テストまでにもう一話は投稿したい!
取り敢えずキリの良いところまで書いた結果、かなりの量になりました。
ちゃんと文章を調整できるようになりたいです。
それでは、本編どうぞ!
≪≪
あの後、兵士達を回復させた僕は、ライズハートに案内され彼の天幕の中にいた。椅子を勧められ、それに座る。中は機能的な作りで、寛ぐ事はあまり想定されていなさそうだった。
此処は彼の天幕兼参謀会議場所だったらしく、まだ机の上には書類が折り重なっている。
「失礼致します」
そうして周りを見ている間に、ライズハートが向かい合う形で座った。
「まず、もう一度、我々を助けていただいた事に感謝申し上げます」
そう言って、椅子に座るや否や彼は深く頭を下げた。
「気にしないで!僕が勝手に助けただけだから!」
そう言って気にしないで欲しいと伝える。
正直通りかからなかったら助けないどころか存在を認知すらしていなかったはずだ。
それにここまで介入したからもう違うかもしれないが、元は助けたとはいえただの部外者だ。そんな人物相手に頭を下げる事は普通しない。
いくら助けたからと言っても、そんな事を躊躇なく行う彼に感心した。
が、ここまでされると気が重い。
「いえ、そうもいきません。窮地を助けられた恩が私たちにはございます。それに、貴方様はぷれいやー様なのです。感謝するのは当然のことかと」
やっぱりすごく堅苦しい。もう少し軽くても良いのだが、それは難しそうだ。
(でも今はそれよりも、聞きたい事がある)
「そう?嫌じゃないなら良いんだけど。それより、他のプレイヤーについて何か知ってる?」
この対応については後回しにして、一番聞きたい事を聞く。
(近くの地理とかこの世界についてとか聞きたいことは色々あるけど、まずはプレイヤーに関する情報だ)
かつてのギルメンやたっち、モモンガさん等に関する情報を得られるかも知れない。それにさっき"プレイヤー"という単語に反応したのは彼だけだ。何か知っているはず。
「ぷれいやー様についてですね。分かりました」
やはり知っているようだ。そうしてライズハートは、僕に色んなことを教えてくれた。
ライズハートは、なんと法国の指揮官だったらしく、その上法国の中ではかなり有名だそうで、様々な情報を教えてくれた。
(法国の正式名称はスレイン法国っていうのか。やっぱり助けてよかった、これで少なくとも敵対する事はないだろ)
そこまで考えたわけじゃないけど、僕が助けたのはスレイン法国の兵士だった。内心安堵する。
(これでロンギヌスに怯えなくて済みそうだ)
少なくともあの
話をプレイヤーについて戻そう。
まず、この世界でのプレイヤーは本当の意味で“神“と等しい存在だそうだ。
実際近隣諸国で信仰されている宗教の大半は、およそ600年前にこの世界にやってきた【六大神】と呼ばれるプレイヤー達を信仰の対象として崇めているらしい。
この世界においてプレイヤーはかなり強い存在だとは思っていたけど、まさか神と言われるほどとは思っていなかったから驚きだ。
つまり、先程兵士たちが『あぁ、神よ』なんて言っていたのもあながち間違いじゃないって事だ。
それにもう一つ驚いた事がある。
(600年前だって?嘘だろ。僕が来た時間とあまりにも違う)
僕がこの世界に来たのは、どれだけ前に見積もってもせいぜい一週間ほど前だ。それなのに少なくともそのプレイヤー達とは、来た時間に600年の差がある。
(この差は一体何なんだ?)
いくら何でも時間軸が可笑しい。100年ですら普通の人の平均寿命に匹敵する年月だ。その上600年という気の遠くなる年月、そんな長時間の時間差に思わず混乱してしまった。
そして、たまらずその事を聞いた。
ライズハートによると、この世界では、100年周期で【世界の揺り返し】と呼ばれる現象が発生し、その時にプレイヤーが来ていると思われるそうだ。
(世界の揺り返し?よく分からないけど、100年単位なら、他にもプレイヤーが来ているんじゃないか?)
少なくとも六大神が来たのは600年前だ。それなら他にもプレイヤーが来ていると考えるのが自然だ。
その事をライズハートに尋ねる。
「六大神様以外ですと、認めたくはありませんが、八欲王と呼ばれる大罪者達がそうではないかと」
そう言うライズハートの顔は苦々しげに歪んでいる。
相当恨みを持っていそうな表情だ。
「八欲王?どんなプレイヤーだったの?」
大罪者などと呼ばれている時点で良い予感はしないが、念のためだ。
もしかしたらライズハートが苦手なだけかも知れない。
そうも思った。しかし、その予感は当たっていた。
所々にかなりの恨み節を含んだ彼の話を要約すると、【かつてこの世界を強大な力で支配したが、最後は名の通り欲に溺れてお互いに争って全滅した】プレイヤー達らしい。
人々を守り、スレイン法国の原形を作ったとされる六大神とはかなり違う。同じプレイヤーでも色々あるようだ。
(まぁ、全員が同じ性格なわけじゃないから当たり前なんだけど)
プレイヤーは、幾らこの世界では神様みたいな存在でも元は僕と同じ世界の人間の筈だ。僕の周りは優しい人が多かったけど、世界の全員がそうな訳じゃない事は知っている。
(もしそうだったならどれ程世界から争いが無くなったことか)
更に八欲王は、スレイン法国の六大神の1人を放逐したらしい。そのため、法国からはめちゃくちゃ嫌われているそうだ。
六大神は、かつて人間達を守り、庇護していた
そんな人達に手をかけたと言うならば、それは嫌われて当たり前だ。
ライズハートがここまで嫌うのも頷ける。話を聞いている僕でさえ少し怒りを感じている。
ちなみに、デケムはその八欲王と呼ばれるプレイヤーの息子らしい。「あの性格も親譲りではないかと」とはライズハートの言だ。言葉に棘がある。
(相当嫌いなんだな、、。それに、デケムはプレイヤーの子供だったのか)
この世界の人たちに比べて、あの圧倒的な強さはプレイヤーの血を受け継いでいるからなんだとか。
確かにデケムはあの場では飛び抜けた強さだった。
ベヒーモスすら出さずとも、1人で全員を相手に余裕で戦う事ができていた筈。
それほどにデケムは強かった。
(そもそもプレイヤーに子供がいる事自体驚きなんだが、)
信じられないが、事実としてデケム、そして法国にも神人と呼ばれるプレイヤーの子孫がいるらしい。
それにライズハートが嘘をつくとも考えにくい。
(本当の事なんだろうな。じゃあ、あのロンギヌスを持った男の人が神人なのかな?)
デケムと並んで出されたと言う事は、神人は近しい強さのはず。あの人は、周りの人達と比べてもずば抜けて強かった。
デケムと比べても遜色ない気がする。
(それならあまり大勢はいなさそうだ)
あれほどの強さを持つ人が、そんなにいなさそうで少し安心した。
一対一なら負ける事は無いけど、大人数なら少し危ないかも知れないからね。
(それにこの世界には僕の知らない
先程プレイヤーの事のついでに教えてもらった
そのどちらもユグドラシルには無い能力だ。脅威を感じる事はほぼ無かったけど、それは軽んじることとイコールではない。
知らない事ほど恐ろしい物はない。ユグドラシル、社会、その両方で学んだことだ。
(これらの事も色々調べないと)
「・・・ヤマト様。私から、お願いしたい事がございます。よろしいでしょうか」
そんな事を考えていると、ライズハートが声を掛けてきた。
「何?どうしたの?」
いきなりだったから、少し驚いた。それにお願いか、、
(何か分からないけど、色々教えて貰ったから出来る事はしよう)
彼からは色んなことを聞いた。その代わりになるなら大体の事は叶えるつもりだ。
それにライズハートはとても真面目な人だ。だからあまり気にしてはいない。そう考えて待つ。
「私と一緒に、、法国に来ては頂けませんか?」
ライズハートは、真剣な表情でそう聞いてきた。そして先程より深く頭を下げる。先程は頭を上げるように言ったが、今その考えは頭の隅に追いやられて顔が見えなくなっている。
(僕と法国に?どうしよう。考えてなかったな)
予想していなかったお願いだったから、少し思考が遅れた。僕の目的は
少なくともプレイヤーが来ていた事はライズハートの言葉で確定した。なら、たっちやギルメン。そして可能性が高いモモンガさんを探すのが最重要事項だ。
この話を聞いてから、その思いは増すばかりだ。正直今すぐにでも探しに飛んで行きたい。じゃあ、何故そうしないのか?
(でも、僕はこの世界について全然知らない)
そう。これが僕の一番な悩みどころであり原因だ。
ライズハートのお陰で少しは知識を知ったが、一人で行動するのには不安がとても残る。その状態で仲間を探せるとは到底思えない。
(それに
話してみて感じたが、彼は尊敬に値する人物だった。彼は、僕がリアルでは数人しか見た事のない、他者の為に動ける人物だ。
そんな人物を見るのは、
そんな人物とここで別れるのは惜しい。
(なら、スレイン法国に行くのが良いのかな?)
今一度その事について考えた。多分、これが最適だと思う。
話を聞いてみた感じ、スレイン法国はそんなに悪くなさそうだった。法整備も進んでいて、治安も悪くなく、その上目立った問題も無いときた。
それ故に迷う必要もなさそうに思える。
(少なくとも、リアルでの日本より全然マシだ)
そしてスレイン法国に行けば、ライズハート達と別れる必要もなく、そのままこの世界での立場も確立できるかも知れない。
いざという時立場があるのと無いのとでは雲泥の差だ。
(ただなぁ、、)
「、、やはり、駄目でしょうか?」
返答が無かったからか、そう問いかけてきた。少しの落胆、そして絶望の気が見える。
「いや、そんな事はないよ。むしろ僕の方からお願いしたいぐらい」
慌ててそう言うと、ライズハートは目に見えて喜色をたたえた。
「ありがたき幸せにございます!」
そう言う彼の目は少し光って見えた。ここまで反応されると少し気まずい。
「それで、その事について何だけど」
今この空気感に踏み入りたくはないが、聞いておかなくてはならない事がある。
そういうと彼は不思議そうな顔をした。一体どうしたんだろうと言った感じだ。
「はい、いかがされましたか?」
「、、もし、僕がスレイン法国に行ったら、どう言う扱いになるの?」
これが即決できない理由だ。話を聞いて感じたが、この世界でプレイヤーは凄まじく強い存在だ。それも国で1番とかそう言うレベルではなく、1人で国を壊滅させられるほどには圧倒的なのだ。
その上法国はプレイヤーの興した国。そんな国に
(行ったら凄く面倒な事になりそう)
そんな気がしてならない。ただでさえこの場で僕は異常なほど尊敬、いや、崇拝されていると言った方が良いほどだ。
そんな人たちの大元にこのまま行っては胃が痛くなりそうに思う。
「ヤマト様はぷれいやー様であらせられますので、まず間違いなく国の頂点に迎えられるかと思います」
即座にそう言うライズハート。時間差なく言ったことから、彼が本当にそう思っているのが伝わってくる。
(、、、、、、やっぱりかぁ。何でこんな予想ばかり当たるんだ)
つくづく自分の予感に嫌気が差す。予想はしていたけど、いざ言語化されるとその事をより実感して疲れが出る。
「それ、どうしてもそうなるの?」
何か他に方法は無いの?そう考えて再び聞いた。
「恐らく、ぷれいやー様だと知られれば間違いないかと」
そう言い切ったライズハート。その言い切りが今は辛い。
「僕がいきなり国の頂点?変じゃないの?」
いきなり現れた人物が国の代表なんて絶対変だよ。そう思って言ったのだが、
「いえ、我が国ではぷれいやー様こそが至高なる御方と言う考えなので御座います。それに、ヤマト様ほど慈悲深い御方であるならば尚更かと」
どうやら法国の考え方は僕とは違うようだ。たが、まずい。
(どうしよう、このままだと一生国の代表だよ)
このまま法国に行けばかなりの待遇を受ける事になる。
そうなると恐らく気軽に出歩く事も出来ない。仲間達を探すのにも一苦労の筈だ。
(そんなの絶対嫌だ)
ならばどうするか。僕はこの世界に来てから一番頭を働かせた。
(ここで投げ出す?いやこんなに介入した状況では無理だ。ならいっその事プレイヤーとして行ってみるか?、、絶対に窮屈な生活だ。法国以外の国は?、、、、うん。そもそも知らない。、、、)
考えても良い考えが浮かばない。結局法国以外に関わりを持てそうな国がない。
(詰みじゃん。、、、、いや、待てよ)
ふと考えが浮かんだ。
(僕がプレイヤーだと知ってるのはライズハートだけだ。それにエルフ達と法国兵士達もそうだ。だけど兵士達はプレイヤーという単語を知らなかった。これなら、、行けるんじゃないのか?)
浮かんだ考えを吟味する。少なくとも、プレイヤーだと知られるよりマシな気がしてきた。
「ライズハート」
「はい、何でしょうか」
緊張の中、ライズハートに声をかけた。この選択がどう転ぶか分からないが、悪くならない事を祈る。
(これによって、僕の今後が決まる)
ゴクリと唾を飲み込む。
「僕を、・・・・・・・・・・」
≪≪
スレイン法国。その中でも限られた人物のみが入る事を許される深奥。その場所を、一人の若い男が歩いていた。
その男、【漆黒聖典隊長】は、髪を揺らしながら不機嫌そうに回廊を歩く。休暇返上で行った任務から帰って来たと思った矢先にまた
正直かなり不満だが、自分を呼ぶほどの重大な事なのだろうと納得する。
(これで小事だったなら、どうしてくれようか)
暫く部屋に引き篭もる事も検討しなくてはならない。
そんな事を考えながら暫く歩くと、扉が見えてきた。
「失礼致します」
そう言って扉を開ける。よく磨かれた扉は、その重厚な外見とは裏腹に滑らかに開いた。
部屋の中で、1人の男が座っていた。その男が、こちらに語りかける。
「忙しい中、よく来てくれた」
そうしてねぎらいの言葉をかけるのはスレイン法国にある六つの神殿、その中の“光“を頂く神官長【イヴォン・ジャスナ・ドラクロワ】。
信仰系魔法の使い手で、その実力は神官長の中でも1,2を争う。切れ長の目に痩せこけた姿は暗い印象を周りに与えるが、それが彼の本質でないことは知っている。
「いえ、お呼びとあれば即座に」
その言葉に頭を下げる。ねぎらいのお陰で、ほんの少し留韻が下がった。
「そうか。ありがたく思うぞ。時に、最近良いと思う異性の1人ぐらい居ないのか?」
挨拶もそこそこに、いきなり質問が飛んできた。
またその方面の話か。私にはその気が無いと何度言えば分かるのか。
「いえ、私はまだ若いので、そのような事は」
そうして他愛のない会話を始める。
「なるほど、その顔を見ているとその事をつい忘れてしまうな」
「ええ。私も時々そんなことがありますね。ところで、神官長様。今回はどのような要件なのでしょうか」
そして話もそこそこに本題に入る。これは要件を聞く為であって、決して話を早く終わらせたかったとかそんな事ではない。
「そうだな。この話は別の機会にしようか。今回、隊長殿を呼んだのはエルフ国に関係することなのだ」
そう言って話を始めた神官長。
確かに、エルフ国への侵攻は100年前から続く法国の悲願だ。決して小事などでは無い。
(だが、私を呼ぶほどの事か?)
しかし、エルフ国の侵攻は順調だったはず。特に最近総司令官についたライズハート・フォシーユ・ラサンセリテは優秀な男だ。
事実彼が赴任してすぐに王都近くまで侵攻が進んだはずだ。問題はなさそうに思える。
(彼は漆黒聖典への引き抜きが検討されていたな。もしかしてその事か?)
そうして
ライズハートは、飛び抜けた強者が
侵攻軍の総司令という立場ゆえ、他国にはあまり知られては居ないが、周辺諸国最強と目されるあのガゼフ・ストロノーフ相手でも戦えば引けは取らない強さを持っている。
自分たち漆黒聖典を除くなら、彼と正面きって戦える戦士は法国にもほとんど居ないだろう。
その上信心深く、さらにその性格から部下の信頼も厚い。迎え入れるのに問題は無い人物だ。
(しかし、そのことに関係する話ならば全員を集めるはずだ)
漆黒聖典への加入なら全員がいる時に行えば良い。だが、この場には自分しか呼ばれてはいない。
(ならば、侵攻で何かあったのか?)
自分が呼ばれた以上、ただの情報共有ではないはず。ならすぐ思いつくのはその事だ。
エルフ達は生まれてから森で暮らすのもあってゲリラ戦に秀でている。いくら法国の兵士が優れていると言っても、森の中で強襲されればその限りではない。それに、エルフ達にも強者が存在する。
暴虐非道の王を始め、
本来は王の城を守っているはずだが、過去に戦場で姿を見せたこともある。その際は居合わせた法国兵に多大な被害を出した。今回もその事ではないのか?と予想した。
「今回、進行中の軍が
光の神官長がそう告げた。
(やはりそうか)
自分の予想は当たっていたようだ。
(なら、私がここに呼ばれたのはその対応を伝えるためか)
恐らくそうだろう。神人たる自分なら、英雄級が相手でも問題ではない。速やかに問題の解決が可能だ。対応可能な人物は他にもいるが、私がやる方が確実だ。
もう一度大森林に出向く必要があるが、そうも言っていられないだろう。
しかし、続く言葉に自分の認識が甘かったのだと思い知らされた。
「そして、あの糞ったれなエルフ王まで姿を見せたそうだ」
神官長の気配が変わる。顔は怒りに染まり、瞳には憎しみが浮かんでいる。知らない者が見れば人が変わったようにも見える程の変わりよう。
(エルフ王!?)
しかし自分は、この事よりも先程の言葉に驚愕していた。
(あのエルフ王が出てきた、のか。なるほど、確かに一大事だ)
エルフ王は戦いにほとんど関与していない。いや、この戦いの原因を作ったのだからこれ以上ないほど関わっているか。
とにかく、戦闘にはほとんど参加していない。これは本人の性格が大きいのだろう。
そのエルフ王、デケム・ホウガンが戦いの場に出てきたなど数十年以来の事だ。自分を招集するのも頷ける。
「どれほどの被害が出たのですか」
法国への損害を確認する。あの王が出たのならその被害は相当な筈だ。
「ライズハート・フォシーユ・ラサンセリテが率いる2000の軍が半壊、他の軍にも被害が出たそうだ」
神官長は随分と冷静にそう返答した。
(何?)
想像よりも少ない被害に疑問を覚える。2000の半数、つまり1000で少ないとはおかしいかもしれないが、件のエルフ王はこの世界でも指折りの強者だ。
神人である自分でさえ勝利するのは厳しい相手であり、その上あの
「被害が随分と軽微ですね、何があったのです?」
少なくとも、ライズハートに相手が務まる存在では無い。ならば、何故全滅の憂き目に遭っていないのか?それが不思議でならなかった。
「その事が、今回君を呼んだ理由なのだよ」
その疑問の答えるように神官長は、羊皮紙を取り出した。それを私に手渡す。そこには、ライズハートからの報告の旨が記してあった。
羊皮紙を広げて、それを読む。思わず驚愕の声が漏れた。しばらく何も言わなかった。そして漸く声を上げた。
「・・・なるほど。確かに、これならば被害の少なさも頷けます。しかし、信じられません。あのエルフ王相手に戦い、あまつさえ撃退したなどと」
そこに書いてあったのは、とある人物についてだった。
その人物は窮地に陥っていた法国軍を助け、現れたエルフ王と戦い、これを撃退した。と書かれていた。
簡潔だが、その書かれている言葉はとんでもない物だった。
この書かれている事が本当なら、この人物の強さは自分を上回っている。
「このことは事実なのですか?」
信じられずそう聞いた。その強さにも、神の血を覚醒させた自分よりも強い人物が今の今まで出てこなかった事にもだ。
「ライズハートの言葉を信じるなら、事実だ」
そう言う神官長。だが、その言葉には信用しているといった気配がした。
それもそうだ。ライズハートは誠実な人物で、この様な報告で虚偽を述べる人物ではない。ならばこの話は本当ということだろう。
「ならば、本当の事でしょう。では、この【ヤマト・タチバナ】と呼ばれる人物を、如何されるおつもりでしょうか?」
このヤマトという人物はこの近辺の人物ではなく、はるか南方の人物だそうだ。それ故この場所に於いて頼る場所が無く、ひとまず法国軍と共に行動し、その後に法国へと来る予定らしい。
自分としては法国に来るのならば、その時に勧誘すべきだと思う。
此度のエルフ王の件しかり、
「無論、法国へ迎え入れるつもりだ。これほどの強者、みすみす逃す訳には行かないだろう。もしやすると神の血を覚醒させた者かも知れんからな」
幸い神官長も自分と同じ考えのようだ。しかし、神の血か。
(たしかにこれ程の強さならばその可能性もあるのか。ならば私と同じかも知れないな。もし私と同じなら、、良いな)
そうして考えを中空に浮かべた。
私は生まれた時から強者だった。周りには常に人が居た。語り合う人も、遊ぶ人もいた。だが、対等な友という存在がいなかった。
私にとって、彼女と出会うまで全ては下だった。私は強かった。
私以外に神人は2人、いや1人だ。そしてその1人はその強さ故対等に語る事は出来ない。当時は「周りはこのような思いだったのか」と初めて感じたものだ。
(もし、そのヤマトという人物と語り合えたら、どれ程良いか)
隊長は、その仮面の下の幼い顔に笑みを浮かべた。
外見は大人でも、中身はまだ成人していないのだ。友情に憧れるのも仕方がないだろう。
「分かりました。部下にもそのように伝えます。ただ、」
「何だ、何か問題か?」
「
ヤマトを迎え入れるのは賛成だ。あの憎きエルフ王から法国兵を助けた事から考えても悪しき存在では無い。それにライズハートが協力している事にも信用がおける。あの正義漢に認められているなら心配はないだろう。
が、問題は彼女だ。彼女は常々自分よりも強い男を探している。
今までなら『そんな人物なんて居ませんよ』で済んでいた。が、今回の件ではそうも行かない。
自分の憎しみを撃退し、その上神人たる私よりも強い男。絶対に興味を持つ。興味だけならばまだ良い。だが、彼女がそれだけで済むとは思えない。その事が理由で法国を去られる事になって仕舞えば取り返しがつかない。
「そうか、あの娘か。、、」
神官長も同じ事に気づいたようだ。
「今は伝えなくとも良い。もしも言って、ヤマトが来なければ彼女が機嫌を悪くする。それに態々あの鬼畜を思い出させる必要もあるまい」
「了解致しました」
これでひとまずの問題は解決だ。つい肩の力が抜けたが、許して欲しい。
「それでは、これにて失礼致します」
「あぁ。聖典への説明、くれぐれも頼んだぞ」
「了解致しました。それでは」
そう言って扉を閉める。先程まで煩かった、耳に入る静寂が今は心地良い。
「・・・良し。ひとまず全員を集めるか」
軽く伸びをしてから歩きだす。
精神的にも肉体的にも疲れた。早く休息を取りたい。それに彼女に見つかっては更に疲れる。それはごめん被りたい。
その思いで回廊を歩く。そうして暫く歩いていると、カチャカチャ、と何かを弄るような音が聞こえた。
(この音は、、まさか!)
音が小さく聞き逃していたが、その音に気づくと同時に緊張が走る。
そのまま視線を右に動かすと、通路の別れ際の壁にもたれかかるようにして
彼女の側には巨大な
「一面を揃えるのは簡単なんだけど、二面を揃えるのって難しいよね」
彼女はそう言ってルビクキューを弄る。
別に私にとっては難しくは無いのだが、ここでそれを言うほど馬鹿では無い。それに早く此処を離れたい。
「それより、」
そう思っていると、彼女が初めてこちらを向いた。
「先程神官長と話をしてたじゃない♪何を話してたの?」
そう笑いながら問われた。だが、その目は半分笑ってはいない。
恐らく答えなければ酷い目に遭う。自分は予知に関する職業を納めているわけではないが、その事が手に取るように分かった。
(・・何でこんな目に。私が何をしたというのだ)
私の落ち着いた休暇は、まだ訪れないようだ。
その後、暫くの間隊長の部屋の扉には【入らないでください】と書かれた看板が吊り下げられていたらしい。
独自設定
森衛隊【アルテミス】
敵の中ボスを書きたいなと思って考えました。
ちなみにルーギは森衛隊の中では中の上から上の下ぐらいの強さです。
ルーギも原作よりちょっと強くなってます。
此処まで読んでいただきありがとうございました。次もオリ主を予定しています。もしかしたらモモンガ様も出るかも?
感想や評価もお待ちしています。それではまた次のお話で!
新しく書くか否か
-
新しく書く
-
新しく書かずに続ける