死と神と番外の旅   作:眠りこけ布団

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お久しぶりです!
前話から二週間振りですね。勉強とかしてたりやる気が出なかったりと理由は多々あれやっと投稿できました!

そしてそんな時間を過ごしていたら、なんとお気に入りが350を超えていました!ありがとうございます!この事を胸に刻んでこれからも頑張りますのでぜひお付き合いください!(過去一文章量多いです)

それでは本編どうぞ!*少し修正しました。まずいこのままだとヤマトがモモンガさんを放っておいてただ飲み歩いてる奴になってしまう。


第八話 法国と生まれながらの異能

≪≪

柔らかな日差しが降り注ぐ大地。のどかな風吹くその大地に、巨大な都市が見えた。

 

その都市は巨大な、高さにして20メートルを優に超えているだろう外壁に囲まれており、警邏の兵士達が中に通ずる門を守っている。その守り人たる兵士達の態度は真剣そのものであり、その光景にこの国の国力の高さと誠実さが伺い知れる。

 

この都市の名は、法都シクルサンテクス。近隣諸国最大のスレイン法国の首都にして、六大神信仰の聖地として知られる大都市だ。

法都に入る門の一つ。そこには兵士たちがおり、入都する人々の検閲をしていた。

 

「問題ないな。良し、通れ」

 

今日も大勢の通行人を検閲する。法都に来た目的を聞き、問題がないなら入都を許可し、怪しい者は入都を認めない。ただこれだけの地味な仕事だが、私を含め他の兵士達もこの仕事に誇りを持っている。

 

私たちは言うなれば法都の防波堤。害をなす存在を通して国民に被害が出るなどあってはならない。だからこそ今日も私達は誇りを持って職務に励む。

 

そうして仕事を始めて随分経った。もう日が高く昇っている。そろそろ交代の時間だ。

 

「おーい。時間だ。全員後の連中と交た、、」

 

交代を教えようとしたその時、いきなり前方が騒がしくなった。

 

(何だ一体?馬車が壊れでもしたか)

 

最初は良くある旅の醍醐味(アクシデント)かと思った。

都に通じる交易路は、他国からの貿易商や冒険者、移住者たちなど様々な人々行き交う正に交通の要。

 

日々様々な人々が過ぎ去って行く場所だ。その様な場所ゆえ、荷物の落下や馬車の故障など日常茶飯事。王国と帝国から遠い法国(ココ)なら尚更だろう。

 

(しかし、それにしては騒ぎが大きいな)

 

何やら厄介ごとか?そう思い体に力を込める。そうしていると、理由はすぐに分かった。

 

交易路にいる人々が左右に分かれて行く。分かれて行くのは屈強な男や子供、美しい女や老人など様々だ。その多様な人々の中にあってなお、一際周囲の視線を引き付ける2人組がいた。

 

男の1人は金髪の大男。その背丈は周りの人に比べても抜きん出ており、190センチメートルほども有るだろうか。

 

そして背丈に見合う頑強な肉体を持っている事が分かる。その剛鎧から見える腕は太く鍛え上げられており、戦いに身を置く者特有の気配を漂わせていた。

 

もう1人の男は、見慣れない白い鎧を纏っており、顔はバイザーに覆われてよく見えず覗いた部分から男とだけ分かる。背は隣の男に並ぶか少し低いぐらいに見える。

 

しかし金髪の男に対して細身で、背の割に子供にも見えた。

だが重心が全くぶれていないその歩き方から、只者ではないと言う事が分かった。

 

そして不思議なのが、見えているにもかかわらずふと見失ってしまいそうなのだ。気配が無いというのか、存在が希薄というのかは分からないがそれがどうにも謎めいた雰囲気を醸し出していた。

 

男は肩から背負うように襷掛けした、不思議な形をした剣の様なもの(・・・・・・)を腰に下げている。それは剣というより、祭事の際に用いる祭具、という方が似合っていた。

 

剣よりも南方に伝わる【刀】と呼ばれる片側にのみ刃が存在する剣にも似ているが、それとは決定的に違う。

 

まず、その刀には鞘が付いていない。鞘は刃を環境から守り、切れ味を保つためには必要不可欠。そのため鞘がないとどれほどの名剣も直ぐに切れ味が悪くなってしまう。

 

そんな事をする馬鹿は今まで見た事がない。だからこそ鞘を持たずに刀だけを持っている事に疑問を覚えた。

だが、その疑問も刃を形を見ると腑に落ちた。

 

その刃は、まるで木の枝の様に分かれていた。一筋に伸びた刃から枝分かれするかの様に小さな刃が六本突き出しており、その刃一つ一つが鋭利な輝きを宿している。

 

そして光の反射か、それぞれの刃が異なる色(・・・・)を放っているように見えた。見た事もない形状だが、その切れ味は想像を絶するものだと言う事はなぜか理解ができた。

 

(確かにこの形状なら鞘に収める事も出来ないだろう)

 

そんな事を考えながら、今一度男達を良く見た。距離が近づいたからか、先程よりも2人がよく見える。

この異質な男達は、側から見れば凄腕の冒険者達に見えるだろう。

そう考えたのには理由がある。

 

まず冒険者というのは依頼を受けないと始まらない。そしてその依頼は基本取り合いだ。様々な依頼が多くあるが、依頼に対する冒険者もまた多い。

 

人類最強の存在と言われる最高位冒険者【アダマンタイト】級ならそんな事は無いだろうが、それは言うなれば一掴みの選ばれし者のみの特権。普通の者は地道に依頼を受けるしか無い。

 

ならば、その依頼を請け負うためには知名度が不可欠だ。知られていれば周りからの評価に繋がり、指名による依頼も受ける事ができる。

 

その為冒険者は目立つ装備や特徴的な服装などをする者が一定数いる。

中には名を売るために髪の色を変える者もいると聞く。冒険者ならその出立ちも常識の範囲を出ない。

 

最初はそう考えていた。

だが、そうではない事をこの場所に居る兵士全員が知った。それは冒険者の証たるプレートが無い事もそうだが、金髪の男の鎧に刻まれたスレイン法国の紋章。そして男の鷲のような視線に見覚えがあったからだ。

 

「ライズハート様?!」

 

厳格そうな警備兵(わたし)がそう驚愕した事で、やはりそうなのだと言う確信が兵士達に広がった。それ程にその人物の登場は予想外だった。

 

男の名はライズハート・フォシーユ・ラサンセリテ。スレイン法国の侵攻軍総指揮官にして、法国でも指折りの戦士。剣の天才であり、部下を率いることにも長けている法国の英雄の1人だ。

 

そしてその誇り高い性格から兵士達にも尊敬されている。その男ライズハートは、交易路に出来た一筋の道を歩いて私の前に辿り着いた。

 

「ライズハート様、何故この様な場所に?」

 

すぐさま冷静さを取り戻し、そう問いかける。ここに今までの職務が生きた。

 

(それよりも、今はライズハート様についてだ)

 

ライズハート様は今、エルフ王国への侵攻の真っ最中の筈だ。前に来た報告の兵士がそう言っていたのを覚えている。

その当事者がこの様な場所に部下も連れずに来たのだ。疑問は至極当然であり、深まるばかりだ。

 

「訳あってな。この方を神官長がお呼びなのだ。通してくれ」

 

そう手短に言ったライズハート様は、いつの間にか隣に立っていた人物に視線を向けた。その視線につられて自分もその人物を見る。

その人物は、視線を向けられた事が分かるとそのバイザーを外した。

 

 

 

思わず息が漏れた。息を漏らしたのは警備兵でもあったし、周りの人達でもあった。何故こんなにも全員が男を見ているのか。それは、男の顔立ちが、そしてその装備が原因だった。

 

(なんという、、、)

 

その人物は、腰まで届くほどの長い黒髪を持つ男だった。歳の頃は20、いや10代の後ろかもしれない。夜の闇の様に漆黒を写す髪は僅かな風にさえたなびいている。

 

すらっとした肢体にその顔は整っており、数多の言葉すら霞んで見えるほどに美しかった。

 

美しい物を見れば、どよめきが起こる。それは当たり前に分かる。だが、あまりの美貌は、そう言った事を一切許さない。

 

本当に美しい物を目にした時、人はただ目を奪われることしかできないのだ。

 

見た事もない白い布のような鎧を纏う青年は、まるで霧のように、どこか神秘的にさえ感じられた。全身をゆったりと覆うようにして雪の様に真っ白な姿の青年は、どの様な絵画よりも淡く輝いていた。

 

 

なぜこの様な人物を今の今まで意識して居なかったのか不思議に思った。

そんな事を考えていると、青年が口を開いた。

 

「初めまして。僕はヤマト・タチバナ。どうぞ、宜しく」

 

そう言って青年、ヤマト・タチバナは笑みを浮かべ、軽く頭を下げた。

その動作は自然なものでありながら敬意に溢れていて、相手に好感を抱かせるには充分なものだった。

 

「・・・!」

 

しまった!驚きで反応が遅れた!

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

急いで挨拶を返し、深く頭を下げた。この様な場所で頭を下げるなど、いつもの自分なら恐らくはしないだろう。

 

だが、この青年はライズハート様がお連れになり、神官長様がお呼びになったお方。その方相手に失態を働いたのならば、こうするのが最善に思えた。

 

「うん。こちらこそ」

 

青年。ヤマト()は、私の失態など気にしていないのだろう。優しげにそう言われた。

 

「では、ヤマトさ、、殿、行こうか」

 

そうして挨拶が終わると同時に、ライズハート様がヤマト様に声をかけた。

 

「そうだね。それじゃあ、兵士さん達も頑張って!」

 

そう言うとお2人は、門を潜って法都に入って行かれた。

 

 

 

嵐の様な遭遇の後、門の前は青年、ヤマト様についての話で持ちきりだった。

 

『一体あの青年は誰だ?』『ヤマト・タチバナ、と言っていたが、洗礼名がない所を見るとこの辺りの者ではあるまい。黒髪から見るに、南方の人物ではないか?』『何者何だ』『綺麗な人だったわ』『指揮官殿と一緒にいたが、どう言う関係なのだ?』『それよりあの装備を見たか?多分ありゃあかなりの代物だぜ』『神官か何かか?あんな剣は見た事がない。多分祭事に使われる剣だろ』『どっかの貴族の息子とか?』『わしの孫娘の婿に、、』

 

全員が口々に騒ぎ立てる。それに兵士だけでなく居合わせた人々も加わった。その事を咎める者もここには居なかった。全員がヤマト様の事を知りたがったが、誰もヤマト様については知らなかった。結局分かったのは、只者ではない人物が法国に入ったと言う事だけだった。

 

 

≪≪

 

「ひとまず無事に到着しましたな」

 

ライズハートが一仕事終えた様に息をついた。

 

「そうだね。特に問題も起きなかったし」

 

そう言葉を返す。

ここに来るまでの道中、実際対応に困る様なことはなかった。道中に盗賊に襲われそうになったが、怒ったライズハートが全員を倒した。

 

(最初に出会った時より強くなってる気がする)

 

そう感じたが、確証が無い今は言える事じゃ無い。

そして他にも幾つか都市を歩いたが、全部の都市でライズハートの顔パスが通じたのが大きかった。そうじゃなかったらここまで順調には進めなかったと思う。指揮官というのは伊達じゃなかった。ライズハート様々だ。

 

「この後の予定はどうなってる?」

 

「この後神官長様とお会いして頂く以外にはありません」

 

一応予定を確認したが、特に問題はなさそうで安心した。そしていつの間にかライズハートが敬語になっている。

 

(別に砕けてても気にしないのに)

 

まぁ、先程のように人前で仰々しくないなら別に良いか。

 

ライズハートがこうなっているのには理由がある。ライズハートは、僕に法国に来て欲しいと言った。

僕も法国には興味があったため、それを承諾した、が。法国に行くにあたって多数の懸念事項があったため、ライズハートに条件を出した。

 

一つ目が、【僕がプレイヤーだと言う事は秘密にする事】。二つ目が、【その事を兵士達にも伝える事】。三つ目が、【自分に気楽に接する事】。

 

これらの条件には理由がある。一つ目の【僕がプレイヤーだと言う事は秘密にする事】は、周りに知られたら間違いなく僕が動きにくくなるからだ。いざという時に頼れる場所が欲しかったから、ライズハートの提案は渡りに船だった。

 

だが、プレイヤーを神と崇める総本山にプレイヤーである事を隠さずに行けば、まず間違い無く祀り上げられる。そうなれば不自由ない暮らしができるかもしれない、が。少なくとも気軽に好きな冒険に出かけたり街中を歩いたり仲間を探すなんて事もしにくくなる筈だ。

 

それはまさしく【不自由】に違いない。

 

だからプレイヤーだと言う事を隠した。そして二つ目と三つ目の条件はこれに付随する形の条件にした。

まず僕をプレイヤーだと知る(言葉自体は知らない様子の)法国兵士に、僕は南方から来た人物という事にしてもらった。

*この世界では黒髪は珍しく、南方に黒髪を持つ人が多いらしい。

 

(あの時天使の輪と翼を隠しておいて正解だった)

 

天使の輪と翼を見られていたら後の対応が更に大変になっていた。

その事を考えるとあの時の僕の考えは間違っていなかったと思う。

 

そして三つ目の【自分に気楽に接する事】。

これにはしっかりした理由と僕個人の願望が含まれている。

しっかりとした理由は、法国で立場が高いライズハートが1人の人間に畏っていては余計な詮索を生んでしまうからだ。

 

ここに来る途中で身に染みて分かったが、ライズハートの影響力は凄いものだった。通常、幾ら自国の者でも都市を通るには検閲は受けなければならない筈だ。たが、ライズハートがいれば検閲を受けずにそのまま通してくれた。これはライズハートが信頼されているからだろう。

 

そんな人物が僕に傅いていては周りから何と思われるか分かったものじゃない。

 

そして僕個人の願望は、

 

(反応が良すぎる)

 

これだ。言う事為す事全てに感動して敬われるのは悪い気分はしないけど凄く気を使う。だから人前では砕けた態度をして欲しいと言ったが、未だに少し硬さが残っている。

 

少し軽口を言い合えるぐらいの仲を目指す僕からしてみれば、彼はまだその領域には到達できていないと言わざるを得ない。

 

でも最初に比べるとかなりマシになったから、今は良しとしよう。

 

 

そんな事を考えながら街を歩いていた。

街の中の建物は規則正しい並びをしている。全部が似た様な形だから地形を覚えないと迷ってしまいそうだ。

 

宗教国家なだけあって街中に立派な神殿が六つもあった。其々が大きく、こんな物を建てるのに必要な労力は想像もつかない。そして面白いのが、其々の神殿ががかなり違う意匠をしている。

シンプルに纏められた神殿もあれば、様々な装飾を用いた荘厳な神殿まである。

 

「何であんなに造形に違いがあるんだ?」

 

気になってそう聞いた。一つの国の中でもあそこまで違いがある物なのか?

 

「あれらの神殿は、其々祀っている六大神様が違うのです」

 

そうやって説明してくれたライズハートによると、どうやら同じ国の中でも宗派?によって違うらしい。

大元は一緒らしいが、それぞれの宗派独自の決まりなんかもあるそうだ。

 

日本も仏教やキリスト教、イスラム教など様々な宗教があったから宗教そのものと宗派という違いはあれど、そういうところは日本と似ているかも知れない。因みにライズハートは闇の神【スルシャーナ】を信仰しているそうだ。

 

(スルシャーナ?どこかで聞いた事がある)

 

六大神ならユグドラシルプレイヤーの筈。そうして記憶を探るが、決定的な事は思い出せなかった。

 

僕は自分のギルド(ワールド・サーチャーズ)やアインズ・ウール・ゴウン等の少数のギルドしか関わりしか持っていなかったから、心当たりのある相手なら覚えている筈なんだけど、、

 

しばらく悶々としていると、先程見た大きな神殿よりもさらに一回り大きな神殿の前で立ち止まった。

 

「それでは、暫くお待ちください」

 

そう言ってライズハートは神殿に入っていった。一応僕はまだ法国には属していない。その人物を国家機密がある神殿に入れるのは厳しいそうだ。

 

(僕もう色々知ってるんだけどな)

 

情報の大方を聞いた今となっては意味がなさそうに思えるが、無理に入る必要もないから大人しく待つ事にした。

 

「少し長引くかも知れませんので、この辺りを少し見回られては如何でしょうか?」

 

ライズハートがそんな事を言う。確かに少し気になってはいるからそれも良いかもしれない。

 

「分かった。気が向いたら色々見てみるよ」

 

その返答を聞いたライズハートは、神殿の扉を開けて中に入って行った。

僕は1人になった。そして30分ほど経っただろうか。

 

(・・・・暇だ)

 

意外と時間がかかっている分、とにかく暇だ。思い返せば、この世界に来てからこんな風にゆっくりした事は初めてかも知れない。

 

周りが見たこともない場所なのが、さらにその気持ちを強くする。

先程言われた様に周りを見て回るのも良いかも知れない。それにそう思ったのは、ただ暇だからと言うのだけが理由では無い。

 

(それに何か居心地が悪い)

 

 

先程から何かいたたまれないような、場違い感があると言うか。言葉にできない不安感の様なものを感じている。

 

気になって周りを見渡すと、その理由が分かった。先程から、近くを通る人が全員こっちを見てくる。それもふと見るのでは無くしっかりと。

 

(何で全員こっちを見てるんだ?)

 

何かをしてしまったわけでは無いし、心当たりは何も無い、いや。

 

自分の装備を見る。白い鎧に不思議な形の武器。そしてバイザーはこの場所では見ない服装をしている。この装備が注目されているとなんとなく分かった。

 

(まじ?大会装備よりも性能も見た目もマシなものを選んだつもりなんだけど)

 

ライズハート曰く、僕の装備はこの世界だと神話を飛び越えて神々の装備と言われるほどの物らしい。

 

ユグドラシルプレイヤーが神と言われているのだから、それはある意味そうだろう。その上、その中にあっても僕の装備はかなり特別な物だった。

 

ワールドチャンピオンを決める大会で優勝した記念に運営から貰った装備達。四つを一度に貰ったからたっち・みーが貰った鎧【コンプライアンス・ウィズ・ロー】と比べるとデータ量は少ないけど、それでも普通の神話級(ゴッズ)装備よりは優れている僕の自慢の装備達だ。

 

そしてその装備達を着たままだととても目立つと言われたから、自分が持っている中で丁度良いと思った伝説級(レジェンド)の鎧とアイテムを選んだのだが。

 

弱すぎるとデケムを倒したと言う話と食い違うからある程度の強さの装備を選ばないといけなかったのは大変だった。

 

やはり白の鎧とは珍しいらしい。周りを見てもそんな服装をしている人は居ない。居たとしても暗い色味が大半だ。

 

この鎧はたっち・みーに憧れて鍛治師のギルメンに作って貰った物で、性能は特化した伝説級(レジェンド)と比べると少し劣る。

少し使った後になんか恥ずかしくなってそのまま仕舞い込んでたやつだ。

 

普通なら装備しないものだが、他の飾りが多いものと比べるとこれが一番マシだった。ただでさえ伝説級(レジェンド)以下の装備の持ち合わせが少ないのだ。そして武器だが、これも伝説級(レジェンド)の物を選んだ。

 

六本三対の刃を持つ刀。そう周りには見えているはずだ。

実を言うとこれは剣、ではなく分類的には(スタッフ)に分類される物なのだ。この六本の刃の一つ一つに第八位階以下の魔法を込めて使用する事ができる。

 

ユグドラシルを始めたばかりの頃に頑張って手に入れたから思い入れがある装備だ。因みに斬撃ダメージに関するデータも盛り込んであるから剣としても使う事ができる。

 

(結構目立ってる)

 

ユグドラシルなら地味な部類だと思ったのに。やっぱり僕の感覚とこの世界の感覚は違うみたいだ。

 

「・・まぁ良いや。行こう」

 

そう言って歩き出す。正直名所の心得はないが、そういうのを探すのが楽しみの一つになるのが、知らない場所の良いところだ。

ただ、僕が歩き出したのに合わせて視線もこっちに向いてくる。

 

(やっぱり見てくるよね)

 

そんな事を思っても状況が変わるわけじゃ無い。

これじゃあ場所を離れる意味がない。

 

(仕方ないな・・)

 

それならしょうがない。そう考えてバイザーを装着した。

すると、僕に向いた視線が減った。どこか戸惑った様な気配も感じる。

 

(良し。効果は問題なく発動してるね)

 

勿論これは偶然じゃなく、僕が付けているバイザーの効果だ。

このバイザーはステータスは最上級と同じぐらいだが、珍しい効果を持っている。それは、【周りが自分を認識しにくくなる】という効果だ。

 

言葉通り、バイザーを付ける事で気配を認識しにくくなる。

 

ユグドラシルでは魔法の命中率が下がったりモンスターに狙われにくくなるから、ちょっとした探索に良く使っていた。それがこの世界では言葉通りの性能を発揮している。先日使った時にかなり驚いた。近くにいた兵士が『あれ?』と言って側にいる僕を探し出すんだから。

 

(とにかく、この状況には最適だ)

 

そうして周りが僕を見失っている内に、ささっと近くの路地裏に入った。

 

「ここまで来ると大丈夫でしょ」

 

そう一息ついた。この肉体(カラダ)になってから疲労は感じないから、精神的な疲れなんだろう。漸く静かになった。一人は落ち着くから好きだ。

 

(さて、どこに行こうかな)

 

早速本題について考える。良かったら見て来てくださいって言ってたから時間はあると考えて良いはずだ。

 

(まずは観光名所かな。いやここに来る途中にあったアイテムを扱う店や料理店も気になる。街を見て歩くのも良い。う〜ん迷うな)

 

そんな事を考えながらワクワクしていると、路地から声が聞こえてきた。

ふと気になってその声の場所に向かう。

 

するとそこには何人かの人達がいた。数人の男が、女の子を取り囲んで何かを言っている。話を聞いた感じあまり良い内容ではなさそうだ。

そもそもこの光景を見て良い内容と思う方が難しい。実際、囲まれている女の子は荷物を抱えて迷惑そうな顔をしている。

 

(何でこんな場面に遭遇するかな)

 

ワクワクした気分から一転して急降下だ。残念ながら、僕はこんな場面を見逃すほど無関心じゃないし、見てしまったからには見て見ぬ振りはできない。少し不機嫌なまま、男達に近づく。

 

「おい。その子困ってるけど?」

 

そう声をかけると、男達がコチラを見た。その目には邪魔をされた事に対する苛立ちや怒りが見受けられる。

 

「あぁ?何だこのガキ?バイザーなんか付けてて、変な奴だな」

 

そう話す男。緑の髪の毛はボサボサで、いかにもアウトローです、といった雰囲気が満載だ。そして香る酒の匂い。どうやら酒にも自分にも酔っているらしい。

 

(昼間から飲んだくれて何してるんだ)

 

酒に良い思い出が無いからか余計に男達に対して呆れつつ、そんな相手に変な奴呼ばわりされた事にイラっとする。癪だったからバイザーを外した。すると、男達の目が変わった。一瞬目が見開かれたかと思うと、直ぐに別の感情に支配された。

 

「へへ、おいガキ。中々良い顔してんじゃねぇか。この後付き合うって言うんなら、さっきの無礼は許してやるぜ?」

 

顔を近づけながら、そんな事を言い出すアウトロー男。後ろを見れば、他の男達も顔をニヤケさせてこっちを見ている。

その瞳の感情を僕は知らないが、絶対にロクな感情ではない事は分かった。楽しみな気分を邪魔されたからか、無性に怒りを感じる(・・・・・・)

 

その怒りのまま、近づいた頬を叩いた。軽く叩いたつもりだったのが、思ったより早く振り抜いた掌に甲高い音と共に叩かれた男は横の壁に叩きつけられて気絶した。

 

「は?お、おい?」

 

ニヤニヤしながらこっちを見ていた残りの男達の表情が変わる。安全だと思っていたのがそうじゃないと気づいた顔だ。少し滑稽に感じる。

 

「君たちもこうなる?」

 

そう言いながら壁の男を指差す。正直そうする事に抵抗は感じていない。

一応手加減はしたから死んでは無いはずだ。

すると男達は『ス、スミマセンでしたっー!』と言って男を担いで走って行った。いかにも古悪党。

 

(逃げ足速)

 

あそこまで早く走れるのには驚いた。陸上選手でもやっていけるんじゃ無いのかな?そう思うぐらいには早く走って行った。

 

「大丈夫?」

 

男達のことは置いといて、さっき囲まれてた女の子だ。

黒い髪で、黒と白を基調とした珍しい意匠の服装の女の子。年齢は10代後半、ぐらいかな?見た感じ怪我はしていないけど、念の為に確認をしておこう。そう思って声を掛けた。

 

しかし、声を掛けた女の子は何も言わなかった。ぼーっとしているというか、どこか上の空と言ったかんじに見える。僕を見ている様な見ていないような。

 

(あれ?大丈夫かな)

 

もしかしてさっき何かされたのか?なんかされてたらアイツら追いかけてもう一回叩いてやる。そんな事を考えながらもう一度呼びかける。

 

「あの、聞こえてる?」

 

「・・!う、うん。ありがと」

 

漸く聞こえたのか、お礼の言葉を言われた。反応を見た感じどこにも異常はなさそうだ。

 

「通りかかっただけだから。怪我は、なさそうだね。じゃあ、気を付けて」

 

そう言ってその場を立ち去る。あの男達がもう一回きたら面倒だ。

それに時間に余裕があると言っても無限じゃない。時は金なり、だ。

 

「ちょっと待って」

 

そうして路地を出ようとしたら、女の子に呼び止められた。

 

「はい?」

 

「何かお礼がしたいんだけど。されたままなのは嫌」

 

そんな事を言われた。随分と律儀な子だなぁ。

正直そんな事を考えて助けた訳じゃないからすこし複雑な気分だ。

 

大丈夫、気持ちだけ受け取っておくよ。いつも通りそう言おうとして、自分の中に考えが浮かんだ。

 

(この子、法国の人だよな。ならこの辺りにも詳しいんじゃないのか)

 

少なくとも僕よりは知っているはずだ。それに多分なにかお礼してもらわないと向こうに何か罪悪感みたいなのが残るかも知れないし。

 

(それなら聞こう)

 

「なら、この辺りを観光するなら何処がいいか教えてくれる?」

 

「観光?」

 

そんな事を聞かれると思っていなかったからか、少し驚いたみたいだ。

 

「それなら、この路地を出て左に行ったら露店街があるから、其処がいいと思うわ」

 

女の子はそう教えてくれた。女の子と言うには言動が少し大人びている気がする。それにどこか緊張しているような気がするが、きっと気のせいだろう。

 

「左ね。分かったありがとう!」

 

場所が分かったなら後は行くだけだ。早速バイザーを被り直して路地を出ようとした。

 

「ねぇ!」

 

すると、後ろから何かが飛んできた。振り返ってキャッチする。飛んできたのは、リアルで良く見た事がある玩具(ルービックキューブ)だった。

 

(何でルービックキューブがあるんだ?)

 

珍しい。僕も子供の頃にしか見た事がない物だ。

 

「それ、あげる」

 

女の子はそう言って、何やら急いだように路地を出た。

 

(あれ、何だったんだ?)

 

助けた女の子からルービックキューブを投げられたのは生まれて初めての経験だ。面白い子だったなぁ。そう思いながらルービックキューブを仕舞って、僕は露店街目指して走って行った。

 

因みに露店街はいろんなアイテムや食べ物があってとても楽しかった。

リアルではこんなの無かったから凄く新鮮な気持ちで楽しめた。

 

特に店で売っていた豚みたいな何かの串焼きは、漬け込んで柔らかくなった肉に焦げたタレがアクセントになってて絶品だった。

*お金はライズハートから少し貰っています。無銭飲食ダメ絶対。

 

(もう一度来る事があったらまた食べよう)

 

そう思うぐらいには美味しかった。

 

≪≪

 

露店を満喫した後神殿に戻るのと、ライズハートが出てくるのが殆ど同時だった。

 

「ヤマト様。お待たせしました」

 

ライズハートは少し焦るようにそう言った。

 

「いや、全然待ってないよ。さっきまで露店巡りしてたからね。凄く楽しめたよ!」

 

本当に来たばかりだ。グッドタイミングとはこの事を言うのだろうか。

 

「そうですか。それは嬉しく思います」

 

そう言うライズハートはどこか安心したようだ。

 

「それより、結構長かったね。何か問題?」

 

気になっていた事を聞く。露店巡りを楽しんでいる間ずっと話をしてたならそこそこ長い話だったはずだ。

 

「はい。神官長達が全員集まっていないそうで。明日、また来て欲しいとの事です。申し訳ありません」

 

そんな事を言いながら頭を下げようとする。

 

「ちょ!ここ人前!」

 

「は!?そうでした。申し訳ありません」

 

途中で思い出したのか下げかけた頭は止まった。

 

(危なかった。これを見られたら僕の立場が変になる)

 

未遂に防げてホッとした。それに大の大人に頭を下げられる青年なんて絵面は想像するだけで可笑しい。絶対に注目の的にされる。

 

「全然大丈夫だよ。また明日来れば良いだけだ」

 

正直待たされるのは全然気にしていない。それよりも気にしているのは、『神官長が全員揃っていない』と言う発言だ。つまり、僕を迎える為に国の上層部が集まってるという事。それに何か問題もあるらしい。

 

(あれ、もしかしなくてもヤバイんじゃ?)

 

ヤマトは、デケムを倒した事の重大さをイマイチ理解できていない。

ユグドラシル時代、化け物みたいなやつばかりを相手にした弊害が、こんな所で出てしまっている事にも気づいていない。

やはりヤマトはこの世界に於いて【普通】ではないのだ。

 

「ありがとうございます。では、この後如何されますか?」

 

取り敢えず気を持ち直したらしいライズハート。

 

「それならこの後ご飯行かない?何処かおすすめ教えてよ」

 

さっき食べた串焼きしかりライズハートと軍で食べた料理しかりこの世界の食事は全部美味しかった。

 

リアルのパーティ料理と比べてもより自然らしさがあって僕はこっちの方が好きだと感じた。法国出身のライズハートなら他にも何か知っているんじゃないのか。そう期待と共に聞いた。

 

「分かりました。ぜひご一緒させてください」

 

そう言うライズハートは少し嬉しそうだ。僕に頼られているからなのか、僕があまり機嫌を悪くしていないからなのか。将又僕に食事に誘われているからなのか。

 

(案外自分も食べたかったりして)

 

彼に限ってないとは思うが、もしそうだったなら面白いな。

 

「それより、そのルビクキューは如何されたのですか?」

 

ライズハートの視線が僕の手元に動く。

 

(ルビクキュー?ルービックキューブじゃなくて?)

 

何か発音が違う気がする。

 

「さっき助けた女の子から貰ったんだ。これルビクキューって言うの?」

 

「はい。六大神様がお伝えになった玩具の一つです」

 

やっぱりルービックキューブらしい。こんな物まで広まっているのか。

 

(珍しい。意外と遊んでたのかな?)

 

昔にいたらしいプレイヤーのことを考える。かなりの昔の玩具なのに、よく再現できたな。これを伝えた六大神はかなりお茶目かも知れない。

 

「それでは行こうか。何処か行きたい所はあるか?」

 

自分の世界から戻ってきた。

ライズハートの口調が砕けた物に変わっている。そうそう良い感じだ。

 

「全部任せるよ!」

 

そうして機嫌も良いまま2人でライズハートのおすすめの料理屋などを回ったりした。回った店は全て美味しかった。やっぱりライズハート様々だ。

 

途中酒場で飲んでいたら何故か男の人に腕相撲を挑まれて、ついテーブルを壊して謝ったのは良い思い出になった。少し罪悪感を感じたけど。

 

「負けてないから良いや」

 

僕は負けず嫌いなんだ。

 

それと後になったが、あの時話し合いに時間がかかったのはライズハートが僕の知り合い(モモンガさん)情報を聞いてくれていたらしい。

やっぱりライズハートはいい人だ。結局情報は無かったらしいけど、その行動だけで僕は充分だ。その後、店を回りつつ聞いて回ったがそれらしい情報は無かった。

 

そういえば、少し前に何か干渉を受けた気がしたけど、あれは何だったんだろう。悪い気配はしなかったけど、

 

(何かの魔法だったのかな)

 

なら変な事になってないから良しとしよう。ユグドラシルでもいきなり魔法干渉からの魔法発動なんか良くあったから何も起きてないに越した事はない。

 

(それにしても、モモンガさん何処にいるんだろう)

 

来ているならここにいるかも知れないと思ったんだけど。法国が違うなら、近くのバハルス帝国やリ・エスティーゼ王国かも知れないな。

こうなると探すのが大変だが、諦める気は無い。時間はまだまだある。いつか出会えるまで僕、いや、僕らの冒険は終わらないから。

 

 

 

 

≪≪

ヤマトが露店を回っていた頃。法国のとある部屋。部屋にあるベッドや椅子はこの世界ではかなりの物で、平民には揃えられる代物じゃない事が分かる。

 

その部屋の椅子に、一人の少女が腰掛けていた。

歳は10代半ばか少し後ろぐらいだろう。髪は肩口まで伸びていて、耳を隠している。その髪は、左右で黒白と色が違う。そして目はその髪色と反対に位置している。オッドアイというやつだ。

 

少女は、手元で何かを弄っている。四角い何かだった。それはルービックキューブもといルビクキューだ。そのルビクキューは、一面は真っ赤に染まっているが他の面は様々な色が混在している。それを揃えるのに苦心している様子だ。

 

 

 

「ーーこんにちは。あのー、絶死様、いらっしゃいませんか?」

 

そんな声で顔を上げる。恐る恐ると言ったような、微かな女の声が聞こえた。

 

「いるわ。少し待っていてくれる?」

 

弄っていたルビクキューを近くのテーブルに置いた。テーブルの上には、余り見ない物が無造作に置いてある。

 

(後少しで2面完成しそうだったのにな)

 

そうしてため息をつく。まぁ、後ですれば良いか。

 

「はひぃ!私如きお気になさらないでくださいませ!幾らでもお待ち申し上げますのでごゆっくり!」

 

脅すような事は何一つ言ってないつもりだが女は非常に怯えている。

もう一度ため息をつきたい気持ちになりながらもドアを開けて隣の部屋に行く。誰がきたのかは声でわかる。余り待たせるのも良くないだろう。

 

ドアを開けてへやにはいると、彼女は立って待っていた。身の置き所がないような頼りなさそうな感じだ。

 

「座ってて待っててくれても良かったのに」

 

「いえいえ、待ってなどおりません。それよりも絶死様のお時間を頂戴してしまって申し訳ありません。許してくださると嬉しいです」

 

へこへこと頭を下げながら愛想笑いを浮かべる女。これが法国の切り札であり、漆黒聖典第十一席時【無限魔力】の二つ名を持つ英雄などと誰も信じないだろう。

 

「それじゃ、座ってくれる?」

 

話をするなら座った方がいいだろう。そう思って言ったのだが。

 

「いえいえいえいえ。それには及びません。話が終わればすぐに帰りますので、絶死様のお部屋のソファーに座るなんて・・•••・」

 

彼女はバタバタとしく手を振る。そこまで拒絶しなくてもいいじゃないか、と少女、【漆黒聖典番外席次[絶死絶命]】は思った。

ここで何を言っても同じように返されるだろう。結局立ったまま話が始まった。

 

(いや、本当にそこまで・・。私が受け持った漆黒聖典のメンバーの中で一番卑屈だわ。.....前はもっと生意気だったのに)

 

漆黒聖典は英雄である。なので、時にそれを鼻にかけ、つけあがる者がいる。そういった者たちの島を完全にへし折るのが絶死絶命の役目の一つでもある。

 

彼女は魔法の力を鼻にかけた人物だった。だからやった事といえば得意の魔法を受けながらただ進んでマウントポジションをとって顔を叩いたぐらいだ。

 

たが、敗北を認めずに必死に魔法を使おうとしたことに至っては、少しは骨のあるやつだと評価しているほどである。

 

それに努力を重ね、今では痛みに耐えながらも魔法が使えるようになったという向上心の持ち主だ。それなりに高い評価をしている相手にそういう態度を示されると少し悲しくなる。

 

「それで今日はどうしたの?」

 

取り敢えず話を始める。彼女がここに来るときは、自分への指示を伝える場合が殆どだ。

 

(何かあったかしら?)

 

特に思い当たる節が無い。訓練も一通り終わって今任務はない筈だが。

そんな疑問は、続く言葉が晴らしてくれた。

 

「あ、は、はい。エルフ討伐軍が拠点を築くに至ったそうで。そろそろ向かう準備をして欲しいということを絶死様にお伝えするように頼まれました」

 

「そうなんだ」

 

驚きだ。まだ数年かかる物だと思っていたのに。まぁ、そんな事は如何でもいいわ。

 

(ようやく喉に刺さった骨が一本、抜けるかな)

 

自分の目的が一つ達成できそうな事を嬉しく思った。

絶死(わたし)が微笑むと、彼女が顔を引きつらせる。それほど恐ろしい顔をしているつもりはない。いつもの笑顔を浮かべているはずだ。

 

「要件はそれで終わり?」

 

そう思って声をかける。大体いつも指示は一つだけだから、これで終わりだろうと。

 

「あ、あと」

 

これで終わりかと思っていたけど、まだ何かあるらしい。

 

「明日に、ある人物が法国に来るそうなのでその準備もして欲しいと」

 

その言葉を聞いて、思い出した。多分隊長(あの子)から聞いたのと同じだと。

 

「ヤマト・タチバナ?」

 

確かそんな名前だった筈だ。

 

「し、知られてたんですか?流石はー」

 

「あー、お世辞はいいから」

 

何かお世辞を言いそうな感じだったから止めた。また時間を使うのも勿体無い。

 

「その人物が来るそうなので、一応備えていて欲しいと」

 

ここで言う備えるとは、多分そのヤマトという人物が何かをした時の対応だろう。たが、一応と言うぐらいなのだからその可能性は低そうだ。

 

「そう。分かったわ。態々ありがとう」

 

「いえいえ!絶死様がお礼を言われる事ではありません!どうぞ気にしないでください!それでは失礼します!」

 

彼女は、労いの言葉さえ怯えながら部屋を出ていった。

 

「・・あそこまで怖がらなくても良いのに」

 

少し訓練をやり過ぎたかと後悔する。多分、彼女の場合は鼻をへし折る過程でやりすぎたのだろう。

 

実際に彼女以上に訓練を『ちょっとやりすぎたかな』と後悔したぐらい施した隊長も、今では普通の態度で接してくれる。にもかかわらず、こんな態度を見せるのは彼女だけだ。

 

(まぁ、良いかな)

 

その内何とかなるだろう。そんな根拠のない事を考えながら、思考は先程の人物に向かった。

 

「ヤマト・タチバナ、ね」

 

隊長(あの子)から聞いた話だと、大地の守護精霊と、エルフの王を撃退したそうだ。その話が本当なら神人のあの子よりも強い事になる。

 

(貴方は、私に敗北を教えてくれるのかな?)

 

戦ってみたい。もしかしたら私に初めて敗北を教えてくれるかも知れない。少なくとも、今まで会った中では一番可能性は高そうに思う。もしそうならと、その事に期待せずにはいられない。

 

(人間なのかな?いや、多分違うわ)

 

唯の人間がそこまで強いとは思えないから、多分違うだろう。だが、種族は別に関係ない。もし自分に勝てるなら、子供を作っても良い。自分に勝てるくらいならきっとその子供は果てしなく強い筈だ。

 

(まぁ、負ける気はないけどね)

 

絶死は、機嫌良さそうに部屋に戻った。

 

 

 

(・・・そういえば、さっきの男の子。何者だったんだろ)

 

部屋でルビクキューを手に取って、ふと思い出した。

 

思い返すのは、新しいルビクキューとお菓子を買いに行った時に街の男に絡まれた時の事。久しぶりに外に出れたのにと思っていた時に、その子は私を助けてくれた。

 

自分を助けてくれた人は少ないからとてもよく覚えている。こんな世界で随分と優しかったし、随分と顔が整っていたのも覚えている。他人の顔に見惚れたのは生まれて初めてだった。

 

あの体で男を壁に吹き飛ばしたのは驚いた。

装備も唯の冒険者にしては素晴らしい物だったから、今考えればその子も只者じゃなかったんだろう。

 

(結局、ルビクキューは無くなったし)

 

去り際にお礼だと言ってその子にあげた。名前も聞いてないけど、また会ったら話をしてみたい。『何で助けたの?』と。

 

その事が妙に心に残った。何故かはよく分からない。




【独自設定】
・法都シクルサンテクス
多分こんな感じだと思いました。
・オリ主のアイテム達
・番外席次の外出
今の神官長が、昔の神官長の罪滅ぼしで許可を出したと言う設定でお願いします。

独自設定書くの大変なので次から無しにします。

やっとここまできた。10回を超えた書き直しとプロットの練り直しはドライアイの私の目に多大な負荷をかけました。飛ばした所ニ〜三話分くらいあったんですが、僕の話展開が長々しくて遅いので飛ばしました!
如何やってテンポ良く進めばいいのか誰か教えてくれませんか?


そして投票や感想ぜひお待ちしています!次の話でお会いしましょう。

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