同じ。

 

「が、はッ―――!」

 

 どさり……糸が切れたようにその場へ崩れ落ちる呪詛師を前に、返り血すら空中で『停止』させて、無傷の少女は嘆息する。

 

「勝ち目はゼロだって言ったっしょ。無駄な抵抗とかほんとキモイし」

 

 吐き捨てる彼女こそは五条怜。

 十二歳時点で一級術師へと至った、神童。

 

 敵が消耗していたとはいえ、戦闘開始から実に数秒の決着である。

 正しく瞬殺。

 呪詛師・武田正樹は今度こそ狸寝入りではない本物の失神……あるいは死亡か。

 それにさほど興味はなく、怜は先程見た真剣と憂花の体に刻まれていた刺し傷を思い出す。

 呪力の残穢は今の呪詛師のモノだ。

 そして三つ目の術師の暴走。

 状況は何となく理解できた。

 

「……ダッサ。こんなのに負けたの? ありえないんですけど」

 

 と、あちらも佳境らしい。

 

「……俺たちは隣人になるんだろ!……」

 

 こちらまで届くほどの叫び声は真剣のもの。

 するとどこからともなく現れる、同じ三つ目のそっくりさん。

 気絶する三つ目(暴走)と真剣に、そんな真剣の襟首を掴んで何事か説教を始める三つ目(乱入)。

 

 怜からすればカオス極まりない状況だが、どうやら事態は収まったらしい。

 とはいえ真剣と憂花は気絶状態。

 唯一起きてる三つ目は、怜からすれば正体不明ときた。

 さてどうするか、などと彼女が考えているうちに……『帳』が消滅した。

 

「真剣くん、憂花ちゃん!」

 

 そして、駆け寄ってくる補助監督らしき男と―――もう一人。

 

「―――。君は、五条家の……」

 

 歩み寄ってくる、黒髪を後ろに撫でつけた長身のスーツ男。

 怜はその顔に見覚えがあった。

 このオジサンは確か、師匠の狐ジジイに褒められていた―――。

 

「……『ウサミン』」

「?」

「なんでもない」

 

 ふい、と視線を逸らす。

 師匠から自分以上の評価を与えられた『ウサミン』は、怜のコンプレックスを刺激する数少ない相手だ―――残念ながら、怜は師匠の言葉の真意をまるで理解していない。

 とはいえ実力で劣っているつもりはないし、とその場に止まる怜。

 そんな彼女の複雑な心境など知るはずもなく、宇佐美(うさみ)(こう)は本来この場に居ないハズの彼女を問い質す。

 

「君は何故ここに?」

「別に、たまたま近くに居たから寄っただけ。そこで伸びてるのがウチがやった呪詛師ね。じゃ、事後処理とかメンドイし、ウチ帰るから……って言うつもりだったんだけどさー」

 

 五条怜は傍若無人であり、ものぐさであり、我儘放題にして唯我独尊である。

 普段ならとっくにその場を去っている所だ。

 だがそんな怜をして、()()()()はとうてい聞き逃せるものではなかった。

 

「ねぇ。『宇宙人』って、一体どーゆーコトなワケ?」

「……ああ。もう隠せる状況ではない、私から説明させてもらおう」

 

 観念して溜息を吐く宇佐美。

 かくして誰にも招待()ばれていない乱入者は、シムリア星人を巡る騒動の渦中に紛れ込むこととなる。

 

 

 其は当代最高のうら若き俊英にして、生粋のトラブルメーカー。

 無限の対極に立つ異端児は、星の物語に極点(ゼロ)を穿つか。




名前:五条(ゴジョウ)(レイ)

髪色:ホワイト
瞳色:スカイブルー
職業:高専学生/一級術師

術式:『下減呪術(かげんじゅじゅつ)
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