9×9=   作:龍川芥/タツガワアクタ

9 / 60
×8 戴天

コメントであったので

髙羽が居るのかいないのか、合流してないだけか何なら東京第2の方で参戦したのか……その解釈はご想像にお任せします。ただこのSSには本格的に彼が出てくることはない(作者の実力不足で出せない・描写できない)、ということです。ご了承ください。

 


 

 

両面宿儺(りょうめんすくな)?」

 

 初めて耳にしたその奇妙な名前を、九々等(くくら)八壱(やいち)は復唱した。

 拠点とした高級ホテルの一室にて。来栖(くるす)(はな)に――正確には彼女に宿った『天使』に聞かれないように、伏黒(ふしぐろ)(めぐみ)は2人きりの部屋で声量を抑えながら言う。

 仲間である虎杖(いたどり)悠仁(ゆうじ)について。

 

「はい。虎杖の中に封じられた『呪いの王』です」

「あれだ、ナルトと九尾みたいな感じ?」

「その100倍険悪で邪悪な感じです。それと、宿儺(すくな)は天使の言う『堕天』と同一です」

「ナルホド。それで来栖ちゃんが居ない時を待ったのね。……? でも虎杖の中に居るのならさ、それを伝えて天使に()()だけ消してもらうのは出来ないん?」

「おそらくですが、中身の宿儺だけを殺すのは天使の術式でも無理です。……ただ取り込んだ呪物は、器が死ねば道連れで消える。天使が虎杖の中に宿儺が居ることを知れば、宿儺を確実に消す為に虎杖ごと殺しかねない」

「へぇ。虎杖も大変だなー」

 

 その呑気な声に、事の深刻さ伝わってるか? と伏黒は一瞬思ったが、そういえば呪術界のこと何も知らないなこの人、と思い直して言葉を続けた。

 

「虎杖曰く、その宿儺が何か企んでるらしいんです。奴は普段虎杖が『檻』になって出て来れないんですが、虎杖が死にかけると鎖が緩んで外に出てくる。前に出たときは渋谷の一帯を更地にしました」

「……!」

 

 九々等の表情が目に見えて真剣になった。

 「東京・渋谷で謎の大災害発生」。

 「死傷者数不明」「東京都内は立ち入り禁止」。

 その元凶が宿儺だと悟ったのだ。

 東京を大混乱に陥れた巨悪。それが虎杖の内に巣食っているという事態の深刻さを、九々等はようやく把握した。

 そんな彼に伏黒は頭を下げ、乞う。

 

「虎杖が宿儺に変わったら、すぐに奴を虎杖ごと殺してください。九々等さんならそれが可能だと、俺も虎杖も判断しました」

「……!」

 

 ……九々等はまだ、人を殺したことが無い。殺人を忌避する彼の性分を伏黒も虎杖も知っていた。その上で頼んだ、無理を押して。

 難しい顔をする九々等を説得するように、伏黒は言葉を連ねた。

 

「それに、宿儺を殺した後に虎杖を復活させられる可能性はゼロじゃない。だからお願いします、九々等さん。宿儺が完全に復活すれば、先の渋谷があらゆる場所で再現される。それは虎杖にとっても絶対に避けたい事です」

 

 九々等はふぅ、と息を吐き。

 

「……分かった。でも一応本人に聞いて良い?」

 

 部屋の扉の方を振り向いた。

 扉の裏に居た虎杖が部屋に入ってくる。

 

 虎杖は部屋の扉の前に立ち、見張りをしながら中の会話を聞いていたのだ。

 

「虎杖」

 

 名前以上の何かを言われる前に、九々等の正面に立った虎杖は真剣な表情で言う。

 

「頼む、九々等。宿儺から伏黒を、皆を守ってくれ」

「……本気、か」

 

 その表情から虎杖の覚悟を感じ取った九々等は、自らも覚悟を決める。

 

「分かった。虎杖が宿儺になったら、とりあえず全力で殺しに行く」

 

 ――もしものときは虎杖を殺す覚悟を。

 そんな九々等の真剣さを虎杖は受け取り、すっと頭を下げた。

 

「ありがとう、九々等」

「なんかスッゲー受け取りづらいわその感謝!」

 

 複雑な表情になった九々等は虎杖に頭を上げさせ、笑って言う。

 

「その代わり。殺した後は生き返って来いよ虎杖。なんかあるんだろ」

「……ああ。分かった」

 

 虎杖が自死すら覚悟していることを、そして宿儺が1%でも復活する可能性があるなら生き返りを選ばないだろうことを、そのやりとりの外に居た伏黒だけが悟っていた。

 

 

 

■捌■

 

 

 

 14日深夜・米軍突入から、九々等の生活ルーティンは多忙を極めていた。

 夜中は呪霊を狩り、昼間は軍や術師の動向を見張る。隙を見て虎杖と修行したり、伏黒に結界術を教わったり、来栖の恋路を冷やかしもとい応援したり。たまに街に出て困っている人が居ないかを探したりもした。

 それを可能としたのは彼の術式順転『積』による睡眠効率:9倍。1時間未満の睡眠で丸一日活動出来る九々等のここ2日の貢献度は、4人の中で1番と言っても過言では無かった。

 

 そんな日々を乗り越え、16日、正午。

 ビルの上で4人は『連絡役』を迎えていた。

 『連絡役』の姿をまじまじと見た九々等が、虎杖をちょいちょいと端に呼び寄せて肩を組み、小さな声で尋ねる。

 

「なあ虎杖……あの爆イケのお姉さんは誰よ?」

「2年の禪院(ぜんいん)真希(まき)先輩。呪力が完全に無くなったから結界を素通りできるんだって」

「1コ下か~。彼氏居るかな?」

「知らんけど、乙骨先輩と仲良いって伏黒が」

「マジか~!」

 

 ワンチャンあると思う? 知らねーよ、と肩を組み合ってひそひそ話す2人。天与呪縛のフィジカルギフテッドが強化した聴力でその会話を完璧に聴いていた真希は白い目でそちらを見ながら――正確には見覚えのない九々等の背中を見ながら伏黒に問う。

 

「恵、あのバカは誰だ?」

「……一応現地協力者です」

「強いのか?」

「……覚醒型ですが、強さは保証します。恐らく乙骨先輩クラスです」

「人は見かけによらねえな」

 

 そんな茶番を挟みつつ、真希は外の状況を4人に伝えた。

 

 特級術師・九十九(つくも)由基(ゆき)脹相(ちょうそう)(やぶ)れ、天元が羂索(けんじゃく)()られたこと。

 だが五条(ごじょう)(さとる)復活に必要な獄門疆(ごくもんきょう)「裏」は無事な事。

 

 ちなみに九々等はこの時点で結構置いてきぼりだった。

 次いで九々等除く4人は総則(ルール)追加について会議を始める。

 

 予め立てていた方針では、必要な追加総則(ルール)は4つ。

 ①(ポイント)の受け渡し

 ②結界(コロニー)の出入り

 ③結界(コロニー)内外での通信

 ④死滅回游からの離脱

 

 問題は②と③。死滅回游の総則(ルール)では、最初からこのふたつを禁止してはいない。故にこれは「死滅回游の総則(ルール)」ではなく「結界の法則(ルール)」。「結界の法則(ルール)」を「死滅回游の総則(ルール)」を追加することで無効化できるかは不明なため、それについての総則(ルール)追加はリスクが高い。

 また③は真希と憂憂(ういうい)が連携することである程度無視できると判断した。

 

 つまり今の状況は、

 ①(ポイント)の受け渡し [達成]

 ②結界(コロニー)の出入り [真希・来栖(天使)のみだが可能]

 ③結界(コロニー)内外での通信 [ある程度解決、後回しでいい]

 ④死滅回游からの離脱

 という感じだ。

 

 つまり優先すべき追加総則(ルール)は「④死滅回游からの離脱」となった。

 伏黒が100点を消費しコガネに総則(ルール)追加を交渉。多少の誤算はあったものの、100点を使った死滅回游からの離脱ルールが追加された。

 

 死滅回游〈総則(ルール)

 11、泳者(プレイヤー)は身代わりとして新規泳者(プレイヤー)結界(コロニー)外から招き、100点を消費することで死滅回游から離脱できる。

 

「これで遠隔で100点渡せば伏黒(姉)(かっこあね)は死滅回游一抜けかー」

「いいえ、津美紀(つみき)を一度結界内に呼んでから、です。総則(ルール)1、2に抵触する可能性があります」

 

 1、泳者(プレイヤー)は術式覚醒後、十九日以内に任意の結界(コロニー)にて死滅回游への参加を宣誓しなければならない。

 2、前項に違反した泳者(プレイヤー)からは術式を剥奪する。

 

 つまり一度参加を宣誓して結界内に入らないと、死滅回游から離脱しても十九日後(あと5日くらい)に術式を剥されて死ぬかもしれない、という事らしい。

 

「でもほぼそんなもんだろ? 禪院(ぜんいん)ちゃんも」

「苗字で呼ぶな」

「オッケー、真希ちゃんも」

「その呼び方も止めろ(直哉のクソを思い出す)」

「……真希さんもクッソ強そうだし、このメンツなら津美紀ちゃんに指一本触れさせない鉄壁の布陣を引けるでしょ。津美紀ちゃんが結界内に留まるだろう数分程度、結界(コロニー)じゅうの術師が襲ってきても耐えられるレベル」

 

 それは九々等らしい楽観的な意見だったが、正しい見立てなのも確かだった。

 

「……そうですね」

「そんな不安な顔すんなって! そんなんじゃお姉ちゃんも心配しちゃうぜ?」

 

 九々等の明るさにあてられて、伏黒もようやく少しだけ笑った。その笑顔は虎杖、来栖にも伝播し、場に柔らかい空気が流れる。

 

 ――それから3時間後、希望が絶望に変わることをまだ誰も知らなかった。

 

 

 

■捌■

 

 

 

「コガネ、ルール追加。結界(コロニー)を自由に出入りできるようにしてちょうだい」

『承認されました! 総則(ルール)12――』

 

 死滅回游〈総則(ルール)

 12、泳者(プレイヤー)結界(コロニー)を自由に出入りすることができる。

 

 今しがたその総則(ルール)を追加した伏黒(ふしぐろ)津美紀(つみき)を、その場の誰もが呆然と見つめる。

 否――彼女がもう「伏黒津美紀」ではないことを、弟の恵だけが理解していた。

 

「オマエ……誰だ!?」

「誰だ……? ですって? あなたのお姉さんよ!! 伏黒(ふしぐろ)(めぐみ)!! なんてね♡」

 

 津美紀が「覚醒型」ではなく「受肉型」だったのだと悟り絶望する伏黒。取り残された虎杖、来栖、九々等を置いて事態は進む。

 

「私は(よろず)。昔の連中にならまだ通じるかもね」

 

 津美紀――否、(よろず)は術式を発動、虫のような羽根を背中に()()する。

 

「千年ぶりの戦いよ。相手も場所も好きに選びたいわ。初めてはやっぱり宿儺」

 

 そのまま彼女は、全てを置き去りにしたまま羽根を羽ばたかせ屋上から飛び去った。

 

「じゃあね、待ってるわよ」

 

 最も再起動が早かったのは九々等だった。

 

「(何が何だか分らんが――)追う!」

 

 元々頭を使うタイプではない彼は、咄嗟に跳躍力:9倍脚力:9倍を発動、飛翔する(よろず)を追って空中に飛び出す。

 

「私たちも――」

 

 それに来栖・虎杖が追従しようとした瞬間。

 九々等が地から足を放し、飛び出した瞬間だった。

 

「――契闊(けいかつ)

 

 虎杖の内から絶望が顕現する――。

 

 

 ――それを、空中の九々等は背中で感じ取った。

 

「!? 何だ!?」

 

 九々等は空中で体の軌道を変えるすべを持たない。故にもう100mは離れたビルの屋上に即座に戻ることは出来ない。

 それでも、事態の異常さだけは悟っていた。

 

「(とんでもなく邪悪な呪力! ここまで離れてるのに肌を刺されるみてーだ!)」

 

 だが九々等が向くのは前。既に間近に迫った(よろず)の背中に叫ぶ。

 

「アンタ、なんか知ってんな!?」

 

 それはただの直感だったが、間違っても居なかった。

 異常事態の解決の糸口を(よろず)に見た九々等は、彼女の背に追いすがり。

 

「お生憎様。心に決めた人が居るの」

 

 (よろず)が空中で振り向く。その腕は虫と人間の中間のような不気味な、けれどどちらよりもはるかに大きい「肉の鎧」を纏っていて。

 その一撃が、空中で軌道を変えられない九々等の体をモロに捉える。

 

「ぐ!」

 

 そのまま踏ん張る地面を持たない九々等は、高速で後方に吹き飛んだ。

 ガシャン! とビルの壁面に背中から激突する。

 

「(なんて力! 防御力:9倍でも芯に響く!)」

 

 腕の痺れを抑えながら、九々等は一瞬迷う。

 (よろず)を追うべきか、虎杖たちの状況を確認しに行くべきか。

 

 そのとき、先程まで居たビルの上から何かが物凄い勢いで吹き飛んだ。

 ビルをぶち抜き、「何か」が彼方に弾き飛ばされる。

 

「(……やっぱあっちだ! あそこで何が起こってんだ全く!)」

 

 九々等が跳躍を決意した瞬間。

 彼の聴覚は、聴こえるハズの無い声を捉えた気がした。

 

「……いつの時代も、どこからともなく虫は湧く」

 

 ぞわ、と言いようもない程冷たい殺気が背筋を貫き。

 

(ぬえ)

 

 ――ビルの上に、巨大な人面の鳥が出現した。

 規模も細部もまるで違うが、ソレは紛れも無く。

 

「(!? アレは恵くんの――)」

 

 九々等の目を光が覆い。

 

 雷鳴が轟き、落雷が地上に降り注いだ。

 

「うおおおおおおお!?」

 

 咄嗟に壁をぶち抜き建物内のオフィスに避難することで落雷を躱す九々等。

 

「(今のは敵味方の判断すら出来ない恵くんの全力攻撃なのか!? それとも――)」

 

 無意識にそこで思考を切り、反対側の壁を蹴りでぶち抜いて落雷の止んだ外に出る。

 

 フッ、と周囲が暗くなり。

 一瞬後に、空から光の柱が落ちて来た。

 

「(天使の術式、あんな出力は初めて見た――まさか、まさか!)」

 

 それが突き立っているのは、やはり先程まで居たビルの屋上。

 ……天使が殺したがっていたのは誰だったか。そんな思考が頭をよぎり、再び無意識で結論を堰き止めながら九々等は走った。

 

 光が止み、一瞬「終わったのか」と思いかけ。

 

 九々等は見た。

 血を吹き出す来栖が、ビルの屋上から力なく落下してくるのを。

 

「来栖ちゃん!」

 

 脚力:9倍速度:9倍を発動、ギリギリの所で追い付き、来栖を空中で受け止める。

 背が低めの建物の屋上に着地。来栖の容態は――右腕が、無い。

 血が流れ続ける傷口を見ながら、九々等は余裕なく叫ぶ。

 

「おい『天使』、起きろ! 来栖ちゃんに反転術式使え!」

 

 九々等は反転術式を習得しているものの、それを他人にアウトプットすることは出来ない。寧ろできる方が異端と言えた。故に来栖を助けるには、彼女の中の『天使』に頼るしかない。

 

「天使、早く!」

 

 再び叫ぶと、来栖の頬に天使の口が出現した。

 

「もうやっている! だが今は私たちの生死について論じている場合ではない!」

 

 その口はかつてない程切羽詰まった様子で九々等に叫び返す。

 

「――伏黒恵は『堕天』の器となった! 奴が居るだけで何百何千と人が死ぬ!」

 

 ぴしり、と九々等の表情が固まった。

 それに気付かず、余裕の無い天使は続ける。

 

「可能性があるとすれば君だけだ、九々等八壱! 今奴を殺し止められる者が居るなら、それは()器の彼でも天与呪縛の少女でもなく――」

 

 天使の口が止まった。九々等から発せられる異様な空気を感じ取ったからだった。

 九々等は来栖を抱えたまま立ち上がる。

 

「……分かった。とりあえず来栖ちゃんを安全そうな場所にだけ連れていく。それで良いな」

「そんな暇は……いや、そうか。そうだな、頼む」

 

 九々等の判断は意識してか無意識か、余りにも冷静で正しかった。

 

 ――もし自分が失敗すれば、残る宿儺討伐の可能性は五条悟に託すしかない。だが天使=来栖が死ねば五条復活の鍵は失われる。

 

 天使は戦慄し、同時に頼もしさを憶えた。

 この一瞬で、九々等は最も正しい答えを出した。彼ならば、あるいは本当に……そんな希望が持てたからだ。

 

 だが九々等の中では……ただ同じ言葉が回っていた。

 

『虎杖が宿儺に変わったら、すぐに奴を虎杖ごと殺してください』

『頼む、九々等。宿儺から伏黒を、皆を守ってくれ』

『伏黒恵は「堕天」の器となった! 奴が居るだけで何百何千と人が死ぬ!』

 

 気絶した来栖を安全そうな場所で横たえ、九々等は街を駆ける。禍々しい呪力が放たれる方へ。

 

『宿儺が完全に復活すれば、先の渋谷があらゆる場所で再現される』

『九々等さんならそれが可能だと、俺も虎杖も判断しました』

『可能性があるとすれば君だけだ、九々等八壱!』

 

 空中を舞う。

 と同時、眼前に巨大な氷塊が出現した。呪力を感じるから術式だろう。

 

 そして遂に、九々等は捉えた。

 

 禍々しい呪力の源泉――呪いの王、両面宿儺の姿を。

 

「――アレか、宿儺」

 

 同時に、その傍に控えたもう1人――氷の術式を使った術師の姿も。

 

「術式順転(せき)

 

 脚力:9倍、そして速度:9倍

 九々等の速度:9倍は、発動すれば落下速度も9倍になる。

 

 9倍速で道路上に着地した九々等は、瞬間アスファルトを蹴り砕く勢いで地を蹴り、術師――裏梅(うらうめ)の背後を取ると。

 

「(速――)」

「(()())」

 

 九々等は術式を解除し、通常の呪力操作に集中しながら蹴りを放った。

 速度も威力も失ってまで彼が求めたものは。

 

「(出すぞ、黒閃(こくせん)――)」

 

 ――黒閃を、狙って出せる術師は存在しない。

 

「(今のままのオレじゃ駄目だ。出せなきゃここで死ね、九々等八壱!!)」

 

 だが「宿儺を倒す」という使命を与えられ、思考を一本化させた九々等の極限の集中が。敵を前にあえて術式を解除した度胸と選択が、その現象を呼び寄せる。

 

 幼少より鍛え磨き抜かれた身体能力。結界突入時とは比べ物にならない呪力操作。

 彼もまた、黒い火花に愛されし者のひとりである――。

 

 ――『黒閃』!!!

 

 空間を黒く歪ませる一撃が、裏梅の頭蓋に炸裂した。

 

「ぐゥ……ッ!!?」

 

 吹き飛ばされた裏梅が意識を手放さなかった理由は、ひとえに宿儺故。

 「宿儺の前で恥をかくわけにはいかない」。その度を超えた忠誠心だけが、揺れる脳の中でも裏梅の意識を繋ぎとめていた。

 罅が入った頭蓋骨、裂けた頭の血管を反転術式で治しつつ、裏梅は九々等という無礼者を宿儺から引き剥がそうと術式を構え。

 

「よい、下がれ裏梅」

 

 主の命により、頭を下げて引き下がった。

 

 宿儺には分かっていた。

 もしも裏梅があと一瞬、九々等に敵意を向けていれば――その頭は今度こそ熟れた柘榴のようにはじけ飛んだだろう、と。

 

 

 そうして。

 氷塊の前で、一対一、九々等(くくら)八壱(やいち)両面宿儺(りょうめんすくな)は対峙する。

 

「よ、恵くん。随分イメチェンしたじゃん。その(とし)でタトゥーはないんじゃないかなと思うけどね、オレは」

 

 その軽い言葉を意に介すことなく、宿儺は嗤う。

 

「ククッ。やはり、貴様が残ったな」

 

 宿儺は見ていた。虎杖の内から、その金髪の術師の事を。

 宿儺は知っていた。少なくとも、ただ一蹴するには勿体ない存在である彼の事を。

 

「丁度いい、小僧と女では物足りんと思っていた所だ。そら、どこからなりともかかって来い。こんな機会は二度無いぞ?」

 

 宿儺がそう挑発し呪力を高ぶらせれば――九々等もそれに対抗するように呪力を全開にした。

 そして彼は、呪いの王を前にして。

 

「宿儺だよな? オレは今からアンタを殺さないといけないんだけど――」

 

 猛獣の(カオ)で、恐れ知らずの生意気さで笑う。

 

「――遺言はそれで良かったか? 呪いの王サマ」

「クク、弱い犬程なんとやらだ。遊んでやろう、雑種犬」

 

 最強が()う。

 呪力がぶつかる。

 

 東京第1結界(コロニー)最大最後の戦い、その火蓋が今、切って落とされた。

 

 


 

浴前指15本伏黒宿儺vs別作品最強格オリ主九々等八壱

ファイッ!

 

※ちょっと混乱を招いたみたいなので追記

 九々等は元々他作品で書いた作者の持ちキャラです。別にその知識無くてもこのSSはこのSSだけで自己完結してるので大丈夫です。本当に暇な方は九々等八壱の元ネタを探してみてください。

 

 

次回 「×9 最強」

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