死と神と番外の旅   作:眠りこけ布団

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お久しぶりです眠りこけ布団です!約二週間ぶりでしょうか。この二週間僕が何をしていたのかと言うと、名前の通り眠りこけていましたw
何故か意欲が湧かず、筆も動かずにベッドの中で悪戦苦闘している内に夢の中〜。と言った有様でした。次からは描きだめなどして一週間に一回投稿を目指します!

そう言えば、今日高校の一般入試でしたね。こんな時間に見ている受験生はいないと思いますが。受験生の皆さん。受験、頑張ってください!応援しています!
リラックスして望めば、大丈夫です!自分の力を信じて!   by眠りこけ布団


鳥山明先生。今までたくさんの感動をありがとうございました。ドラゴンボールの1ファンとして、ご冥福をお祈りします。


第九話 死の王、現状を知る

≪≪

ヤマトが法国についた頃。遠く離れたリ・エスティーゼ王国のトブの大森林。暗くなった森の中を、禍々しいアンデッドが歩いていた。

 

アンデッドと言えば、スケルトンやゾンビをイメージするだろう。しかしその姿は、我々がイメージする生を失った哀れな亡者(アンデッド)とは、余りにもかけ離れていた。

 

そのアンデッドには肉や皮がなく、完全な骨人間。骸骨(スケルトン)と一般的に呼ばれるものに似ていた。眼光は赤黒く光っており、暗い森の中に於いても更に深い漆黒のローブを纏い、右手には絡み合った蛇を思わせる黄金の(スタッフ)を握っており、全身にはかなりの価値を思わせる物品の数々を身につけている。

 

それら全てが一級を超越した品々だった。この時点で普通のアンデッドでは無いと分かるだろう。だがその中に於いても、その伽藍堂の胸骨に浮く赤色の球体と、左手に持っている盾が一層の力を感じさせた。

 

その球体は、重力に縛られないかのように伽藍堂の体内で浮いており、その格好がより禍々しさを増している。そして盾は、その骸骨の外見に似つかわしく無いほどに神聖な気配を漂わせていた。

 

絢爛豪華な金の装飾が施されたその純白の盾には、中心に巨大な紅い宝石が埋め込まれており、まるで神話の神々や天使が持っていそうな素晴らしいものだった。

 

その二つは、先程の物品に比べても一線を画していた。その発する力は極めて強く、人が及ぶ領域には存在し得ないものである事は間違いない。

 

それらの装備を身につけた骸骨は、妙に人間らしい仕草で森を歩く。その歩みは、何処か疲れたように見えた。

そしてそのアンデッドの隣を、巨大な何かが歩いている。巨大な四足獣で、尾は長くくねっている。よく見ればそれは、人の身長を超えていそうなほど大きなハムスターだった。

 

「殿〜。疲れたでござるよ〜」

 

そのハムスターは、疲れたようにそう喋った。その言葉に骸骨も疲れたように返す。

 

「あと少しで拠点だ。ハムスケ、もう少し我慢しろ」

 

骸骨、モモンガはため息をついた。それは今日の忙しさの軽減と現状の整理には必要な事だった。

 

(・・・疲れた)

 

今日はとにかく沢山の出来事と新しい事実に直面した。この体(・・・)だと肉体的な疲労は感じないから、精神的な疲れなんだろう。

俺はあの後、森の賢王に[ハムスケ]という名を与えた。後で聞いたらメスだったらしく、名付けを完全に間違えたが本人が気に入っているらしいから良いだろう。

 

ハムスケと名付けた後、俺は周りの状況をより広い範囲で探る事にした。情報を集めるためと現状の整理のために。だから森の賢王改めハムスケにも話を聞いたのだがハムスケは基本的に自分の縄張りから出ずに過ごしてきたため有益な情報は何も知ってはいなかった。だから、別の話を聞けそうな存在を探していた。そしてその途中、気づいた。いや、気づいてしまった。

 

(ここは、ユグドラシルじゃ無い)

 

ここが、ゲームの中(ユグドラシル)では無いと。

 

 

 

 

それに気づいたのは、森の奥を探索している時だった。

その時俺は湖を見つけた。瓢箪をひっくり返したような見た目をした湖だった。

 

そこには、蜥蜴のような見た目をした亜人達がいた。沼地に木で作った家が立っていたからすぐに見つけることができた。あまり高度な文明ではなさそうだったが、この世界に来てハムスケを除けば初めての知性を感じる生物の発見だ。

 

『もしかしたらプレイヤーに関係しているかもしれない』

 

そう考えて早速話を聞きに行ったのだが湖に着くなり『アンデッド!』と敵意を剥き出しにされた。アンデッドだというだけであそこまで敵意を向けられたのは、ユグドラシルを始めたばかりの頃以来だ。かなりショックを感じた。

 

そして大変だったが、何とか会話をして事情を聞く事ができた。向こうも何やら話の結果こちらの話を聞いてくれた。

亜人達は、蜥蜴人(リザードマン)という種族らしい。人間のように手足があり、ワニのような硬い鱗に長く伸びた尻尾を持ち、筋肉で覆われた強靭な肉体を持っていた。話しかけた二体は【シャースーリュー・シャシャ】と【ザリュース・シャシャ】と言う名前だった。その片方で部族の長だというシャースーリューが、俺に事情を語ってくれた。

 

蜥蜴人(リザードマン)は、今食糧難で苦しんでいるらしい。食料となる魚が不足して部族が飢えており、このままでは部族間同士での戦争すら起こりかねないとのことだった。そして俺に『それだけの力を持っている貴殿に頼みがある!どうか、力を貸してくれないか!貴殿が望む情報も可能な限り教える!』と言ってきた。

 

正直どうでも良かった。情報を集めるだけなら助ける必要なんかない。一人でも連れ帰って尋問すれば早かったと思う。実際そうしようとした。

だが、そうしようとした時、持っていた盾の重みが増した気がした。親友たる、俺を助けてくれた人。ふとその人を思い出して、そうする事ができなかった。

 

結局情報を集める為にだが、助ける事にした。今考えると間違ってはいない判断だった。まず、マジックアイテムで原因を調べそれが湖の水質の悪化という事が分かった。だから超位魔法の実験を兼ねて湖の水質を変えた。

 

(あれには驚いた)

 

まさか天地改変(ザ・クリエイション)の範囲があそこまで広くなっているとは。せいぜい近場だけかと思ったのが湖の全域が変化した。この時点でもしやと思っていた。

 

薄々そうなのでは無いかと思っていた。口が動いている事に始まり、ユグドラシルではあり得なかった魔法の変化。生きているように会話をするハムスケやリザードマン達。そして、何も感じず淡々とリザードマンを尋問しようとした時。これらによって疑問は確信に変わった。ここは、ユグドラシルではない。と。

 

そうでもしなければ説明がつかない。それによく考えればわかる事だ。これほどの自然や生物を再現するなど現代の科学を総結集しても不可能なことと。当然最初は途方に暮れた。こんな所でどうしろと。

 

だが、また風が吹いた。そして一定の感情を超えると無理矢理落ち着くらしいことも分かった。アンデッドの種族特性【精神異常無効】がこの世界で変化したのかもしれない。少し気味が悪いが、今の状況ではそれがありがたかった。幸い魔法や特殊技術(スキル)、装備の効果は問題なく使用できる。これでモンスターに襲われて即死亡なんて事もないはずだ。

 

ワールドエネミーのような存在はその例外だ。あんな理不尽の権化みたいなモンスターの対策なぞ考えるだけ無駄だろ。

 

ひとまずはこの世界での方針を決める。ユグドラシルでもギルド方針を決めるのは大切な事だった。大勢で決めるのと俺1人で決めると言う違いはあるが。

 

(ギルメン。そして、ヤマトさんを探す)

 

俺が来ているなら、あの時近くにいたヤマトさんも来ている筈だ。そうと決まれば、まずは情報収集。俺に対して何故かすごく丁寧になったシャースーリューに話を聞いた。すると、いろんな事が分かった。

 

まずこの湖は、7つの蜥蜴人(リザードマン)の部族が暮らしている湖だそうだ。シャースーリューは、その中の一つ[緑の爪(グリーンクロー)]族の族長だそうだ。

 

族長だから何かを知っているかと期待したが、蜥蜴人(リザードマン)自体があまり交流的では無い種族であるらしく有益な情報はほとんど持ってはいなかった。

 

分かったのは、やはりここがユグドラシルでは無い事と、森の外には人間達が存在しているという事だった。ハムスケからも聞いてはいたが、これでより可能性が高くなった。

 

そして俺が最初警戒された理由についても聞いた。俺は特に蜥蜴人(リザードマン)に対しては何もしていないはずだが、、。そう思ったのだが、俺が何かをしたかは関係がなかった。

 

どういうことかというと、理由は俺がアンデッドだったからだそうだ。

詳しくはよく分からないが、この世界ではアンデッドは生者を憎む存在で悪しき存在だとされているらしい。つまりアンデッドというだけで悪印象だそうだ。それは致命的だ。つまり出会う先々で問題が起こる。

 

その状態では来ているかもしれない他のプレイヤーとのエンカウントもあまり好ましくない。その上俺は【アインズ・ウール・ゴウン】のギルドマスターだった。

 

そんな俺をよく思うプレイヤーは多く無いだろう。事実よく思われてはいなかった。ユグドラシルだったならまだ良いが、このよく分からない世界でプレイヤーに目の敵にされてはたまらない。

 

(『アンデッドと分かれば、何も知らない者は貴方様を拒絶するでしょう。姿を変えられてはどうでしょうか』 か。どうしようか、姿を変えた方がいいのか?)

 

シャースーリューに言われた事を頭の中で反芻する。アンデッドが忌避されるならば、種族を変えれば解決だ。しかし種族変更はできないから、それ以外の手段で見た目を変えるもしくは隠さなければいけない。深い森の中が理由で人は見かけないが、それでもこの姿のままだといずれ都合が悪い。

 

そんな事を考えながら、アイテムボックスを探る。しかし残念なことに、それらしいアイテムは見つからなかった。使う機会がないからと、ナザリックの自室に置いていたのが仇になった。

 

(どうするか。・・・そうだ!魔法を使えば良いじゃないか!)

 

良いアイデアだ!今の俺は剣や武器はなぜか装備できない。恐らく、このアバターで戦士などの職業を取っていない事が関係しているんだと思う。

ユグドラシルであればグレートソードなどの武器を装備することは、戦士系のクラスを一度も取っていないと通常はできない。実際に、アイテムボックスにあったグレートソードは、持つ事は出来たものの振ることはできなかった。だが、ワールドアイテムなら職業に関係なく装備できるし、魔法で作った武器はこれまた装備できる!そうと決まれば早速と、魔法で鎧と武器を作った。流石に鍛治職が作ったものには劣るが、俺だって純魔法職。まずまずといった性能だ。

 

(こんな感じか?)

 

姿を見ることができずにいると、ちょうど良く泉があった。この世界で初めて見たあの泉だ。その泉を覗き込むと、全身を漆黒の鎧で包み、漆黒の兜を被り、赤いマントを羽織っている俺が映っていた。さらにその背中には、巨大な剣を背負っている。そして左手には、白く光る盾を持っていた。

盾は鎧とは正反対の色味だが、それがよりお互いを強調しあっている。

 

(なかなか良い感じじゃないか?)

 

「殿?!びっくりしたでござる!」

 

内心満足していると、いきなり姿が変わったからかハムスケが驚いている。

 

「丁度いい。ハムスケどうだ?俺がアンデッドだと分かるか?」

 

一応ハムスケに書いておく。他者の意見は大事だ。

 

「全く分からないでござるよ。格好いいでござるな!」

 

良し。これで一目でアンデッドだとは思われないだろう。普通に考えたら怪しいが、あくまで目的はアンデッドである事を隠すため。ならばこれで十分だ。

 

そんな事をしていると、拠点に着いた。拠点といってもハムスケが住んでいた洞窟に幾つかのアイテムを使ったリアル自然の避難所(ネイチャーズシェルター)と言うべきものなのだが、雨ざらしよりは断然いい。

 

「ハムスケ。後で人間の村に行くぞ。確か近くにあるんだよな?」

 

洞窟に入ってそう言う。ハムスケに聞いたが、この近くに人間達が暮らす小さな村があるらしい。

 

「人間達の村でござるか?確かにあの方角にあるでござるが、何故(なにゆえ)人間の村なのでござるか?」

 

少し不思議そうにそう言いながら、尻尾で場所を指し示すハムスケ。

 

「今の状況は情報が不足し過ぎている。なら情報を集めるのが最優先だ。それにここは人間の国だ。なら人間に聞くのが一番良いだろ」

 

最終的な目標は仲間達を探す事だ。つまり情報が一番必要になる。蜥蜴人(リザードマン)達はあまり情報を持ってはいなかったが、人間なら情報も多少はあるだろう。人間達なら俺たちの知らない事も知っているはず。餅は餅屋だ。情報源は多いに越したことはない。

 

「情報でござるか。殿の御友人のためでござるか?」

 

気になったのか、そんなことを聞いてきた。

 

「あぁ、そうだ」

 

「その御友人とは、一体どのような御仁なのでござるか?」

 

(そういえば、ハムスケにはヤマトさんの事を詳しく教えていなかったな)

 

ただ友達を探しているとしか言っていなかった事を思い出した。

 

「何処か不思議な人だな。ロマンや冒険を追い求めるのに、いきなり現実的な事を言ったりしてた人だ。でも、凄く優しい人だぞ。それにとても強い人だ」

 

そう言いながら、(ヤマトさん)のことを思い返す。彼はワールド・サーチャーズでは副ギルド長と呼ばれていた。本来ギルドにはそんな役職などないのだが、そう呼ばれるくらい慕われていたということだろう。そして冒険が好きで、冒険にのめり込み過ぎてナノマシン不足による強制排出も珍しくなかったらしい。俺も冒険や旅は好きだが、そこまで熱中出来るかはわからない。だがそんな性格とは裏腹にとても冷静に、そして現実的な物の見方もできる人だった。そこは巨大複合企業(メガコーポ)に勤める人だと思っていた。

 

「強いとは、殿よりもでござるか?」

 

「もちろんだ。俺なんかよりずっと強い」

 

ヤマトさんといえば、その強さも超一流だった。ヤマトさんは戦闘職最強のワールドチャンピオンだ。その強さは滅茶苦茶で、俺たち上位ギルド(アインズ・ウール・ゴウン)のメンバーでも勝てる人はたっちさんを除いてはほぼ居なかった。普通、魔法と戦士職を両方持つプレイヤーは器用貧乏になることが多く、戦闘では一線に立つことはほぼなかった。だから上位プレイヤーは職業や系統を絞るのがほとんどだった。しかし彼は特化した戦闘職に重きを置いて、そこに多彩な魔法を組み込むことでその欠点(器用貧乏)をカバーしていた。それどころかより強く昇華していたかもしれない。

 

(言うならば器用貧乏ならぬ、器用裕福だったなぁ。弐式さんや建御雷さんが辛うじて戦えるぐらいか?)

 

そんなのだから勿論PvPも強かった。近接戦が超強い上に距離を取ると様々な魔法が飛んでくる。さらには状態異常やHPの低下も自分で対処できる上にMPがなくなっても戦える。その上アイテムまであるのだ。まさに公式チート(ワールドチャンピオン)だった。単純な攻撃能力に限ってはギルド内でもTOPクラスだったあの2人ですら勝つのは無理だった。逆にそんな人相手に勝ち越し続けた、もう1人のワールドチャンピオン(たっちさん)が恐ろしい。

 

「なんと!?それほどとは、流石殿の御友人でござるな。凄いでござる!」

 

俺がそんなことを考えているとは知らず、尻尾を振りながらそう言うハムスケ。こう見ると中々可愛い奴だ。

 

「そうだろ?ヤマトさんは凄かったんだぞ。分かったら、情報を集めないとな。村には明日の朝に行くぞ」

 

「分かったでござる!」

 

夜に押しかけるのはリアルでもゲームでもマナー違反だ。時間はまだある。急がば回れだ。そう決めたその時、人間を超越した俺の聴覚が何かの音を拾った。

 

「ん?・・・おい、ハムスケ。聞こえたか?」

 

「殿?何でござるか?・・・これは、叫び声、でござるか?」

 

ハムスケにも聞こえたらしい。ならばこれは俺の幻聴じゃない。何かが入り混じったような大声。そして叫び声。それが、先ほどハムスケが指し示した方向から聞こえる。

 

何やら嫌な予感がする。そしてこんな予感は大抵当たる。

 

「人間の村の方向でござる。どうするでござるか?」

 

ハムスケがそう聞いてくる。先程村に行くと言ったばかりだ。

 

「そうだな。・・・今行くのは危険だ。様子を見てからにしよう」

 

正直言って、行かない方がいいだろう。まだ情報が全然足りない。その状況で不確定な場所に踏み入るのは危険を極める。

ユグドラシルでも、情報が全くないダンジョンは危険が一杯だ。事実ナザリック地下墳墓の初見攻略で大苦戦したのは記憶に深く残っている。

 

そんな状況で未知に飛び込むのは賢い選択とはいえない。それに俺の強さも不明だ。俺は百レベルの死霊系特化魔法詠唱者(ネクロマンサー)。先程のリザードマンやハムスケと比べれば俺は強い。

 

ハムスケ級が相手なら戦っても負けることは無い。だが、それが俺が強いという証明にはならない。ユグドラシルでは俺は強く無かった。中の上、上の下に入れていればいい方だ。アイテムやアーティファクトを惜しげもなく使って上の中ぐらいだろう。

 

誰でも楽々PK術(PvPの心得)はあるが、それでも勝率は5割といった感じだった。ワールドアイテムを持っている今そう簡単にやられるとは思えないが、あの村にもしヤマトさんやたっちさんの様なワールドチャンピオンに匹敵する強さの者がいたらその限りではない。上澄の上澄に勝てると思うほど俺は驕ってはいない。

 

そしてこの世界でもし負けたらどうなるのかも不明だ。ユグドラシルでは【死】は、身近にあるものだったし死んでもすぐに生き返れた。なんならアバターの再構成の手段ですらあった。だが、ここはユグドラシルでは無い。

 

死んだら、そのままかもしれないのだ。だから、ここは関わらない方がいい。そう判断した。

 

『困っている人がいたら、助けるのは当たり前!』

 

『困っている時はお互い様だよ。遠慮なく頼ってよ』

 

しかし、また声が聞こえた気がした。盾が月の光を受けてより一層煌めいた。赤いマントも風に靡いた。森の中なのに。

 

「・・・そうか。そうだな」

 

ふぅと息が漏れた。この記憶を呼び覚ましては、助けに行かないわけには行かないじゃないか、と。

 

あの人なら、直ぐに助けるだろう。一人は、迷うかもしれない。少し現実的な人だったから。でも、結局は見捨てられないはずだ。だからあの時俺は助けられた。俺は、ヤマトさんのワールドアイテムを持っている。いつか出会ったら返すつもりだが、それまでは俺が貸してもらう形だ。なら、その代金を払ってもいいんじゃ無いか。恩を返すと言ったほうが良いかもしれないが。

 

俺は飛び出した。無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)ワールドアイテム(世界意志)をセットしておくのも忘れない。いざという時に、これで即座に死亡(デス)なんていう事態にはならないだろう。

 

「殿〜!?待って欲しいでござる〜!」

 

いきなり飛び出した俺に驚きながらもハムスケがそんな事を言いながら追いかけてくるが、態々止まってやる事は出来ない。正義のヒーローに憧れたのかもしれないし、天使の優しさに感化されたのかもしれない。だが今はそのどちらでも良い。

 

俺はその気持ちのまま、村の方向に向かって行った。

 

≪≪

 

カルネ村。トブの大深林の近くに位置する小さな村。薬草の名産地でもあり、村の大きさに反してかなり豊かな村でもある。モンスターの生息地であるトブの大深林の近くに位置しながらも、森の賢王と呼ばれる大魔獣の縄張りが近いこともあり、モンスターに襲われる事もなく今まで平穏を保っていた。その平和な村は今、混乱の中にあった。

 

「まさかこんな事になるとは、っな!」

 

飛び掛かってきた小鬼(ゴブリン)を迎撃しながらそんな事を言う男。男は冒険者だろう。首にはそれを示すように銀色に輝くプレートが揺れている。

 

「ペテル!ニニャとダインはどこ行った!?」

 

「先に行かせた!魔力が少ないらしいからな!俺達もここを抜けたら行くぞ!」

 

このモンスター全員を相手取るのは無理だ。{*事実仲間の魔法詠唱者(マジック・キャスター)は魔力切れ寸前だった。}

そう判断して、戦いの合間に矢継ぎ早に会話をしながら村から抜けようと悪戦苦闘する。そうして村の外れに出た頃だった。村の家から出てくる(・・・・)影が見えた。

 

「マジかよ、、。小鬼(ゴブリン)人喰い大鬼(オーガ)までいたってのに、妖巨人(トロール)まで出てきやがった」

 

仲間のルクルットが、苦しそうにそう言った。それは彼らにとって、正しく絶望だった。妖巨人(トロール)は高い再生能力を持ち、金級冒険者でやっと勝負になるほどの強敵。今の状況の自分たちが勝てる相手ではない。

 

急いで対策を考えるが、時間が足りない。その間に妖巨人(トロール)は、こちらに向かってきた。なぜトロールが村にまで出て来るのかは分からない。本来トロールは森の奥深くに生息するモンスターのはず。だが、今はそんなことを考えても仕方がない。このままだと俺たちにも危険が及ぶのは間違いない。

 

ならば逃げるかと言っても、コイツ(トロール)をそのままにして置いたら仲間達が危ない。何より仲間の魔法詠唱者は魔力切れ寸前だ。遭遇したらまず命はない。そんな仲間を危険には晒せない!

 

「クソっ!来るぞ!」

 

(ここで気を引くしかない!)

 

覚悟を決めて剣を握り直す。ルクルットも矢を構えた。トロールは俺に向かってその巨体を揺らしながら近づいてくる。

向かってきたトロールに対して、ルクルットが矢を放った。その矢はトロールの脚に突き刺さったが、トロールは意にも介さずこちらに向かってくる。トロールが持っていた棍棒を振り上げた。反射で左に飛ぶ。次の瞬間には自分が立っていた地面が抉れていた。凄まじい振動と音を感じながら立ち上がり、腕を切りつけた。鮮血が腕から飛び散ったが、それはトロールを怒らせただけだった。

 

「ぐはっ!」

 

激痛を感じながら、後方に体が吹き飛んだ。どうやら蹴られたらしいと、泣き喚く胸と腹がそう教えてくれた。視界が揺れる。指一本すら動かせない。

仰向けになった俺の視界に、棍棒を振り上げたトロールが映る。

 

(あぁ、俺、死ぬんだな)

 

妙に冷静だった。淡々と、そうなんだとしか思わなかった。近くでルクルットが俺の体を揺らしながら何かを言っている。

 

(おい、何してんだ。俺に注意が向いてる隙に逃げろよ。・・・それにしても、なんでこんな事になったんだろうな)

 

簡単な薬草採取の任務だったはずだ。ここはモンスターもあまり出ないと聞くし、今回は平和そうだって笑ってたのに。確かに昼間はモンスターは出なかったけど、夜になった途端にこれだ。皆んなを危険に晒してしまった。

 

(俺が村人を助けようって言わなければ、。いや、言ったのはダインだっけ?ニニャのような気もする)

 

死ぬ間際だと言うのに、考えが止まらない。こう言うのが走馬灯とか言うやつか?

 

(ごめん。ルクルット、ダイン、ニニャ。俺はここまでだ。なんとか無事に逃げてくれ)

 

この体ではそう祈る事しかできない。今、俺が狙われている内に、。  そうして、頭上の棍棒が俺に振り下ろされた。

 

 

 

 

 

「・・・・あれ?」

 

反射的に目を閉じた。が、来るはずの痛みが来ない。恐る恐る目を開けると、目の前には棍棒があった。しかし、その巨大な棍棒は動きを止めていた。

視線を動かすと、目の前に1人の男が立っていた。男は全身を黒の鎧で覆っていて、赤いマントを羽織っていた。そして背中には、一振りの剣を背負っていた。だが、それは剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく、分厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさに鉄塊だった。

 

そんな剣を背負った男は、棍棒を左手の盾一つで受け止めていた。男の背は高く立派な体躯をしているのが鎧の上からでも分かるが、トロールは男よりもさらに大きい。そんなトロールの一振りを、いくら盾があるとはいえ片手で受け止めたのは信じられない。俺は夢を見ているのか?しかし胸の痛みが現実だと訴え、不思議と冷静な頭が現実だと言っている。

 

「なる程。ダメージは無し、か。これはワールドアイテムのお陰か?それとも物理攻撃無効の効果なのか?」

 

男は何か言っているが、うまく聞き取れなかった。

 

「まぁ良い。せっかく来たんだ。無理矢理にでも実験に付き合ってもらうぞ」

 

男が何か言ったかと思うと、トロールが吹き飛んだ(・・・・・)

 

「は?」

 

言葉通りに、吹き飛んだ。しかも少し後ろではなく、遥か後ろに。トロールは、30メートルほど吹き飛んで見えなくなった。先ほどの蹴り以上の衝撃が体を襲った。隣を見ると、ルクルットも口と目を広げて驚愕していた。その気持ちはよく分かる。俺だって驚きすぎて痛みがどこかに行ってしまった。

 

「・・・・・。怪我をしていますね。ひとまずこれを」

 

驚いていると、先ほどの事を気にも留めない様子の男が何かを手渡してきた。それはポーションにも見えたが、よく見知った(青色)のものでは無い。真っ赤で、血のようにも見えた。

 

「あの、これは?」

 

「治癒のポーションです。応急処置には充分だと思いますが」

 

やはりポーションだったらしい。しかし飲んでも良いのだろうか。こんなポーションは見たことも無い。だが、助けて貰った人からいただいたものを使わないのは、、、。

 

そうした葛藤の末、勢い良くポーションを流し込んだ。

 

「!、痛みが引いていく」

 

驚いたことに、先ほどまで感じていた痛みが消えてしまった。今度は気のせいじゃない。

 

「どうやら効いたようですね。では、私はあれらの相手をしなければ」

 

男は立ち上がって、村の方に走って行ってしまった。あれだけの重装備をしていると言うのに、凄まじい速さだった。

 

「ペテル!大丈夫か!?」

 

ルクルットが俺を心配してそう声をかける。

 

「あ、あぁ。さっきのポーションのお陰だ。もう動ける」

 

立ち上がってみても、痛みは感じない。

 

「そうか。よかったぜ。それにしても、さっきの男は何者なんだ?」

 

「分からない。だが、助けてくれたんだ。悪い人じゃ無いだろう」

 

2人して、先ほどの男について考えるが、敵では無いと言うことしか分からなかった。

 

「、、、あの人は何者だったんだろう。凄い装備だったなぁ」

 

「そうだな。確かに凄かった」

 

そうやって村を見つめる2人の目は、英雄に憧れる子供の目だった。

 

 




最後のあたりは行き当たりばったりで書いたので、より一層拙いと思います。もしかしたら書き直すかもしれません。

鳥山明先生のまさかのニュースで、土日に投稿しようと思っていたのがすごく遅れました。僕はオーバーロードも大好きですが、ドラゴンボールも大好きです。
原作も読んだし、スーパードラゴンボールヒーローズというカードゲームも旧弾時代(むかし)からやっていました。仲の良い友達ができたのも、ドラゴンボールがキッカケだったりしました。思い返すと、いつもどこかにドラゴンボールはあって、その大きさをあまり良くわかっていなかったんだなぁと、しみじみと思います。ニュースを聞く前日に、友達と学校帰りに川の土手を自転車を漕ぎながら、「やっぱ鳥山明って天才やわ!」なんて会話をするぐらいには日常の一部でした。
書いている今も、良く分からない感情がこんこんと湧き上がってきます。悲しいような、そんな気持ちが。

鳥山先生。ありがとうございました。

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