9×9=   作:龍川芥/タツガワアクタ

8 / 60
×7 間隙

髙羽は作者の実力不足により出せないと判断しました。テレビをあんまり見ないので芸人についての知識が足りないし、彼が良くやる世代ネタっぽいのも出来ないんですよね。これに関しては完全に作者が至らない故なので期待してくれた方には謝る事しか出来ません。……でもこんな人気に、期待されるSSになるなんて思ってなかったんですよ、ホントに。

まあ髙羽の活躍は原作で見れるっぽいんで許してください……(←ネタバレ受動喫煙食らった人)。

 


 

 

 かぁ、と烏が夕焼け空の彼方に飛んでいく。向こうに見える結界、泳者(プレイヤー)を閉じ込めた巨大な鳥籠からあの鳥は出られるのだろうか。

 そんなことを考えていた九々等(くくら)八壱(やいち)に、隣から呆れたような苛立ったような声が掛かる。

 

「……甘いね。どんな発想してたら本気で殺し合った術師を生きて返そうとするワケ? 君の時代ってそんなに人命が重いの? それとも『平和ボケ』ってヤツかな?」

「イオリンも言ってたなーソレ」

「(いおりん……黄櫨のこと、だよな?)」

 

 顔を腫らしたレジィ・スターは、アスファルトの拘束から解放され道路に座り込んでいた。立ち上がる体力も無いが、命を取られても居ない。

 彼を解放した張本人――九々等はちょっと拗ねたように言葉を返す。

 

「別にさー。オレだって『ああ今バカなことやってんな―』って思ってんだぜ。でもしょうがないっしょ、こっちのが気持ち良いって思っちゃったんだから」

 

 青臭い少年の顔。その甘さにレジィが呪力の残量を確認するのと、九々等が彼を睨むのは同時だった。

 

「ああでも、次(ポイント)増えてるの見たら容赦なく殺し行くから。それは覚悟しといてね」

 

 その顔は一瞬で猛獣のそれに変わっていた。

 本気。歴戦の勘でそう察し。

 レジィはほぼからっけつだった呪力を霧散させ、そのまま道路に倒れ込む。くたびれたサラリーマンのような動きだった。

 

 暫く両者は何も言わずに空を眺め。

 沈黙をレジィが破った。

 

「……やるよ、点」

「え、マジ!? イイの!?」

「『点が欲しい』って顔に大文字で書いてあったよ君」

 

 九々等はこれでもかなり葛藤していたのだ。レジィたちのことは別に殺すほど憎んでないし嫌ってない、だからできれば殺したくない。ただ虎杖たちの仲間になった以上彼らの目的達成のために点は欲しい……。その葛藤が思いっきり顔に出ていた。なんならさっきからソワソワしていて鬱陶しかった。

 

 ポイント譲渡の総則(ルール)を気絶から復活した時に知ったレジィは、コガネに命令して1点残した40点を九々等に譲渡した。

 

「俺の時代の流儀だ。勝者が全部持っていく。ま、俺は死んでもびた一文渡さない派……だと思ってたんだけどね」

 

 レジィは重い動作で立ち上がると、傷が痛む体に顔を顰めながらも伸びをする。

 

「負けた時点で俺は死んだ。これからは本格的に『野次馬』として、オマケの人生楽しむさ」

「そっか。イオリンにもよろしくな」

「……やっぱ俺、君のこと嫌いだわ」

「あっそ」

 

 レジィは痛む体に鞭打って歩き出した。結界で見えない夕日の方へ。

 そんな彼の背中に九々等は手を振りながら叫ぶ。

 

「『オマケの人生』が嫌になったら最初にオレを殺しに来いよ! 不意打ちだろうが何だろうがいつでも相手してやるから!」

「ヤだよ。二度とオマエとはやりたくないね、クソガキ」

 

 そう言って中指を立て、レジィは街の景色に消えた。

 残された九々等は、己の手が今日も血に濡れなかったことを喜んで、虎杖たちと合流するためにその場を後にした。

 

 

 


 九々等  得点 079 変更 00回

   八壱  滞留結界 東京第1


 

 

 

■漆■

 

 

 

 11月13日、午後18時。東京第1結界(コロニー)内、放棄された高級ホテル・1階メインホールにて。

 

 2人の少年が呪力を解放して拳を交わしていた。

 片方は茶髪で体格の良い、高専の制服に身を包んだ少年――虎杖(いたどり)悠仁(ゆうじ)

 もう片方は長い金髪を後ろで一つに纏めた細身の少年――九々等(くくら)八壱(やいち)

 

 九々等が飛び上がり、虎杖に空中での二段蹴りを放つ。それを片腕で防御した虎杖の右フックが九々等の頬を掠めた。

 次いで虎杖は足払いを選択。身を沈めて回転しながら地を削る蹴りは、九々等が飛び上がったことで躱された。

 

「そら!」

 

 九々等が空中で鋭い飛び蹴りを虎杖の顔面に放ち――虎杖の手のひらが、その足裏を受け止めた。

 

「うっそォ!」

 

 そのまま物凄い握力で九々等の足を掴んだ虎杖は、足を起点にその体を振り回し床にたたきつけた。

 

「ぐ――」

 

 背中を貫く衝撃。咄嗟に起き上がろうとした九々等の顔面の前に、虎杖の拳が迫り。

 

 ぴた、と寸止めされた拳を見て、九々等は己の敗北を悟った。

 

「クッソー、また負けかー!」

「これで俺の3連勝目だな」

 

 笑う虎杖は、倒れたままの九々等の横に座る。そこに敵意のようなものは見られなった。

 彼らがやっていたのは『術式禁止スパー』。九々等が提案した、パーティーの頭脳伏黒(ふしぐろ)(めぐみ)が目覚めるまでの暇つぶし――もとい修行である。

 ちなみに今の所、戦績はかなり虎杖の圧勝気味だった。

 

(いて)て……やるなぁ虎杖。流石に術式無しじゃキビシーぜ」

「でも九々等、最近術師になったばっかだろ? 俺前に一級術師(東堂)と戦ったことあるけど全然通用するレベルだと思うぜ」

「イッキュウ術師? とんちの術式でも持ってんの?」

「あー、知らねえのか。まず術師には等級があって――」

 

 九々等、虎杖と呼び捨てでかなり仲良くなった両者。出会ってから24時間とちょっとしか経っていない2人だったが、今やすっかり対等な友人だった。

 そのままホールの床に座っての雑談が開始されるほどには。

 

「九々等は何のスポーツやってたの?」

 

 虎杖から見て、九々等の素の身体能力はかなり高かった……流石に虎杖ほどではないが。それでも術師をやるうえで重要な「体が出来ている」という要素を十分満たすレベルの身体能力だ。

 どうやって鍛えたのか、という問いに九々等は答える。

 

「高校はサッカー部。これでも結構凄かったんだぜ、全国行ったし。中学より前は陸上のスプリントとハードルしながら野球部とかバスケ部の助っ人してたかな。あと偶にMMAのジム通ってる友達に付いて行ってスパーして遊んだりしてた」

 

 九々等は結構なスポーツエリートだった。本人からすれば好きなことを気の赴くままやっていただけなのだが、それが結果として術師としての戦闘力に繋がっていた。

 今度は九々等が虎杖に問い返す。

 

「虎杖は? 部活とか何やってた?」

「オカルト研究部」

「文化部!? それでその身体能力とか、何食ったらそうなんだよ!?」

「……宿儺の指、とか?」

「スクナ? 何それ、虎杖んとこの郷土料理?」

 

 虎杖が一瞬説明しようか迷った時だった。

 

 ホールに3人目の声が響く。

 

「2人とも。ちょっといいですか」

 

 それは金髪の少女のもの。その背には羽が生え、その頭の上には天使の輪が浮かんでいる。

 正しく「天使」の格好をそのまま形にしたような少女、ホールに下りてきた来栖(くるす)(はな)の方を振り向き九々等は手を上げる。

 

「お。来栖ちゃんもやる? 術式禁止スパー」

「やりません。そうじゃなくて……めぐ、じゃない伏黒さんの目が覚めそうです。食料品を補充しておきたいんですけど、誰が『補給役』をやりますか?」

 

 彼女は九々等・虎杖がスパーをする間、伏黒の護衛役をしてくれていた。そんな彼女からの報告にホッと胸を撫で下ろしつつ、九々等は再び挙手する。

 

「オレ行くよー。そろそろ夜、呪霊が動き出す時間だ。このメンツなら多分オレが一番索敵範囲広いし、移動速度も呪霊祓う速度も(多分)一番だしな」

 

 見つけた呪霊は祓う、と言外に主張する彼の意思は、虎杖にとってありがたかった。彼は伏黒のために食料を集めつつ、巻き込まれた誰か――虎杖では手の届かない彼らのために呪霊を出来るだけ祓うと言ってくれている。

 

「ありがとう、九々等」

「良いってことよ。オレより虎杖が居た方が目覚めた恵くんも安心だろ」

 

 そんな訳で九々等は立ち上がった。その足で暗くなった街に出発する……前に、来栖に言葉を投げる。

 

「来栖ちゃんも。色々頑張りなよ~」

「……な、何のことデスカっ?」

「あー、いややっぱナンデモナイヨ~」

 

 惚れた腫れたが恥ずかしいお年頃か、と九々等は笑い、彼女の伏黒への気持ちには気付かないフリをすることにした。

 

 

 そのまま九々等はホテルを出、見つけた呪霊を片っ端から祓いながら食料や水を入手。

 30分後に帰って来た時には、伏黒が目を覚ましていた後だった。

 

 

「おはよー恵くん。お腹空いてるかい?」

「……九々等さん」

「丸一日ぶっ倒れてたんだ。消化に良いものと食べ応えがあるもの、どっちも持って来たけど。それと水」

「……頂きます」

 

 食事とシャワーを終えた伏黒は、昨日の夜と同じくバスローブ着てキャッキャッしてる馬鹿2人を座らせて話を聞く。

 

「昨日、虎杖が日車さんを説得して『(ポイント)譲渡ルール』を追加。ぶっ倒れた恵くんを運んでるところに来栖ちゃんと合流、来栖ちゃんにこのホテルを教えてもらい、恵くんを運び込んで今に至る、ってカンジ」

「そんなことより、伏黒!」

 

 虎杖が騒ぐ。それもそのはず。

 (はかり)乙骨(おっこつ)九々等(くくら)来栖(くるす)の点を合わせてノルマの400点を達成したのだ。

 

「助かるぞ、津美紀(つみき)の姉ちゃん!」

「聞いたぜ恵くん。巻き込まれたお姉ちゃんの為に頑張ってたんだって? 良い弟過ぎてオレ感動しちまったよ~! オレの点なんか全部使って良いぞ、全部!」

「譲渡用に1点は残さないとダメですけどね」

 

 伏黒はとりあえず津美紀離脱の目途が立ったことで安心し大きく息を吐いた。

 ただ来栖――天使について気になる事は山ほどある。

 彼の質問の対象は本格的に来栖……と彼女に宿った「天使」に移り、九々等は専ら聞き専となった。

 

「(あんまよく分かってないけど……。

 ①虎杖たちは『ゴジョウセンセイ』という最強呪術師を復活させたい

 ②そのためには来栖=天使の術式が必要

 ③天使は『堕天』って泳者(プレイヤー)を倒したら協力してくれる

 ってカンジかな?)」

 

 と、蚊帳の外だった会話が急に九々等に飛んで来た。

 

「それで。九々等さんは協力者、って考えて良いんですよね」

 

 来栖……いや天使との問答がひと段落したからだろう。

 九々等は特に考えることなく素直に答える。

 

「当たり前じゃん。オレらもう友達(ダチ)仲間(ツレ)っしょ? そう思ってんのオレだけ?」

 

 いえーい、と虎杖と拳を合わせる九々等に、伏黒は頭を下げた。

 

「ありがとうございます」

「良いよ良いよ。『堕天』討伐も協力するぜ? なにせ索敵出来るからな、オレは!」

 

 その言葉に虎杖と伏黒が微妙な顔になったのを、九々等は「?」と首を傾げながら見ていた。

 

 

 

■漆■

 

 

 

 11月14日、正午。

 ホテルの屋上で見張りをしていた伏黒は、食料を持って来た九々等と共に食事をし……食べ終わった後、次のように乞われた。

 

「恵くん、結界術教えてくれない? オレも領域展開したいんだけど、シン・陰の『簡易領域』だけじゃ感覚が掴めなくてさ」

「……俺の領域のことは誰から」

「ん? 虎杖」

「(アイツ……! 人の切り札をペラペラ喋りやがって!)」

 

 伏黒は頭を押さえた。なんか最近こんな風に怒ってばっかりな気がする。ていうかこの人、日車が領域使える事伝え忘れてたよな。そのせいで死にかけたんだが。

 そんな怒りを飲み込んで、大人な伏黒は冷静に答える。

 

「……俺の領域は不完全です。結界術も高専でやる座学レベルの指導しか出来ませんよ」

「充分充分! 早速――」

「分かりました。じゃあ代わりに反転術式教えてください」

「? 使えなかったの? ああ一年だからまだ習ってないんか」

「(使える奴の方が珍しいんだよ!)」

 

 妖怪センスだけ男に内心で悪態を吐きつつ、伏黒は溜息を吐いた。なんか本当に五条先生を相手にしている気分だ。

 

 ちなみに九々等が反転術式を使えるのは虎杖から聞いた。虎杖は九々等が自分で言ってたのを聞いたらしい。虎杖は仲間と判定すると躊躇なく情報を漏らすのが欠点であり長所でもある。敵になった時のことを考えるとなるべく手の内は隠しておきたいが、いざという時に味方の切り札が分かるのと分からないのとでは連携に大きく響くからだ。

 

 そんな虎杖への複雑な感情を心の底の方に押し込み、伏黒は考える。反転術式を使えればかなり戦闘の幅が広がる筈だと。

 そう考える伏黒に、九々等は笑ってOKを出した。

 

「オレで良ければいくらでも。代わりに結界術、教えてくれよ!」

「……はい」

 

 その後3時間ほどの訓練で、九々等は簡単な「帳」くらいなら下せるようになり、伏黒は反転術式の「は」の字も習得出来なかった。

 伏黒はその3時間で悟った。コイツは五条悟と同じ、人にモノを教えるのには全く向かないタイプだという事を。

 

 

 修行後。屋上から撤収しようとしていた九々等の背に、伏黒が声を掛ける。

 怒りの声では無く、とても真剣な声で。

 

「九々等さん」

「?」

「後でちょっと良いですか。来栖、いや『天使』が居ない間に話しておきたい事があります」

「???」

 

 

 

■漆■

 

 

 

 同日11月14日深夜。

 

「妙だ。凄い数の人間が結界(コロニー)に侵入している」

 

 『天使』の言葉で、全員そのことに気が付いた。

 コガネによると、800人を超える大人数がこの10分で結界内に侵入したらしい。

 

「おそらく羂索(けんじゃく)の目的は、呪霊による非術師の大量虐殺だ。死滅回游の泳者(プレイヤー)の呪力によって結界(コロニー)が満ち切らなかったときの保険だな」

「だとしても1000人単位の一般人がどうして結界(コロニー)に押し寄せる!?」

 

 階段を下りながら語る彼らの中、九々等は言う。

 

「……多分軍人だ。それも日本人じゃない」

「なんで分かる!?」

()()()。銃の金属音にブーツの音、そんで英語の報告。FPSゲームで聞いたことあるやつばっかだ。ホテルの中に入って来てるぜ」

 

 九々等は呪力感知力:9倍で侵入者の素性が分からないと分かると、即座に術式対象を聴力:9倍に切り替え情報を収集した。

 

「先行ってこようか?」

「……お願いします!」

「了解!」

 

 九々等は速度:9倍を発動、9倍聴力で割り出した兵士たちの前に手を上げて出現する。

 

「ハローソルジャーズ。ワッツリーゾンカミングコロニー、オッケー? (※やあ兵士さんたち。なんで結界(コロニー)の中に入って来たのか教えてくれますか? と言ったつもり)」

 

 ゴミみたいな英語で話しかけ――急に現れた術師に、兵士たちは驚きながらも銃を向けた。

 

「Wait what...Shoot him!!」

 

 乱射されるアサルトライフル。

 

「おわあ!?」

 

 九々等は咄嗟に空中に飛んで躱しながら考える。

 

「(なんか失礼しちゃったか? もっとちゃんと英語の授業受けとけばよかったぜ……。まあ冗談は置いといて、どうしよう。殴ると最悪殺しちゃうしな……)」

 

 悩んだ末に、九々等は兵士たちの中心へ着地し。

 

「(声量:9倍――) わ!!

 

 とんでもない声量で兵士たちの動きを止め。

 

 速度:9倍握力:9倍を発動。

 そのまま兵士たちの持つ銃の銃口をひとつひとつ高速で握りつぶした。

 

「モンハン直伝、音爆弾戦法。悪くないんじゃない?」

 

 そうして銃を封じた九々等は、兵士たちに言う。

 

「アイムノットウェルカムファイト。アイラブピースフル。トーキングウィズミ―プリーズ、オーケー? (※オレは戦う気がありません。平和的に話し合いで解決しましょう。と言ったつもり)」

 

 しかし兵士たちは銃を捨て、腰に下げた拳銃やナイフを取り出し襲い掛かって来た。

 そう。九々等の「音爆弾」で耳がキーンとして何も聞こえていないのである……仮に聞こえていたとしても伝わるかは極めて怪しいが。

 

「あ"」

 

 九々等が己のミスを悟り頭を抱えるのと、バカでかい声を目印に虎杖たちが合流するのは同時だった。

 

 

 ……虎杖たち兵士制圧中……。

 

 

 制圧した米軍兵士たちに交じっていた日本人(日系人?)から情報を聞き出すと、彼等は呪力をエネルギー源として研究する目的で術師の拉致を任務としていたことが分かった。

 ただそれは羂索の方便、呪霊の餌になる一般人を集めるための都合の良い理由(ウソ)である、というのが虎杖チームの最終見解だった。

 

 そこから少しチームは方針で揉めた。

 

 米兵を助けるため呪霊を祓いに行こうとする虎杖。

 結界(コロニー)に呪力が満ちるのは危険だと虎杖に追従する伏黒。

 既にこの結界(コロニー)には呪力が満ちているため、それは無駄なリスクを負うだけだと主張する『天使』。

 

 色々あってちょっと虎杖と来栖が険悪な雰囲気になった所で、蚊帳の外だった九々等は軽い口調で手を上げた。

 

「じゃ、オレは先に行ってるぜ」

 

 瞬間、3つの白い目が向けられる。

 

「……話の流れ分かってますか?」

「信用無いなオレ!?」

 

 すっかり伏黒からの信頼が無くなった九々等は、『天使』を含めたその場の全員に向けて言う。

 

「何か色々あるっぽいけど。何かをやるのに『そうしたいから』以上の理由は要らないでしょ。違う?」

 

 それを言い出したらお終いだろ……という伏黒の視線に気付かず、九々等は続けた。

 

「それに、どっちにしろオレの術式なら1人で動く方が早いしね。じゃ、夜明けにこのホテルで集合ってことで!」

 

 9倍速で夜の街に飛び出した九々等を、呆気にとられながら見送った3人。

 彼が消えていった方向を見ながら虎杖がぽつりとつぶやく。

 

「……なんか九々等って五条先生みたいだよな」

「あれは『自分勝手』って言うんだぞ虎杖」

「じゃあ合ってるじゃん」

 

 確かに……と『自分勝手』の代名詞みたいなバカ目隠しの顔を思い出しながら呟く伏黒であった。

 

 

 

■漆■

 

 

 

 九々等は呪力感知力:9倍跳躍力:9倍で夜の街を駆ける。

 そこは阿鼻叫喚の地獄だった。

 

 九々等はこれまで結界(コロニー)内で4回夜を過ごしたが、それとは比べ物にならない呪霊が街の至る所で米兵を襲っている。悲鳴と銃声で街はパニック状態だ。

 

「(この量。今まで非活性状態だった呪霊も動き出したのか。虎杖たちが言ってた『ケンジャク』ってやつの意思を感じるなぁ)」

 

 言いながら、近くで米兵を襲っていた呪霊を蹴り殺して祓う。

 ざふ、と呪霊が消滅するのを確認してから次に行こうとすると……助けた米兵に縋り付かれた。

 

「Jesus! You are the messiah!! Thank you so much, so much!!」

「あーオーケーオーケー、ユアウェルカム。アイムヘルプユアフレンド。シーユーオーケー? (※どういたしまして。オレは君の仲間を助けに行かないとダメなので、ごめんあそばせ。と言ったつもり)」

 

 あんま内容を分かってない感謝の言葉に適当英語で返しつつ、振り払い次へ向かう。

 

 殴る。祓う。

 蹴る。祓う。

 跳ぶ。祓う。

 

 超スピードで呪霊を祓いながら、しかし九々等の中には不完全燃焼感が燻っていた。

 

「(手応えが無い……黒閃も出せん)」

 

 黒閃発動から2日。自分が停滞している実感が九々等にはあった。

 あれから一度呪力操作技術:9倍を試したことがある。そしたら呪力が一瞬で尽きた。9倍した技術でも1分持たなかった。

 恐らく俺の実力が上がったから、それを9倍するコストも上がったのだろう。そのときの感覚を憶えさらに技術が向上した今の俺は、おそらく呪力操作技術:9倍を使った瞬間呪力切れになって気絶するだろう、と九々等は確信していた。旨いだけの話は無いという事だ。

 

「もうちょっとだと思うんだけどなぁ……」

 

 領域展開。そして練習中の『新技』。そこまであと一歩、届かない。

 

 強敵とは言えない呪霊たちを祓いながら、九々等は強さに渇く心を人助けの自己満足で慰め続けた。

 

 


 

九々等の今話内の得点推移は

5→黄櫨(+34)で39→レジィ(+40)で79→伏黒(-78)で1

です

 

 

思った以上に人気が出たので

ペイント3Dとマウスで頑張って九々等の見た目のイメージを形にしました

絵は下手なので注意、出来れば遠目で見て下さい

 

【挿絵表示】

 

 

24/2/9更新

ガルダ 様よりオリ主の挿絵を頂きました!

こちらは文句なしに素敵なのでどうか見て下さい。

 

【挿絵表示】

 

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