感想で多かったので
九々等の術式は真人が言ってた「世界が違う」にちなんで、現実の法則よりも九々等の認識(自分の意思で変えられない無意識の認識)を優先する法則がある、みたいな解釈でお願いします
「それって一貫してないといけないこと?」とか「術式は世界か、いいね素敵だ」の精神で居てくれると嬉しいです
あと九々等はゴリゴリの文系で、あんまり成績も良くないです
そんなことより日間ランキング1位!
「領域展開――『
「!? 領域展開――『
交渉が決裂した瞬間、
その必中の術式が発動する前に、巻き込まれた
――
伏黒は日車が居るという池袋に向かう途中で
少し迷った末、伏黒は情報提供された劇場に突入することを決定。
そこに居た日車と二三言交わし、彼が現代の術師であることを確信した後交渉に入ったのだが……結局交渉は決裂、日車との戦闘になってしまった。
話は現在へ戻る。
日車の領域は、その必中効果により術式対象を判別できなければ崩壊する。領域の押し合いに向かず、本来なら相手に領域展開された時点で己の領域を失うリスクを持つ。
日車の領域が崩壊。場には伏黒の領域だけが残される。
だが。
結界術が苦手な伏黒は、己の領域の外殻を日車の領域の外殻に重ね転用することで領域を展開していた。その外殻が崩れ、伏黒の領域もまた維持条件を保てず崩壊する。
一瞬で丸腰となる両者。
領域展開崩壊後の術式が焼き切れた状態で、有利なのは
「ぐっ……!」
伏黒は攻撃をなんとか防御しつつも、脳内で叫ぶ。
「(領域展開出来るなんて聞いてないぞ! 何が『恵くんなら大丈夫』だ!)」
伏黒の中で九々等の信用値が五条悟レベルに落ちた瞬間だった。脳内で悪態を吐きつつ、伏黒は日車の猛攻を影から取り出した呪具の刀で防ぎ、叫ぶ。
「日車、聞け! 死滅回游を仕組んだのは
「……死滅回游は永続を謳っている。実際に適応されている
「ちッ!」
伏黒は呪具をひとつしか持ってこなかったことを後悔し始めていた。術式無しの戦闘では、
「ぐ、クソ……!」
強い、と伏黒は脳内で呟く。覚醒型の術師との戦闘はこれで二回目。そのどちらも、高専の術師すら凌ぐだろう強者。
「(こんなのばっかなのか覚醒型は!)」
伏黒が痛む体を押さえながら立ち上がると同時。日車の呪力が空間を覆った。
「! (もう!? 俺の術式はまだ――)」
日車の領域は、「必中必殺」の「必殺」の部分を省いている都合上、通常の領域よりも術式の回復が早い。
「領域展開」
カンカンと
未だ術式が回復していない伏黒を、日車の領域が呑み込んだ。
術式を持たず素の身体能力と呪力による肉体の強化のみを頼りとする虎杖に対し、術式を持ち用意周到な準備を整えた歴戦の受肉術師・レジィ。両者を隔てる実力差は大きいように見えた……が、蓋を開けてみればその勝負は驚くほど拮抗していた。
「『再契象』」
レジィがレシートを呪力で焼き切り、その手元に刃渡り50cm程の鉈を出現させる。そのまま呪力の込められた刃を振るい――首を狙った一撃は、虎杖が身を沈めることでその髪の毛数本を切り裂くに留まった。
そのまま虎杖が連撃を打ち込む。レジィも上手くガードするが、その手はビリビリと痺れを覚える。
返す刀で鉈を振るレジィ――その手が肘辺りで押さえられ止められた。刃物を封じた虎杖が拳を構え。
「『再契象』!」
虎杖の真横から包丁が飛来。虎杖は攻撃の為の拳を防御に使わざるを得なくなる。
拳で包丁を撃ち落としたことで出来た隙に、レジィは服からレシートを千切り取り術式を発動。具現化したのは――。
「! (網――!?)」
虎杖の視界に広がる投網漁用のネット。それが虎杖に絡みつき、その足を止める。
「そのまま
レジィが包丁を複数具現化、ネットで動きが鈍くなった虎杖に発射し――。
それを見切った虎杖は、逆に包丁を紙一重で避け網を切らせることで拘束から脱出した。
その曲芸じみた動きに、遠い間合いを取り戻したレジィがぴゅうと口笛を吹く。
「ほんとどうなってんの君。術師やるよりサーカス団の方が向いてるんじゃない?」
「……」
軽口を叩きつつ、または油断なく構えつつ両者はそれぞれ考える。
「(得物ありでも押されるとんでもない身体能力! 呪力操作も淀み無い、小技じゃ不意を突かない限り大したダメージにならない……これで黒閃でも出されたら最悪、一撃でアウトだ。やりにくいね、ほんと!)」
「(クソ、また距離取られた! 術式も良く分からねぇし……レシートってことは通販みたいに『買う』術式か? 接近戦も俺に分があるとはいえあっちも相当動ける、無策で飛び込めば負けるのは俺……)」
虎杖の鬼神っぷりに、通常ありえない「黒閃」さえ想定させられるレジィ。
有効な遠距離技を持たず、相手の術式もまだ掴みかねている虎杖。
両者の拮抗は必然と言えた。
再び虎杖が距離を詰めようと走り出し、レジィが術式で迎え撃つ。
ややレジィに均衡が傾いた、しかし虎杖の一発で趨勢が簡単に逆転する互角の戦いの中、両者は再び思考する。
「(俺のコガネは黄櫨が死んだら通知するよう設定してある。そろそろあっちも決着が付いて良い頃でしょ。こっちのガキは恐らく戦闘系の術式が無い、黄櫨が来れば確実に勝てる)」
「(コイツは41点
虎杖の気迫の籠った一撃をのらりくらりと躱すレジィ。
そんなレジィの計算は。
「虎杖くん、助けに来たぜ!」
「ッ、
近くの建物の上から九々等が現れたことで崩れ去った。
「(黄櫨が負けたのか!? ならどうして通知が――)」
レジィは思わず虎杖の背後に着地した九々等を見て……そして一目見て理解する。
「(コイツ。何があったか知らないが……明らかに上がっている! 術師としてのレベルが!)」
立ち昇る呪力を一目見ただけで分かる程、九々等は術師として成長していた。黄櫨に勝てるレベルだとレジィが直感してしまうまで。
そんなレジィの様子に、虎杖が冷たく言う。
「やっと薄ら笑いが消えたな、レジィ・スター」
「……ガキが!」
予想外の黄櫨の敗北に虎杖の煽り。冷静なレジィも一瞬頭に血が上る。
「何を勝った気で――」
叫び呪力を解放しようとしたレジィの視界の中。
九々等が両手で掌印を結んでいた。両手で『9』を描くような独特の掌印。
「(掌印!? まさか、
レジィの驚愕を嘲笑うように、九々等は言う。
「
九々等の体から呪力が立ち昇り、空間を覆っていく。その呪力に包まれる世界の中、レジィは戦慄に体を震わせる。
「(その
そんな心情とは裏腹に、レジィは自らも素早く掌印を結び、領域対策である『
ぽしゃ、と展開途中の領域が崩れた。
『
「失敗!」
てへぺろしながらそう
「んな――」
予測を外され一瞬動きが止まったレジィの顔面を。
ばき! と虎杖の拳が捉えた。九々等の領域展開に気を取られたレジィの隙を突き、虎杖は彼に接近、強烈な一撃を当てたのだ。
そのまま連撃が繋がる。虎杖の強烈な打撃をほとんどモロに受けながら、レジィの脳内は九々等への悪態で満ちていた。
「(クソ、やられた! あの金髪、未習得の領域を『本気で』展開しようとしやがった! ブラフの為にそこまでやるか普通!?)」
失敗とはいえ空間を覆うほど呪力を放出した以上、消費呪力量は馬鹿にならないハズだ。そんな大技を使える呪力をブラフの為だけに消費した……いや、あるいは「本気で使う気だった」のか。
そんなことを考えていたレジィの思考は、虎杖の容赦ない連撃に止められる。
「(なんて重さ、骨まで軋む! 切り替えろ、今はこっちのガキをどうにかしなければ!)」
咄嗟に頭上にレシートを投げ『再契象』を発動、車を具現化させる。それを落下させて虎杖を潰す、もしくは間合いを取らせようと試み。
「虎杖くん、そのまま!」
脚力:9倍を発動した九々等の飛び蹴りが、落下する車を空中で吹き飛ばした。
領域展開後、肉体に刻まれた術式は焼き切れ一時的に使用が困難となる。だが九々等の領域展開は完成前に失敗――正確に言えば領域に術式を付与する前に崩壊しており、術式の焼き切れも発生していない。
そのまま九々等もレジィとの殴り合いに参加する。
殴り合いではレジィにも分がある鬼神・虎杖。『9倍』された脚力での攻撃力は虎杖すら凌駕する天才・九々等。
たった数秒の攻防で、レジィの意識は明滅した。
――敗色濃厚!
その言葉が脳裏で弾ける。
攻撃の反動で服に付けたレシートが数枚剥がれ落ち、舞う。
「でもそうはならないのが、『俺』って感じだよなぁ」
瞬間、レジィは「とっておき」の使用を決意した。
自然に剥がれ落ちたと偽装した、意図的に放ったレシートが『再契象』で契約を再現する。
まずレジィと虎杖・九々等の間に具現化した車が、出現時の勢いでレジィを後方に吹き飛ばして連撃から逃れる。
次に虎杖と九々等の周囲を、具現化したトラックが壁となって覆い。
彼等の頭上にフッと影が差す。
見上げれば――そこには落下してくる、
「建築面積40坪!! 木造軸組2階建てだ!! 躯体だけでも30tは下らない!! 潰れちまえよ、お"ぉ!?」
『再契象』で具現化された物質はレジィの式神のようなものであり、簡単な命令なら実行できる。虎杖・九々等を覆ったトラックの壁は、回避しようとした両者を足止めすることが出来るだろう。
だが。
「合わせるぜ!」
「分かった!」
九々等の短い言葉を、虎杖も素早く理解し応える。
そのまま虎杖は地を蹴り、上へと飛んだ。
――九々等はこの戦闘中、反転よりも呪力効率の良い術式順転『
一瞬遅れて九々等も9倍された脚力で飛び、空中で虎杖に追いつく。
そして。
虎杖悠仁の拳と九々等八壱の蹴り、同時に放たれたそれが家の屋根をブチ破り、床をブチ抜き、そのまま向こう側まで貫通した。
「な――」
家の隕石を貫いて反対側の空中に飛び出した2人を、地上でレジィは信じられないものを見るような顔で見て。
その手に
「虎杖くん!」
『再契象』を使う前にレジィを倒す為、九々等は空中で虎杖の体をぐいと引き寄せ。
足の裏を合わせて、虎杖の体を下へと打ち出す。
「行ってきな!」
「応!」
そのまま虎杖の体は流星となり。
『再契象』で5つ星旅館「星空亭」2泊3日オイルトリートメント付きの領収書を焼き切り回復しようとしていたレジィの顔面に虎杖の拳が炸裂、その意識を刈り取った。
倒れたレジィが起き上がらないことを確認し、虎杖と九々等はハイタッチする。
「ナイス
「九々等さんも、ナイスアシスト」
陽と陽、根明と根明。
共に戦ったことで、虎杖と九々等は既にかなり親しくなり始めていた。
九々等は黄櫨のときと同じ要領でレジィの手足をアスファルトに埋めて拘束。それを見届けた虎杖は九々等に言う。
「それじゃ、伏黒のとこまで案内してくれ九々等さん」
九々等はその言葉に一瞬頭を捻り。
「……ああ! そういう話だったなそういえば! おっけ、しっかり掴まってなよ」
「へ?」
そのまま虎杖を横抱きにし、跳躍力:9倍を発動。
「それ!」
「うおおおおおおおおお!?」
街の上空を舞いながら驚きに声を上げる虎杖に、笑いながら九々等は言う。
「恵くんは池袋だ、約束の30分から遅れたの謝らないとな!」
■ 陸 ■
ズガ! と伏黒の体が劇場の壁に激突し、ずるりと力なく床に落ちる。
「……気絶したか」
呪力の流れからそう読み取った日車は呟き、トドメを刺すため彼に歩み寄る。
『
伏黒に懸けられた嫌疑は、初回は「
次に伏黒に懸けられたのは「中学時代の傷害罪」。領域展開の呪力消費を嫌った伏黒が「正当防衛」だと主張したが、証拠である防犯カメラの映像は因縁を付けられた伏黒が先に手を出したことを証明しており有罪が確定、『
伏黒は強い。術式があれば勝敗は分からなかった、否、十中八九あちらに軍配が上がるだろう。そう分析していた日車は、リスクを断つため伏黒の息の根を止めようと
バン! と劇場の扉が開く。
そちらを咄嗟に振り向いた日車が見たのは、体格の良い茶髪の少年。
と。
「ギリギリセーフ、かな」
いかなる手段か、一瞬前まで日車の足元に居た伏黒を抱えて劇場の壁際に立つ、尾のように結んだ金髪を揺らす術師――。
「九々等八壱……!」
彼は伏黒を守るように両手で抱えながら、複雑な表情で笑う。
「日車さん、久しぶり……でもないか」
九々等は呪力感知:9倍で日車と伏黒の呪力が劇場内に居るのを感知、全速力で虎杖を抱えて急行し、ギリギリで救援が間に合ったのだった。
彼は劇場入り口に立つ虎杖の方を向くと、そちらに歩きながら言う。
「悪いな虎杖くん。オレはやっぱこの人と戦いたくない。このまま恵くんを連れて外に出るよ」
「分かった。伏黒を頼む」
虎杖は真剣な顔で答え、日車の方へ歩き出す。
選手交代。
ばたん、と劇場の扉が閉まり、中には虎杖と日車だけが残された。
その後の虎杖と日車の戦闘は、虎杖の人間性に内心の葛藤を表面化させた日車が自ら術式を解除し敗北。改心し虎杖に協力、100点を消費し死滅回游に
死滅回游〈
10、
劇場から出て来た日車に、1人の少年が声を掛ける。
「
「
尻尾のように金髪が揺れる。3日前に戦闘したその相手を、日車ははっきりと憶えていた。
彼はこの場を去ろうとする日車の様子を悟り、問う。
「この先の展望、なんかあるんすか?」
「……自首する事にした。死滅回游が終了しても生きていればの話だが」
その答えに九々等は少し面食らい。
「なら――」
「いや、必要ない」
九々等の提案を、日車は遮った。
彼にはその続きがなんとなく分かったのだ。「なら、オレが護衛でもしましょうか」……そんな所だろうか。彼の優しさを3日前殺し合ったときに痛感していた日車は、彼と目を合わせずに言う。
「忘れたのか。俺は人殺しだぞ」
すると九々等は何でもないように返す。
「オレだって好きな人殺しと嫌いな人殺しくらい分けますよ。アンタがどっちか、言うまでも無いでしょ?」
それを。
善と呼ぶのか、それとも危ういと言うのか。今の日車には分からなかった。
ただ、己の醜さを実感したばかりの日車にとって、九々等という人間の在り方が劇薬であることだけは分かった。
「……止めてくれ。おまえも、俺には眩しすぎる」
「そっか」
少し寂しそうに笑って、それで九々等は諦めたようだった。
――劇薬。それは良薬なのか毒薬なのか、それとも麻薬か。何が怖くて、何が嫌で同行を断ったのか。
日車はそれを考えないようにして、九々等と目を合わさずに言う。
「やることが無いなら、虎杖たちに付いてやれ。彼等は助けを必要としていた。おまえなら力になってやれるだろう」
「言われるまでもねぇっすよ。最初からそのつもりだったし」
九々等は少し憮然とした表情になって、その後気が抜けたように笑った。日車も、それにつられるように少しだけ口角を上げた。
背を向け歩き出した日車。その背に九々等は別れの言葉を投げる。
「元気で! 面会、行きますよ」
「……ああ」
日車は振り向かずに短く応えて、そのまま街の景色の中に消えていった。
九々等八壱、原作主人公パーティー臨時加入決定